快挙!日本発の「自動バレー駐車システム」、国際標準に

駐車場におけるレベル4実装が加速?



経済産業省は2023年7月27日、日本とドイツが共同開発した「自動バレー駐車システム」の国際標準が発行されたと発表した。駐車場内において自動運転レベル4相当の無人走行・無人移動を可能にする技術に係る要件だ。


明確に規格化されたことで民間の開発が促進され、今後社会実装が加速していくことに期待が寄せられる。標準化に向けた取り組みとともに、自動バレー駐車システムの概要について解説していく。

▼「自動バレー駐車システム」に関する国際標準が発行されました|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230727004/20230726003.html

■自動バレー駐車システムとは?
乗降ポイントから駐車区画まで車両が自律移動

自動バレー駐車システム(自動バレーパーキングシステム)は、駐車場内において無人で車両を移動させて駐車させる技術・サービスを指す。「バレーパーキング」は、ホテルなどの施設で係員が利用者の車両を預かり駐車場に入出庫するサービスを指す。これを自動運転技術などによって無人化したものが自動バレーパーキングシステムだ。

自動車ユーザーは、駐車場の入り口など特定の乗降場で車両から降り、スマートフォンなどを操作することで車両が自動で空いている駐車スペースまで移動する。


再度乗る場合も同様で、乗降場でスマートフォンなどを操作すると車両が自動で目の前まで移動してくるシステムだ。

自動バレーパーキングシステムを導入することで、駐車場内における接触などの事故が減少するほか、各駐車区画における乗降スペースを考慮する必要がなくなるため、これまでより間隔を詰めて車両を停めることが可能になり、スペースを有効活用することができる。

利用者目線では、空きスペースを探す手間が不要となるほか、広い駐車場においてマイカーを見失う心配もなくなる。

出典:経済産業省プレスリリース
駐車場における無人走行は3パターン

駐車場における無人走行は、大きく以下の3つに分けることができる。


  • ①車両自らが自律走行を行うタイプ
  • ②インフラ側が車両を無人走行させるタイプ
  • ③車両と駐車場インフラが連携して無人走行させるタイプ

①は、オーナーカーなどに搭載された、駐車場をODD(運行設計領域)とするレベル4システムが代表的だ。駐車時における無人走行を自動運転システムのみで完結することができる。事前に登録した駐車場所のみ対応するシステムや、白線で区画されていれば場所を選ばずどこでも駐車可能なシステムなどがある。

②は、駐車場インフラ側主導のもと車両を無人走行させるタイプだ。基本的には、車両に一切の要件を求めず、インフラ側のシステムのみで無人駐車を行うものを指す。三菱重工業と仏スタンレーロボティクスが取り組むパーキングシステムなどが代表的だ。

広義に捉えれば、既存の機械式立体駐車場なども該当するのかもしれない。

③は、車両に搭載されたセンサー類や自動走行システムと、駐車場インフラに設置されたセンサー類などを連携させて、駐車場内における自律走行を実現するシステムだ。

①と比較すると、自動車に求められるセンサーなどの要件が低く、ADAS向けカメラや後付けシステムなどで対応可能なケースが多そうだ。また、②と比較すると、インフラに掛かるコストも低減できそうだ。

【参考】自動バレーパーキングについては「自動運転と駐車」も参照。

■自動バレー駐車システム標準化に向けた取り組み
2017年に国際標準化を呼びかけ

国内では、経済産業省・国土交通省が所管する「自動走行ビジネス検討会」のもと、一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証事業が2016年にスタートした。2018年度には実際の駐車場を使用した機能実証が行われ、ビジネスモデルの具体化が進められた。

日本は2017年、自らが国際議長を務めるISO(国際標準化機構)とTC204(ITS 高度道路交通システム)、WG14(走行制御)に、実証で確立した技術を織り込んだ標準について提案し、国際議論を呼びかけた。その成果が実り、2023年7月に国際標準「ISO 23374-1」として発行された。正式名称は「Intelligent transport systems — Automated valet parking systems (AVPS/自動バレーパーキングシステム)」だ。

▼ISO 23374-1:2023|Intelligent transport systems — Automated valet parking systems (AVPS) — Part 1: System framework, requirements for automated driving and for communications interface
https://www.iso.org/standard/78420.html

AVPSは、駐車施設の所定エリア内でレベル4の自動運転を実行するもので、ISOでは機能の性能要件や自動運転が行われる駐車施設に求められる環境要件、性能要件を検証するための試験手順が規定されている。

駐車場内における車両制御を車両側が担うタイプ、インフラ側が担うタイプ、車両とインフラが連携・協調するタイプの3つのタイプのインターフェース仕様を規定し、さまざまな方式に対応している。

詳細は不明だが、車両と駐車施設との適合性の確認や、自動運転ができない場合の遠隔支援や復旧、他の施設利用者の行為に応じた運転停止命令の実行なといった管理機能に関する要件も含まれている。

自動バレー走行システム規格化に向けた取り組みも

自動駐車関連の国際標準化に向けた取り組みは、すでに標準化された「駐車支援システム(APS/ISO 16787)」や「部分的自動駐車システム(PAPS/ISO 20900)」をはじめ、自動バレーパーキングシステムのODDを異なる駐車場間の連絡路などまで拡大した「自動バレー走行システム(AVDS)」の議論もWP14で進められているようだ。

ADVSの例としては、空港の出発ターミナルで乗員が降車した後、任意の駐車場まで車両を移動させるサービスや、駐車した車両を自動で整備場まで移動し、整備や充電、洗車などのサービスを受けた後に再び元の位置まで戻すサービスなどが挙げられている。

このほか、WP18で議論された「自動バレー駐車システム(AVPS)の統合的なセキュリティ/ISO/TS 23374-2」や、WP19で議論された「駐車情報のコアデータとそのモデル/ISO/TS 5206-1:2023」などもすでに規格化されている。

■自動バレー走行システム開発の動向
海外ではベンツ×ボッシュが先行

バレーパーキング技術は、海外ではメルセデス・ベンツとボッシュのドイツ勢が先行している。共同開発を進める両社は国の認可のもと、メルセデス・ベンツ博物館駐車場やシュトゥットガルト空港などで自動バレーパーキングシステムをすでに導入している。米国でも不動産事業を展開する米Bedrockと提携し、導入を進めているようだ。

【参考】ベンツとボッシュの取り組みについては「自動バレーパーキング、空港で営業運用へ!ボッシュとベンツが準備開始」も参照。

独BMWと仏ヴァレオも2023年、レベル4の自動バレーパーキングを見据えた戦略的協力関係を締結した。インフラベースのサービスも開発予定としている。

【参考】BMWとヴァレオの取り組みについては「強力タッグで「完全自動運転駐車」!BMWとヴァレオが共同開発」も参照。

このほか、百度や上海汽車、Human Horizonsといった中国勢がオーナーカー向けに自動バレーパーキング技術の搭載を開始している。なお、厳密にレベル4に達しているかどうかは不明だ。

パナソニックやアイシン、三菱重工などが注力

国内では、パナソニックのオートモーティブ社が2019年、無人自動バレーパーキングシステムの開発を発表している。

車両や駐車場インフラに高価なセンサーを設置することなく、車両に搭載された複数のカメラやソナー、レーダーと、駐車枠や停止線といった簡単な2次元路面マップ、既存の監視カメラなどを用いることで、隣接車両との間隔20センチの極狭空間に駐車可能という。

一方、アマノとアイシン精機(現アイシン)は2020年、一般駐車場で自動バレーパーキングシステムの実証を行っている。ナンバープレート認識などを行うカメラシステムで検知した駐車場内の状況・データを自動運転車に提供することで無人駐車を実現するようだ。日本自動車研究所(JARI)も2018年に東京都内で自動バレーバーキング機能の実証を行っている。

【参考】アマノとアイシン精機の取り組みについては「一般駐車場で自動バレー駐車!アマノとアイシン精機、名古屋で実証実験」も参照。

三菱重工グループは仏スタンレーロボティクスと手を組み、自動搬送ロボット「Stan」を活用した自動バレーパーキングの実用化を進めている。

Stanは自動車専用のフォークリフトのようなもので、タイヤを支える形でそっと車両を持ち上げ、自動運転で運搬することができる。利用者はバースと呼ばれる乗降場にマイカーを置けば、ロボットが自動で駐車区画まで持ち運んでくれる。帰りの際はスマートフォンで呼び出す仕組みだ。

このシステムは、ロボットが運搬可能であること以外に自動車に求められる要件がないため、ユーザー側としては利用しやすいサービスと言えそうだ。

【参考】三菱重工の取り組みについては「広い駐車場の「わずらわしさ」を自動運転で解決!三菱重工の挑戦」も参照。

■【まとめ】導入に向けたと取り組み加速に期待

基本的に駐車場は「道路」にあたらないため、レベル4導入のハードルは低い。駐車場運営サイドにおけるメリットが明確になってくれば、導入に向けた動きも徐々に活発になっていきそうだ。

また、応用形とも言える「自動バレー走行システム(AVDS)」の動向にも注目だ。駐車場とその周辺を自律移動可能になれば、「駐車」を起点としたサービスの幅が大きく広がる。今後の開発やサービスの動向に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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