【2024年7月の自動運転ラボ10大ニュース】羽田で国内2例目の特定自動運行許可

Zooxが2024年後半にも自動運転タクシー実現へ

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出典:鹿島建設プレスリリース

本格版ライドシェア解禁に向けた議論のゴールが見えない中、日本版ライドシェアが着実に成果を上げ始めているようだ。一般ドライバーはまだ不足しているようだが、マッチング率には一定の改善がうかがえる。

自動運転関連では、HANEDA INNOVATION CITYで運行中の自動運転バスが国内2番目となる特定自動運行の許可を取得した。現状はみなし公道のみをルートとしているが、貴重な前進だ。

早くも下半期を迎えた2024年7月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。

■電磁誘導線を使わない「自動運転レベル4」、日本で認可!鹿島やBOLDLYが発表(2024年7月2日付)

鹿島建設やBOLDLYらがHANEDA INNOVATION CITYで取り組んできた自動運転バスが、レベル4サービスの提供を可能にする特定自動運行の許可を東京都公安委員会から取得した。福井県永平寺に次ぐ国内2カ所目の許可だ。

電磁誘導線など特別なインフラを必要としないレベル4で、当面は敷地内のみなし公道でのサービス展開となるが、羽田空港までの送迎など今後の拡大に期待が寄せられるところだ。

徐々にではあるが、日本でもレベル4サービスが芽吹いてきた。一定段階まで技術が高まり、知見が貯まれば実用化の速度は一気に増す。

特に、BOLDLYはNavyaのARMAやAuve TechのMiCaといった厳選した自動運転車を活用して国内複数カ所で実証を積み重ねている。

各地の道路状況に違えはあれど、基本的な交通ルールは同一のため、知見が貯まれば実用化までの速度も短期間になるものと思われる。ティアフォーなども同様だ。

羽田の取り組みが今後どのように進展していくか。また、国内3番目となる特定自動運行はどこになるのか。各社の取り組みに要注目だ。

電磁誘導線を使わない「自動運転レベル4」、日本で認可!鹿島やBOLDLYが発表

■Googleの自動運転タクシー、あおり運転か 赤信号も無視、警察が困惑(2024年7月9日付)

Waymo自動運転タクシーがアリゾナ州フェニックスで不安定な走行を行い、警察に停止を求められる一幕があったようだ。

映像には、Waymo車がたまに車線をはみ出しながら蛇行運転を続ける様子などが収められている。一見するとあおり運転のようにも見える。Waymoによると、工事標識を原因に挙動がおかしくなったという。

Waymoの自動運転タクシーをめぐっては、2023年12月に不適切な方法でけん引されていたピックアップトラックに追突する事故を起こし、ソフトウェアのリコールが行われている。また、2024年5月にも電柱に衝突する事故を起こし、リコールを行っている。

Waymoは、義務付けられた事故報告において虚偽の報告をしていた疑いなどもかけられている。世界の自動運転業界をけん引するWaymoだが、対策・対応を間違うとCruiseの二の舞になりかねない。真摯な対応と細やかな改善が求められることになりそうだ。

Googleの自動運転タクシー、あおり運転か 赤信号も無視、警察が困惑

■100均のCanDoのロゴ、ホンダ車が「100キロ制限」と誤認識か(2024年7月10日付)

標識認識機能において、天下一品に続き100円均一ショップが掲げる100円玉モチーフのロゴも誤認識することが判明したようだ。

ロゴは、丸い枠内に「100」の数字が記載されていることから、時速100キロの速度規制標識と間違えてしまう事例が複数発生している。

人間では間違えようのないものでも、コンピュータの場合当然ながらセンサーやAI能力に依存する。多くのモデルに搭載されている標識認識機能はそれほど重要性が高くないため、カメラの感度や検知・識別能力などはそれほど高くないのかもしれない。

もしこれが自動運転車であれば、このシステムには「失格」の烙印が押されることになる。自動運転車がこの程度の違いを識別できないのであれば、パーセプション技術が著しく劣っていると言わざるを得ないためだ。

標識認識機能の誤認識においてはホンダセンシングがやり玉にあげられることが多いが、ホンダは世界初のレベル3システムを量産車に実装したことから、高度なパーセプション技術を有することに疑いはない。

やはり、アラートのみの標識認識機能だから手を抜いているのではないだろうか。しかし、誤認識祭りが大きくなるとブランドに傷がつくかもしれない。そろそろアップデートしてもよいのでは……。

100均のCanDoのロゴ、ホンダ車が「100キロ制限」と誤認識か

■老舗タクシー会社、「ライドシェアの運営権」狙いで買収標的に?(2024年7月11日付)

モビリティテクノロジー企業newmo(ニューモ)が大阪府内のタクシー事業者未来都を買収し、タクシー事業への直接参入を果たした。

同社は2024年3月、岸和田交通グループ傘下の岸交にも資本参加しており、共同経営を通じたタクシー事業の運営とともにライドシェア事業を進めるとしていた。この岸交に未来都を合わせた保有タクシー車両数646台は府内で5番目の規模という。

タクシー事業と日本版ライドシェアに力を入れるところまでが既定路線だが、その先をどこまで見据えているかがポイントとなりそうだ。

普通に考えれば、既存タクシー事業と日本版ライドシェアへの参入にそれほどの旨味はなく、テクノロジー企業としてどういったビジョンを持っているかは非常に興味深いところだ。

今後、どのようなビジネス展開を推し進めていくのか要注目だ。

老舗タクシー会社、「ライドシェアの運営権」狙いで買収標的に?

■楽天、自動運転タクシーを展開か!三木谷氏、Googleカーにびっくり(2024年7月15日付)

あおり見出しとなっているが、米サンフランシスコを訪れた楽天グループの三木谷浩史会長がWaymoの無人車両を目にし、「ライドシェアがどうのこうの言っている場合ではないですね日本も」――と自動運転時代の進展と日本の遅れを指摘したようだ。

楽天は自動配送ロボットやドローン配送の取り組みを早くから進めており、仮に自動運転事業に本格着手するならモノを輸送する配送分野と思われる。

グループとしては、楽天モバイル事業の赤字で身動きしづらい状況が続いていたが、赤字脱出の兆しが見えてきた。通信事業をものにした楽天が、次なる新規事業として自動運転に注目する可能性はゼロではない。

自動運転タクシーではなくとも、自動運転トラックなどの分野への新規参入があるか、改めて期待したい。

楽天、自動運転タクシーを展開か!三木谷氏、Googleカーにびっくり

■プリウスミサイルが教訓?日本の「踏み間違い制御」に国際評価(2024年7月16日付)

ペダル踏み間違い時加速抑制装置(ACPE)の国際基準化や搭載義務化が計画されているようだ。2022年から日本が提案しているACPE案が国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)の専門分科会において合意に達し、2024年11月開催予定の次回WP.29で採決される予定という。
こうした動きに合わせ、国内でも道路運送車両法に基づく省令を改正し、義務化を進めていく方針であることが明らかにされた。

毎日のようにアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が日本各地で報じられているが、ACPEの新車搭載はすでに約90%まで達している。あくまで抑制する装置のため完全に事故を防ぐことはできないが、日本自動車会議所によると、この10年で踏み間違いによる事故や負傷者は半減したという。

高齢化時代を迎え、免許返納が叫ばれつつも日常の移動が困難なため自家用車を手放せない人も依然として多い。最終的には公共交通の充実と自動運転化によって解決されるのが望ましいが、今しばらくはACPEのようなADASで抑制していくほかない。

後付けシステム含め、いち早く普及が進むよう願いたいところだ。

プリウスミサイルが教訓?日本の「踏み間違い制御」に国際評価

■ライドシェア、政権交代でも「全面解禁」見送り濃厚 立憲民主党も反対姿勢(2024年7月18日付)

結論が先延ばし状態となっている本格版ライドシェア解禁議論。結論に達する前に、自民党総裁選や総選挙を迎える可能性が高まってきた。

国の政治のトップや政権が代われば、当然政策は大きく変わる。ライドシェア議論にも影響があるのか?――といった主旨の記事だ。

仮に立憲民主が躍進し、現野党系で連立政権を組んだ場合、おそらく本格版ライドシェア議論は立ち消えとなり、現行制度の拡充やタクシー規制緩和に注力することになるものと思われる。

一方、日本維新が躍進し、自民・公明が過半数を逃した場合、日本維新が与党入りして本格版ライドシェアを推進する可能性が考えられる。

目下としては自民党総裁選の行方が気になるところだ。こちらは誰が総裁(総理)になってもベクトルが緩やかに変化する程度に収まるかもしれない。推進派、消極派いずれにしろ、継続議論を進めるという現在の方針を踏襲したうえで方向性を修正していかなければならない。

国のかじ取りの行方とともに、ライドシェア議論の行方に要注目だ。

ライドシェア、政権交代でも「全面解禁」見送り濃厚 立憲民主党も反対姿勢

■Amazonの自動運転タクシー、結局「テスラより先」に一般展開へ(2024年7月20日付)

アマゾン傘下Zooxが、2024年中にネバダ州ラスベガスで自動運転タクシーサービスを開始する計画であることが明かされた。Waymoの独壇場となりつつある米国の自動運転タクシー競争に新しい風が吹きそうだ。

Zooxは運転席などを備えない自動運転専用設計のオリジナル車両の開発を手掛けており、すでに量産体制も整っている。ラスベガスとカリフォルニア州フォスターシティで従業員を対象にサービス実証を重ねているほか、ワシントン州シアトル、テキサス州オースティン、フロリダ州マイアミでも公道実証に着手している。

ラスベガスでは約8キロの区間でサービスを提供し、順次拡大を図っていく方針のようだ。カリフォルニア州でも2024年2月に専用車両で一般人を運賃なしで運送する許可を取得しており、ラスベガスの状況を見て、あるいは並行してこちらでも実用化を目指すものと思われる。

米国内の自動運転タクシー分野では、GM系Cruiseが人身事故を契機に無人サービスを停止したままで、Waymoの独壇場となりつつある。Cruiseがいつ無人サービスに復帰するかは不明で、先行するWaymoの尻を叩く意味でも、Zooxの躍進に期待が寄せられるところだ。

Amazonの自動運転タクシー、結局「テスラより先」に一般展開へ

■ソニー・ホンダのEV会社、赤字204億円!自動運転開発で開発費かさむ?(2024年7月26日付)

ソニー・ホンダモビリティの第2期決算は、204億9,900万円の赤字となったようだ。まだ売上高のない開発段階のため赤字は当然で、新EVの2026年納入予定に向けた研究開発が続いているようだ。

海外、特に中国では既存メーカーによる新EVブランド設立がスタンダードとなっている。自動運転開発企業と合弁を立ち上げる例も少なくない。

こうした動きが今後の潮流となるかは不明だが、日本ではソニーとホンダがいち早く動き出した格好だ。自動車づくりに意欲を示すソニーとホンダが意気投合する形でモビリティの革新を追求していく。

Autonomy(進化する自律性)、Augmentation(身体・時空間の拡張)、Affinity(人との協調、社会との共生)の三つのAにベクトルを向け、研究開発を進めているようだ。

ソニー色をどのように出し、既存車・メーカーとの差別化を図っていくのか。徐々に明らかにされていくだろうその内容・個性に要注目だ。

ソニー・ホンダのEV会社、赤字204億円!自動運転開発で開発費かさむ?

■東京のタクシー会社、日本版ライドシェアの参入率「3割超」に(2024年7月26日付)

事業開始から3カ月が経過した日本版ライドシェア(自家用車活用事業)。徐々に利用実態が明らかになってきた。

大都市部ではタクシー事業者の参加が30%に上る一方、地方では14%に留まっている。登録ドライバー数は全体的に不足している印象だ。

一般ドライバーの1台1時間あたりの運行回数は、東京1.5回、神奈川0.9回、愛知1.3回、京都1.1回で、タクシーの平均0.7回を上回る稼働状況となっているようだ。

マッチング率は全体的に見れば改善傾向にある。雨天時など需要が急増する際に対応するため、気象庁の降水量予測に基づき柔軟に稼働できるよう改善を図っている。

需要過多を課題に据えた現行制度は大都市向けに設計されており、全国の交通課題対策にはなりえない。自家用車活用事業は大都市、需要が低すぎるため採算が合わない地方は自家用有償旅客運送事業――といった感じで、今後棲み分けが進められていくのか。

本格版ライドシェア解禁議論の動向とともに引き続き注目したい。

東京のタクシー会社、日本版ライドシェアの参入率「3割超」に

■【まとめ】3番目、4番目の特定自動運行が続くか注目

自動運転関連では、永平寺、羽田に続き2024年中に3番目、4番目の特定自動運行が出てくるか各社の取り組みに引き続き注目したい。

ライドシェアは先行き不透明な状況が続いているが、直近の規制改革推進会議・地域産業活性化ワーキング・グループで、流し営業中に迎車中と表示してアプリ配車依頼を優先する不正を疑う意見が出されており、ひと悶着在りそうな気配が漂っている。予断を許さない状況が続きそうだ。

海外では、Waymoがリコールを実施しながらも着実に実績を積み重ねている。新たにZooxが参入見込みで、2024年後半にかけて再び盛り上がりを見せそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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