孫さん、自動運転で「天国と地獄」状態

中国版テスラ「Xpeng」にも動き



出典:(左)ソフトバンクグループ公式サイト/(右)ソフトバンクグループ公式ライブ配信

決算期を迎えた日本。ソフトバンクグループが日本企業として史上最高益をはじき出すなど、投資の好調ぶりが際立った。孫正義会長が推進するAI戦略の賜物と言える決算だ。

自動運転分野では、SVFが出資するNuro自動運転タクシーサービス商用化に向け着実に歩みを進めるなど、種が芽を出し始めている。粗利益の高さを示唆するニュースも出ており、自動運転各社への投資が大きなリターンとなる日も遠くないのかもしれない。


一方、日立がAI管制システムを発表するなど、グループ直営事業(BOLDLY)の競合もどんどん頭角を現し始めている。自動運転分野においては、孫会長にとって「天国」と「地獄」が共存するような日がしばらく続くのかもしれない。

2026年5月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。

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■トヨタのWoven Cityで「世界最高峰AI」が稼働。住民100人で何を実験している?(2026年5月3日付)

稼働開始から半年が経過したWoven Cityでは、世界トップレベルのVLM(Vision Language Model)が活躍しているそうだ。

カメラ映像などの視覚情報をもとに、人やモビリティの挙動、まちや空間の状態といった環境情報を組み合わせることで、実世界で起きている事象を言語化して理解・判断し、行動へつなげることが可能な大規模基盤AIモデル「Woven City AI Vision Engine」が、同所での実証に活用されているという。


これは、E2Eの自動運転モデルのベースともなるAI技術で、AIが周囲の状況を理解するのに必須の技術と言える。現在、車載カメラや信号機のカメラ映像を分析し、人やモビリティの動きからその行動を予測して運転を支援するシステムなどに活用されているという。

将来、Woven Cityにおける実証の成果がクルマや社会にどのように生かされていくのか、要注目だ。

■タクシー業界、ライドシェアの「普及阻止」に成功か(2026年5月6日付)

当サイトの調査によると、日本版ライドシェアの求人がここにきて激減し始めたようだ。制度開始から丸2年が経過し、拡大期は過ぎ去ったのかもしれない。


大都市などでは依然としてタクシードライバー不足が続いており、日本版ライドシェアの需要も高止まりしているようだが、地方ではそれほど需要は伸びず、機運がだだ下がりしている印象を受ける。

タクシードライバーお試し制度として考えれば、需要は低くとも求人を出す意義はあるが、正規社員への登用を考えていないのであれば、ライドシェアドライバーを抱えておく必要性は薄い。

制度としての伸びしろはほぼないが、高市政権下ではおそらく本格版ライドシェア導入の目もない。制度設計を変えずこのまま継続するのか、何らかのアップデートを重ねていくのか。

いずれにしろ、将来的には自動運転タクシーが互換していく可能性が高い。果たして、10年後に日本版ライドシェアは残っているのだろうか。

タクシー業界、ライドシェアの「普及阻止」に成功か

■航空市場、テスラの自動運転化で「縮小」へ(2026年5月8日付)

テスラオーナーが、これまで航空機で移動していた1,000キロを超える長距離行程をFSDで代替してみたところ、思いのほか快適だった――とSNSに投稿した。

ほとんど運転に介入することのないドアtoドアの高度なレベル2++であれば、長距離・長時間運転の負担が激減するのは事実だ。もちろん、常時監視が必要なためあくまで負担軽減に過ぎないが、航空機移動の代替方法として選択肢となり得るか……がポイントだ。

航空機であれば、運賃は割高だが短時間でスマートに移動できる。移動先の移動は別の手段が必要だ。一方、自家用車であれば、長時間必須で一定の疲れが残るものの、割安で移動できる。移動時間中は完全なプライベート空間となる。移動先においても、そのまま自家用車であちこち回ることができる。

一長一短があるが、レベル2++クラスが本格実用化されれば、意外と自家用車を選択する人が増えるかもしれない。時間にゆとりがあることが絶対条件となるが、自由度とコストを天秤にかけ、自家用車>航空機……と判断する人は一定数存在するものと思われる。

将来、航空機需要の一部を自家用車が奪う……という可能性は否定できないかもしれない。

【参考】詳しくは「航空市場、テスラの自動運転化で「縮小」へ」を参照。

航空市場、テスラの自動運転化で「縮小」へ

■自動運転の粗利率「驚異の最大87%」!”E2E”でドル箱ビジネスに(2026年5月15日付)

大手調査会社QYResearchが発表した最新のレポートによると、E2E自動運転の粗利率は最大87%に上るという。各企業の研究開発の状況や商業化レベルにより、2026〜2032年の期間は3.26〜87.13%の幅に収束するという。

世界のE2E自動運転市場は現在初期段階で、2024年の15億1,161万ドルから2035年には747億6,167万ドルに成長すると予測している。内訳は、乗用車における E2E が 563億6,282 万ドル、商用車の E2E が183億9,885 万ドルとしている。

乗用車が75%を占めているのは、生産グレードのレベル2/L2+パッケージによる規模と、フリートツールチェーン、ルート規模の展開、監査可能な安全ケースの成熟に伴う商用採用の加速を反映してのものという。

粗利率に関する細かな内訳は不明だが、87.13%は驚異的だ。OTAでソフトウェア更新したりサブスク化したりするなど、従来の自動車産業とは異なる収益構造の確立も予想されるところだ。

自動運転の粗利率「驚異の最大87%」!”E2E”でドル箱ビジネスに

■自動運転、日立が「孫正義が一人勝ち」の”管制AI”に参入(2026年5月20日付)

日立製作所が、自動運転車両向けの運行管制システムの開発を発表した。モビリティ向けのフィジカル AIとデータ収集・管理基盤の技術を融合し、高効率かつ定時性の高い運行を実現するダイナミック運行管理や影響予測、少人数オペレーションを支える遠隔監視支援などを行うことができるという。

同分野では、ソフトバンクグループのBOLDLYによる運行管理システム「Dispatcher」が先駆け的存在となっており、国内自動運転サービスでも高いシェアを誇る。積極的に開発各社の自動運転車と統合し、同一操作でさまざまな車両を扱える点が魅力だ。実証・実用化の際の運行管理もBOLDLY自ら担い、その上で少しずつ地元企業にノウハウを提供して業務の移行を図っていく取り組みも秀逸だ。

自動運転サービスの実装が本格化し始めた昨今、こうした運行管理分野の競争も激化していくことが予想される。すでにアイサンテクノロジーや電脳交通、マクニカなどが遠隔監視システムの開発やセンター開設など運行管理事業に着手している。

日立は実務的な運行管理は担わず、システムを提供するビジネススタイルと思われるが、後発組としてどのような戦略でビジネスを拡大していくのか、注目だ。

自動運転、日立が「孫正義が一人勝ち」の”管制AI”に参入

■テスラ、自動運転車向けの「巨大洗車場」建設(2026年5月21日付)

テスラが、自動運転タクシー専用の洗車場をラスベガスに建設したようだ。日常的な簡易メンテナンスも無人化を図る狙いだろうか。

ドライバーなど、直接車両を管理する人が車内に存在しない自動運転車は、車内やボディなどが汚れても運行事業者はなかなか気づくことができない。タイヤの空気圧など、データ化することが可能なものは遠隔でも把握できるが、タイヤの状態そのものを目視することは難しい。

Waymoも日常的なメンテナンスなどは他社に委託している。Uber Technologiesはこうした管理を含むトータルソリューション「Uber Autonomous Solutions」を開始した。ドライバーを無人化しても、日常的な管理はまだまだ無人化できていないのだ。

テスラは、こうした点にもしっかりメスを入れてくる可能性が考えられる。洗車場は序の口で、各種センサーを駆使するなどし、車内外の状況を遠隔監視・把握するシステムやその対処を無人化するソリューションを開発していくのかもしれない。こうした分野のイノベーションに期待したいところだ。

【参考】詳しくは「テスラ、自動運転車向けの「巨大洗車場」建設」を参照。

テスラ、自動運転車向けの「巨大洗車場」建設

■Google、東京で「年収1億円!?」な自動運転求人(2026年5月25日付)

日本進出組の自動運転開発企業による国内求人が増加傾向にあるようだ。日本では、WaymoをはじめNuro、Wayve、May Mobilityなどが国内サービス展開を見据えた取り組みを進めている。また、WeRideのように直営以外で導入されるケースや、プラットフォーマーとして導入を推進するUber Technologiesのような存在もある。

第一線の自動運転開発は基本的に各社の本拠地・本丸で行われることが多く、日本国内では主にビジネスマネジメントや自動運転開発のサポート系などが主体となる。

本丸部分に直接かかわるのは難しいかもしれないが、ビジネス展開のフェーズが到来した今、マネジメント系も非常に重要な位置づけとなることは間違いない。

また、現時点では自動運転求人の大半をWaymoが占めている状態だが、今後、発展途上のNuroやWayveなどが増加していく可能性が高い。発展途上故、日本採用でも自動運転開発に直接携わるチャンスが多く残されているかもしれない。

どういった求人があり、どこまでの職務を任され、どのような未来に携わっていくことができるのか。しっかり吟味したいところだ。

Google、東京で「年収1億円!?」な自動運転求人

■SBG孫正義が出資のNuro ついにサンフランシスコでロボタクシー商用化へ(2026年5月25日付)

米Nuroが、サンフランシスコにおける自動運転タクシー事業に向け前進したようだ。州車両管理局(DMV)から無人運転試験ライセンスを付与されたのに続き、州公益事業委員会(CPUC)から安全運転者同乗型自動運転ライセンスを取得した。

これにより、Nuroは無人走行実証に加えセーフティドライバー付きながら商用化に向けたサービス実証に取り組むことが可能になった。

今後、無人によるサービス走行と有料走行のライセンスを取得すれば、無人の商用自動運転タクシーサービスを展開可能となる。

サンフランシスコで、Waymo、Zooxに続く無人サービス企業となるか。また、グローバル戦略のもと日本進出も表明しており、こちらの動向も合わせて注目したいところだ。

SBG孫正義が出資のNuro ついにサンフランシスコでロボタクシー商用化へ

■ロボタクシー市場が巨大化 2030年に「今の10倍」へ(2026年5月27日付)

エネルギー調査大手のWood Mackenzieは、2030年までに世界の無人タクシーが10万台を超えるという予測を発表した。

2026年末に世界39の市場で稼働・実証が行われる見通しで、展開にかかる期間やコストも下がり始めているという。2030年までに世界の自動運転フリートは現在の約10倍へ拡大し、無人タクシーは10万台を超えるとしている。

2030年に10倍……というのはリアルな数字と言える。現在主流のルールベースの拡大と並行し、期間内にE2Eベースが本格実用化を迎える可能性が高い。本格実用化といってもおそらくエリアを区切る形で少しずつ実装されるものと思われるが、実装が大きく加速していくことはほぼ間違いない。

場合によっては、予測を超えるペースで拡大していくことも十分考えられる。自動運転タクシーは成熟期を迎え始めているようだ。

ロボタクシー市場が巨大化 2030年に「今の10倍」へ

■謎の中国企業「テスラより先」にロボタクシー量産か(2026年5月27日付)

中国の新興EVメーカーXpengが、自動運転タクシーの量産・出荷を開始した。自動運転タクシーの量産化自体はもはや珍しくないが、他社に依存せず自動車メーカー自らが開発した自動運転システムを自社製造車両に搭載する取り組みはテスラに次ぐもので、出荷段階に至ったのは世界初かもしれない。

VLA(ビジョン・ランゲージ・アクション)モデルを用いたエンドツーエンドの自動運転システムで、おそらく当面は規制に則る形でエリアを区切ってレベル4実装を目指すものと思われるが、最終的にはどこでも自律走行を可能とするレベル5の実現を見据えている。

すでに広州で公道実証に着手しており、2026年後半に自動運転タクシーとしての試験運用を開始し、2027年初頭にドライバーレスを目指す計画だ。

テスラに近い取り組みと言えるが、現状、Xpengは自社による展開、あるいはBtoBベースの事業展開を中心に据えているものと思われる。一方のテスラは、自社展開とBtoC展開を軸に据えている。

ほぼ横並びとなった両社だが、どちらが先に抜け出ることになるのか。戦略の違い含めその動向に注目したい。

謎の中国企業「テスラより先」にロボタクシー量産か

■【まとめ】E2E開発企業の動向に要注目

自動運転タクシー事業が盛況で、米国ではNuroが商用化二歩手前の段階に達した。Waymoら先行勢は、グローバル路線を強化している様子が求人からも見て取れる。

また、テスラやXpengのようにE2Eの本格実用化に迫りつつある企業も取り組みを加速している。場合によっては先行勢を食うポテンシャルがあるだけに、引き続き今後の動向を注視したいところだ。日本勢の躍進にも改めて期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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