【2024年3月の自動運転ラボ10大ニュース】アップルが自動運転開発を断念

Pony.aiは欧州進出、国内ではライドシェア論争が過熱



海外では、アップルがついに自動運転開発を断念するという衝撃のニュースが飛び交った。スマートモビリティを一から開発するのは、天下のアップルでも簡単なことではなかったようだ。


一方、国内ではライドシェア関連の話題や自動配送ロボットの話題が熱を帯びている。ラストマイルをめぐる移動サービスや輸送サービスの変革が少しずつ始まっているようだ。

年度末を迎えた2024年3月、業界ではどのような動きがあったのか。10大ニュースを1つずつ振り返っていこう。

■完全自動運転のトヨタ車、インドで目撃か モディ政権と対立も(2024年3月1日付)

インドトヨタ車を用いた自動運転実証が目撃されたようだ。実施主体はインド自動車研究協会(ARAI)で、トヨタの関わりは不明だが、同国の道路交通大臣は以前から自動運転実用化に反対の意を示しており、今後の展開に注目が集まるところだ。

同国では、自動運転サービス実装により多くのドライバーの職が失われるとして、自動運転に反対する考えが根強く残っている。


インドは世界有数の自動車大国にのし上がり、モビリティ業界にとって非常に魅力的な市場となっている。その一方、道路交通ルールはルーズで、交通事故死者数は世界一を数える。

このままルーズなモビリティ環境を続けていくのか、安全性向上に向けメスを入れる日が来るのか。その政策の行方は不明だが、メスを入れる際には、自動運転技術に改めて注目が集まることは間違いない。

なるべく早期に転換点を迎え、安全な交通社会実現に向けた取り組みが進むよう望みたい。

【参考】詳しくは「完全自動運転のトヨタ車、インドで目撃か モディ政権と対立も」を参照。


■Appleが開発中止した自動運転技術、「数十億ドル」で売却・現金化か(2024年3月4日付)

Appleがついに自動運転開発プロジェクトを断念したようだ。10年間にわたり延べ数千億円をつぎ込んできた大型プロジェクトだったが、アップルの未来から同分野は排除されたようだ。

スタートアップの買収や事業縮小など紆余曲折を経てきたプロジェクトで、アップルファンのみならず「アップルがモビリティ分野でどのようなイノベーションを起こすのか」と大きな期待を寄せられていただけに、非常に残念な結果となった。

今後の焦点は、これまで研究を進めてきた技術やアイデアの行方だ。アップルならではの視点で開発が進められてきただろう研究開発成果には、ある意味アップルブランドの粋が詰まっているのではないか。

こうした技術に関心を示す企業は少なくないはずだ。知的財産の売却をはじめ、他の開発事業者との協業形式によるサービス展開などの目はまだ残されているかもしれない。今しばらく動向に注視たいところだ。

■Uber Eatsの自動配送ロボ、いよいよ日本で稼働!最高時速は「早歩き」程度(2024年3月7日付)

Uber Eats Japanと三菱電機が米Cartkenの自動配送ロボットを導入し、自動運転による無人デリバリーサービスに着手した。東京の一部エリアから導入を開始し、様子を見て拡大していく方針と思われる。

日本では、ZMPやパナソニック、ティアフォーなど開発勢が充実し始めているが、継続的にサービス実証を行う小売りなどのパートナー企業が相対的に少ないように感じられる。まだ利益を生み出す段階には至っておらず、我慢の時を分かち合えるパートナーが乏しいのだ。

そんな中、全国にネットワークを張り巡らせるウーバーイーツの参入は業界にとって非常に大きいものと言える。ウーバーイーツが起爆剤となり、取り組みが波及していく可能性が考えられる。

実証なくして技術やサービスの向上は図ることができない。ロボット社会実現に向け、同社のように手を挙げる企業が増加することを願いたい。

■トヨタの自動運転特許、10年で3%→5%の微増にとどまる(2024年3月13日付)

自動車メーカーの中で随一の特許数を誇るトヨタ。その中身がCASE領域に関する技術へと徐々に移り変わっているようだ。

技術分野別の登録特許の比率は、2012年時点で電動車14%、電池7%、自動運転3%、コネクテッド1%、その他車両技術(エンジンやボディ、シャシーなど)75%だったが、2022年には電池19%、電動車18%、コネクテッド9%、自動運転5%、その他車両技術49%と変化している。

2012年に25%だったCASE関連は、10年後の2022年に51%まで比率を高めているのだ。自動運転関連は3%から5%と微増にとどまっているが、他社に比べればその数は高水準と言える。

こうしたさまざまな技術は、すでに水面下で実装されているものや近い将来実用化されていくものと思われる。近未来を象徴する研究開発の成果がこうした面に表れていると言える。自動運転実用化面では比較的おとなしいトヨタだが、どのタイミングで社会実装に向けた取り組みを本格化させるのか、今後の動向を見守りたい。

■トヨタ出資先の中国系Pony.ai、自動運転で欧州圏上陸(2024年3月15日付)

中国スタートアップのPony.aiが、海外展開に踏み出したようだ。ルクセンブルク大公国政府と同国における自動運転開発に向け覚書を交わした。

Pony.aiの自動運転開発の中心となるハブをルクセンブルクに設立する予定で、欧州展開を視野に自動運転車の研究、開発、展開を促進していくとしている。

Pony.aiは2023年10月にもサウジアラビアで建設中のスマートシティNEOMでの自動運転実装に向け、NEOM投資基金(NIF)から1億ドルの投資を受けることを発表している。中国の枠を出て、海外展開が本格化した印象だ。

Pony.aiはトヨタからも出資を受け、協業を進めている。将来、トヨタを介する形で日本に進出する可能性も考えられる。今後の動向に要注目だ。

■部分的自動運転、トヨタ・レクサスのみ「合格圏」 米IIHS調査(2024年3月16日付)

米道路安全保険協会(IIHS)が最新の評価プログラムにより、自動車メーカー各社の先進運転支援システム(ADAS)の評価結果を公表した。

対象はBMW、フォード、ゼネラルモーターズ、ジェネシス、レクサス、メルセデス・ベンツ、日産テスラ、ボルボの9社・14システムで、ドライバーモニタリングシステムや緊急時の対応、ACC、車線変更など7項目について、それぞれ「優(G/good)」「良(A/acceptable)」「可(M/marginal)」「不可(P/poor)」の評価を下した。

その結果、総合評価で「A」を獲得したのは「Lexus Teammate with Advanced Drive(レクサス LS)」のみで、GMの「スーパークルーズ(GMC シエラ)」と日産の「ProPILOT Assist with Navi-link(Ariya)」が「M」、それ以外は「P」となった。

全体的に厳しい評価が下された中、レクサスLSが検討した格好だ。同一のADASでも、搭載車種によって結果は変わる可能性がある。

今後、他メーカーについても評価していく方針だ。トヨタやホンダ、スバルなどはどのような結果となるか、要注目だ。

■ライドシェア、料金変動制で「運賃最大3倍」案 業界団体、国交省に意見(2024年3月19日付)

2024年4月に開始予定の自家用車活用事業に対するパブリックコメントの結果が公表された。賛否さまざまな意見が寄せられたようで、運賃に関してはダイナミックプライシング導入の是非についても意見があったようだ。

ダイナミックプライシング導入推進派の意見では、運賃の上限について既存タクシー運賃の3倍程度の許容度が必要との案も提出された。需要が集中する時は高く、その逆は安く……というのがダイナミックプライシングだ。

ただし、基本的にタクシーのダイナミックプライシング導入には、一定の期間内の総収入の平均が総括原価方式により算出された運賃の範囲内に収まっているかが問われる。

「需要過多」をスタンダードとする自家用車活用事業では、一方的に高い運賃が設定されることになるため、ダイナミックプライシングにはなじまないように思われる。

ベースとなる運賃水準も公表されていないが、事業を管理するタクシー事業者の運賃をベースに同額設定される可能性が高い。

最終的にどのような制度となるのか、要注目だ。

■クルマのサブスク、Z世代「検討したい」80%超!都内認知層、2年で倍増(2024年3月20日付)

KINTOが毎年実施しているZ世代のクルマに対する意識比較調査によると、Z世代(18〜25歳)のサブスク認知は東京、地方ともに3割を超え、都内の8割超、地方の7割超が将来サブスクを検討したいと答えたようだ。サブスク検討割合は、2年前と比べ東京で2倍、地方で3倍弱まで増加している。

調査ではライドシェアに関する項目も設けられており、約6割がライドシェアを認知し、4割超がその利用に「興味あり」と回答している。

一方、「クルマ離れ」については、都内で51%、地方で34%が自覚しているようだ。意外にも、都内ではその割合が減少傾向にある。

自家用車に対する意識がいろいろと変わり始めていることがうかがえる。カーシェアや自動運転、パーソナルモビリティなど、さまざまなサービスが今後どのようにシェアを変えていくことになるのか。モビリティを取り巻く意識や環境の変化はすでに始まっているようだ。

■自動運転時代、信号機に「白」追加を 米研究チーム、「4つ目の色」を提言(2024年3月20日付)

ノース・カロライナ州立大学の研究チームが、信号機に「白」を追加するアイデアを発表したようだ。一定条件が整った際、自動運転車が「移動式交通管制官」として他の車両を先導する形で交差点を安全に通過できるようになるという。

本格的な自動運転時代が到来する際、こうした信号機の在り方も大きく見直される可能性がある。交通信号機は、CIE(国際照明委員会)により世界共通で赤、黄、緑が割り当てられている。

長く守られてきた世界共通ルールだが、自動運転をはじめとしたCASE時代を契機に見直す動きが出始めてもおかしくはない。ただし、自動運転車だけに指示を出すのであれば信号機である必要はないため、他の交通参加者を含めどのような交差点通行ルールを構築すれば効率性や安全性が向上するのか。こうした議論が今後活発化しても良さそうだ。

■ライドシェア世界最大手Uber、ついに日本で「本業」を本格展開へ(2024年3月20日付)

Uber Japanが石川県加賀市で「加賀市版ライドシェア」の本格運行を開始した。自家用有償旅客運送制度に基づくサービスで、京都府京丹後市に次ぐ導入だ。

あくまで自家用有償旅客運送だが、Uberアプリを使用するためその使用感はライドシェアそのものだ。同制度の規制緩和も徐々に進んでおり、運送対価水準の見直しなどが2023年12月に行われた。

引き続き、事務手続の簡素化やダイナミックプライシングの導入の是非、交通空白地の定義など、さまざまな観点から利用・導入しやすい制度に向けた改正が行われていくものと思われる。

4月からは自活用車活用事業がスタートし、都市部や観光地などでの導入が見込まれる。自家用有償旅客運送は主に地方で導入されるものだが、それぞれどのような形で公共交通を補完していく存在へと成長していくか、注目だ。

■【まとめ】ライドシェア論争はさらに過熱?

国内では、新年度にスタートする自家用車活用事業をはじめとするライドシェア関連の話題が熱を帯びている。本格ライドシェアに向けた議論も進められており、来月以降も引き続き大きな話題となりそうだ。

海外ではアップルが開発から撤退する一方、Pony.aiが欧州進出を発表するなどさまざまな動きが出ている。開発企業の淘汰を経ながら、先行する米中勢の海外進出が今後も加速していく可能性がある。

年度が替わる2024年4月にはどのような動きが出てくるのか。引き続き業界の動向に注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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