カナダで「自動運転禁止」州が誕生 レベル3以上で懲役刑も

安全性に懸念、罰金は日本円で最低5.7万円



カナダで自動運転が禁止の州が誕生した。ブリティッシュ・コロンビア州は2024年4月、同州の自動車条例(Motor Vihicle Act)の一部改正を行い、レベル3以上の自動運転車を禁止した。安全に対する証明が行われていないことが理由の一つとなっている。


同州はバンクーバーやビクトリアなどの都市やスキーリゾートとして名高いウィスラーなど観光資源を抱え、日本をはじめ世界的にも注目を浴びることの多い州だ。

▼PROVINCE OF BRITISH COLUMBIA ORDER OF THE LIEUTENANT GOVERNOR IN COUNCIL
https://www.bclaws.gov.bc.ca/civix/document/id/oic/oic_cur/0147_2024
▼MOTOR VEHICLE ACT|BRITISH COLUMBIA
https://www.bclaws.gov.bc.ca/civix/document/id/complete/statreg/96318_00

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義や実用化状況は?」も参照。

■条例改正のポイントは?

今回の改正における重要なポイントは主に2つだ。


まず1つ目は、今回の改正によりブリティッシュ・コロンビア州における自動運転レベル3以上の車両は実質すべてが締め出されることだ。陸続きであるアメリカで認可されているレベル3以上の自動運転車両は、今後国境を超えて同州に入ることはできないため、十分な注意が必要だ。

そして2つ目は、この条例を違反した場合には多大な額の罰金、場合によっては懲役も課される場合もある点だ。罰金の額は最低で368カナダドル(約5万7,000円)、重い場合は2,000カナダドル(約22万5,000円)のほか、そして悪質な場合は6カ月以下の懲役も課される可能性がある。

■システム主体による運転はすべて禁止

自動運転のレベルは、現在SAE(Society of Automotive Engineers)の6段階の自動運転レベルが世界基準となっており、レベル3以上は自動運転システムが稼働中、運転の主体が人間の運転者からシステムに変わる大きな転換点だ。

レベル2までは、緊急自動ブレーキや車線維持アシストなどの機能が搭載されていたとしても、運転を行う主体はあくまでも人間のドライバーだ。


今回の条例では、緊急の場合に人間のドライバーが運転操作を代わる必要がある自動運転も、公共の安全を脅かすおそれがあるとして、すべて禁止される。

■現時点では影響は少ないが・・・

ただし、現時点ではレベル3以上の自動運転車の販売は、ブリティッシュ・コロンビア州のみならず、カナダでは一切許可されていない。そのため、現時点では今回の条例改正による影響はないと考えられる。

しかし、今後同州でレベル3以上の車両もしくはオプション機能を展開できないとなると、各自動車メーカーの販売戦略にさまざまな影響を及ぼすことは必至だ。

ブリティッシュ・コロンビア州政府は、高度に自動化されたレベル3以上の自動運転車は依然新しい新興のテクノロジーであり、それらを条例で認可するためには、該当する自動運転車が安全であることをまず証明する必要があるとしている。同州の今後の動向に注目だ。

【参考】関連記事としては「アメリカの自動運転最新事情(2024年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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