
2025年4月の開幕が目前に迫った大阪・関西万博。開幕が近づくにつれ期待よりも不安が膨らんでいる印象が強いが、そこで披露される最新技術や文化に罪はない。どのような展示が行われるのか、期待で胸を膨らませたいところだ。
ただ、目玉の一つに据えられていた空飛ぶクルマは、全陣営が商用運航を断念し、さらには、日本航空(JAL)と住友商事の共同事業体については、デモ飛行すら断念することが判明した。
良い意味でも悪い意味でも他社の出方を気にする日本企業。JAL陣営の断念によりデモ飛行の再検討を迫られる可能性があり、場合によっては全陣営がデモ飛行すら断念する可能性もゼロではない。
最終的に、空飛ぶクルマ関連の展示・体験はどのようなものとなるのか。これまでの経緯を含め、現時点で判明している情報をまとめてみた。
▼空飛ぶクルマ|EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
https://www.expo2025.or.jp/future-index/smart-mobility/advanced-air-mobility/
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■万博×空飛ぶクルマのこれまでの経緯
万博は商用運航実現のマイルストーン
空の移動革命に向けた官民協議会が2022年に公表した「空の移動革命に向けたロードマップ」などにおいて、大阪・関西万博は空飛ぶクルマの商用運航を実現するマイルストーンに位置付けられていた。万博での商用化を念頭に、運航に関する基準のガイドライン策定や低高度における安全・円滑な航空交通を行う体制整備、認知度向上を図っていく方針が掲げられた。
同調する大阪府も「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を設立し、当面の目標として万博での商用運航実現を目指し、国における制度設計・ルール作りに資する実務的協議や実証実験などを進める体制づくりを進めている。2022年には、「空の移動革命社会実装に向けた大阪版ロードマップ/アクションプラン」を策定した。
万博×空飛ぶクルマは、国の方針に基づく取り組みなのだ。
運航事業には4陣営が選定された
2025年日本国際博覧会協会は2023年2月、万博における「未来社会ショーケース事業出展」のうち「スマートモビリティ万博」空飛ぶクルマの会場内ポート運営の協賛企業と、空飛ぶクルマ運航事業への参加企業を選定したと発表した。
運航事業には、以下の4陣営が選定され、万博会場内ポートと会場外ポートをつなぐ2地点間で空飛ぶクルマの運航を目指すこととした。
- ANAホールディングス
- 日本航空
- 丸紅
- SkyDrive
会場内ポート運営には、オリックスが選定された。会場外ポートは、関西国際空港や会場近傍の湾岸エリア、大阪都心部などが候補に挙がっていた。実際に万博来場者を乗せ、商用運航を行う計画だった。
2024年1月に大阪市が公募した「『空飛ぶクルマ』会場外ポート事業者」にはOsaka Metroが選定され、大阪市港区(中央突堤)に空飛ぶクルマの離着陸場となるバーティポートを整備している。

2024年に入って相次いで商用運航断念、デモフライトへ切り替え
各陣営とも商用運航実現に向け開発を加速していたが、1年後に開催が迫った2024年に風向きが変わった。型式証明や耐空証明取得のハードルが高く、丸紅とSkyDrive陣営は2024年6月までに、残るANAとJAL陣営も同年9月までに万博での商用運航を諦め、デモフライトに切り替える方針であることが報じられた。
全陣営が商用運航を諦め、デモフライトに切り替えたのだ。これを致し方なしと見るか計画倒れと見るかは意見が分かれるところだが、万博はあくまで通過点であり、その後の万全な商用化こそが本当の目標であることを踏まえれば、英断とも言えなくもないが・・・。
そして日本航空と住友商事については、デモフライトすらしないことが分かった。会場では実寸大の機体模型の展示しかしない。デモフライトをしない理由は、機体の安全審査の通過に力を注ぐためとしている。
では最終的に、万博ではどのような体験を味わうことができるのか。現時点で公表されている情報に触れていこう。
■万博における空飛ぶクルマ体験
展示施設「空飛ぶクルマ ステーション」を整備
2025年日本国際博覧会協会は2025年3月、未来社会ショーケース事業における「スマートモビリティ万博 空飛ぶクルマ」の事業の一環として、展示施設「空飛ぶクルマ ステーション」の整備を決定したと発表した。
空飛ぶクルマが実用化された未来社会を体感できる展示施設で、映像や立体音響、床面振動を組み合わせた最新の没入体験を得られるイマーシブシアターや、空飛ぶクルマの専用離着陸場紹介動画などの展示を予定している。
イマーシブシアター「SoraCruise(そらクルーズ)by Japan Airlines」は日本航空が協賛し、リアルな映像や立体音響、振動によって没入感を高める「イマーシブソリューション」を導入し、空飛ぶクルマに搭乗しているかのような臨場感を体験できるという。
空飛ぶクルマ専用離着陸場「バーティポート」の紹介動画はオリックス協賛のもと提供する。
空飛ぶクルマ ステーションはエンパワーリングゾーンP07(延床面積:約300㎡)に設置され、入館は要予約となっている。

離着陸場「EXPO Vertiport」整備
2024年10月には、万博会場内離着陸場施設の正式名称が「EXPO Vertiport」に決定したことが発表された。多くの来場者が見込まれる万博「EXPO(エキスポ)」と「Vertiport(バーティポート)」を掛け合わせ、万博をきっかけに「Vertiport」という名称が広まることを期待して名付けたという。
会場内の北西に位置するモビリティエクスペリエンスに設置されており、2025年3月に竣工した。敷地面積7,944.39㎡で、エプロンや着陸帯、駐機場、格納庫、ラウンジなどの施設で構成されている。

SkyDriveは会場と大阪港バーティポート間でデモフライト
SkyDriveは、モデル「SD-05」のデモフライトを計画している。航続距離15キロ、定員3人の機体で、2025年2月には、型式証明活動において国土交通省航空局から適用基準を発行されたことが発表された。
空飛ぶクルマのような新型航空機においては、型式証明取得に要するすべての基準が事前に用意されておらず、型式証明取得を目指す個々の機種に特化した基準を設定するため、航空局と協議を重ねて要件が定まると適用基準が発行されるという。
この基準の発行により機種固有の耐空性や環境基準の詳細がおおむね固まり、今後の開発がさらに加速するとしている。
万博では、会場から中央突堤間の2地点間運航などを行う予定だ。中央突堤のバーティポートはOsaka Metroが整備したもので、2025年3月に完成し、「大阪港バーティポート」と命名された。つまり、SD-05はEXPO Vertiportと大阪港バーティポート間でデモフライトを行うこととなる。
大阪港バーティポートは面積約12,000㎡で、旅客施設、格納庫、充電施設、消火設備、風向指示器、モビリティポート(オンデマンドバス・シェアサイクル)、駐車場などを備えるとしている。
ANAは湾岸周辺エリアを飛行予定
ANA×Joby Aviationは、モデル「JAS4-1(Joby S-4)」のデモフライトを予定している。最高時速320キロ、定員5人仕様で、航続距離は160キロという。
詳細は明かされていないが、会場内のEXPO Vertiportを拠点に湾岸周辺エリアを飛行する予定としている。
丸紅は会場と尼崎フェニックス間を運航
丸紅×Vertical Aerospaceは、モデル「VA1-100(VX4)」でEXPO Vertiportと尼崎フェニックス間の2地点間運航などを行う予定だ。
VA1-100は定員5人で航続距離160キロのモデルで、最高時速325キロでの飛行が可能という。丸紅はこのほかにも2021年にパートナーシップを結んだ米LIFT Aircraftのモデル「HEXA」の運航も検討中としている。運航は、万博開催期間のうち1カ月を予定している。
会期中にどのくらいの頻度で運航されるかは不明
JALを除いた各陣営は、会場内のEXPO Vertiportを拠点に周辺バーティポートなどへのデモフライトを行う予定だ。
ただ、会期中、毎日いずれかの陣営が代わる代わる運航するのかは不明だ。1カ月の運航を計画している丸紅を参考にすると、1~2カ月ほどの期間運航し、次の陣営にバトンタッチ――といった可能性が高いようにも感じる。
もちろん、丸紅が1カ月を予定しているだけで、他陣営は3カ月や通期運航を計画しているかもしれない。
乗車できないとは言え、飛行する姿を一目見たいと思う来場者は少なくないはずだ。会期中であれば、悪天候でない限り毎日空飛ぶクルマがデモフライトを行うのか、また機体の展示が行われるのかなど、続報が待ち遠しいところだ。
デモフライト以外では、予約が必要ではあるものの「空飛ぶクルマ ステーション」が設置されており、何らかの形で空飛ぶクルマを身近に感じる体験ができそうだ。
■万博後の計画
SkyDrive×Osaka Metroは「大阪ダイヤモンドルート構想」を発表
何度も言うが、開発企業にとって万博はゴールではなく、あくまで通過点だ。万博後の計画にもしっかりと注目したい。
SkyDriveはすでに、ポスト万博に向けた構想を発表している。万博後の空飛ぶクルマの社会実装を見据え、Osaka Metroとともに市場調査などの結果を踏まえ「新大阪・梅田」「森之宮」「天王寺・阿倍野」「ベイエリア」の4つのエリアを重要エリアとして選定し、それぞれを結んだ「大阪ダイヤモンドルート構想」を2024年12月開催の大阪ラウンドテーブルで発表している。
4つのエリアは、大阪の美しい景観を楽しめるポイントや主要観光地へのアクセスがスムーズになる場所を設定しており、空飛ぶクルマを利用することで、パーソナルな空間で空からの眺めを楽しむことができ、移動時間そのものが特別な体験になるとしている。
まず2028年を目途に森之宮エリアでサービスを開始し、2030年以降に向けサービスを順次拡大することを目指し検討していく方針としている。
丸紅は関西圏内外にエリア拡大
丸紅は、導入初期において5機体程度を導入し、主要空港近郊・湾岸部で3路線以内の運航を行う。その後、25機体ほどを導入し、エリアを市街地に拡大し10路線以内の運航を目指す。繁栄期には関西圏内外にエリア拡大を図っていくとしている。
【参考】空飛ぶクルマの開発事業者については「空飛ぶクルマの機体メーカー一覧」も参照。
■【まとめ】万博はあくまで通過点
現時点で判明している情報では。乗車はできないものの、バーティポート間を運航する様子をしっかり拝むことができそうだ。気になる飛行スケジュールなどがいつ公表されるのか、公式発表を待ちたい。
ただ冒頭触れたように、JALのデモ飛行の断念により、他の陣営もデモ飛行の中止を検討し、開催前に最終的に断念の決断をする可能性もある。
また、何度も言うが開発事業者にとって万博はあくまで通過点だ。万博後の計画も徐々に固まり始めている。近い将来、大阪を中心とする関西圏が空飛ぶクルマ先進地となる可能性が高いだけに、今後の動向にもしっかりと注目していきたい。
【参考】空飛ぶクルマについては「空飛ぶクルマとは?英語で何という?いつ実現?ヘリコプターやeVTOLとの違いは?」も参照。