自動運転タクシー、TOYOTA RIDE誕生か!規制緩和で参入可能性

ホンダや日産は?サービス名を予想してみた



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

国内でも実用化に向けた取り組みが本格化し始めた自動運転タクシー。規制緩和により自動車メーカー自らがサービス運営主(事業主)となり、運行管理をタクシー会社などの専門業者に委託できるようになる見込みで、将来、自動車メーカーなど開発事業者の冠が付いた自動運転タクシーサービスが誕生するかもしれない。

自動運転タクシーサービスを正式表明しているメーカーは今のところホンダのみだが、状況次第でトヨタ日産なども参戦する可能性が考えられる。


仮に各社が参戦した場合、そのサービス名も気になるところだ。カーシェアにおける「TOYOTA SHARE」のように、自動運転タクシーも独自のサービス名が付されるものと思われる。

自動運転タクシー開発を正式表明しているホンダに日産、トヨタを加え、それぞれの取り組みとともにサービス名を予想してみた。

【参考】タクシー運行管理の規制緩和については「自動運転タクシー、自動車メーカーの「単独参入」可能に!規制緩和の方針判明」も参照。

■ホンダの取り組み

2026年初頭にサービスイン

出典:Ian Muttoo / Flickr (CC BY-SA 2.0)

ホンダは2023年10月、米GM(ゼネラルモーターズ)とGM傘下Cruiseとともに東京都内で2026年初頭に自動運転タクシーサービスを開始する計画を発表した。


3社は2018年、自動運転技術を活用したモビリティの変革を目指し共同開発を開始した。さまざまな使用形態に対応するCruise向けの無人ライドシェアサービス専用車の共同開発を行い、無人ライドシェアサービス事業のグローバル展開も視野に入れた協業だ。

この共同開発の成果は、2020年に発表された運転席のない自動運転サービス専用車「Cruise Origin(クルーズ・オリジン)」に象徴されている。また、Cruiseは2022年に米サンフランシスコで自動運転タクシーサービスを開始するなど、先駆的に取り組んでいる。

日本においては、2021年1月に自動運転モビリティサービス事業に向けた協業を行うことに合意し、GM・Boltをベースにした自動運転車両「クルーズAV」で技術実証に着手した。米国仕様の自動運転システムを日本仕様に置き換えるなど、日本の道路事情や交通ルールに即したシステムへの改変を進めている。

国内における自動運転タクシーサービスに向けては、まずサービス提供を担う合弁を2024年前半にも設立する方針だ。使用モデルはオリジンで、2026年初頭に東京都内のお台場エリアでのサービス開始を目指す。


その後、中央区や港区、千代田区へと順次拡大を図っていき、500台規模のフリートを構築していく計画だ。

出典:ホンダ・プレスリリース

ホンダは頭文字をつなげた造語で勝負?

2026年開始予定のホンダの自動運転タクシーは、どのようなサービス名となるのか。「タクシーにサービス名?」と疑問に思う人がいるかもしれないが、わかりやすく言い換えればアプリ名だ。

自動運転タクシーは基本的にアプリを使用した配車サービスとなり、タクシープールからの乗車や流し営業などはない。配車前提となるため、ホンダの自動運転タクシーを利用する際はアプリを立ち上げることになる。

つまり、「タクシー利用=アプリ利用」となり、事実上アプリの名称がサービス名となるのだ。

パートナーのCruiseのアプリは「Cruise – Driverless Rides」となっており、特にこだわりはないようだ。では、ホンダはどうだろうか。

ホンダのモビリティサービスを参照すると、カーシェアは「EveryGo(エブリゴー)」、自転車向けの電動アシストユニット・コネクテッドサービスは「SmaChari(スマチャリ)」となっている。

また、協調人工知能「Honda CI」を活用した「Honda CIマイクロモビリティ」として、搭乗型を「CiKoMa(サイコマ)」、徒歩での移動に追従するタイプを「WaPOCHI(ワポチ)」とそれぞれ命名している。

CiKoMaは「Cooperative Intelligent KOMA」の略で、「駒:仔馬」の意を汲んでいる。WaPOCHIは「Walking Support POCHI」の略で、ペットのように寄り添って歩行移動をサポートするロボットを意味する。

ついでに、ホンダのヒューマノイドロボット「ASIMO」は「Advanced Step in Innovative Mobility」の頭文字をとったものだ。

意外と「ホンダ~~」のパターンは少なく、また頭文字をとった造語を使用する例が多い印象だ。

素直に考えれば、「Honda」「Cruise」「Taxi」「mobility」「Autonomous」「Ride」などを絡めたサービス名となりそうだが、サイコマやワポチのように、覚えやすさや直感性を意識しないオリジナルの名称で勝負してくることも考えられそうだ。

【参考】ホンダの取り組みについては「ホンダの自動運転タクシー、Googleすら未実現の「運転席なし」」も参照。

■日産の取り組み

2027年にオンデマンドシャトルサービスを計画

日産は2017年、「もっと自由な移動を」をコンセプトに据えた新しい自動運転サービス「Easy Ride(イージーライド)」の開発をDeNAとともに開始した。

日産の自動運転技術とDeNAのサービス設計や運営ノウハウを融合させた遠隔管制システムで無人走行サービスを実現する試みで、神奈川県横浜市内で複数年度に渡りサービス実証を行っている。

2021年には、NTTドコモとの協業のもと、AI(人工知能)を活用したドコモのオンデマンド交通システム「AI運行バス」を組み合わせたオンデマンド配車サービス実証にも着手している。

2024年2月には、自動運転モビリティサービスの事業化に向けたロードマップを発表した。これまで培ってきた技術やサービスなどの知見をもとに、自治体や交通事業者を含む関係各所と協議の上2027年度からドライバーレス自動運転によるモビリティサービスの提供を目指すとしている。

日産も2024年2月、国内におけるドライバーレス自動運転モビリティサービスの事業化に向けたロードマップを発表し、2027年度をめどに地方を含む3~4市町村において数十台規模のサービス提供開始を目指す方針だ。

2024年度に横浜みなとみらい地区で走行実証を開始し、2025年度以降は実証エリアを拡大し、段階的に自動運転レベルを引き上げていく計画だ。セレナベースの自動運転実証車両を最大20台規模まで増加する。

ただ、このサービスは乗り合い型のオンデマンドシャトルサービスとなる見込みのようだ。複数の乗降ポイントを設定し、そのポイント間輸送をフリールートで運行する形式となる。

出典:日産プレスリリース

Easy Rideは使わない?

自動運転タクシーは現時点では考えていないようだが、独自の自動運転サービスであることには変わらないため、サービス名が付けられる可能性は高い。

順当にいけば「Easy Ride」となりそうだが、その場合、計画段階のサービス名もEasy Rideと表記しそうなものだ。別な名称を考えているのかもしれない。ちなみに、Easy RideはDeNAが商標を取得している。今後の取り組みにDeNAが関わるのか否かも注目すべきポイントとなりそうだ。

日産のモビリティサービスを参照すると、カーシェアは「NISSAN e-シェアモビ」と名付けている。また、福島県浪江町で取り組んでいるオンデマンド配車サービスは「なみえスマートモビリティ」としている。「地域名+共通サービス名」のようなパターンもありそうだ。

タクシーの場合、王道的に「日産ロボタクシー」といった名称を付する可能性もある。プロパイロットにちなんで「Nissan Auto Pilot」のように「パイロット」を使用するかもしれない。横文字をおしゃれに活用する印象が強く、「R-Taxi(robotaxi)」のようなネーミングで勝負に出てくる可能性もありそうだ。

【参考】日産の取り組みについては「2018年から4度目!日産が自動運転タクシー「Easy Ride」実証」も参照。

■トヨタの取り組み

MONET Technologiesがシャトルサービス実証に着手

トヨタは、自動運転車による移動サービスの具体的計画を未だ公表していない。ソフトバンクとの合弁MONET Technologiesがサービス実証に着手する計画が報じられたレベルにとどまっている。

トヨタは2018年、モビリティサービス専用の自動運転EV「e-Palette(イー・パレット)」を発表した。移動サービスをはじめ、移動コンビニやホテルなど多用途に活用できるボックスタイプのモデルで、他社製の自動運転システムを統合できる仕様だ。

2021年開催の東京オリンピック・パラリンピックの選手村で、選手や関係者らの送迎車両として導入されたほか、2022年実施の東京臨海副都心・お台場エリアにおける自動運転実証や、2024年実施の愛知県豊田市によるサービス実証で活用されるなど、徐々に実用化に向けた取り組みが加速している印象だ。

2025年に一部区域でオープン予定の実証都市Woven Cityでもイー・パレットがフル活用されることが期待される。自ら自動運転サービスを手掛けるのか、自動運転ソリューションとしての提供が主体となるのか、今後の動向に注目したい。

一方、主要メディアの報道によると、MONET Technologiesが2024年7月にお台場エリアで自動運転サービスの実証に着手するという。同所でトヨタが建設中の新アリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」周辺でサービス提供するようだ。

2025年以降に有償化し、サービス提供エリアを順次拡大していく方針で、米May Mobility(メイモビリティ)の自動運転システムを搭載したAutono-MaaS車両「シエナ」を導入するという。

公式発表されていないため詳細は不明で、トヨタ自身がどこまで関わるのかも分からない。ただ、MONET TechnologiesやMay Mobilityを通じてデータ・知見はトヨタにも集積されるものと思われる。トヨタ主体の取り組みがいつ明かされるのか、公式発表を待ちたい。

出典:トヨタプレスリリース

「TOYOTA RIDE!」や「トヨタク」?

さて、トヨタが自動運転タクシーを運行する場合、どのような名称になるだろうか。「TOYOTA RIDE!」や「トヨタク」、「TOYOTAXI」などもありそうだ。

既存のモビリティサービスでは、カーシェアが「TOYOTA SHARE」、MaaSアプリが「my route」、サブスクリプションサービスが「KINTO」など、さまざまなパターンが見られる。

トヨタの冠を付するのか、新たな名称で勝負するのか、そしてそれはいつごろ実現するのか……想像力をかきたてられる。

【参考】トヨタの取り組みについては「やはりトヨタが大本命!ついに「自動運転レベル4」、お台場で展開か」も参照。

■海外各社の事例

自社名+Go・Pilotが主流?

海外各社の事例を見ると、パイオニア的存在の米Waymoは自動運転配車サービスを「Waymo One」という名称で展開している。

中国企業では、百度(バイドゥ)が「Apollo Go(キャロットラン/萝卜快跑)」、WeRideが「WeRide Go」、Pony.aiが「Pony Pilot」といった具合だ。

「自社名」+「Go・Pilot」が主流となりつつある印象だ。

日本では、日本交通がタクシー配車アプリ「GO」をいち早く展開しており、サービスを提供する子会社名も「GO」に改称している。混同を避けるため、日本国内では「Go」の使用が敬遠されることも考えられそうだ。

■自動運転タクシー関連の日本国内の動向

ティアフォーもお台場エリア皮切りに参戦

国内では、ホンダのほかスタートアップのティアフォーが自動運転タクシー実用化の取り組みを加速している。

東京都内のお台場エリアの複数拠点間でサービス実証を始めており、従来のタクシー配車が困難な時間帯・経路を対象に交通事業者と共同で事業化を目指す方針で、2024年11月からの事業化を目標に据えている。

その後、段階的に対象エリアや乗降ポイントを拡張し、2025年にお台場を含む東京都内の3カ所、2027年には都内全域を対象に、既存の交通事業と共存可能なロボットタクシー事業を推進する計画だ。

運行管理の規制緩和で参戦企業増加も?

国内では自動運転バスに比べ自動運転タクシー実用化に向けた取り組みが遅れている。定路線を走行するバスに比べタクシーは柔軟なルート走行が求められるため開発ハードルが高いことが理由に挙げられるが、これとは別に参入障壁の問題もあるのかもしれない。

タクシー特措法により、大阪府など国土交通大臣が指定した特定地域・準特定地域ではタクシー事業の新規許可・増車ができないなど、参入するための規制が厳しいのだ。

円滑に自動運転タクシーサービスを行うには、既存タクシー事業者とパートナーシップを結んで運行するのが近道だが、その運行管理を受託するにはタクシー事業者同等の能力が必須とされるため、自動運転開発事業者自らが運行管理する道は事実上閉ざされていたようだ。

現行ルールにおいては、開発事業者は車両やシステムを納入するにとどまり、タクシー事業者自らが運行管理しなければならない。専門知識が必要な自動運転タクシーを取り扱う上で、非効率な運営体制を強いられると言える。

憶測だが、こうした背景があるため自動運転タクシー実用化に消極的だった可能性があるのではないだろうか。

国は、こうした状況を踏まえ運行管理に関する規制を緩和する方針のようだ。自動運転の専門性を持つ事業者は、タクシー事業の許可を持っていなくても、事実上、運行が可能になる。このような規制緩和を受け、改めて自動運転タクシーに挑戦する企業が出てくることに期待したい。

■【まとめ】今後は海外からの参戦も?

今のところ自動運転タクシーへの正式参戦・計画を表明しているのはホンダとティアフォーだけの状況だが、海外からの進出含め新たに参戦する動きは必ず出てくる。

各社は「〇×Go」のようなわかりやすいサービス名が出揃うことになるのか、オリジナルで勝負するのか。早い者勝ちではないが、いち早くサービスを浸透させた企業の名称が自動運転タクシーの代名詞のように扱われる可能性もある。改めて各社の動向に注視したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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