自動運転車は「夕暮れ」「旋回」が苦手!米、事故分析で判明

トータルの安全度は手動運転より上



出典:Cruise公式ブログ

自動運転車と人間が運転する自動車を比較した場合、ある「2つの状況」を除いて自動運転車の方が安全性が高いという研究結果が発表された。

この研究は米国の研究者により行われたもので、「夜明け・夕暮れ」と「方向転換」という状況を除けば、自動運転車は手動運転の車よりも安全であることが分かったという。


▼調査論文
https://www.nature.com/articles/s41467-024-48526-4

■トータルでは自動運転に軍配

セントラルフロリダ大学の研究者2人は、自動運転車と人間が運転する車の安全性を比較するために、2016年から2022年までのカリフォルニア州で起きた自動車事故のデータを分析した。なおカリフォルニア州では、Google系の自動運転開発企業WaymoやGM傘下のCruiseによる自動運転タクシーの商用化がすでに行われており、数千台の自動運転車が公道を自由に走行している。

自動運転車2,100台と人間が運転する車3万5,113台の事故データについて、さまざまなシナリオでの衝突率を比較した。その結果、ほとんどの条件下において自動運転車は人間が運転する車よりも事故を起こす確率が低く、安全であることが分かったという。

【参考】関連記事としては「自動運転車の事故一覧(2024年最新版) 日本・海外の事例を総まとめ」も参照。



■弱点は「夜明け・夕暮れ」「方向転換」

ただし、ある2つの状況においては、自動運転車の方が事故率が高いことが判明した。

1つ目は「夜明け・夕暮れ時」だ。日没や日の出のような光量の少なく薄暗い状況では、自動運転車のセンサーに混乱をきたすようだ。2つ目は「方向転換(旋回)時」で、車両が方向転換する際に発生する可能性のある複雑な状況下では、自動運転システムが正常に作動しないことがあるという。

研究者たちは、今回の結果により自動運転車の弱点が浮き彫りになることで、自動運転技術の開発企業や自動車メーカーが問題解決に重点的に取り組んでいくことにつながり、最終的にはより安全な自動運転車となるはずだと提言している。

また人間が運転する車と同様に、自動運転車も技術が成熟するにつれてより安全・安心なものになるだろうとも予測している。


各車種の事故に影響する要因の分布。35,133件のサンプルによるHDV(手動運転)事故=出典:https://www.nature.com/articles/s41467-024-48526-4/figures/2
各車種の事故に影響する要因の分布。1,099件のサンプルによる自動運転レベル4の事故=出典:https://www.nature.com/articles/s41467-024-48526-4/figures/2

■重要なことは事故率の比較

自動運転はまだ新しい技術であり、危険だというイメージを持つ人が多い。ただし今回のように具体的なデータで自動運転車と手動の車の事故率を比較できるのなら、自動運転車への社会受容性も高まっていくのではないだろうか。

自動運転技術の確立が一段落して実装が進む米国では、さらに一歩進んで自動運転車の安全性をどう保っていくのかが今後の課題になりそうだ。

【参考】関連記事としては「Googleの自動運転車、Tシャツの「STOP」絵柄に騙される」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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