
スキンケア大手の「ロート製薬」が、自動運転トラックで自社製品を運ぶ取り組みを始めた。自動運転トラック開発のT2(ティーツー)と組み、ロート製薬のスキンケア関連製品等を対象とした輸送実証を、2026年6月29日に関西から関東間の高速道路の一部区間で開始したのである。
実証区間は、大阪府茨木市の関西物流拠点から神奈川県相模原市の関東物流拠点までの約490km。現在はドライバーが同乗し、必要に応じて運転を代われる自動運転レベル2の段階で行う。荷主であるメーカー自らが自動運転物流に踏み込む、その先にレベル4採用を見据えた動きだ。
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■ロート製薬、T2の自動運転トラックで関西〜関東間の輸送実証を開始
ロート製薬とT2は2026年6月29日、ロート製薬のスキンケア関連製品等を対象とした自動運転トラックによる輸送実証を、関西から関東間の高速道路の一部区間で開始した。実証区間は、関西物流拠点である大阪府茨木市から、関東物流拠点である神奈川県相模原市までの約490kmを往復運行する。このうち名神高速道路の茨木インターチェンジから東名高速道路の綾瀬スマートインターチェンジまでの約450kmで、自動運転レベル2による走行を行う。自動運転レベル2は、ドライバーの監視のもとで行う特定条件下の高機能自動運転を指し、安全確保が必要な状況ではドライバーが運転を引き継ぐ。実証は6月29日から12月まで計4回実施される。
両社の役割は分かれている。ロート製薬は拠点や運行ルートの選定と実証貨物の手配を担い、T2は自動運転トラックの提供と走行データの収集分析、技術検証を担当する。検証するのは、自動運転を組み込んだ運行オペレーションと、走行ルートおよびリードタイムの有効性である。
荷主自らが自動運転トラックの実証に動いた意味は大きい。物流の2024年問題でドライバー不足が深刻化するなか、運び手任せにせず荷主が運び方を設計する。この当事者意識が自動運転物流を前へ進めると言える。
【参考】関連記事としては「自動運転トラックとは?開発企業は?【実用化時期・メリットも解説】」も参照。
■T2の自動運転トラック開発状況
T2は、AI開発を手がけるPreferred Networks(プリファードネットワークス)の技術提供のもと、大手商社の三井物産が2022年に設立した自動運転トラック開発企業である。高速道路を中心に自動運転レベル4の輸送網を構築することを目標に掲げてきた。
技術開発も着実に進む。T2は2026年3月、関東から関西を結ぶ約500kmの高速道路本線を、ドライバーによる一時的なハンドル操作を一度も発生させずに完走することに国内で初めて成功した。さらに6月15日には、車線の幅が狭く本線より高い制御精度が求められる高速道路の料金所を、自動運転のまま通行する実証にも国内で初めて成功している。綾瀬スマートインターチェンジや神戸西インターチェンジの近くには、高速道路の無人運転と一般道の有人運転を切り替える拠点トランスゲートも設置済みだ。本線、料金所、切替拠点という要素を一つずつ実装し、拠点間を自動運転のまま結ぶ輸送ネットワークの構築を進めている。
■国内外で広がる自動運転トラックによる幹線輸送
ロート製薬の実証は、自動運転トラックの輸送が国内外で着実に広がる流れの中にある。海外では2026年4月29日、米国の自動運転トラック開発企業Bot Auto(ボットオート)が、テキサス州ヒューストンからダラス近郊までの約370kmを、安全員も車内同乗者も遠隔操作員も置かない完全無人で走り切り、有料の商業貨物を予定どおり納品した。テスト走行ではなく実際の顧客注文に応じた商業輸送での完全無人長距離輸送は米国初とされる。完全無人化が現実の選択肢になりつつあることを示す事例だ。
国内でも荷主主導の動きは始まっている。2026年4月には、住友化学グループと住化ロジスティクス、T2の3社が、化学業界で国内初となる自動運転トラックによる商用輸送を開始した。千葉県袖ケ浦市から大阪府の中継拠点まで約520kmを定期輸送するもので、2025年7月から2026年3月にかけて計5回の実証を重ね、品質と安全性を確認したうえで商用化に踏み切っている。T2の実証先には飲料や日用品など多様な業界の荷主が名を連ねており、自動運転トラックへの関心は物流業界の枠を超えて広がっている。今回のロート製薬の実証も、こうした荷主の裾野拡大の一例である。
【参考】関連記事としては「【国内初】化学業界で自動運転トラック開始!定期輸送は約520kmも」も参照。
【参考】関連記事としては「自動運転トラック、ついに無人で長距離輸送230マイルを走り切る」も参照。
■2027年度以降のレベル4本格採用という次の一手
今回の実証はレベル2だが、ロート製薬が見据えているのはその先である。ロート製薬は実証の結果を踏まえて、T2が2027年度以降の開始を目指す自動運転レベル4の幹線輸送サービスの利用を本格的に検討する。自動運転レベル4は、特定の走行環境条件を満たす限定された領域で、自動運行装置が運転操作の全部を代替し、ドライバーの乗車を必要としない無人運行を可能にする状態を指す。
レベル2の実証は、その無人運行への助走と位置づけられる。荷主が拠点やルート, リードタイムの有効性をいまのうちに確かめておくことで、レベル4が実現した際にスムーズに移行できる。日本では物流の2024年問題を背景に、自家用車よりもトラックの方が先にレベル4を実現する可能性も指摘されており、政府もレベル4の自動運転ができるバスやタクシー、トラックを2030年度に1万台へ増やす目標を掲げている。ロート製薬とT2の実証は、こうした国全体の流れと足並みをそろえる動きと言える。
【参考】関連記事としては「自動運転バスの実用化状況・車種・価格は?【導入コストのデータ付】」も参照。
■自動運転トラックが結ぶ「関西〜関東間」物流の未来
ロート製薬とT2による関西から関東間の輸送実証は、自動運転トラックが日常の物流に組み込まれていく過程を象徴している。約490kmの幹線をスキンケア関連製品という身近な商品が自動運転トラックで運ばれ、技術の実証段階から製品を安定供給するための現実的な選択肢へと位置づけが変わりつつある。米国の完全無人輸送、国内の化学品商用輸送と並べてみれば、その変化は一社の取り組みにとどまらない潮流であることが分かる。
運送会社ではなく荷主であるメーカーが主体的に動いた点に、この実証の意味がある。ドライバー不足という構造的な課題を前に、荷主が自ら運び方を設計し直す。その先に2027年度以降のレベル4による無人の幹線輸送が控える。関西から関東間という日本の大動脈で積み重ねられる実証が、自動運転トラックを軸とした次世代物流の土台を形づくっていく。













