自動運転実用化において節目となる2025年度を目前に、国の議論や取り組みが活発化しているようだ。自動運転トラック実用化に向けた自動運転車優先レーンの設定や自動運転バスのリース制度に向けた検討など、さまざまな方面で動きが出ている。石破政権下で、国主導の自動運転バスのリース制度が誕生することになるのか。
一方、海外でも、丸紅や日本企業と親密な関係にある米May Mobilityなどに動きがあったようだ。2025年2月の10大ニュースとともに業界の最前線に迫ろう。
記事の目次
- ■自動運転車向け「充電基地」、サンフランシスコの土地運用で人気化(2025年2月5日付)
- ■デジタル庁、自動運転バスの「リース制度」検討 自治体向けを想定(2025年2月8日付)
- ■ライドシェアは「タクシーと別の業」 LINEヤフー会長の規制改革論の真意は?【対談前編】(2025年2月12日付)
- ■自動運転バスのコスト、導入6,000台で「手動バス」以下に 車両価格5分の1&10年運用で(2025年2月14日付)
- ■自動運転の機会潜在性「米国だけで1兆ドル以上」 Uber CEOが発言(2025年2月15日付)
- ■高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で(2025年2月17日付)
- ■丸紅、米テキサス州で自動運転タクシーに着手 所有車両をLyftで展開(2025年2月19日付)
- ■中国BYD、150万円の激安自動運転EVを発売へ!その名も「神の目」(2025年2月20日付)
- ■NVIDIA保有で株価が「瞬時に2倍」!自動運転企業「WeRide」は何者?(2025年2月21日付)
- ■改造トヨタ車、米で「完全無人」の自動運転シャトル化 May Mobilityが商用運行(2025年2月24日付)
- ■【まとめ】国内の取り組みがいっそう加速
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■自動運転車向け「充電基地」、サンフランシスコの土地運用で人気化(2025年2月5日付)
大都市サンフランシスコにおいて、マンションなどの開発予定地にWaymoの駐車場や充電ステーションが次々と設置されているという。
数百台のフリートを抱えるWaymoにとって、各車両の待機場所や充電場所は欠かせない。そこで目を付けたのが、建物の開発予定地のようだ。マンションなども計画の認可・着工まで時間を要するため、その合間を縫うようにWaymoがステーションを設置しているようだ。
着工までの一時的な土地貸借であれば、貸主にとってメリットはある。Waymoの支出は膨大なものと思われるが、配車依頼に迅速に対応するためにはエリア内に分散してステーションを設置する必要があるため、こうした形になったものと思われる。
自動運転タクシーは、手動タクシーのように流し営業を行うことはできず、駅などのタクシープールを利用することも基本的にはできない。待機中の居場所がないのだ。無駄に走行し続けるのも手だが、限られたバッテリーを消費する上に渋滞を増長しかねない。
日本においても、サービス実装後にこういった課題が表面化する可能性がありそうだ。
【参考】詳しくは「自動運転車向け「充電基地」、サンフランシスコの土地運用で人気化」を参照。
■デジタル庁、自動運転バスの「リース制度」検討 自治体向けを想定(2025年2月8日付)
デジタル庁所管のモビリティワーキンググループで、自動運転車両のリース利用を促す仕組みについて検討されているようだ。
自動運転サービス事業者へのヒアリング結果によると、車両費用が1台当たり約5,500~8,000万円で、その他3Dマップ・走行ルート作成など初期費用として1カ所あたり1,000~2,000万円必要という。さらに、遠隔監視に係るハード・ソフトや充電設備設置費用なども別途必要となる。
この著しく高額な初期費用は、自治体などが導入を躊躇する理由の一つになっていることは確かだろう。この課題を解決するのがリース方式の導入だ。
ただ、自動運転車は手放しで誰もが使用・管理できるものではないため、専門知識のない第三者のリース企業が介入するのは難しい。開発事業者や専門知識を有する運行管理事業者などに限られる可能性が高い。
最終的にどのような案がまとまるかは不明だが、自動運転車の低価格化を促進する策も重要性を増す。技術のスタンダード化や量産化などで比較的安価に自動運転車を手にすることができる時代はいつ頃訪れるのか。動向を注視したい。
【参考】詳しくは「デジタル庁、自動運転バスの「リース制度」検討 自治体向けを想定」を参照。
■ライドシェアは「タクシーと別の業」 LINEヤフー会長の規制改革論の真意は?【対談前編】(2025年2月12日付)
本格版ライドシェア解禁派の急先鋒である川邊健太郎氏(LINE ヤフー代表取締役会長)への貴重なインタビュー記事だ。対談形式で、前後編に渡るロングインタビューの内容を掲載している。
川邊氏は規制改革推進会議の委員を務め、ライドシェア導入の是非をめぐる会議の中で気を吐いている解禁論者だ。
同会議における議論は日本版ライドシェアの導入で一息ついた感が強い。同事業の成果を待ちつつ並行して本格版の是非についても検討していく方向で進められているが、当初に比べやや停滞気味に感じられる。
おそらく、川邊氏がいなければ日本版の導入を落としどころに決着を付けようという流れがより強まっていたことだろう。
インタビューでは、「民間の力で交通課題を解決する」など、本格版ライドシェア導入の意義について語っている。現行の官製事業は、その効果を踏まえると事業性が低いのは確かで、日本全国さまざまなエリアで通用するサービスにはなりにくい。
移動サービスに関して、需要過多に苦しむ大都市と、事業採算性が低く供給不足が顕著な地方。移動サービスはどうあるべきなのか。ライドシェアはこの課題にどのような効用をもたらすのか。ライドシェア推進派、反対派双方に一度拝読してもらいたい。
【参考】詳しくは「ライドシェアは「タクシーと別の業」 LINEヤフー会長の規制改革論の真意は?【対談前編】」を参照。
■自動運転バスのコスト、導入6,000台で「手動バス」以下に 車両価格5分の1&10年運用で(2025年2月14日付)
国の会議の中で示されたBOLDLYの資料が興味深い。同社によると、自動運転バス6,000台規模の量産化が実現すれば、導入及び10年間の運用コストが既存バスを下回るという。
自動運転車は、無人化技術による人手不足の解消とコスト低減効果に期待が寄せられるが、その効果が存分に発揮されるまでにはまだ時間を要する。
現在は恐る恐る無人化を図り始めた段階で、運行管理面における人手も多い。何より、自動運転車両のイニシャルコストがまだまだ高い。
サービスを通じて現状サービスよりもコストを落とすには、車両の量産化は欠かせず、その目安が6,000台のようだ。その上で、一人のオペレータが複数台を管理できる状況になることも重要となる。
そう考えると、コスト面での効果が表れるのは2030年代が濃厚かもしれない。しかし、現在果敢に取り組んでいる自治体や企業がいるからこそこうした未来が訪れることも忘れてはならない。
コスト面での未来が見通せる段階まで、国や自治体にはしっかりとサポートをお願いしたいところだ。
【参考】詳しくは「自動運転バスのコスト、導入6,000台で「手動バス」以下に 車両価格5分の1&10年運用で」を参照。
■自動運転の機会潜在性「米国だけで1兆ドル以上」 Uber CEOが発言(2025年2月15日付)
米配車サービス大手Uber Technologiesのダラ・コスロシャヒCEOが、自動運転市場の見通しに言及したようだ。
同氏は決算発表の場において、自動運転車は米国だけでも1兆ドル(約152兆円)以上の市場規模があるとした。その上で、自動運転車が大規模商業化を果たすために必要な5つのハードルとして、「安全基準」「規制上の課題」「コスト効率と拡張性」などについても説明したようだ。詳細は記事を参照してほしい。
Uberはもともと自前で自動運転開発を行っていた経緯もある。ライドシェアと自動運転の相性の良さに早くから注目していた証左だ。自社開発は諦めたものの、Waymoをはじめとした企業と広くパートナーシップを結ぶことで着々とサービス網を強化し始めている。
ライバルのLyftはMobileyeとの提携を発表しており、今後、自動運転開発企業と配車プラットフォーマーがどのように結びつきを強めていくのか、要注目だ。
【参考】詳しくは「自動運転の機会潜在性「米国だけで1兆ドル以上」 Uber CEOが発言」を参照。
■高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で(2025年2月17日付)
高速道路における自動運転トラック実用化に向けたプロジェクトが本格的に動き出すようだ。国は3月、新東名高速道の一部を自動運転車優先レーンに設定し、走行実証などに着手する。
まず駿河湾沼津SA~浜松SA間約100キロを平日夜間限定で優先レーンに設定し、実証を行う。開発企業による走行実証をはじめ、インフラ関連の実証も行う。
2025年以降に東北道の6車線区間などに拡大していく予定で、将来的には東北から九州を結ぶ自動運転網を構築する目標を掲げている。
高速道路直結の中継物流基地などでスムーズに有人・無人を切り替えることができれば、長距離物流に革命が起こる。さらに、隊列走行を組み合わせることで柔軟な運用にも期待できる。
中継基地などにおける作業の省人化・無人化を合わせ、ロジスティクス全体を最適化していくことが重要となるが、その一端を担う重要技術として、今後の成果に期待したいところだ。
【参考】詳しくは「高速道に「自動運転車優先レーン」!深夜時間帯に限定、新東名で」を参照。
■丸紅、米テキサス州で自動運転タクシーに着手 所有車両をLyftで展開(2025年2月19日付)
自動運転分野において丸紅が大きく動き出した。米Lyft、イスラエルのMobileyeと連携し、北米で自動運転サービスの展開に乗り出す。
丸紅所有の車両にMobileyeの自動運転システムを統合し、Lyftのプラットフォーム上で稼働させる計画だ。早ければ2026年にもネバダ州ダラスで導入を開始するという。どの車種を採用するのか。また、どれほどのフリート規模で展開するのか気になるところだ。
この取り組みがうまくいけば、車両を保有する移動サービス事業者による自動運転タクシー事業参入が容易になり、世界各地の事業が大きく加速していく可能性があり、その意味でも注目が集まるところだ。
また、配車プラットフォーマー間の自動運転競争も本格化の兆しを見せており、さまざまな観点から各社の動向を注視していきたい。
【参考】詳しくは「丸紅、米テキサス州で自動運転タクシーに着手 所有車両をLyftで展開」を参照。
■中国BYD、150万円の激安自動運転EVを発売へ!その名も「神の目」(2025年2月20日付)
中国BYDが、レベル2+相当のADAS「天神之眼」を全車種に搭載すると発表した。日本円で150万円程度の低価格帯モデルでもレベル2+が可能になるようだ。
天神之眼は、3基のLiDARを使用したタイプとLiDAR1基のタイプ、3台のカメラを使用したタイプの3バージョンを設計し、ハイエンドや低価格モデルなど価格帯に合わせたバージョンの搭載を進めていく計画だ。
報道によると、LiDARはHesai Technologyの製品が採用されたようだ。価格競争ではもはや中国勢に太刀打ちできない状況となっているが、技術水準の向上も見逃せない。
BYDをはじめとした中国自動車メーカー各社はレベル3の公道実証ライセンスも取得しており、中国政府のGOサインが出れば各社が一斉にレベル3実装に動き出す可能性も高い。システムの精度如何によっては評価がガタ落ちする可能性もあるだろうが、自家用車市場の自動運転化に大きく動き出していることは間違いない。
こうした中国勢の動きが世界にどのような影響をもたらしていくのか、要注目だ。
【参考】詳しくは「中国BYD、150万円の激安自動運転EVを発売へ!その名も「神の目」」を参照。
■NVIDIA保有で株価が「瞬時に2倍」!自動運転企業「WeRide」は何者?(2025年2月21日付)
NVIDIAが提出した株式保有報告書から、同社が中国WeRideの株式17万株以上を保有していることが判明し、その株価が一気に2倍以上に高騰したようだ。
2月13日時点で17.17ドルだったWeRideの株価は、NVIDIA保有が明らかになった翌14日には31.5ドルにまで急上昇した。2月18日には40ドルを超え、一時2倍超に達したようだ。その後緩やかに下降し、ブームは終息したようだ。
NVIDIAの影響力の大きさを物語る内容だが、どういう形であれ自動運転開発企業に注目が集まったことを歓迎したい。株式市場においては、総じて自動運転関連企業の評価はまだまだ低い水準にある。各社の事業が続々と利益を生み出すような本格ビジネス段階に達していないのが要因だが、どこかの段階で跳ね上がる日が訪れるはずだ。
少しずつ注目度を高め、陽の目を浴びる日が一日でも早く訪れることを望みたい。
【参考】詳しくは「NVIDIA保有で株価が「瞬時に2倍」!自動運転企業「WeRide」は何者?」を参照。
■改造トヨタ車、米で「完全無人」の自動運転シャトル化 May Mobilityが商用運行(2025年2月24日付)
米May Mobilityが、一般市民を対象にした完全無人の本格自動運転シャトルサービスをジョージア州ピーチツリー・コーナーズで開始したようだ。
ベース車両はトヨタの「Sienna Autono-Maas(S-AM)」だ。同社の無人運行は3カ所目だが、一般市民を対象にサービス展開するのは初という。
自動運転シャトルサービスではあるものの、乗降ポイントを複数設定することでエリア内における柔軟な移動を可能にしている点がポイントだ。自動運転タクシーのようなドア2ドアの移動はできないものの、大まかな移動はできる。自動運転タクシーに比べるとサービス実装が容易なため、運賃水準次第ではこうした自動運転サービスが拡大していく可能性も考えられそうだ。
同社は日本にも進出しており、MONET TechnologiesやNTTなどとともに国内実証にも着手している。国内展開の動向にもしっかり注目しておきたい一社だ。
【参考】詳しくは「改造トヨタ車、米で「完全無人」の自動運転シャトル化 May Mobilityが商用運行」を参照。
■【まとめ】国内の取り組みがいっそう加速
高速道路における自動運転車優先レーンの設定は、今後中長期に及ぶ取り組みの第一歩と言える。開発各社がどのような体制で技術をモノにしていくのか、要注目だ。
海外では、丸紅の取り組みがどのような成果を生み出すかに注目したい。この事業が実を結べば、車両を保有する各社による自動運転分野への参入が容易になり、業界の地図が大きく変わっていく可能性がある。
2025年度に向け国内の取り組みもいっそう加速を強めており、引き続き各社の動向に注目していきたいところだ。
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大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)