KDDIスマートドローン決算、純損失8.3億円 売上は13億円計上

KDDIのドローン事業を継承し2022年に設立



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

ドローン事業を展開するKDDIスマートドローン株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長:博野雅文)の第2期決算公告(2023年3月現在)が、官報に掲載されている。第2期の当期純損失は、前期の当期純損失321万円から大幅に赤字額を増やし、8億3,432万円であった。

■決算概要(2023年3月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 1,112,984
固定資産 1,351,866
資産合計 2,464,851
▼負債及び純資産の部
流動負債 1,319,171
賞与引当金 33,862
固定負債 63,445
株主資本 962,831
資本金 100,000
資本剰余金 400,000
資本準備金 250,000
その他資本剰余金 150,000
利益剰余金 462,831
その他利益剰余金 462,831
評価・換算差額等 119,403
その他有価証券評価差額金 119,403
負債・純資産合計 2,464,851


損益計算書の要旨(単位:千円)

売上高 1,396,064
売上原価 1,455,844
売上総利益 59,780
販売費及び一般管理費 516,531
営業損失 576,311
営業外収益 26,618
営業外費用 877
経常損失 550,569
税引前当期純損失 550,569
法人税、住民税及び事業税 950
法人税等調整額 282,808
当期純損失 834,327

■KDDのドローン事業を継承
出典:KDDIスマートドローン公式サイト

KDDIスマートドローンは、2022年1月にKDDIにより設立された。KDDIは2016年からドローンの事業化に向けた取り組みをスタートし、4G LTEなどのモバイル通信を用いてドローンを制御することで、安全な遠隔飛行・長距離飛行を実現するサービスの構築を行っていた。

KDDIスマートドローンにドローン事業を承継することで、4G LTEや5Gを用いたドローンによる新たなビジネスの実現や、点検・物流・監視・農業・測量などのさまざまな分野における顧客ニーズに即した機動的なサービスの提供を目指している。

■スマートドローンソリューションを提供

KDDIスマートドローンは、スマートドローンソリューションを提供している。これは、監視・配送・点検・測量などの領域において、顧客が抱える課題解決や業務効率化を実現するために、サービスの導入から運用までトータルサポートするものだ。


具体的には、平時や災害時にスマートドローンで巡回し、遠隔で迅速に現場の状況を確認したり、スマートドローンによる遠隔制御によりドローン自動配送を実現したりといった内容になる。

また風力タービンや水力発電設備など、危険で手間と時間がかかる点検作業をドローンで行うサービスや、ドローンのフライト・撮影、点群データ変換、成果物作成までをワンストップかつ低価格で提供するといったサービスも提供している。

そのほか、ドローン機体の販売も手掛けている。扱っているのは、中国DJIや日本のプロドローン、ACSLなどのドローンだ。2022年12月には、ドローンの操縦ライセンスやスキル習得を目的としたカリキュラムを提供する「KDDIスマートドローンアカデミー」を開校し、人材育成も行っている。

■人流データを活用したドローンでの検体輸送を実施

KDDIとKDDIスマートドローンは、人流データを活用した地上リスク評価およびドローンによる検体輸送の実証実験を2023年11月20日〜12月4日に実施した。スマートフォンの位置情報を基にした人流データを活用し、人通りが少なくリスクの低い飛行ルートを設計・選択し、病院から検査機関までドローンでの検体輸送を行うという内容であった。


なおこの実証は、内閣府から採択された「先端的サービスの開発・構築や先端的サービス実装のためのデータ連携等に関する調査事業」の一環として、内閣府の「スーパーシティ型国家戦略特区」に指定されている茨城県つくば市の協力のもと行ったものだ。

実証の結果、ドローンでの検体輸送時に人流データを活用することで、リスクの低い飛行ルートを選択して安全に輸送できることを確認したという。

またドローンが生活圏内の上空を飛行するため、地域住民の認知獲得や受容性向上に向けた取り組みも行った。つくば市の協力のもと、同市のスマホアプリのプッシュ通知を通じてドローンの飛行経路や運行情報を知らせた。

■ミッションは「叶えるために、飛ぶ。」

KDDIスマートドローンのミッションは、「叶えるために、飛ぶ。」だ。設立まだ2期目の同社は、現在は事業の確立と拡大を行っている途中だと思われる。

山間部や離島、災害時における空の移動は、今後ますます必要とされ、参入する企業も増えそうだ。エアモビリティ関連企業は、ベンチャーやスタートアップが大多数である中で、大企業による取り組みは、安心感や開発力が武器になる。また予算の掛け方が段違いのため、事業が軌道に乗った場合の規模拡大のスピード感が期待できる。

KDDIスマートドローンのさらなる活躍に期待だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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