自動運転時代に到来すると、ある変化が起きる。スピード違反や信号無視などの反則金が徴収されるケースが極端に減る。自動運転システムは人間と違って、スピード違反をせず、意図的な信号無視はしないからだ。
もちろん、こうした道路交通法の違反が減ること自体は喜ばしいことだ。しかし、反則金はまず国に納められ、その後、「交通安全対策特別交付金」として都道府県や市町村に交付されているため、その財源が将来的に減るということは国や自治体には何らかの対応が求められそうだ。
■信号や標識の設置・管理費用が枯渇?
冒頭も触れたが、自動運転システムは基本的には交通違反を犯さない。技術自体が安全度の向上を第一の目的として開発されているため、制限速度を超えるスピードで走行しないのは当然のことだ。
ただし、システムが読み込む制限速度のデータ自体に誤りがあったり、信号の色をセンサーが見間違えて赤信号なのに交差点に進入してしまったり…といったケースは考えられる。しかし、技術が進化するにつれ、こうしたことは極めて少なくなっていくはずだ。
では、反則金の徴収が減ることで、都道府県や市町村に交付される交通安全対策特別交付金が減ってしまうことに、国や自治体はどう対応するのだろうか。
この交通安全対策特別交付金は、信号機や横断歩道、道路標識、歩道、ガードレールなどの設置や管理などのために使われているため、どこかからか財源を引っ張ってくる必要が出てくる。
自動車や交通とは関係のないところから財源を引っ張ってくることも考えられるが、そうではないなら、一律に自動運転車に「新たな税」が課されることになるかもしれない。反則金の代わりにだ。
反則金の年間の規模はどれくらい?
総務省は、交通反則金などの収入から通知書送付などにかかる費用を差し引いた金額を、交通安全対策特別交付金として地方公共団体に交付しており、過去、2021年3月期分として239億5,200万円、2021年9月期分として270億3,400万円が交付されていることから、1年間での合計は約500億円に上る。
■先回りしての議論が必要に
現在、国が主に議論しているのは、自動運転車の走行に関するルール設計や車両の販売に関する規制の検討などだ。しかし自動運転社会に突入すると、この記事で取り上げた「反則金」などのように、さまざまなところに変化が生じてくる。
国、そして民間レベルでも、今後、どんどん先回りしての議論が求められることは確実だ。
【参考】関連記事としては「自動運転車が普及すると「車庫」が無くなる!」も参照。