【2023年ランキング】自動運転ラボ、読まれた記事トップ10

反則金ゼロ化?配送ロボ襲撃?トヨタ関連?

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出典:TikTok/@filmtherobotsla

2023年もいよいよ師走を迎え、終わりを告げようとしている。レベル4法施行などさまざまな動きがあった自動運転分野で、より読者の興味を引いたニュースは何だったのか。

アクセス回数をもとに、2023年によく読まれた記事トップ10を紹介していく。

■1位:快挙!日本発の「自動バレー駐車システム」、国際標準に(2023年7月31日付)

自動バレーパーキングに関する記事がランキング1位に輝いた。日本とドイツが主導する自動バレー駐車システムに関する国際標準が発行された内容だ。駐車場における自動運転レベル4を実現する技術で、自家用車の自動運転化の第一歩と言える。

自動バレーパーキングは、駐車場内において無人運転を実現する技術だ。所定の駐車場出入り口などで乗員がクルマを降りた後、自動車が自動で空きスペースまで移動する。帰る際も、スマートフォンなどで操作すれば出入り口まで自動でクルマが戻ってくるイメージだ。

空港や商業施設など、大規模な駐車場では自車を見失いやすく、また停めた位置から施設入り口まで距離が離れている場合も多い。空いているスペースを探す手間もいらない。

施設側としては、乗員の乗り降りスペースが不要となるため、一区画を狭く設定することが可能になり、より多数のクルマを収容することが可能になる。駐車場内がクルマ専用空間となることで、事故の低減にも期待できる。

システム構成は以下の3タイプが考えられるが、特に③のタイプでは、互いに独立したシステムを有する車両とインフラをどのように連携・連動させるかが重要となる。

この強調するためのインタフェースについて、日本では国主導のもと自動バレー駐車システムの実証プロジェクトで検討が進められてきた経緯があり、ここで確立された技術が国際標準に織り込まれることとなった。

ドイツではメルセデス・ベンツとボッシュ主導のもと空港などで実用化が始まっている。日本でも今後どのような動きが出るか、要注目だ。

■2位:自動運転時代、年間500億円の反則金がゼロに(2023年1月19日付)

自動運転時代の反則金に関する記事が2位となった。日本には、交通反則通告制度というものがある。道路交通において、比較的軽微な違反を犯した場合、反則金を納めることで刑事裁判などの審判を受けずに事件が処理される制度だ。いわゆる「青切符が切られる」ものが相当する。重大な違反については適用外となり、「赤切符」が切られて刑事罰や罰金刑の対象となる。

納付された反則金はまず国庫に納められ、その後「交通安全対策特別交付金」として交通安全対策を目的に各自治体に交付される。その総額は年間500億円に上る。

大きな財源だが、本格的な自動運転時代が到来すれば、この財源が枯渇する恐れがある。自動運転システムは、人間と異なり道路交通法に違反する行為を行わないためだ。まだまだ先の話だが、道路上を走行するクルマがコンピュータに置き換えられれば、交通違反は激減し反則金や罰金が発生しなくなるのだ。

もちろん、道路上の自動車がすべて自動運転化されれば、安全面の対策や啓発はパーソナルモビリティや歩行者向けなどに限られてくるため、支出も減少するものと思われるが、決してゼロになることはない。

こうした財源をどのような形で補填していくのか。また、未来の道路交通はどのように変わっていくのか。必見だ。

【参考】詳しくは「自動運転時代、年間500億円の反則金がゼロに」を参照。

■3位:セブンイレブンの自動運転ロボ、L.A.で襲撃される(2023年8月15日付)

日本でも実用実証が始まっている自動配送ロボット。歩道をゆっくりと走行し、料理や日用品などを注文者のもとへ届ける無人ソリューションだ。

ラストマイルを担う期待のロボットだが、一足早く普及が進み始めた米国では残念な事件が頻発している。荷物を狙う強盗、あるいは愉快犯的なものだろうか、ロボットが襲撃される様子が複数報告されているのだ。

白昼堂々、周囲の目を気にすることもなくロボットを襲う姿がたびたび目撃されており、その様子を収めた動画が拡散する始末だ。こうした事件はロボットのみならず、自動運転車も被害にあっている。

米国ならでは…と言いたいところだが、多かれ少なかれ日本でも発生するものと思われる。愉快犯や強盗のみならず、酔っ払いに絡まれる可能性も考えられる。こうした輩に社会の理を説いても無駄なため、セキュリティを高めるほかない。

警告音や搭載カメラによる映像記録、自動通報システムなど、さまざまな手段が講じられているが、未然防止に向けさらなる一手が必要なのかもしれない。

視点を変えると、こうした点も踏まえた保険商品が人気を博す…と言ったことも考えられそうだ。

■4位:自動運転部門のWoven、ついに社名を「トヨタ」へ!(2023年2月20日付)

トヨタグループの中で先進開発を担う国内拠点「ウーブン・プラネット・ホールディングス」が、社名を「ウーブン・バイ・トヨタ」に変更した。トヨタの名を冠し、本丸であるトヨタ自動車との結びつきを強化していく方針のようだ。

ウーブン・バイ・トヨタの前身は、AIや自動運転に代表される最先端技術の研究開発を行う国内拠点として2018年に設立されたTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)にさかのぼる。

2021年1月に事業拡大に向け組織を再編し、持株会社ウーブン・プラネット・ホールディングス体制に移行した。Woven City関連の事業をはじめ、自動運転やADAS、ソフトウェアプラットフォーム「Arene」、自動地図生成プラットフォーム「AMP」の開発などを担っている。

配車サービスLyftの自動運転開発部門Level 5や高精度地図に関する技術を持つCARMERAなどを次々と買収して技術開発力を高め、2022年5月には米国の開発拠点TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の自動運転ソフトウェア開発部門も統合するなど、グループとして随一の研究開発拠点へと成長を遂げている印象だ。

2023年9月には、トヨタ自動車がウーブンを完全子会社化したほか、TRI-AD時代から組織をけん引してきたジェームス・カフナーCEOが退任し、デンソー出身の隈部肇氏が代表取締役に就任する人事も発表された。

これまでの比較的自由な開発体制から、トヨタ自動車やデンソーとの連携のもと、クルマの「知能化」や「ソフトウェアの実装」を加速するフェーズに移行したという。

トヨタ自動車本体も豊田章男氏から佐藤恒治氏へバトンが継承された。新体制のもと、グループとして次世代モビリティ社会をどのように創造し、ビジネス化していくのか。今後の動向に要注目だ。

■5位:孫氏、6兆円上場で起死回生!カギは「自動運転半導体」(2023年4月17日付)

ソフトバンクグループ傘下の半導体設計企業Armが、米ナスダック市場に上場を果たした。上場日となった9月14日の終値は63.59ドルまで伸び、時価総額652億ドル(約9兆6,100億円)を記録した。

ソフトバンクグループが2016年にArmを買収した際、その額は約240億ポンド(約310億ドル/約3.3兆円)だった。単純計算はできないものの、その価値を3倍近くまで高めたのだ。

グループの代名詞的事業である投資事業は、世界経済の揺らめきに翻弄され大きな浮き沈みを繰り返し、孫正義会長の口から一時「守り」というワードが飛び出すほどの苦境に立たされていた。こうした中、Arm上場計画の成功は非常に大きなものと言える。

また、半導体設計事業そのものの展望も明るい。これまではスマートフォンなどの小型IoTデバイスの需要が中心だったが、省電力化の波がすべての業界に押し寄せており、Armの武器である低消費電力を実現する技術への注目度が高まっているのだ。

今後のカギは、高性能化と省電力化をいかに両立させるか――といった観点だ。高性能チップが求められる自動運転などの分野に通用する技術を磨き、NVIDIAなどの半導体企業としっかり協業できる体制が確立されれば、Armの価値はまだまだ伸びていくことになりそうだ。

■6位:第二青函トンネル、「自動運転専用道」が実現か(2023年8月4日付)

1988年の開業から45年が経過した青函トンネル。本州と北海道を結ぶ重要な海底トンネルだが、次の時代に向け新たなプランが周辺自治体で浮上しているようだ。

現在のトンネルは鉄道専用だが、時代に合わせ自動車向けのトンネルを新設する案だ。さまざまな案が持ち上がっているようだが、一般社団法人「日本プロジェクト産業協議会」が提案する自動運転専用自動車道を建設する構想「津軽海峡トンネルプロジェクト」が注目を集めているという。

同プロジェクトは、従来の青函トンネルを新幹線専用とすることで本来の高速性を発揮しつつ、農業・水産資源の一大宝庫である北海道との物流網強化を両立するため、自動運転車専用道路と鉄道貨物を併用したトンネル「津軽海峡トンネル」を新設する――といった内容だ。

すべての車両が自動運転化されていないことも考慮し、自動運転未対応車を積載する自動運転パレット台車輸送を導入する案なども盛り込まれている。延長30キロを超える長いトンネルだが、自動運転車のみ通行可能とすることで事故の発生を激減させ、安定した輸送・通行を実現できる。

海底ではないが、スイスでは物流用途で地中に自動運転専用の地下トンネルを建設する一大プロジェクトが進められている。増加する自動車に対し道路のキャパシティが不足する中、地下に活路を求めるのも次世代交通の在り方として有効な手段なのかもしれない。

【参考】詳しくは「第二青函トンネル、「自動運転専用道」が実現か」を参照。

■7位:自動運転、国交省が「トロッコ問題」の解決などに予算2.4億円計上(2023年8月29日付)

国土交通省の2024年度予算概算要求において、自動運転の「トロッコ問題」解決に向けた法規要件の策定が盛り込まれていることが明らかとなった。

厳密には、「自動運転レベル4の法規要件の策定」として、システム責任の範囲やシステム判断のあり方、安全な走行環境の整備などについて調査検討を進める内容だ。

道路上で生じ得るさまざまな事象に対し、システムが安全を保証すべき範囲を明確化するとともに、どのような判断をしても被害が生じる場合などにおける適切なシステム判断のあり方を検討する。これがまさに「トロッコ問題」だ。

前方に急に飛び出した歩行者を避けるためには、自車をガードレールに突っ込ませるか対向車側にはみ出させなければならないとき、どのような判断をすべきか。また、急ブレーキが間に合った場合でも、急制動によって中の乗客がけがをするケースなども想定される。

こうした際、自動運転システムはどのような判断をすべきか。そして、誰がどこまで責任を取るべきか――といった点を明確化していく取り組みだ。

非常に細かなケースまですべてを網羅することは困難かもしれないが、方向性を明確にすることで徐々に判断基準が整う。2024年度事業においてどこまで進展するか、要注目だ。

■8位:トヨタシティ、選ばれし「初期住民360人」になるための攻略法(2023年8月21日付)

トヨタが静岡県裾野市で建設中の実証都市「Woven City」に住むためには?――といった主旨の記事が8位にランクインした。計画通り進めば、2025年に第一期オープンを迎え、初期居住者として360人がWoven Cityに住むことになる。将来的には2,000人規模まで拡大する方針だ。

Woven City運営を担うウーブン・バイ・トヨタによると、当面は社会課題を一緒に解決していく発明家や高齢者、子育て中の家族などを想定しているようだ。

さまざまな実証を行う上で研究を進めるエンジニアをはじめ、解決すべき社会課題を抱えることが多い高齢者などを中心にまちを形成し、協調して実証の成果を高めていく格好だ。

2024年度中に第一期工事を終える予定で、それと前後するタイミングで実際の居住に関する詳細も発表される可能性が考えられる。

エネオスなどいくつかの企業が参画を表明しているが、各企業の取り組みや住民との関わりなども徐々に明らかになってくるものと思われる。

まだまだ全体像を見通しにくいWoven Cityだが、実証都市としてのポテンシャルを最大限発揮し、未来を見据えた先進的な取り組みで新たな社会を創造していってほしい。

■9位:自動運転を無能化!ボンネットに三角コーン、反対派が抗議活動(2023年7月14日付)

自動運転に抗議する活動が9位にランクインしたようだ。交通安全や公共交通の促進を提唱する米国の団体「Safe Street Rebels」が、自動運転車のボンネットに三角コーンを載せ、走行を妨害しているという。

三角コーンを置かれた自動運転車は走行不能になり、機能が強制的に無能化させられるという。同団体は「サンフランシスコに自動運転車はこれ以上不要」とし、抗議活動を「Week of Cone(コーン週間)」と名付けWaymoCruise自動運転タクシーを妨害している。

彼らの活動は自動車社会全体に向けられたもので、決して自動運転車のみをやり玉にあげたものではない。ただ、有人ではなく無人の自動運転車は三角コーンを置かれると自力で対処できず、ある意味効果的と言える。

こうした活動とは別に、3位にランクインした自動配送ロボットへの襲撃同様、自動運転車に対する嫌がらせ行為も横行している。大人数で車両を取り囲んで走行を妨害したり、モノを投げつけたりスプレーを吹きかけたり……とひどいありさまだ。

多くの人が無人モビリティを受け入れているが、こうした事案を抑制するためには、さらなる社会受容性の向上と安全上の対策が必要となりそうだ。

■10位:自動運転向け「人間に見えない塗料」、日の丸技術に世界驚く(2023年2月11日付)

日本ペイントが、LiDARで検出可能な塗料「ターゲットラインペイント」を発表した。自動運転分野を視野に収めた特殊な塗料で、新たな道路インフラとしての活用に期待が寄せられる。

新たに開発した塗料は、自動運転車で広く採用されているLiDARで検出可能なもの。肉眼では見えづらいため、人間のドライバーの運転に影響を及ぼすことなく、自動運転車のみに注意や指示を与えることができる。

阪市高速電気軌道による大阪・関西万博に向けた実証や、西新宿エリアにおける東京都の事業など、すでに各地の実証への導入が始まっており、さまざまな活用方法の模索が進められている状況だ。

自動運転車は、正確に車道を捉えるため車線のほか高精度3次元地図に記された仮想の車線中心線などを参照しながら走行するが、こうした仮想地物を実際の道路に施し、汎用性を高めることが可能になる。アイデア次第でさまざまな用途で活用できそうだ。

■【まとめ】自動運転車の事故や事件のニュースは注目を集めやすい?

意外にも、レベル4法施行に関する情報はランク外となった。一方で、米国における自動配送ロボットや自動運転車を妨害・襲撃する記事がランクインするなど、事故や事件ものへの興味・関心が強く表れる結果となったようだ。

10月に発生したCruiseの人身事故もアクセス数が伸びているものと思われるが、恐らく集計期間が足りずランクインに至らなかったのではないだろうか。事故の類はやはり目を引きやすく話題になりやすいのだろう。

2024年は、明るい内容で目を引くニュースが続々と飛び出すことに期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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