理由不明!トヨタ系モネ、自動運転シャトルに「国産技術」搭載せず

システムは米May Mobility製を採用



出典:MONET Technologiesプレスリリース

ソフトバンクとトヨタの合弁MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)が、自動運転サービスの本格実証に着手した。1月から3月中旬にかけ、東京臨海副都心で一般利用者を対象に自動運転シャトル運行を行う。

ついにトヨタの自動運転技術が!?……と思いきや、採用されたのは米May Mobilityだ。同社の自動運転システムを搭載したシエナを運行し、モビリティサービスに関する知見を高めていく構えだ。


大きな期待と注目が寄せられるところだが、データの一部はMay Mobilityに提供される。言い方は悪いが、米国企業への情報流出ともとれる。

情報セキュリティの重要性が高まり続ける中、自動運転分野でも情報提供の在り方を精査すべき時が訪れようとしている。情報セキュリティの観点を交えつつ、モネの取り組みに迫っていこう。

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■MONET Technologiesの自動運転実証の概要

東京臨海副都心でレベル2シャトルサービスを展開

モネは2024年10月、ミニバン「シエナ」をベースにした自動運転レベル2車両を2台導入し、東京臨海副都心の公道で試験走行を開始した。

そして1月22日、約3カ月間の走行実証を経てサービス実証に移行した。新たな実証は3月中旬までの平日を予定しており、自動運転車の操作を習得した運転士が乗務し、常時ハンドル・ブレーキ操作可能な態勢を取り、状況に応じて手動運転に切り替えながら最高時速40キロで走行する。


まさに自動運転レベル2だが、レベル3レベル4実装に向け避けては通れない過程だ。また、モネは自動運転技術の高度化を図るよりもモビリティサービスの可能性を追求していく色合いが強く、レベル2実証でコトが足りるのだろう。

サービスは、自動運転タクシーと言うより自動運転シャトルサービスだ。国際展示場駅、東京テレポート駅、東京ビッグサイト、シティサーキット東京ベイの4カ所を乗降場所に設定し、スポット間を輸送する。組み合わせとしては、全12ルートの運行となる。

出典:MONET Technologiesプレスリリース

MONETが提供するアプリ「MONET」を使用すればだれでも運賃無料で乗車できる(年齢12歳以上)。サービス期間は1月22日から3月中旬までを予定している。乗車定員は運転手を除き5人となっている。

出典:MONET Technologiesプレスリリース

その後の展開については示されていないが、モネは地域と連携して移動の利便性と回遊性を高め、地域が持つ価値を向上させるとともにその地域のニーズに合った最適な自動運転MaaSの社会実装を進めていくとしている。


詳細については、公式サービスサイトを閲覧してほしい。

▼公式サービスサイト
https://www.monet-technologies.com/tokyo-bay

自動運転システムはMay Mobilityを採用

気になるのが、自動運転システムの開発事業者だ。モネは、トヨタではなく米May Mobilityを採用した。May Mobilityに対しては早くからトヨタグループが出資しており、ソフトバンクも2022年に業務提携契約を交わすなど親交がある。

2021年にモネが東広島市で行った実証でもMay Mobilityが開発した自動運転車を使用し、広島大学の東広島キャンパス内で定路線の自動運転シャトルを運行している。

ソフトバンク、トヨタともMay Mobilityと馴染みがあり、May Mobilityも日本法人を立ち上げるなど日本への本格進出を図っており、米国で高い運用実績があるのも事実だ。モネが採用することに異存はないが、ただ、トヨタの立場は……と感じてしまう。

モネとしては、広範なパートナーシップを重要視するため、あえて身内(トヨタ)にこだわらない戦略で事業を進めているのかもしれない。トヨタの自動運転はトヨタ自身でやれ……ということか。

情報の一部はMay Mobilityにも提供

また、実証で収集したデータの行方も気になるところだ。サービスサイトには、「本実験にて取得するデータを、前号に記載した目的のため、May Mobility, Inc.ならびにMay Mobility Japan合同会社に対して提供することができるものとします」とある。

出典:MONET Technologiesプレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)

車内における画像データも、個人を特定できない形式に加工し、運行管理に使用するほか、モネのサービスの改善、品質向上、研究開発、マーケティングならびに事故時などの警察への届け出の際に使用するとしている。

どこからどこまでの情報がどのような形でMay Mobilityに渡るのかは不明だが、一部の個人情報を含めたデータが米国企業に渡る可能性がある。

センシティブになり過ぎるのも良くないが、摩擦が続く米国・中国間では、米国側が中国製ハードウェア・ソフトウェアを含むコネクテッドカーの取引を禁止する最終規則を2025年1月に発表した。中国系技術・ソリューションによるリスクを懸念した措置だ。香港Bytedanceが運営する動画共有サービスTikTokもやり玉に挙がっている。

一方の中国政府も、情報セキュリティの観点から自国企業を厳しく取り締まっている。敵対する国家間において、牽制の意味も込めこうした情報・技術のやり取りにセンシティブになるのは理解できるが、日本も他人事ではない。

情報を精査し、他国企業に渡して良いものと守秘すべきものを明確に切り分けていく必要に迫られる時が必ずやってくるはずだ。

自動運転分野においても、日本市場への進出を目指す動きは活発化している。May Mobilityのほか、米WaymoイスラエルMobileye、中国PIX Movingなどは国内実証段階に至っている。

いずれも日本企業と手を組み、友好な関係を構築したうえで進出しているため危惧すべき点は本来ないが、そのうち得体のしれない海外企業が進出してくる可能性も十分考えられる。情報セキュリティの観点から、早期に線引きしておかなければならないものと思われる。

【参考】米中間の経済摩擦については「米政権、中国企業の「自動運転テスト」禁止へ 米中間の摩擦加速」も参照。

米政権、中国企業の「自動運転テスト」禁止へ 米中間の摩擦加速

■May Mobilityの概要

日本企業がメインスポンサー

May Mobilityは2017年創業の米スタートアップで、自動運転シャトルをメインに据えた自動運転開発を進めている。創業者兼CEOのEdwin Olson 氏は、Toyota Research Institute(TRI)でディレクターを務めていた経歴を持つ。

乗用車やカートをベースに自社開発した自動運転システムを統合し、ポイントツーポイントの移動サービスを提供している。今回のモネの実証と同様、一定エリア内に複数の乗降ポイントを設け、各ポイント間の移動を可能にする形態だ。ポイントを多数設置ことができれば、疑似的な自動運転タクシーサービスになり得る。

同社によると、現在ミシガン州アナーバー、テキサス州アーリントン、ミネソタ州グランドラピッズ、イーデンプレーリー、カリフォルニア州マーティネズ、ジョージア州ピーチツリーコーナーズ、アリゾナ州サンシティでシャトルサービスを提供している。

このうちアリゾナ州を含む2カ所でドライバーレスサービスを実現しているようだ。乗車回数は、累計40万回を超えたという。

日本では、モネによる2021年の実証のほか、出資するNTTグループが同社の自動運転システムの日本国内独占販売権を取得し、2024年10月にNTT東日本が展開中の自動運転実証環境を活用したMay Mobilityの実証実験拠点の立ち上げをNTT中央研修センタ構内で行っている。

同年11月には、愛知県名古屋市内で自動運転車両による定期運行サービス実証にも着手した。こちらもシエナベースの自動運転車両を活用している。

2024年12月には、トヨタの自動運転サービス専用EV「e-Palette」にシステムを統合し、トヨタ自動車九州株式会社宮田工場で従業員や訪問者向けに移動サービスを開始したことも発表している。

資金調達面では、2018年のシードラウンドと2019年のシリーズAにトヨタベンチャーズ、シリーズBにトヨタ、2022年の企業ラウンドにブリヂストン、シリーズCにトヨタベンチャーズ、豊田通商、トヨタ、東京海上、SPARX グループ、未来創生ファンド、2023年のシリーズDにトヨタベンチャーズ、NTTグループ、あいおいニッセイ同和損害保険が参加するなど、日本企業による出資が非常に多い。

日本進出にも納得の布陣で、今後、モネやNTTグループ、トヨタ以外からも移動サービス実用化に向けMay Mobilityと協業する動きが出てくる可能性が高そうだ。

■【まとめ】モネやMay Mobilityの動向に注目

モネの実証が今後どのような成果に結びついていくのか、要注目だ。また、今後日本市場で存在感を高めていくことが予想されるMay Mobilityの動向にも注目したい。

別の視点では、情報セキュリティの観点から海外企業とどのように付き合っていくべきかも精査すべき時が訪れた感が強い。どのような海外企業がどのような形で国内展開し、どのような情報を収集するのか――と考えていくと、無策は許されない状況となっていく。国として、一定の指針、ないしは規制が必要となりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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