ソニー・ホンダのEV会社、赤字204億円!自動運転開発で開発費かさむ?

第2期決算、AFEELAを2026年春に展開予定



出典:官報

EV(電気自動車)の開発・販売などを手掛けるソニー・ホンダモビリティ株式会社(本社:東京都港区/代表取締役 会長兼CEO:水野泰秀)の第2期(2023年4月〜2024年3月)決算公告が、官報に掲載されている。

当期純損失は第1期の55億1,900万円の赤字から大幅に赤字額を増やし、204億9,900万円であった。自動運転開発などで研究費などがかさんだ可能性がある。なお売上高は計上されていない。


同社は現在、開発中のEV「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプを発表している段階にある。AFEELAを販売開始した際には、巨額の予算を投じているだけに高い成功確率が求められる。EV・自動運転開発の面で海外勢に負けないスピード感も必要になるため、ハイレベル技術者の確保なども重要になってきそうだ。

■決算概要(2024年3月31日現在)

賃借対照表の要旨(単位:百万円)

▼資産の部
流動資産 43,665
固定資産 5,163
有形固定資産 2,584
無形固定資産 709
投資その他の資産 1,870
資産合計 48,827
▼負債の部
流動負債 14,685
(うち賞与引当金)(669)
固定負債 160
(うち役員退職慰労引当金)(83)
負債合計 14,845
▼純資産の部
株主資本 33,983
資本金 30,000
資本剰余金 30,000
資本準備金 30,000
利益剰余金 △26,017
その他利益剰余金 △26,017
純資産合計 33,983
負債・純資産合計 48,827

損益計算書の要旨(単位:百万円)

売上高 —
売上原価 —
売上総利益 —
販売費及び一般管理費 20,461
営業損失 20,461
営業外収益 9
営業外費用 23
経常損失 20,476
税引前当期純損失 20,476
法人税、住民税及び事業税 5
法人税等調整額 18
当期純損失 20,499


■ソニーとホンダが共同で設立

出典:ソニー・ホンダモビリティプレスリリース

ソニー・ホンダモビリティは、ソニーグループと本田技研工業の折半出資で2022年9月に設立された自動車メーカーだ。両社は高付加価値型のEVの共同開発・販売と、モビリティ向けサービスの提供を合わせて事業化することで、モビリティ業界における変革をリードしていく点で合意し、同年6月に新会社設立に関する合弁契約を締結した。

ソニー・ホンダモビリティの企業パーパス(存在意義)は「多様な知で革新を追求し、人を動かす。」で、高付加価値型の商品やサービスの提供、顧客との新しい関係の構築にチャレンジすることで、ソフトウェア技術を中心としたMobility Tech Companyを目指している。

同社の第1弾の商品は2025年前半から先行受注を開始し、同年中に発売予定となっている。デリバリーは2026年春に北米から開始し、日本では2026年後半からを計画しているという。

【参考】関連記事としては「ソニーとホンダ、自動運転車で「運転以外の楽しみ」提供」も参照。



■自動運転レベル3搭載予定のEV「AFEELA」

出典:ソニー・ホンダモビリティプレスリリース

ソニー・ホンダモビリティは、2023年1月に米ラスベガスで開催された世界最大の技術見本市「CES 2023」で新ブランド「AFEELA」を発表した。同時にプロトタイプが初披露された。車内外に計45個のカメラ、センサー等とともに、最大 800TOPSの演算性能を持つECUを搭載しており、これをベースに開発を進めていく。

実用化にあたっては自動運転レベル3搭載を目指すと同時に、市街地などのより広い運転条件下での運転支援機能、自動運転レベル2+の開発にも取り組んでいくという。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル3とは?(2024年最新版)」も参照。

CES 2023では、大手半導体メーカーの米Qualcommとパートナーシップを結ぶことも発表された。AFEELAのECUにQualcommのSoC「Snapdragon Digital Chassis」を採用する。同年8月には、Qualcomm本社にてプロトタイプ体験会を実施した。

日本でAFEELAのプロトタイプが日本で初めて一般展示されたのは、同年10〜11月開催の「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」の場であった。

■ドジャースタジアムにもAFEELAが登場!

2024年1月からは、ソニー・ホンダモビリティ自社による雇用を前提とした採用募集をスタートした。現在は経験者採用として自動運転・運転支援システム開発などの募集や、インターンシップ参加者の募集を行っている。また米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊にもオフィスを設置しており、広報担当と営業部長の募集を行っているようだ。

▼Careers|AFEELA
https://www.shm-afeela.com/ja/careers/

また同年6月には、米国で大谷翔平選手も所属するプロ野球チーム「ロサンゼルス・ドジャース」とAFEELAがパートナーシップ契約を結んだことを発表した。7月20日のドジャースタジアムで「AFEELA PREGAME PERFORMANCE」を開催した。日本のヒップホップユニット「Creepy Nuts」をゲストに迎え、AFEELAの最新プロトタイプとともに、ドジャースタジアムで米国での初めてのパフォーマンスを行い話題になった。

米国において先行して実用化される予定のAFEELAは、同国でのプロモーションを積極的に展開している印象だ。日本発の先進技術を搭載したEVは、米国でどう受け入れられていくのだろうか。日本国内での取り組みと共に注目していきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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