【国内初】化学業界で自動運転トラック開始!定期輸送は約520kmも

自動化と脱炭素を同時に追求した新しいサプライチェーンモデルに



出典:T2プレスリリース

2026年4月6日、国内の化学業界で初めて自動運転トラックによる化学品の商用輸送が始まった。住友化学、住化ロジスティクス、T2(ティーツー)の3社が手を組み、千葉県袖ケ浦市の物流拠点から大阪府の中継拠点まで約520kmの区間でプラスチック原料の合成樹脂を定期輸送する体制を整えた。

2025年7月から2026年3月にかけて計5回の実証を積み重ね、品質・安全性が既存の運行と同等であることを確認してから商用化に踏み切った手堅い展開だ。さらにCO2排出を実質ゼロにできるリニューアブルディーゼルも採用しており、自動化と脱炭素を同時に追求する新しいサプライチェーンのモデルケースとして業界の注目を集めている。


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化学業界で国内初、自動運転トラックによる商用輸送が始まった

「化学業界における国内初」という肩書きは、今回の取り組みの意義を象徴している。基礎化学品から高機能材料まで幅広い素材を製造・輸送する化学産業は、トラック輸送への依存度が非常に高い。同時に、ドライバー不足の影響を直接受けやすい構造にある。「2024年問題」によってドライバーの時間外労働に上限規制が適用されて以来、長距離輸送を担う人材の確保は製造業のサプライチェーン全体を揺るがす課題となっている。

そのなかで住友化学グループ、住化ロジスティクス、T2(ティーツー)の3社が化学品の幹線輸送に自動運転技術を本格適用したことは、単なるIT化や効率化の話に留まらない。工場から原料が届かなければ製品が作れないという製造業の根幹を、自動運転で守ろうという試みだ。

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3社の役割とは

住友化学は東京都中央区に本社を置く大手総合化学メーカーで、石油化学から機能材料・農業化学まで幅広い事業を展開する。今回輸送対象となる合成樹脂は、プラスチック製品の原料として製造業の幅広いサプライチェーンを支える基礎化学品だ。

住化ロジスティクスは住友化学グループの物流子会社で、住友化学が製造する化学品の輸送・保管を一手に担う。今回の商用化では住友化学側の物流オペレーションを統括する役割を果たしている。

T2は三井物産が中心となり2022年8月に設立した自動運転スタートアップだ。AIソフトウェア開発のPreferred Networks(PFN)の技術提供を受けており、住友商事・ソフトバンクなどが株主に名を連ねる。累計資本金は140億円超(資本剰余金含む)で、2025年時点で従業員224名。LiDAR・カメラ・レーダーのセンサー情報をAIモデルで統合した自動運転システムを自社開発し、運送事業者としても一般貨物自動車運送事業の許可を取得して実際に運行オペレーションを担う点が特徴だ。


実証から商用へ、5回の積み上げが商用化の根拠

3社は2025年7月から2026年3月にかけて計5回、住友化学グループが生産する複数の化学品を対象に幹線輸送の実証実験を実施してきた。

関東・関西間の高速道路一部区間での繰り返しの運行を通じ、T2の自動運転トラックが既存の有人運行と同等の輸送品質・安全性を確保できることを確認した上で商用化に踏み切っている。実証を積み重ねてから本番に移行する段階的なアプローチは、特に安全性への要求が高い化学品輸送において重要な意味を持つ。

出典:住友化学株式会社ニュース

約520kmの定期輸送、その距離と難易度

商用輸送の区間は千葉県袖ケ浦市の住友化学グループ物流拠点から、大阪府の中継拠点までの約520km。このうちレベル2自動運転(ドライバー監視下での高機能自動運転)での走行区間は、東名高速・綾瀬スマートIC(神奈川県)から京滋バイパス・久御山JCT(京都府)までの約420kmだ。

約420kmという自動運転走行距離は、単純に長いだけではない。料金所や安全確保が必要な状況ではドライバーが一時的に運転操作を引き継ぐ設計になっており、自動運転区間と手動区間のシームレスな切り替えを実運行の中で安定させる必要がある。さらにトラックは乗用車と違い、荷物の積載量によって重量や重心が変わるため、その都度異なる車両特性に対応した制御技術が求められる。化学品という輸送物の特性上、急ブレーキや不安定な走行は許容されない。

レベル2からレベル4へ

今回の商用運行は自動運転レベル2での運用だ。レベル2は「ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での高機能自動運転」であり、ドライバーが乗車していることが前提となる。しかしT2はこれをゴールとは位置付けていない。

3社は今後、T2が2027年度に実現を目指すレベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス開始に向けて連携を継続するとしている。自動運転レベル4とは「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」を指す。つまりドライバー不在での自律走行だ。T2はすでにレベル2自動運転トラックとして国内最長となる神奈川県綾瀬市から兵庫県神戸市までの約500kmの高速道路区間走破実証にも成功しており、今回の商用化はレベル4への足がかりとして明確に位置付けられている。

3月には「関東・関西500km完走」の国内初実績も

今回の商用化発表の直前となる2026年3月には、T2の自動運転トラックが関東・関西間500kmの高速本線をレベル2で完走する国内初の実績を上げており、商用化のタイミングと重なる形でT2への信頼性が可視化された格好だ。実証・完走・商用化という段階的な信頼の積み上げは、荷主となる製造業の調達・物流担当者が実用性を判断する上での重要な根拠になっている。

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廃食油が燃料に、リニューアブルディーゼルが物流を変える

今回の取り組みで特に注目したいのが、自動化と同時に脱炭素を組み込んでいる点だ。商用輸送には「リニューアブルディーゼル(RD)」を採用している。RDとは、廃食油や廃動植物油脂などを原料として製造される次世代型バイオ燃料で、CO2排出量を実質100%削減できる軽油代替燃料だ。

「ドロップイン燃料」という革命、車両改造が要らない

リニューアブルディーゼル(RD)の最大の特長は「ドロップイン燃料」であることだ。既存のディーゼル車両や給油施設をそのまま使えるため、EV化のような大規模な設備投資や車両入れ替えが不要になる。LCA(ライフサイクルアセスメント)ベースでのCO2削減率は軽油比で最大90%とされており、温対法・省エネ法上のCO2排出量算定においても化石燃料と異なる扱いを受けるため、実質100%削減というカウントが成立する。

課題はコストだ。現在のRDは軽油の3〜5倍程度の価格とされており、大量導入にはコスト面のハードルがある。ただし欧米では伊藤忠商事が調達代理を務めるフィンランドのNeste社(世界最大級のRDメーカー)を中心に普及が進んでおり、日本国内でも西武バスやファミリーマートなどが先行採用している。今後、国内流通量が増えれば価格低下も期待できる。

自動化×脱炭素の「ダブル効果」が荷主の訴求点になる

住友化学グループがRDの採用に踏み切った背景には、製造業全体のサステナビリティ戦略がある。化学メーカーにとって輸送に伴うCO2(いわゆるScope3排出)の削減は、自社工場の脱炭素化と並ぶ重要課題だ。自動運転による省人化と、RDによるCO2実質ゼロを一つのオペレーションで同時に実現する構造は、荷主として化学業界の横展開を引き寄せる説得力を持っている。

他業界での先行事例

「化学業界で国内初」という表現が示す通り、自動運転トラックによる商用輸送はすでに他業界で先行事例がある。T2は今回の住友化学との取り組み以前にも、佐川急便・セイノーホールディングスとの東京・大阪間実証(2024年10月〜2025年6月)、日本郵便・西濃運輸との実証(2025年1〜3月)を実施してきた。

日本酒、飲料、日用品…業種を超えて広がる実証

2025年7月以降には、鈴与・T2・月桂冠の3社が京都の酒蔵から神奈川の物流拠点まで日本酒の幹線輸送実証を開始した。荷物の性質として振動管理が必要な日本酒は、自動運転の走行安定性を検証する上で意義のある対象だ。また、アサヒ・キリン・サッポロ・サントリーといった飲料大手もT2との実証リストに名を連ねており、食品・飲料分野でも自動運転幹線輸送の採用検討が進んでいる状況だ。

ユニ・チャームとキューソー流通システムもT2とペット商品の幹線輸送実証を実施済みだ。日用品・消費財も人手不足の影響を大きく受けるカテゴリーであり、自動運転への関心は高い。化学業界での今回の商用化がひとつの先例となれば、製造業サプライチェーン全体への波及が加速する可能性がある。

【参考】関連記事としては「自動運転トラック、国交省が「予算40倍」を決断」も参照。

自動運転トラック、国交省が「予算40倍」を決断

T2が「荷主リスト」の厚さで示すエコシステム

T2の会社資料では住友化学のほかに東レ、TOTO、LION、日本通運、JR貨物など多業種にわたる企業名が実証・検討先として挙がっている。素材メーカー・消費財・インフラ系物流と幅広い業界が並ぶことは、特定業種に閉じたソリューションではなく「幹線輸送全体の自動化インフラ」を目指すT2の立ち位置を示している。

2027年度レベル4へ、次の「国内初」は完全無人輸送か

今回の商用化はレベル2、つまりドライバーが乗車した状態での自動化だ。それでも「化学業界国内初の商用化」という実績は、2027年度に予定するレベル4(完全無人)輸送の実現に向けた信頼資産として機能する。実際の荷物を積んで定期ルートを繰り返し走ることで蓄積されるデータは、自動運転アルゴリズムの精度向上に直結する。

政府も2026年度以降の自動走行技術を用いた幹線輸送の社会実装を目標として明記しており、制度面でのサポートも整いつつある。国土交通省は高速道路での自動運転車優先レーンの設定実証も進めており、インフラ整備の方向性も明確だ。

化学業界での商用化は、製造業の物流が本格的に自動化時代へと踏み出す転換点として記憶されることになりそうだ。「原料が届くのが当たり前」という製造業の前提を自動運転で守ろうとする動きは、今後、食品・医薬品・電子部品など他の製造業にも広がっていく可能性が高い。リニューアブルディーゼルとの組み合わせという「脱炭素×自動化」のパッケージが産業物流の標準モデルになる日は、思ったより早いかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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