国土交通省が令和8年度予算概算要求の概要を発表した。自動運転関連では、自動運転トラックによる幹線輸送実証に前年度予算の約40倍を要求するなど、メリハリを効かせた内容となっている。
自動運転をはじめモビリティ関係はどのような施策が予定されているのか。同省物流・自動車局の概算要求の中身を紹介していこう。
▼令和7年度 予算概算要求概要(物流・自動車局関係 )|国土交通省物流・自動車局
https://www.mlit.go.jp/page/content/001760284.pdf
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■国土交通省物流・自動車局の概算要求
次期総合物流施策大綱の策定を見据えた物流革新を加速
国土交通省物流・自動車局は、一般会計45億円(令和7年度当初予算比3倍)、自動車安全特別会計717億円(同1.1倍)の計762億円を要求した。

施策の柱には、以下を据えている。
- ①次期「総合物流施策大綱」の策定を見据えた物流革新の集中改革の推進
- ②脱炭素社会の実現に向けた自動車分野のGXの推進
- ③自動車分野のDXや技術開発、人材確保等による事業基盤強化等の推進
- ④自動車事故被害者救済、事故防止・安全対策の推進等
①では、2030年度までの「集中改革期間」における物流革新の実現に向け、次期「総合物流施策大綱」の策定を見据えて物流の効率化や商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容などを柱とする抜本的・総合的な施策を強力に推進する。要求額は51億6,100万円(前年度予算比2.07倍)だ。
②では、トラック・バスなどの商用車の電動化技術、水素や合成燃料をはじめとするカーボンニュートラル燃料の実用化へ向けた開発促進を強化するとともに、再エネ導入とグリーン電力について、自動車分野における活用を推進する。要求額は6億6,700万円(同1.18倍)だ。
③では、交通事故低減や地域の足の確保などに資する自動運転実現に向けた環境整備を進めるとともに、デジタル技術の活用による生産性向上や人材確保などを通じて自動車運送事業や自動車整備業の基盤強化を図るほか、行政手続のさらなるデジタル化を推進する。要求額は77億5,400万円(同1.96倍)だ。
④では、自動車事故により障害を負った被害者やその家族・遺族向けの支援体制を整備するなど、被害者救済対策のさらなる充実を図る。また、自動車アセスメント事業などにより、先進的な安全技術の普及を促進し、事故防止・安全対策を推進していく。要求額は158億6,600万円(同1.18倍)となっている。
以下、各柱の内容を紹介していく。
■次期「総合物流施策大綱」の策定を見据えた物流革新の集中改革の推進
物流革新に向け前進
陸・海・空のあらゆる輸送モードを総動員した新モーダルシフトや、全国各地の幹線輸送と地域配送の結節点となる基幹的な物流拠点の整備などを通じて、日本全体の物流ネットワークの再構築を推進する(5億円要望)。

ラストマイル配送関連(1億7,500万円要望)では、物流の小口・多頻度化や人口減少・少子高齢化の進行を踏まえ、都市部・地方部を問わず宅配便ドライバーの負担の軽減を図り、ラストマイル配送の持続可能な提供を確保する。具体的には、物流負荷軽減に向けた受取拠点の整備や貨客混載・共同配送の推進、ドローンの活用などを図る先進的取組を支援する。

自動運転トラック関連は前年比40倍の予算を要望
自動運転トラック関連では、前年度比約40倍となる3億2,700万円を予算化し、2026年度以降のレベル4社会実装に向け、自動運転の1対多運行の実現やセミトレーラ、ダブル連結トラックでの自動運転の開発・導入などを進める事業者の取り組みを支援する。

対象事業としては、物流拠点間の幹線道路における自動運転トラックによるピストン輸送や、自動運転トラックの活用に資する物流拠点の整備・最適化などをイメージしている。
補助対象は、自動運転トラックの車両購入費や部品費、架装費をはじめ、自動運転トラックに対応した駐車スペース、トラックバースなどの造成・舗装費用、自動運転トラックの1対多運行に向けた運行システム等の開発・構築費用、自動運転トラックの社会実装に向けた初年度の運行経費などを予定しており、広く活用できるようだ。
商慣行の見直しも進めていく。物流の2024年問題を契機に進められてきた物流効率化とトラック運送事業者の取引環境の適正化に加え、トラックドライバーの適切な賃金確保とトラック運送業界の質の向上に資する施策を講じ、持続的かつ健全な発展を図っていく。
荷主・消費者の行動変容関連では、改正物流法の全面施行を見据えた物流統括管理者間の連携や、デジタル技術を活用した荷主・物流事業者間の協働・協調を促すとともに、再配達削減に向け消費者が置き配などの多様な受取方法を積極的に選択するための環境整備を推進する。
■脱炭素社会の実現に向けた自動車分野のGXの推進
商用電動車の導入を促進
商用電動車のバッテリー再利用や再生可能エネルギー電力の蓄電・余剰電力の活用などにより、コストやバッテリー性能といった懸念点を払拭し、商用電動車の導入を促進する。
商用電動車の導入ガイドラインの策定や電動車の性能などの公表制度創設に向けた調査を行うとともに、トラック・バス・タクシーなどの運送事業者、地方公共団体、再生可能エネルギー発電事業者などの連携のもと、電気自動車や再生可能エネルギー、蓄電池を組み合わせたモデルの実証事業を実施する。

■自動車分野のDXや技術開発、人材確保等による事業基盤強化等の推進
自動運転車の安全水準明確化に向けた調査を実施
自動運転車の社会実装に向け、三位一体の総合的な安全対策のあり方や国際的な議論・動向などを踏まえ、自動運転レベル4車両としての責任範囲と判断のあり方の両面から、社会が受け入れられる自動運転車の安全水準を明確化するため調査検討を行う。
三位一体の安全対策は、自動運転車による安全確保と路車協調インフラなど走行環境から得られる安全対策、交通参加者の理解促進からなる。これらの総合的安全対策を踏まえた自動運転の安全確保に関するガイドラインなどの改訂を進めていく方針としている。

自動車の技術・基準の国際標準化関連では、技術力を有する日本の自動車メーカーなどが活躍できる環境整備に向け、日本の技術・基準の国際標準化を推進する。
自動車の国際基準を策定する国連の会議体WP.29においては、自動運転などに関する国際基準案の提案や主要な専門家会合の議長職獲得などを目指し、議論をリードしていく構えだ。

貨物・旅客両運送事業者のドライバーシェアも
新規事業(2,000万円要望)として、貨物・旅客両運送事業者などの連携によるドライバーシェアを推進していく。ラストマイルを担うタクシー業界・宅配事業のドライバー不足に対応するため、業界の垣根を越えた柔軟な協力の仕組み(旅客・貨物間にとどまらないドライバーのシェア)を構築し、好事例を全国に普及させるとしている。
タクシー・宅配事業におけるドライバー供給に関する状況は、過疎地域におけるタクシーなどの不足や郊外地域におけるタクシー需要低下時間帯の存在、都市部における宅配の高い再配達率など、事業者や地域によって課題が異なるため、複数の地域における移動・宅配の需要及びドライバーの供給可能性について検討する。
まず、都市部・郊外・過疎地域における実証のほか、協議会における関係者の意見交換などを経てドライバーシェアの方向性を結論付ける方針としている。
日本版ライドシェアに関しては、新規で3,500万円を要望した。タクシー、乗合バス、乗合タクシー、自家用車活用事業(日本版ライドシェア)などの多様な交通モードにおける活用実態と各交通サービスの持続可能性などについて調査する。
移動需要に対する対応度合や移動の足の不足状態の解消度合について調査・分析するほか、タクシー、乗合バス、乗合タクシー等の交通サービスの収益構造及びその背景・要因などに関する調査・分析、完全キャッシュレスバスの普及促進に向けた調査・分析を行う。
■自動車事故被害者救済、事故防止・安全対策の推進等
先進安全自動車の普及促進 整備環境の構築も支援
重度後遺障害を負った被害者の専門的な治療・看護などを行う千葉療護センターのリニューアルや、自動車事故被害者やその家族、遺族に向けた支援体制の整備を進めることで、被害者救済対策のさらなる充実を図る。
また、自動車アセスメント事業、ASV(先進安全自動車)・デジタル式運行記録計の導入支援などにより、先進的な安全技術の普及を促進し、事故防止・安全対策を推進する。
自動車運送事業の安全総合対策事業には19億1,300万円を要望し、ASVやデジタル式運行記録計・ドライブレコーダーの機器などの普及を促進して事故削減を図るため、自動車運送事業者に対して対象機器の補助を行う。
先進安全自動車の整備環境の確保事業には8億7,300万円を要望し、スキャンツールの導入支援など整備事業者による自動車の点検整備が確実に実施できる環境の構築を支援する。

■総合物流施策大綱の概要
現大綱はトラック隊列走行や自動運転トラックの技術開発や実証を推進
次期総合物流施策大綱を見据えた施策・事業も盛り込まれているが、現総合物流施策大綱の計画期間は2021年度~2025年度で、今まさに「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」で次期大綱の検討が行われている。
前大綱となる総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)では、新技術活用による物流革命の施策に、隊列走行及び自動運転による運送の飛躍的な効率化が掲げられた。
この計画期間中、2021年2月に新東名高速道路の一部区間において後続車の運転席無人状態でのトラックの後続車無人隊列走行実証に成功している。
現大綱(2021年度~2025年度)では、トラック隊列走行や自動運転トラックの活用について、技術開発や実証などに取り組むとともに、イノベーションに対応した道路の将来像について検討を進めることとした。
特に、高速道路における後続車有人隊列走行システムについては、2021年に商業化するとともに、より高度な車群維持機能を付加した発展型を開発して2023年以降の商業化を目指すほか、隊列走行システムも含む運行管理システムを検討し、高速道路でのレベル4自動運転トラックについて、2025年以降の実現を目指すとしている。
また、デジタル化などに対応した物流インフラの整備として、スマート貨物ターミナルの推進や自動運転・隊列走行などを見据えた道路整備も掲げている。
自動運転・隊列走行などの実現も見据え、新東名・新名神高速道路の6車線化により三大都市圏を繋ぐダブルネットワークの安定性・効率性を更に向上させるとともに、本線合流部での安全対策や隊列形成・分離スペースの確保など、新東名・新名神高速道路を中心に隊列走行の実現に向けたインフラ側からの支援策について検討を推進するほか、自動運転に対応した道路空間の基準などの整備を推進するとしている。
次期大綱は年度末までに閣議決定する予定
隊列走行については大きな進展はなかったが、レベル4トラック実用化に向けた取り組みが大きく前進し始めており、デジタルライフライン全国総合整備計画におけるアーリーハーベストプロジェクトとして新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SA間で実証が行われている。
【参考】アーリーハーベストプロジェクトについては「【重要】自動運転サービスの「支援道」、ロードマップ案が判明」も参照。
次期大綱に向け、石破茂総理は、輸送力不足が年々深刻化する2030年度までの期間を物流革新の「集中改革期間」と位置付け、物流全体の適正化や生産性向上、自動運転などの抜本的なイノベーションに向け「中長期計画」の見直しを反映した「総合物流施策大綱」を策定すべく、早急に検討を開始するよう指示を出している。
次期大綱は11月を目途に各有識者らの提言をとりまとめ、政府として総合物流施策大綱を策定して年度末までに閣議決定する予定だ。レベル4トラックがどのように位置付けられ、取り組みが加速していくのか。要注目だ。
【参考】自動運転トラックについては「ヤマトのトラック、自動運転化させ「ダブル連結」も視野」も参照。
■【まとめ】物流革新の集中改革へ前進あるのみ
国は2030年度までの期間を物流革新の集中改革期間と位置付けており、次期総合物流施策大綱期間は集大成とも言うべき成果が求められることになる。
物流の2024年問題は、対策が甘ければ年を追うごとに深刻化していく。苦しい状況が続くが、物流サービスの維持、そして持続的な発展に光明を見出すことができるか、国と民間各社の取り組み要注目だ。
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【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転、日本政府の実現目標・ロードマップ一覧|実用化の現状解説」も参照。