夏真っ盛りで暑い日が続いているが、モビリティ業界でもホンダと日産、三菱自がSDV領域で協業を開始するなど、熱い動きを見せている。自動配送ロボット関連では、中速・中型モデルの検討も始まった。
海外では、メルセデス・ベンツに動きがあったようだ。自動運転分野で後れを取りがちなグローバルメーカーによる巻き返しが始まるのか、要注目だ。
2024年8月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。
記事の目次
- ■ライドシェア、運転手から悲鳴!「ワーキングプアを強要」「売上の3~5割が手数料」(2024年8月6日付)
- ■ホンダ・日産、自動運転技術を「共通システム化」か GM Cruiseとも一本化?(2024年8月8日付)
- ■自動運転レベル4、メルセデスが北京で「テスラより先」に試験認可を獲得(2024年8月9日付)
- ■米政府、「中国製」自動運転ソフトの搭載禁止へ 車内の盗聴など不安視(2024年8月9日付)
- ■Googleの自動運転車、深夜に「集団クラクション」エラー!住民が不眠症に(2024年8月17日付)
- ■自動運転の死亡事故、自動車メーカー側が「免責」希望 「開発意欲の維持」が理由(2024年8月17日付)
- ■ライドシェア解禁に小出し感。「35℃以上予報」で時間外展開を許可(2024年8月19日付)
- ■マスク氏のロボタクシー計画、Uber社長が「根本的欠陥」を指摘(2024年8月20日付)
- ■空飛ぶタクシー、結局「パリ五輪」に間に合わず 許可取得に失敗(2024年8月20日付)
- ■中型の自動配送ロボ、「最高時速20キロ」規制は妥当?遅すぎは「渋滞誘発」(2024年8月22日付)
- ■【まとめ】日本版ライドシェアの成果が本格版ライドシェアを左右する?
■ライドシェア、運転手から悲鳴!「ワーキングプアを強要」「売上の3~5割が手数料」(2024年8月6日付)
規制改革推進会議のWGが取りまとめた資料によると、日本版ライドシェア(自家用車活用事業)に関するヒアリング調査で、ドライバーから労働条件などに関する意見が相次いだようだ。
ヒアリング対象はドライバー20人と少ないが、稼働時間が限られているため思うように働けないといった声や、実質週20時間までしか働かけず十分な収入が得られないという声、ドライバー募集の説明会に行かないと労働条件を教えてくれない……など、さまざまな声が寄せられたようだ。
海外のライドシェアとは異なりドライバーの自由度が低く、悪い言い方をすればただのパート型タクシードライバーに過ぎない。大都市を中心にマッチング率が向上するなど一定の成果は出ているようだが、事業として長続きするのか?と問われれば何とも言えない状況だろう。
国は事業の改善を進めている最中だが、5年、10年後の同事業の姿と業界の動向を見据えた上で改善を図っていく必要があるのではないだろうか。
【参考】詳しくは「ライドシェア、運転手から悲鳴!「ワーキングプアを強要」「売上の3~5割が手数料」」を参照。
ライドシェア、運転手から悲鳴!「ワーキングプアを強要」「売上の3~5割が手数料」
■ホンダ・日産、自動運転技術を「共通システム化」か GM Cruiseとも一本化?(2024年8月8日付)
ホンダと日産が、次世代ソフトウェアディファインドビークル(SDV)向けのプラットフォーム領域において、基礎的要素技術の共同研究契約を締結した。両社は3月に覚書を交わし、自動車の知能化・電動化時代に向け協議を進めてきた。三菱自動車も参画し、今後協業領域をさらに拡大していく構えだ。
SDV関連の技術は1年を目途に基礎研究を完了し、成果が出ればその後量産開発の可能性を含め検討していく。また、バッテリー領域やe-Axle領域、国内のエネルギーサービスなどの各領域についても協業範囲を検討していく。
こうしたパートナーシップにより、3社の距離が将来どこまで縮まることになるのか。淡白な共同研究に終わる可能性もあれば、資本関係に結びつくほど強固なアライアンスに発展する可能性もある。
自動運転領域における協業などにも着手する日が来るのか、今後の動向に要注目だ。
【参考】詳しくは「ホンダ・日産、自動運転技術を「共通システム化」か GM Cruiseとも一本化?」を参照。
■自動運転レベル4、メルセデスが北京で「テスラより先」に試験認可を獲得(2024年8月9日付)
メルセデス・ベンツが、中国・北京でレベル4の自動運転走行テスト許可を取得した。中国以外の企業では初で、指定市街地と高速道路で公道実証を行うことが可能になった。WeRideと共同で承認を得たとしている。
同社は2023年末にレベル3の試験走行ライセンスも取得している。今回のレベル4認可を受け、今後どのような計画を進めていくかについては言及されていないが、直営、あるいはWeRideなどと共同で商用サービスに踏み切るのか、注目が集まるところだ。
グローバル系自動車メーカーによるレベル4以上の実用化を目指す動きはここ数年停滞していたかのように思えたが、ホンダや日産の計画をはじめ、再び動き出してきた印象を受ける。各社の動向に要注目だ。
【参考】詳しくは「自動運転レベル4、メルセデスが北京で「テスラより先」に試験認可を獲得」を参照。
■米政府、「中国製」自動運転ソフトの搭載禁止へ 車内の盗聴など不安視(2024年8月9日付)
米商務省が、自動運転車などへの中国製ソフトウェアの持ち込みを禁止することを2024年8月中に提案する方針という。バイデン政権は、レベル3以上の自動運転車への中国製ソフトウェアの搭載を禁止する規則案を発表予定としており、公道実証も対象となるようだ。
搭載ソフトウェアが中国など懸念される外国企業で開発されたものでないことを確認する必要があるという。
詳細が不明なため何とも言えないが、中国系スタートアップの多くは米カリフォルニア州でも実証を重ねている。例えば、米国内で開発を進めるソフトウェアが実質的に米国製の場合、どういった対応を取るのか。
中国政府の影響が及ぶ企業はすべて排除する……といった主旨なのかどうか。いまいち判然としない。
WeRideやMomentaなど米国市場に上場する動きが強まっているが、まだまだ波乱の要素を拭えないようだ。
【参考】詳しくは「米政府、「中国製」自動運転ソフトの搭載禁止へ 車内の盗聴など不安視」を参照。
■Googleの自動運転車、深夜に「集団クラクション」エラー!住民が不眠症に(2024年8月17日付)
Waymoの自動運転タクシーが駐車場で夜通しクラクションを鳴らし合うトラブルが発生したようだ。自社で使用している自動運転タクシー用の駐車場で、各車両が互いにクラクションを鳴らし合っているという。
Waymoの車両は、バックする際周囲に他の車両がいるとクラクションを鳴らして注意を喚起する仕様になっているという。このため、駐車場でバックした車両が他の車両を認識し、クラクションを鳴らす……という連鎖が続いてしまったようだ。車両が続々と帰ってくる深夜帯に特に多く発生し、周辺住民を困らせているという。
Waymoは、状況に応じクラクションの音量を下げるなどの対策を施すとしているが、根本的な解決に結びついていないのではないだろうか。目的外使用は論外だが、たとえ注意喚起が目的であってもクラクションの多用は非常に迷惑だ。
自社の車両同士であるならば、別の解決方法を導き出すべきではないだろうか。
【参考】詳しくは「Googleの自動運転車、深夜に「集団クラクション」エラー!住民が不眠症に」を参照。
■自動運転の死亡事故、自動車メーカー側が「免責」希望 「開発意欲の維持」が理由(2024年8月17日付)
内閣府の委員会資料から、自動車メーカー側が自動運転車が起こした事故に対する免責を希望していたことが判明した。
デジタル庁下で現在、自動運転車の社会的ルール整備に向けた議論が進められており、この内容が内閣府所管の消費者委員会で取り上げられた。
資料によると、メーカーのプログラム開発担当者が開発意欲の維持を理由に「死亡事故が発生しても一律に刑事免責を認めて欲しい」旨希望したことが明記されている。
自動車による事故では、一般的な注意義務を全うしながら安全走行していても、急な歩行者の飛び出しなどで自動車側に過失がつくことも少なくない。立場が弱い歩行者保護の観点が強すぎる……と感じることはないだろうか。
一律免責はないにしろ、一定の免責がほしいところだ。自動運転の場合、相当数に及ぶ車両の責任が一律でメーカーに及ぶ可能性があるため、どこかで線引きが必要になるものと思われる。
【参考】詳しくは「自動運転の死亡事故、自動車メーカー側が「免責」希望 「開発意欲の維持」が理由」を参照。
■ライドシェア解禁に小出し感。「35℃以上予報」で時間外展開を許可(2024年8月19日付)
日本版ライドシェア(自家用車活用事業)の細かなバージョンアップが繰り返されている。雨天対応を皮切りに、酷暑やイベント時への対応も開始したようだ。
雨天時など、曜日や時間帯に関わらず需要が伸びるタイミングも日本版ライドシェアを稼働可能にする内容だ。一般ドライバーの稼働時間が限られており働きにくいデメリットが指摘される同事業においては歓迎すべき改善と言える。
ただ、それでも万全とはいえない。海外のライドシェアのように働きたいときに働けるわけではなく、対象エリアも決まっている。小出しの改善では限界があるが、大幅緩和をすれば、それはもはや「タクシードライバーお試し制度」となる。
これで正規のタクシードライバーの増加につながるのであればそれはそれで良し――となるかもしれない。しかし、本格版ライドシェア解禁勢力が黙っていないだろう。推進派と反対派の攻防はまだまだ続く見込みだが、日本版ライドシェアの成果がどのように判断されるのか、要注目だ。
【参考】詳しくは「ライドシェア解禁に小出し感。「35℃以上予報」で時間外展開を許可」を参照。
■マスク氏のロボタクシー計画、Uber社長が「根本的欠陥」を指摘(2024年8月20日付)
米Uberを率いるダラ・コスロシャヒCEOが、テスラの自動運転タクシー構想に疑問を呈したようだ。
テスラの自動運転タクシー構想は、自動運転化されたオーナーカーを用いる。オーナーが好きなタイミングで自動運転タクシープラットフォームにマイカーを登録することで、車両が勝手に自動運転タクシーとして稼働するアイデアだ。
イーロン・マスクCEOは10月にも自動運転タクシーに関する発表を行う予定だ。内容は変わっているかもしれないが、早くから同構想を掲げていた。
一方、コスロシャヒCEOは「テスラ車のオーナーは自分のクルマをロボタクシーとして使用することを望んでいるのか」と疑問を呈する。もともとテスラオーナーは富裕層中心の高級車志向が多い。そういったオーナーがマイカーを見ず知らずの人に貸し出してまで副収入を得ようとするか?……といった趣旨のようだ。
ただ、近年はテスラも低価格帯モデルに力を入れ始め、ターゲット層の拡大に努めている。自動運転タクシー構想で「稼げる自動運転高級カー」をうたい文句にすれば、新たなターゲット層にアプローチできるかもしれない。
果たして、マスク氏の頭の中にはどのような構想が組みあがっているのか。10月の発表に要注目だ。
【参考】詳しくは「マスク氏のロボタクシー計画、Uber社長が「根本的欠陥」を指摘」を参照。
■空飛ぶタクシー、結局「パリ五輪」に間に合わず 許可取得に失敗(2024年8月20日付)
大阪・関西万博で商用運航が計画されている空飛ぶクルマ。しかし開発が予定通り進まず、デモフライトなどに縮小する動きが出ている。パリ五輪でも同様のようだ。セーヌ川近辺などを飛行する計画を発表していた独Volocopterとパリ空港公社(ADP)は飛行許可の取得に失敗し、運航が叶わなかったという。
特注商用バーティポートのサンシルレコール飛行場での有人テスト飛行などには成功したものの、その後の計画が予定通り進まなかったようだ。
ただ、Volocopterはヴェルサイユ宮殿敷地内で飛行試験を実施しており、2024年後半にもパリ中心部でeVTOLの飛行を実現させる構えだ。
世界の注目を集める一大イベントでこうした新技術を披露する意義と効果は計り知れない。パリでは残念に終わったようだが、その分大阪・関西万博への期待が高まるとも言える。
万博では、SkyDrive、丸紅×英Vertical Aerospace、ANAホールディングス×米Joby Aviation、日本航空×独Volocopterの4陣営が飛行を計画していたが、SkyDriveと丸紅陣営は商用運航を断念している。
残る2陣営は果たしてどうなるか。客を乗せないまでも、やはり飛行する姿は見たいものだ。
【参考】詳しくは「空飛ぶタクシー、結局「パリ五輪」に間に合わず 許可取得に失敗」を参照。
■中型の自動配送ロボ、「最高時速20キロ」規制は妥当?遅すぎは「渋滞誘発」(2024年8月22日付)
経済産業省所管のWGが中型・中速の自動配送ロボット実用化に向けた検討に着手した。ラストマイル配送の新たな選択肢となるか注目だ。
自動配送ロボットにおいて、これまでは歩道を中心に低速走行する小型ロボットが開発の中心だったが、車道を時速20キロほどで走行可能な中速・中型モデルなどを実用化することで新たな需要を取り込んでいく構えだ。
大量の荷物をより早く届けられる一方、車道を時速何キロでどのように走行すべきか、機体サイズはどのくらいが良いか……など、しっかりとルールを作らなければならない。WGではこうした検討を進めており、2025年1月にも取りまとめを行う方針だ。
今後、新たなモビリティが次々と導入される可能性が考えられるが、こうした未来に向け、カーブサイドの在り方や中速モビリティ専用道路の是非など、道路の在り方もしっかりと考えていかねばならないように感じられる。
【参考】詳しくは「中型の自動配送ロボ、「最高時速20キロ」規制は妥当?遅すぎは「渋滞誘発」」を参照。
■【まとめ】日本版ライドシェアの成果が本格版ライドシェアを左右する?
ホンダ、日産、三菱自の取り組みは今後どこまで発展するのか、要注目だ。日本版ライドシェアは対象エリアの拡大やバージョンアップが進み、効果や課題が浮き彫りとなってきた。同事業の成果は本格版解禁に向けた議論に大きく影響するだけに、今後の動向に注目が集まるところだ。
海外では、米中間の摩擦が依然くすぶっており、新たな規制が自動運転市場に影響する可能性がある。グローバルな展開が期待される領域だけに、こうした動向もしっかりと注視していかなければならない。
9月はどのようなトピックが飛び出すのか、引き続き業界の動きから目が離せない。
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