
東京駅周辺の丸の内エリアを走っている自動運転バス。その車両は中国EV大手Build Your Dreams(BYD、ビーワイディー)製だった。小池百合子都知事のもと東京都が旗を振る自動運転推進の取り組みの一環で、2026年6月23日から大手町・丸の内・有楽町の大丸有エリアで実施している実証である。知事が個別の車両選定に直接携わったわけではなく、都市整備局など都の担当部局が事業として進めているものだ。
使われているのはBYDの小型EVバスJ6で、定員は16人。自動運転ソフトウェアは茨城県つくば市の自動運転開発企業、先進モビリティが手掛ける。無料の巡回バス「丸の内シャトル」のルートを約40分から50分間隔で走る。運行の委託先は建設コンサルタント大手の日本工営。
運転は米自動車技術会SAEが定める自動運転レベル2、つまり運転手が乗車し状況に応じて手動運転に切り替える段階で実施されている。実証期間は7月2日までとなっている。
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■東京駅周辺を走った自動運転バス、車両は中国BYD製
丸の内のオフィス街を静かに走る小型のEVバス。その正体は、中国EV大手BYDの小型EVバスJ6である。東京都が2026年6月23日から7月2日まで、東京駅周辺の大丸有エリアで実施している自動運転バスの実証で使われている車両だ。定員は16人。無料の巡回バス「丸の内シャトル」のルートを約40分から50分間隔で走り、事前予約は不要で誰でも乗車できる。
ここで押さえておきたいのは、車両と自動運転技術の担い手が分かれている点である。車両というハードはBYD製だが、自動運転の頭脳にあたるソフトウェアは茨城県つくば市の先進モビリティが開発したものだ。運行の取りまとめは日本工営が担う。「中国BYD製」という事実だけを取り出すと丸ごと中国製の印象を受けるが、実態は中国の車両に国産の自動運転技術を載せた組み合わせである。この役割分担こそ、今回の実証を正しく理解する鍵と言える。
車両は中国BYD、自動運転の頭脳は国産の先進モビリティ。丸の内を走るバスはこの二者の組み合わせだ。中国BYD製の一語で丸ごと中国製と早合点するのは実態を見誤る。ハードとソフトを分けて捉える視点が要る。
【参考】関連記事としては「中国BYD 自動運転の事故は全額負担すると発表」も参照。
■ソフトは国産の先進モビリティ BYD J6を選んだ理由
自動運転の頭脳を担う先進モビリティは、中型以上のバスやトラックを中心に各地で実証を重ねてきた国内勢の一角である。茨城県のひたちBRTでは2024年11月、道路運送車両法に基づく自動運行装置として認可を受けた。中型バスでのレベル4認可は国内初で、認可区間は約6.1キロメートルと当時のレベル4としては最長だった。無人運転を見据えた技術の蓄積を持つ企業である。
では、なぜ車両にBYD J6が選ばれたのか。答えは、この小型EVバスが国内で一定の普及実績を持つ点にある。J6は九州旅客鉄道のBRT路線や奈良交通の路線バス、埼玉県鴻巣市のコミュニティバス、東京都武蔵野市のムーバスなど、各地で実車として走ってきた。BYDは国内EVバス市場でシェア約6割を握る首位メーカーで、2025年度末時点の累計導入台数は503台に達する。すでに国内の道路を数多く走ってきた実績ある車両に、国産の自動運転ソフトを載せる。海外製の車両と国産の自動運転技術を組み合わせる手法は、国内の自動運転開発では珍しくない。
【参考】関連記事としては「八王子で事故の自動運転バス、「中国製」って本当?」も参照。
■自動運転レベル2からレベル4へ 都心部ならではの課題
今回の実証は自動運転レベル2で行われている。運転手が乗車し、状況に応じて手動運転に切り替える段階だ。無人ではない。東京都が最終的に見据えるのは、運転手が乗らない自動運転レベル4である。丸の内の実証は、その到達点に向けた一歩に位置づけられる。
都心部での実用化には、地方の実証とは異なる難しさがある。都の担当者は、短い間隔で連なる信号や路上駐車が多いといった都心部ならではの課題をクリアして、次のレベルに到達できればいいと話す。短い間隔で現れる信号、路肩に止まる車両。こうした都心特有の複雑な交通環境をどうさばくかが、無人運転に近づくための技術的なハードルになる。都は乗客へのアンケートも実施し、都心部での自動運転サービスの実用化に向けた知見を集めている。
■もう一つの実証 新木場ルートと「2050東京戦略」
東京都が進めているのは丸の内の実証だけではない。都交通局は6月21日から6月29日にかけて、都営バス「急行05」の一部区間にあたる新木場駅前から日本科学未来館までのルートで、大型バスによる自動運転実証を別途実施した。こちらは1日4往復8便の予約制で、丸の内の小型EVバスとは異なり大型車両を使う。丸の内は小型のBYD J6、新木場は大型と、車両の性格も使い分けられている。
これらの実証は、いずれも自動運転レベル2で行われ、東京都の長期方針「2050東京戦略」の戦略18インフラ・交通の一環に位置づけられている。都は臨海副都心エリアでも、トヨタとソフトバンクが出資するMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)による自動運転実証を進めてきた。複数のエリアで並行して実証を積み重ねる姿勢からは、都心の自動運転実装に本腰を入れる都の意図がうかがえる。
【参考】関連記事としては「Google、東京で「年収1億円!?」な自動運転求人」も参照。
■まとめ:丸の内を走る BYD バスが映す、日本の自動運転
丸の内を走るバスがBYD製と聞くと、意外に思う人もいるだろう。だが実態は、中国BYDの車両というハードに、先進モビリティという国産の頭脳を載せた組み合わせである。海外製の車両に国産の自動運転技術を組み合わせる手法は、国内で広がりつつある。国内勢の自動運転技術は着実に力をつけており、実証の現場でその存在感を増している。
中国製という一語だけで危険と決めつける短絡は、実態を見誤らせる。2025年に八王子市で起きた自動運転バスの事故では車両が中国製だったことから中国製への不信が広がったが、あの事故の車両はBYDではなくアルファバス製で、自動運転システムもソフトバンク子会社のBOLDLYが開発したものだった。丸の内のBYDと先進モビリティの組み合わせとは別物である。車両というハードと自動運転というソフトを切り分けて見ること。丸の内を走るBYDバスは、日本の自動運転がいまどの地点に立っているかを静かに映し出している。













