
国内自動運転開発シーンをリードするティアフォーの平均年収が、1,098万円に達することが明らかとなった。
一方、第10期決算(決算年月2025年9月)を見ると、当期純損失は連結ベースで約48億円、単体で約41億円に上り、赤字を抜け出していないことがわかる。既上場企業であれば、その影響が賃金に反映されてもおかしくない。
しかし、将来技術を開発するスタートアップにとって人材は宝だ。ティアフォーは「人材が重要な経営資源であり、優秀な人材の獲得が企業価値向上に不可欠」として、待遇に関して妥協する気はないようだ。
東証グロースへの上場が目前に迫ったティアフォー。人材確保の観点を中心に、同社の最新動向に迫る。
【参考】関連記事としては「自動運転業界のスタートアップ・ベンチャー企業一覧(国別)」も参照。
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■ティアフォーにおける人材確保の状況
ティアフォー単体の当期純損失は約41億円、人件費率は75%に
ティアフォーは2026年6月、自社株式の東京証券取引所グロース市場への新規上場が東京証券取引所から承認されたと発表した。上場日は2026年7月22日を予定している。関係者はもとより、長く自動運転界隈を見つめてきた者にとっても感慨はひとしおだ。
有価証券報告書によると、連結経営指標における第10期(決算年月2025年9月)決算は、売上高が前期比65.6%増となる約64億円と大きく数字を伸ばした一方、親会社株主に帰属する当期純損失は前期とほぼ同額の約48億円に達した。
提出会社の経営指標、つまりティアフォー単体では、売上高約59億円で、当期純損失は約41億円となっている。2026年5月末時点の従業員数は、ティアフォー単体で404人、平均年齢37.7歳、平均勤続年数3.17年、そして平均年間給与は1,098万2千円となっている。

平均勤続年数の割に平均年齢は高めで、即戦力となる中途採用に力を入れている様子が見て取れる。単純計算だが、404人×1,098万2千円=44億円となる。売上高(59億円)の実に約75%を人件費に割いているのだ。
人材に関しては、研究開発を遂行するため、多様な開発領域において高度な専門性と能力を備えた人材を国内外から継続的に雇用しており、2026年4月時点で社内に307人のエンジニアが在籍している。
「Autoware(オートウェア)」への社外貢献者(自社及びパートナー企業に属さないエンジニアを含むGitHubにおけるコード・コントリビューター数)を合計すると、実に716人のエンジニアが従事しているという。
グループが掲げる「自動運転の民主化」をはじめ、複数の事業領域・車種における社会実装を達成・推進するためには、引き続き優秀な人材の確保は重要な課題としており、リファラル採用の推奨や採用エージェントの活用などに加え、産学官連携を進め業界におけるグループの認知向上に努めることで継続的に人材を確保する方針としている。
また、新卒採用を強化し社員の育成にも重点を置いており、2025年9月期には採用競争力を高めることに加え、優秀な人材の流出を防ぐことを目的とし、人事制度の刷新を実施したとしている。
2026年6月には、令和8年度(令和8年10月~令和9年9月までの事業年度)における給与総額を対前年度増加率1.5%以上とする賃金引上げ計画も発表している。

人材確保が重要なフェーズ
赤字であるにもかかわらず、人材への投資を惜しまない姿勢は、ディープテックベンチャー共通のものと言える。Waymoなどの米国勢はその最たる例だろう。Waymoもいまだに赤字事業が続いているが、エンジニアの待遇は数千万円から上は1億円超となっている。世界トップ企業は人材確保に一切の妥協を許さないのだ。
創業間もないスタートアップでは、人件費率が100%を超えることも珍しくない。むしろ当然だ。売り上げの目途が立たなくとも、優秀な人材を確保する点を妥協していては、最先端分野で勝ち抜くことはできない。
特に、優秀なAIエンジニアは大企業をはじめ引く手あまただ。自社のビジョンに共感してもらうことが肝要ではあるものの、惹きつけるためにはやはり待遇面をしっかりと整えなければならない。
上場に伴い、人件費率は徐々に低下していくものと思われるが、開発フェーズはまだまだ続く。ティアフォーは黒字化までのロードマップを明確にし、それを意識した経営が求められることになりそうだが、従業員としても改めて目的・目標を共有する良い機会となる。
やみくもに開発を続けるフェーズは終わり、ビジネスを明確に見据えた開発体制にシフトしていくことで、自身の仕事がどのようにビジネスに昇華され、どのようなリターンとして自社に返ってくるのか――をより強く意識するようになる。
スタートアップから上場企業への転身を体験する機会はそうそうない。ティアフォーとしても、自社の挑戦が実を結んでいく過程をともに喜ぶことができる心強い仲間を求めていることだろう。
■ティアフォーの概要
Autowareを軸にビジネスを展開
ティアフォーは2015年12月、創業者の加藤真平氏らが名古屋大学で開発した自動運転ソフトウェア「Autoware」(オートウェア)のさらなる開発や普及を目的に設立された。
Autowareは自動運転システムの開発・運用に必要な機能群を備えたオープンソース型の自動運転ソフトウェアプラットフォームで、特定の事業者に依存しない中立的な形で広く公開されている。「自動運転の民主化」というビジョンのもと、安全な自動運転技術に資するあらゆるテクノロジーを開放し、さまざまな組織・個人がその発展に貢献できる開放的なエコシステムの構築を目指している。
関連会社には、TierIV North America、Human Dataware Lab.、マップフォー、eve autonomy、AI教習所、SOMPOホールディングスが名を連ねている。
Autowareは全コードと更新履歴が公開されているため、利用者自身が技術の内容や動作を確認・評価することを可能にしている。これにより、ユーザーは特定ベンダーへの過度な依存を避け、導入や運用に関する選択の自由を保持できるという。
また、オープンソース型ならではの協調開発により、従来のクローズドなソフトウェア開発と比較してソフトウェアの開発効率を高めることができる。
このような柔軟性及び拡張性を基盤に、Autowareに自社技術を組み合わせることで多様な車種・用途への展開を可能とし、特定用途に特化した企業と比較して汎用性の高い技術基盤を提供している。
Autoware自体は無償利用可能なソフトウェアだが、そのままでは商用車両への実装や量産フェーズにおいて求められる水準を達成することは難しく、商用利用には一定の技術的補完が必要とされる。
特に、機能安全や品質保証、実運用環境への適応など、個別の顧客ニーズに応じた高度な設計と実装が不可欠となるが、ここにティアフォーの収益創出の一端がある。商用利用を見据えたソフトウェア及びハードウェア構成から成る「リファレンスデザイン」だ。
共通の要素技術群を基盤に、用途や車種が異なる複数の事業領域に対し効率的かつ柔軟に自動運転レベル4対応の自動運転車両を開発・展開することを可能とする設計思想のもと、自動車OEMや特殊用途車両のメーカーなど顧客ごとの車両タイプや運用環境、要件に応じて最適な技術構成を設計・提供していく。
リファレンスデザインの提供と個別要件に応じたラストワンマイルにおける技術支援・開発業務を通じて収益を獲得する仕組みで、Autowareによる自動運転車両が量産フェーズに移行した場合には、ライセンスモデルやロイヤルティモデルを適用することで、販売台数などに応じ継続的な収益を得る仕組みを構築しているという。
事業は、以下の3つのサービスに大別できる。
- ①Mobility Service
- ②Development Service
- ③Solution Service

①は初期導入段階における実証・実装からその後の運用支援までを担うもので、②は自動運転市場の拡大局面において自動車OEMなどが自動運転対応車両の量産を行うことに向けた自動運転システムの開発を担う。
③はこれら両事業の下支えとなる基盤的役割として、グループやAutowareのエコシステム拡大を支援する位置付けとなる。
現在実用化が進展する自動運転バスは①に相当し、eve autoによる工場などでの無人搬送サービスは②に相当する。
2025年9月期におけるグループの売上高及び構成比は①22億6,700万円(35.4%)②13億3,000万円(20.8%)③28億1,200万円(43.9%)となっている。今後、各事業がどのように進展していくのか、要注目だ。

【参考】関連記事「ティアフォーの自動運転/Autoware戦略」も参照。
■【まとめ】今後のビジネス展開に注目
ティアフォーの自動運転バスはすでにレベル4サービスとして実用化済みで、eve autonomyによる無人搬送サービスも商用展開されている。自動運転タクシーやトラックの開発も順調に進んでいるものと思われる。
株式上場とともに、拡大局面においてどのようにビジネスを加速していくのか。国内自動運転業界をけん引してきたティアフォーが真価を発揮する日は、そう遠くないのかもしれない。
【参考】関連記事としては「自動運転OS開発のティアフォー、売上2.5倍に!「赤字37億円」はどこまで改善?」も参照。













