日本政府が割れている。6月にライドシェアの全面解禁について一定の方向性を示す考えだったが、閣僚内で意見が分かれ、結論を先送りする格好となった。いわゆる「棚上げ状態」になったわけだ。
政府・与党においては、規制改革担当大臣である河野太郎氏がライドシェア全面解禁の推進派の急先鋒だ。しかし、国土交通相である斉藤鉄夫氏は慎重な姿勢を示しており、政府内の足並みが揃っていない。
ライドシェアに関しては、運営会社をタクシー会社に限定した「日本版ライドシェア」が4月からスタートしたが、これには批判の声も多い。日本版ライドシェアでは、海外のように一般人がUberなどのアプリを通じて隙間時間に気軽にドライバーとして働くことができず、規制が強すぎるとの指摘がある。
■規制の中で事業を展開してきたUber
ライドシェアの世界的大手企業は米Uber(ウーバー)だ。日本にもUber Japanとしてすでに進出済みだが、アメリカのように一定ルールの下で自由にライドシェアビジネスを展開できていないことから、事業の柱をタクシー配車アプリにとどめていた。
そんな中で、運行主体をタクシー会社に限定した日本版ライドシェアの枠組みがスタートした。Uberは十八番(おはこ)のライドシェアビジネスを自社で主体的に展開できず、Uberアプリを通じてタクシー会社によるライドシェアの導入支援を行うことを発表した。さぞ唇を噛みつつの決断だっただろう。
【参考】関連記事としては「タクシー会社限定ライドシェア、UberとDiDi「裏方役」で苦渋の参入」も参照。
中国でライドシェアサービスを展開する最大手企業のDiDiも、Uberのように「裏方役」に徹さざるを得ない状況となった。DiDiモビリティジャパンは、乗客向けのアプリの開発やドライバー向けアプリの開発、導入を検討しているタクシー事業者向けのプロダクト開発などの支援を開始すると発表している。
■日本のガラパゴス化は加速するのか
6月に入ってライドシェアの全面解禁に向けた方向性が発表され、その内容がタクシー会社以外にもライドシェアのビジネス展開を解禁するものなら、UberやDiDiにとってはかなりポジティブなニュースとなるはずだった。
しかし、方向性の結論が先送りされることになったいま、両社は何を考えているだろうか。日本撤退の可能性もなくはない。Uberの撤退は日本人にとってマイナスの側面が大きいのではないか。なぜなら、多くの海外企業がUber撤退を機に日本への参入の難しさを痛感し、ビジネス展開を後回しにするかもしれないからだ。
こうした動きは日本企業にとっては良いことかもしれない。「日本人」という顧客を海外企業に奪われないからだ。しかし、サービスを利用するユーザーにとってはサービスの提供者が日本企業か海外企業かは関係ない。より便利なサービスを使えることこそが、ユーザーにとっての最大の利益だからだ。
ただでさえガラパゴス化が進んでいるとされる日本。今回のライドシェア全面解禁を機に、日本のガラパゴス化にさらに拍車がかかるのだろうか・・・。
【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?(2024年最新版)日本の解禁状況や参入企業一覧」も参照。