楽天、自動運転タクシーを展開か!三木谷氏、Googleカーにびっくり

日本でも今年から順次実用化予定



楽天グループの三木谷浩史会長=出典:Flickr / PriceMinister (CC BY 2.0)

楽天グループの三木谷浩史会長が、日本において自動運転車の開発が遅れていることを危惧しているようだ。

三木谷氏はX(旧Twitter)に「久々にサンフランシスコに来たら、運転手がいない自動運転のWaymoが普通に走っている。ライドシェアがどうのこうの言っている場合ではないですね日本も。」と投稿した。世界でどんどんイノベーションが進んでいる現状を肌で感じ、出遅れ気味の日本に危機感を感じたようだ。(※WaymoはGoogle系の自動運転開発企業)


すでに自動配送ロボットによるデリバリー事業に参入している楽天だが、今回、三木谷氏がサンフランシスコでの自身の体験をきっかけに、自動運転タクシー事業に自ら参入を表明する可能性もあるかもしれない。だとすれば、日本ではタクシー会社以外も自動運転タクシーを展開できるよう、規制緩和の動きがあることも追い風になる。

ただしモバイル事業の赤字が続く中では、多額の資金投入が必要なロボタクシービジネスを新規事業を行うことには、若干のハードルの高さも感じざるを得ない側面もある。

また楽天に関しては、米ライドシェア準大手のLyftの将来性を見込んで行った大型投資が当時は身を結ばず、巨額の有価証券評価損を計上した過去があり、次世代モビリティサービスへの投資にはトラウマ的な記憶もあると考えられる。

【参考】関連記事としては「自動運転タクシー、TOYOTA RIDE誕生か!規制緩和で参入可能性」も参照。

■ライドシェアでもロボタクシーでも出遅れ

現在日本では、タクシー会社主導の日本版ライドシェアは部分的にスタートしたものの、本来の意味でのライドシェア導入については議論されている段階にある。米国のライドシェアについては、Uberが2009年にライドシェア事業を開始しており、日本は大幅に遅れをとっている状況だ。


さらに米国ではGoogle系の自動運転開発企業Waymoが2018年からドライバーレスの自動運転タクシーサービスを開始しており、先進モビリティ開発においては日本よりかなり先を進んでいると言える。

こうした背景がある中、三木谷氏は現地でWaymoの自動運転タクシーを自分の目でみて、危機感を募らせたものとみられる。

■世界で最も先を行くGoogle系Waymo

出典:Waymo公式サイト

Waymoはアリゾナ州フェニックスで最初に自動運転タクシーサービスをスタートしたのち、カリフォルニア州サンフランシスコやロサンゼルスにもサービスを拡大している。同社は自動運転タクシーのほか、ライドシェアやトラック輸送、デリバリーなど、さまざまな用途に向けての自動運転システム「Waymo Driver」を開発している。

しかし2023年7月には、ビジネスの成長が著しいロボタクシーサービス事業に注力するため、トラック向けの自動運転開発は一時中止することを発表した。ロボタクシーには自動運転レベル4の機能が搭載され、展開範囲も拡大しているのに対し、自動運転トラックの実用化が予想より進んでいないということが理由となっているようだ。

またWaymoはUberと協業し、自動運転タクシーによるUber Eatsのデリバリーも2024年4月から行っている。Uberはすでに別の都市で自動運転ロボットなどによるフードデリバリーサービスの取り組みを行っているが、旅客輸送を行うWaymoの自動運転タクシーでデリバリーも行うのは、フェニックスが初めての都市となるという。

なお米国では、WaymoのほかGM傘下のCruiseも自動運転タクシー事業に参入している。Cruiseは、サンフランシスコやフェニックス、テキサス州オースティンで自動運転タクシーサービスを展開している。海外進出したのはWaymoより早く、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ交通局と自動運転タクシーとライドヘイリングサービス運営に関する契約を2021年4月に締結している。

しかし同社は2023年10月に事故を起こしたことが引き金となり、全米での自動運転タクシー運行を一時停止した。その後、2024年4月から手動運転によるデータ収集を一部都市で再開しているといった状況だ。

【参考】関連記事としては「Googleの自動運転企業「最も影響力のある企業100社」に選出」も参照。

■日本でもロボタクシー実用化計画

出典:ホンダ・プレスリリース

日本では、ホンダが自動運転タクシーサービスを開始することを2023年10月に発表している。GM、Cruiseと共同開発した専用車両「クルーズ・オリジン」を用いて、2026年1月から東京都内のお台場エリアに数十台規模のフリートを構築し、有償サービスを開始する。


その後、中央区、千代田区、港区及び江東区の一部へと順次エリアを拡大し、最大500台規模まで拡大を図っていく計画だ。

また日産は2024年2月、国内におけるドライバーレス自動運転モビリティサービスの事業化に向けたロードマップを発表した。2024年度にみなとみらい地区でセレナをベースとした自動運転車両で走行実証を行い、2025~2026年度に横浜エリアでセーフティドライバー同乗のもと20台規模のサービス実証を行う。

2027年度には、地方を含む3~4市町村において、車両数十台規模のサービス提供開始を目指す。現在、サービス開始に向け複数の自治体と協議している段階で、準備が完了した市町村から事業を開始していく方針という。

さらに自動運転スタートアップのティアフォーも、特定条件下で完全自動運転を実現する「レベル4」水準の自動運転タクシーによるサービス実証を開始することを2024年5月に発表している。

東京・お台場の複数拠点間でサービス実証を行い、同年11月から交通事業者と共同で事業化を目指すという。2025年に東京の3カ所、2027年までには都内全域でサービスを展開する計画だ。公開されているYouTube動画では、トヨタ製車両が公道を走行する様子が紹介されている。

■楽天グループの出方に注目

この数年で一気に自動運転タクシー実装が進む予定の日本だが、米国のような歩みをたどっていくのだろうか。そして、果たして三木谷会長率いる楽天グループはどのような一手を打ってくるのだろうか。業界の動きを静観するにとどまるのだろうか。注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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