ライドシェア世界最大手の米Uber TechnologiesのCEO(最高経営責任者)が、米EV(電気自動車)大手テスラの自動運転タクシー計画について、大きな問題があると指摘している。
テスラCEOのイーロン・マスク氏は、テスラ車のオーナーがクルマを使用していない時間に自動運転タクシーとして活用するという構想を2019年に発表している。いまだ実現はしていないテスラの自動運転タクシー事業ではあるが、この構想が現実的ではないとUberのCEOは考えているようだ。
■コスロシャヒCEO、テスラの計画に懐疑的
UberのCEOであるダラ・コスロシャヒ氏は、人気ポッドキャスト番組でマスク氏の自動運転タクシー(ロボタクシー)計画についての意見を述べた。同氏は「テスラ車のオーナーは自分のクルマをロボタクシーとして使用することを望んでいるのか」と疑問を呈している。
日本では高級EVカテゴリーのテスラ車だが、米国では大衆車の部類に入るとも言われている。それでも現在の新車価格は日本円にして1,000万円前後で、自動運転機能が搭載されるとなるとさらに高価格になることは確実だ。
そういったクルマを所有する平均的なテスラオーナーは、見ず知らずの人に自分のクルマに乗ってもらいたいという人は少ないのではないだろうかということだ。また、コスロシャヒ氏の意見には、テスラ車を所有するような富裕層がロボタクシーで副収入を得ようとするのかという疑問も含まれているのかもしれない。
■イーロン・マスク氏のロボタクシー構想
テスラCEOのマスク氏は、2019年にロボタクシー構想を発表している。自動運転機能を搭載したオーナーカーがロボタクシーになるというアイデアだ。
テスラ車のオーナーは、「FSD(Full Self Driving)」を搭載した自動運転車をリース契約して所有し、使用しない時間帯は同社の配車サービスプラットフォーム「TESLA NETWORK(テスラネットワーク)」に登録することでロボタクシーとして無人で稼働させることができるという内容になる。
自家用車の稼働率の低さを逆手に取るようなビジネスアイデアで、車庫に眠っている自家用車を有効活用しつつ、高額になりがちな自動運転車の費用を補填することができる。テスラの試算によると、クルマのオーナーは年間3万ドル(約440万円)の収入を得ることができるとしている。
マスク氏は当初、テスラのロボタクシーについて2024年8月に発表するとX(旧Twitter)で投稿していた。しかし同年7月になり、発表を10月に延期することになったことを認めている。
■そもそも需給バランスが維持できない説
Uberのコスロシャヒ氏は、テスラのロボタクシー計画の他の問題についても指摘している。
テスラのロボタクシーサービスの需要がピークとなる時間帯は、テスラオーナーによる乗車率もピークになるだろうという点についてだ。そうなると、使っていない時間帯の車両をロボタクシーとして有効活用するということがそもそも不可能になる。
なおUberの配車・ライドシェアサービスでは、ラッシュアワーや大規模なイベント時の需要を満たすために、パートタイムドライバーの数を迅速に調整することができるような仕組みになっているという。
またコスロシャヒ氏は、自動車メーカーがハードウェアを構築することと、移動サービスにおいて膨大な数のトランザクションを処理することは、全く異なる種類のビジネスであるとも述べている。さらにロボタクシー利用中の乗客のサービス対応も行う必要がある。こういった部分を、マスク氏は過小評価しているのでは?と指摘しているのだ。
■発言は「テスラへのラブコール」?
ただしコスロシャヒ氏は、UberはEV大手とのコラボレーションも歓迎しているといったようなコメントも残している。すでにロボタクシー事業にも進出しているUberだが、今回のコスロシャヒ氏による発言は、テスラへのラブコールと捉えることもできるかもしれない。
Google系の自動運転開発企業である米Waymoや、中国のEV(電気自動車)大手BYD(比亜迪)と戦略的パートナーシップを結んでいるUberだが、ひょっとするとテスラとの提携も模索しているのかもしれない。
配車・ライドシェア大手のUberと自動車メーカーであり自動運転開発企業でもあるテスラがタッグを組む可能性はあるのか。両社に引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「Googleが「二刀流」!自動運転タクシーでUber Eatsも配達」も参照。