自動運転にAI(人工知能)は必要?倫理観問う「トロッコ問題」って何?

ディープランニングで進化するAI


自動運転の根幹を成すともいわれるAI(人工知能)。トヨタをはじめとする大手自動車メーカーや米NVIDIA (エヌビディア)社などの半導体メーカー、米Google(グーグル)系のWaymo(ウェイモ)など、世界の既存大手企業からスタートアップ・ベンチャー企業などがこぞって開発に力を入れている。そもそもAIとは何か、なぜ自動運転にAIが必要なのかといった基本的な部分を掘り下げ、開発の必要性に迫りたい。







■AI(人工知能)の定義とは?

AIは、人間の脳がおこなっている記憶や判断、学習、推測といった作業をコンピュータがおこない、再現するソフトウェアやシステムのこと。厳密な定義は定まっていないが、要するに人間同様の知能を人工的に再現する試みやシステムを指す。近年では掃除機やエアコンといった身近な家電製品にも広く導入され始めているほか、囲碁のプロを打ち負かすプログラムも開発された。

従来のAIは、豊富なデータと人間の指示により学習・分析をしていたが、現在開発が進められているのは、判断するポイントまでも自ら学習する「ディープラーニング(深層学習)」という手法を用いたものだ。

例えるなら、従来は教科書と家庭教師の指導・管理のもと学習を進めていたが、現在は教科書を読むだけで自ら試験対策をおこなえるようになった感じだろうか。このディープラーニングの導入により、AIは飛躍的な進化を遂げている。

■自動運転に欠かせないAIの役割

自動運転は、言葉のとおり人間がおこなう運転を機械やシステムが自動でおこなうもの。カメラやレーダー、光を使ったセンシング技術を活用する「LiDAR(ライダー)」などが「目」の役割を果たし、そこから得た情報を的確に分析・判断し、加減速や方向転換などを指示する脳の役割をAIがおこなう。

【参考】LiDARは日本を含む世界の各社が開発競争を繰り広げている。詳しくは「自動運転の「目」は800万円!?次世代センサーLiDARの最前線を追う|自動運転ラボ 」も参照。

システムが運転を支援する自動運転レベル1(運転支援)、レベル2(部分運転自動化)においては、一定程度のパターン分析が可能なAIで対応できるかもしれないが、システムが運転を主導するレベル4(高度運転自動化)、レベル5(完全運転自動化)においては、流れる景色のなか、道路や人間、街路樹、自動車、標識、落下物など、さまざまな形や色をしたものが不規則に動くようすを多角的に分析・予測し、判断を下すといった一連の作業を瞬時におこなう必要があり、膨大な情報処理能力と応用力をもって臨機応変に対応できる高度な知能が必要となる。

【参考】自動運転レベルの各定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ 」を参照。

■自動運転実現にAIをどう活かすか

AIが主導する自動運転の実現には、自車の位置を正確に特定する技術が必要だ。現在一般的に利用されているGPSなどの衛星測位システムの精度には誤差があり、10メートルを超す場合もある。これを補うため、内閣府は準天頂衛星システム(みちびき)の打ち上げを進めており、最大で6~12センチメートルの誤差まで補強できるという。

また、これと連動する形で開発が進められているのが高精度3次元(3D)地図(ダイナミックマップ)だ。より精度の高い道路や建物のマップ上に、周辺車両の走行状況や天候状況、事故情報など刻一刻と変化する情報を付加していくもので、自動運転車がLiDARなどの「目」で直接見た情報に、外部からのさまざまな情報を組み合わせることで、AIの能力を最大限生かせるようになる。

【参考】日本においては完成車メーカー各社などが共同出資して運営されている「ダイナミック基盤企画株式会社(DMP)」が、2018年度内に日本国内の全高速道路を3D地図化するべく事業を加速させている。詳しい内容については「高速道の全データは3D地図化する メーカー共同出資DMP社、自動運転実現への重責|自動運転ラボ 」を参照。欧州においてはHEREEテクノロジーズ社という企業が高精度3D地図の整備を急ぐ。この企業にはドイツ勢のBMWやアウディ、ダイムラーが出資しており、欧州におけるDMP社のような存在とも言える。

■自動運転向けなどにAIを開発している主な企業

自動運転車向けのAIは日本企業を始め、世界各国の企業が開発に取り組んでいる。自動運転車の裾野産業の中でも特にスタートアップやベンチャー企業が多い分野だ。

トヨタ:https://toyota.jp/
DeNA:https://dena.com/jp/
コーピー:https://corpy.co.jp/
センスタイム:https://www.sensetime.jp/
OPTIMIND:http://www.optimind.tech/
テスラ:https://www.tesla.com/jp/
アップル:https://www.apple.com/jp/
エヌビディア:https://www.nvidia.com/ja-jp/
ウェイモ(英語):https://waymo.com/
Argo AI(英語):https://www.argo.ai/
ROADSTAR.AI(英語):http://roadstar.ai/
drive.ai(英語):https://www.drive.ai/
百度(中国語):https://www.baidu.com/

■「トロッコ問題」にみるAIの倫理観は?

倫理学の有名な思考実験に「トロッコ問題」がある。「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」といったもので、自動運転においても「急に道路上に5人が飛び出してきた場合、それを避けるためには歩道を歩いている人に突っ込まなければならない」などの形に置き換えられ多くの議論がなされている。

【参考】トロッコ問題はトロリー問題とも呼ばれ、イギリスの哲学者フィリッパ・ルース・フット(1920年-2010年)が提起した倫理学な思考実験のことを指す。人間の道徳的ジレンマや合理性に関する研究の一部として議論が続いている。

ブレーキを踏んでから停止するまでの制動距離は決してゼロになることはないし、ブレーキが損傷することもある。犠牲を避けられない事態に陥った場合、AIはどのような判断を下すのか、下すべきなのか。

解答ではないが、ある研究者は「判断を下すのはAIでもそれを作るエンジニアでもなく、社会である」と述べている。道徳や倫理観を持った多くの人が世論を作り出すことで政策となり、ケースに応じた細かなルールづくりが進められるべき、ということだろうか。







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