自動運転エンジニアになるには?年収・必要スキル・経験は?転職は可能?

学歴よりも「スキル」が重要?



本格的な実用化フェーズをまもなく迎えそうな自動運転業界。今後商用化が加速し続けることは間違いないが、研究開発はまだまだ終わらない。舞台裏では、さらなる技術向上に向け開発は継続されていく。


開発の主流がルールベースからエンドツーエンドモデルへと移行する中、優秀なエンジニアの重要性はさらに増していくことになりそうだ。

自動運転エンジニアにはどのようなスキル・能力が求められるのか。待遇などとともに解説していく。

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■年収水準は?

年収1千万円超も珍しくない状況に

厚生労働省の調査によると、「自動運転開発エンジニア(自動車)」が属する主な職業分類(厚生労働省編職業分類の「自動車開発技術者」等)の平均年収は712万円だそうだ。

一概には言えないが、AIなど最先端の技術を必要とする自動運転関連のエンジニアに絞れば、その平均年収は上振れする可能性が高い。


自動車開発エンジニアの多くは自動車メーカーに所属しており、基本的に高水準と思われるが、経験に基づく年功序列的な部分も多い。一方、新しいテック分野である自動運転開発は、実力主義的要素が高く、能力が高いエンジニアを求める新興企業も多い。

売り手市場が続いているため、若いうちから高給を望める環境にあると言える。中途採用の求人で、700万~1,000万円超を提示する企業も珍しくない状況だ。

現在、開発フェーズから実用化フェーズへの移行期真っ只中にある。開発はまだまだ続くが、並行して実用化も加速していく時期だ。

自動運転市場が2030年代にかけ右肩上がりで成長し続けることを踏まえれば、エンジニアの待遇面におけるポテンシャルも相当なものと言えるのではないだろうか。


自動運転技術者の平均年収、日本は712万円、米国はインターンに2,000万円

■職務内容は?

自動運転に関わるエンジニアの種類は多種多様だ。「自動運転エンジニア」と一言で言っても、その職務内容の幅は広く、マルチで活躍するエンジニアもいるが、多くは分担制のようなイメージで一領域に特化した開発を担う。AIエンジニアの開発領域が多岐に渡るのと一緒だ。

以下、要素技術を担う代表的な開発領域を紹介する。

センシングエンジニア(環境認識系)

自動運転の基幹技術となるセンシング関連技術も需要が多い。自動運転車は、カメラやLiDARなどのセンサーが取得したデータをリアルタイムで分析し、道路や他の交通参加者など車両周囲の状況を正確に認識することが求められる。

ハードとしてのセンサーそのものの高度化や、さまざまなオブジェクトを検知・識別するパーセプション技術、異なる種類のデータを統合するフュージョン技術、データ圧縮技術など、関連技術は多岐に渡る。

特に、パーセプション技術は最重要技術に位置付けられる。映像に映し出されたものが何なのかを瞬時に判別する技術は、自動運転の根幹をなす要素だ。

夜間や雨天時などでも正確に検知・識別する能力など、課題はまだ多く残されている分野だ。

プランニングエンジニア(判断系)

自動運転車を、現在地から目的地までどのようなルートで走行させるか――といった大まかなプランから、周囲の車両や歩行者の挙動を踏まえた上でどのように車両を走行させれば安全を保てるか――といった瞬時のプラン生成までを担う重要技術だ。

大まかなプランは既存技術で賄えるが、刻々と変わる状況に応じて都度プランを生成する、いわゆる「判断」を司る技術は最重要技術に位置付けられる。

例えば、前方の路肩を走行する自転車の先に路上停車中の車両があった場合、その自転車は車道側に進入してくる可能性が考えられるが、そうした予測をもとに自車両を車線の右寄りに走行したり、隣接車線にルートを変更したり、周囲の状況を考慮して減速してやり過ごしたり……など、複数のプランを提案し、その中から最適と思われるプランを採用する。

なお、判断を行うAI開発は、自動運転システム開発エンジニアなどさまざまな職務の中でも行われている。

コントロールエンジニア(車両制御系)

センサーが取得するリアルタイムデータをもとにプランニングシステムが設定した進路に対し、車両の挙動を正確に制御する技術開発を担う。

要は、コンピュータの指示に従い車両を正確に制御するということだが、その際、白線などのリアルタイムデータや高精度3次元地図のデータなどをもとに自車両の位置を正しく認識し、道路のコンディションなどを踏まえた上で一寸のずれなく車両をコントロールするのは、容易ではない。

雨が降っていたから制動距離が伸びましたでは済まされない。その時々のコンディションなども含め、正確にコントロールする技術が求められるのだ。

ネットワークエンジニア(通信系)

自動運転車は、クラウドやインフラなどと常時情報をやり取りしながら走行するのが一般的だ。また、ECUによって車両のほぼすべてがコンピュータ化されているため、通信システム全般を通じたネットワーク環境の整備や、効率的にデータをやり取りする技術などが求められる。

サイバーセキュリティに関する脅威も年々高まっており、こうした観点で保守・セキュリティ強化を図っていく必要もありそうだ。

シミュレーションエンジニア

自動運転システムの精度は、公道実証時間に比例すると言っても間違いではないほど、走行データ・経験値が必要となる。道路上の環境は刻一刻と変化するため、同じ場所を同じ時間帯に走行しても、異なるデータを収集できる。

しかし、現実世界を走行するには膨大なコストが発生し、時間的・台数面の制約もある。湯水のごとく資金を活用し、膨大なフリートで実証できるのは一部の企業に限られる。

そこで、シミュレーション技術を活用し、仮想環境で実証を積み重ねるのだ。道路環境やセンサー能力などを忠実に再現できれば、それだけ実世界同様の経験値を高めることができる。道路工事や落下物、動物の飛び出しなど、レアケースの経験を高めることにも活用できる。

この仮想環境とリアル環境でフィードバックし合うことで、実証を大きく加速させることができる。

LLM系エンジニア

エンドツーエンド(E2E)モデルの開発が主流になり始め、大規模言語モデルを活用した開発が求められるケースも多くなってきたようだ。

画像・動画と言語理解を結びつけるマルチモーダル技術が重要性を増しており、最先端AI技術で新たな道を切り拓いていく場面が今後どんどん増えそうだ。

■応募条件

学歴

中途採用で学歴が求められるケースは少なく、何よりも関連業務における経験・実績が重視される。新卒の場合も、学歴よりも研究実績が問われることが多いように思われる。

どれほど優秀な学歴を誇っていても、プログラミング能力ゼロでは役に立たない。開発速度が重視される業界では、即戦略となり得るかどうかが問われるのだ。

PythonやC++といったプログラミング言語を扱えるかどうか、さらには、マシンラーニングなどAI関連の研究論文実績が問われることが多いようだ。

現状、学歴は必要ないものの、中途・新卒問わず完全な未経験者は用無し……といったところか。

業界経験

自動運転業界での実績があるにこしたことはないが、国内ではまだまだ狭い業界であり、同業からの転職などは非常に少ないものと思われる。

そのため、重視されるのは業界経験ではなく、要素技術に関する経験だ。異業種であれ、機械学習システムの開発や画像処理、軌跡予測技術、ロボティクスなどの専門知識を持ったエンジニアは、即戦力となる。

多くの場合、Python やC++による実務レベルの経験が求められるようだ。

年齢

中途採用において、年齢が問われるケースは非常に少ない。重ね重ねになるが、重視されるのは経験であり、生きた技術だ。若くとも、高度な技術・知見を有していれば歓迎される。逆に、社会経験は豊富であってもエンジニアとしての実績が乏しければ声はかからない。

英語力

自動運転エンジニアには、英語力も重視されることが多い。プログラミング言語が英語ベースである点が大きいが、先行する海外企業の動向や論文など最新情報を得る上でも英語力が求められる場面は多い。

また、グローバルに人材登用を進めている企業であれば、やはり英語が共通言語となる。昨今、翻訳ソフトなどの完成度も非常に高まっているが、さまざまなケースに迅速に対応するためには英語力は必須……ということだろうか。

■応募企業の例

ティアフォーは学生向けワークショップを開催

ティアフォーの場合、大学生・新卒向けには学生向け Autowareワークショップの開催や学生データエンジニアの募集などを行い、接点を広げながら自社の開発に興味関心を持ってもらえるよう取り組んでいるようだ。

ワークショップでは、Autowareの基礎講座をはじめ、Autowareを活用したワークと成果発表、自動運転車両の試乗体験などを行っている。

キャリア向けには、Autoware & AI Engineeringにおいて、ソフトウェアやセンシング、パーセプション、プランニング&コントロール、シニアマシンラーニング、データサイエンティストなど、各専門分野に分けて募集している。

プランニング&コントロールでは、多様な環境下で自動運転が可能な機能の設計や、開発した機能の実車両へのインテグレーション、シミュレーション評価基盤の改善などを担う。

自動運転・ロボティクス分野に関わる修士号、またはソフトウェア開発における3年以上の実務経験、Linux上での開発経験、C++・Python・Rustいずれかの言語における3年以上の開発経験などが必須とされる。想定月収は約48万〜116万円となっている。

▼ティアフォーの求人はこちら
https://tier4.co.jp/careers

ティアフォーやりすぎ?赤字40億なのに平均年収1098万 自動運転で上場

プリンシパルエンジニアは年収2,000万円も可能

Turingの場合、大学生向けにインターンエンジニアを募集している。ML・ソフトウェア・組み込み・インフラエンジニアなどの業務に携わる。専門知識を条件とせず、自社理念への共感ややる気を重視しているようだ。

新卒求人としては、E2Eやフィジカル基盤モデルを開発するMLエンジニアと、自動運転システムの開発を手掛けるソフトウェアエンジニアを募集している。

キャリア対象の求人は、MLエンジニアや、MLシステムや大規模学習基盤などを開発するソフトウェアエンジニア、SoC最適化や自動運転システム開発を手掛けるソフトウェアエンジニア、GPUクラスタの開発を担うインフラエンジニアなどがある。

エンジニア職は、新卒でも想定年収600万円からで、プリンシパルエンジニアは1,500万~2,000万円となっている。

▼Turingの求人はこちら
https://herp.careers/v1/turing

【参考】関連記事としては「新卒に「破格の年収2000万」!?東京の自動運転ベンチャー」も参照。

新卒に「破格の年収2000万」!?東京の自動運転ベンチャー

先進モビリティも各種エンジニアを募集中

先進モビリティは、車両制御系ソフトウェア、認識系ソフトウェア、通信ネットワーク系、機械系、電機・電子系に分類し、求人を行っている。

車両制御系ソフトウェアでは、新機能の設計や実装、運用および各種ドキュメント作成など、認識系ソフトウェアでは、センシングのシステム設計・周辺環境認識アプリケーション・アルゴリズム開発などを手掛ける。

給与は年収500万~900万円に設定されている。

▼先進モビリティの求人はこちら
https://www.as-mobi.com/recruit/job-description/

■【まとめ】自動運転エンジニアの価値は高まっていく

自動運転エンジニアは、即戦力が求められることが多いため引き続きキャリア組が中心となりそうだが、新卒採用も熱が入っている。既成概念にとらわれない研究を進めるには、ポテンシャルが未知数の新しい風も必要だ。

今後間違いなく価値が高まっていく自動運転エンジニア。関心のある方は、専門スキルを武器にぜひ挑戦してほしい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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