自動運転車のメリット、「社会」と「人」でそれぞれ解説!

事故減少や空間の有効利用、低運賃化など



移動サービスの分野で自動運転技術の社会実装が始まった。まだまだ実証を重ねる必要がある開発段階ではあるものの、着実に進化を遂げ成果を出し始めている。







進化の過程にある自動運転は今後、人や社会にどのような恩恵をもたらすのか。この記事では、自動運転車の実用化によるメリットを解説していく。

■自動運転技術はどのように進化していく?

自家用車における自動運転は、ADAS(先進運転支援システム)の延長線上にあると言える。例えば、自動車の前後方向の制御を支援するアダプティブクルーズコントロールや横方向の制御を支援するレーンキープアシスト機能は、単体では自動運転レベル1の技術となる。

この2つが合わさるとレベル2となり、同一車線内における走行を安定して支援することが可能になる。各システムの精度が高まると、日産のプロパイロット2.0のようにハンズオフ運転が可能な高度なレベル2となる。

さらに技術が高まると、一定条件下においてドライバーの常時監視を必要としないレベル3に進化し、自動運転の領域に突入する。ホンダの「Honda SENSING Elite」がこのレベルに相当する。

【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転レベル3搭載車「新型LEGEND」を徹底解剖!」も参照。

厳密には、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストのような制御技術に加え、高精度3次元地図の活用などさまざまな技術を付加したうえでレベル3を実現しているが、技術開発は同一方向を向いている。

さらに制御技術に磨きがかかり、一定条件下においてドライバーを必要としない自動運転が可能となれば、レベル4に達する。自動運転システムが稼働する条件に制限があるものの、稼働中は原則ドライバーの有無は問われず、車内における運転以外の行為「セカンダリアクティビティ」の幅が大きく増す。

レベル4に達すれば、一般乗用車においては車内における行動の自由度が大幅に増すほか、移動サービスや物流面では、ドライバーにかかる人件費を抑えることが可能になり、事業に継続性が生まれるとともにさまざまなサービス増強を図ることも可能になる。自動運転は、各個人や事業、社会にさまざまなメリットを生み出していくのだ。

■「社会」におけるメリット
交通事故が減る

自動運転技術導入における最大の社会的メリットは、交通事故の抑制だ。警察庁交通局による最新のデータによると、2020年中に発生した交通事故は30万9,178件(前年比18.9%減)で、死者数は2,839人(同11.7%減)、負傷者数は36万9476人(同20%減)となっている。

法令違反別では、多い順に安全不確認9万3,123件、わき見運転3万8,748件、動静不注視3万61件、漫然運転2万3,074件、交差点安全進行違反2万443件となっている。中には歩行者の信号無視や横断違反、酩酊などに起因する事故もあるが、大半はドライバーの過失、つまりヒューマンエラーによるものだ。

自動運転は、このヒューマンエラーによる事故を抑制する。仮に車道を走行するすべてのクルマが自動運転車になれば、交通事故は大幅に減少することになると思われる。もちろん、自転車の急な飛び出しにどこまで対応できるかといった問題や、ソフトウェアのエラーに起因する事故の発生などが懸念されるが、総体として交通事故件数が低下することはまず間違いなさそうだ。

道路空間の有効利用と渋滞緩和

ドライバーが不要となる自動運転技術は、バスやタクシーといった移動サービスに利便性をもたらす。人件費におけるコスト削減効果は大きく、地方においては公共交通に継続性が生まれるほか、都市部ではより柔軟なサービスの提供が可能になる。

MaaSとの相性も良く、移動サービス全体の価値向上に寄与することが予想される。移動サービスの利便性が増せば都市部を中心に自家用車離れが進み、高効率の交通社会が形成されることで渋滞解消などにも効果を発揮することが期待される。

スムーズな道路交通によって移動時間の短縮が図られるほか、本格的に公共交通への移行が進めば、片側複数車線の道路では車線減少を図ることも可能になる。空いた車線は、歩道拡張やシェアモビリティの乗降場、物流モビリティの停車スペース、小売りモビリティの販売スペースなど、さまざまな用途に活用することが可能になり、道路そのものの可能性を大きく広げていくことも考えられる。

駐車場用地の有効活用も

自家用車の減少は、駐車場にも影響を及ぼす。自家用車向けの個人駐車場が必要なくなるほか、商業施設併設の大型駐車場も面積を減らすことができる。こうした駐車場用地を新たに活用することが可能になるのだ。

特に不動産が飽和状態の都市部などでは、土地の新たな最有効使用に向けた取り組みが進められそうだ。

地方都市における公共交通の確保

人口密度の低い地方では、バスなどの公共交通の維持が大きな課題となっている。地方公共団体の持ち出しで赤字を埋めるのに限界が生じ、路線バスなどは縮小傾向にある。公共交通の弱体化は住民の転出増にもつながるため、負のスパイラルが形成されつつあるのだ。

この打開策として期待されるのが、自動運転やMaaSだ。コスト削減効果や交通サービス全体の効率化によって、AIオンデマンドバスの導入など地域の実情に合わせた形で持続性のある公共交通サービスを提供することが可能になる。

ドライバー不足の解消

移動サービスやラストワンマイル配送に代表される物流分野では、ドライバー不足が恒常化しつつある。その一方、特に物流分野ではEC需要の増加などを背景に宅配需要が右肩上がりを続けており、配送能力に限界が生じつつあるようだ。

ラストワンマイル配送においては、小型の自動走行ロボット実用化に向けた動きが加速している。各エリアの集配拠点からのラストワンマイルを無人化・自動化することでドライバー不足を解消し、大幅なコスト削減を図ることができる。数百キロに及ぶ長距離輸送も、トラックの隊列走行技術などの開発が進んでおり、ドライバーの負担軽減にも期待が寄せられている。

自動運転が物流業界の救世主となる日は、そう遠くないのかもしれない。

環境負荷の低減効果

自動運転車は基本的に電動が主流になるものと思われる。アクセルワークなどにも無駄がないエコ運転を実現し、燃費の向上や排出する二酸化炭素削減効果などにも期待が持たれている。

■「人」におけるメリット
運転していた時間が可処分時間に

自動運転によって「運転」というタスクから解放されたドライバーは、車内における移動時間を自由に過ごすことが可能になる。従来運転に費やしていた時間が可処分時間となるのだ。

その際、注目度を高めるのが、運転操作以外に新たにドライバーに許される「セカンダリアクティビティ」だ。自動運転レベル3では、システムから手動運転の要請があった際には直ちに運転操作を行う必要があるため、セカンダリアクティビティはスマートフォンの操作など簡単なものに限られるが、レベル4以降では原則自動運転システムが責任をもって運転操作を行うため、セカンダリアクティビティの幅が大きく広がるのだ。

車内テレビで映画鑑賞するはもちろん、ゆったりとした食事やデスクワーク、ゲームなども可能になる。場合によっては、睡眠も可能になるかもしれない。

本格的なレベル4時代が到来すれば、こうした車内行為に焦点を当てた新たなビジネス・サービスが続々と誕生し、新たな市場を形成することも考えられそうだ。

【参考】セカンダリアクティビティについては「完全自動運転で堂々OKな「セカンダリアクティビティ」は?」も参照。

自動運転タクシーを安く利用できるように

自動運転導入によるコストの低下は、交通サービスの運賃にも反映されるかもしれない。米調査会社のARK Investmentが2019年に発表したレポート「BIG IDEAS 2019」によると、消費者が支払う1マイル当たりの移動コストは、従来のタクシー3.5ドルに対し、自動運転タクシーは約13分の1となる0.26ドルになるという。

同様の試算は米テスラやコロンビア大学なども発表しており、決して眉唾な数字ではない。仮にタクシーなどの運賃が10分の1に低下した場合、どのような変化が起こるのか。自家用車離れが急加速し、道路交通の主役がタクシーに代わるかもしれない。それほどのインパクトをもたらすことも想定される。

自家用車と自動運転タクシーの中間に存在する自動運転カーシェアなども需要を大きく伸ばしそうだ。

【参考】自動運転タクシーのコストについては「自動運転技術が東京〜大阪間「1万円タクシー」を実現する」も参照。

宅配便の料金も低下する?

タクシー同様、宅配便料金も自動運転により低下する可能性が考えられる。好きな時間に好きな商品を自由に検索・購入できるECは利便性が高く、市場規模は今後も伸び続けることが想定されるが、ネックの1つに送料が挙げられる。数百円の買い物に送料500円が必要な場合、購入に踏み切れない人も多いのではないだろうか。

しかし、仮に送料が10分の1になった場合を想定するとどうだろうか。従来敬遠していた低価格帯の商品にも手を伸ばしやすくなるはずだ。自動運転配送車や宅配ロボットの実用化がEC需要をさらに助長するのは間違いない。

また、宅配ロボットの実用化は地域の小売にも影響を及ぼす。食料品など日常的な買い物の場を提供するスーパーがECサイトを開設し、地域住民への宅配事業を本格化させる可能性が考えられる。

配送料金を低く抑えられるため、大げさな話だが利用者は大根1本から気軽に宅配を頼むことができる。飲食店などのデリバリーもますます盛んになるかもしれず、地域における小売りをはじめとした実店舗の事業にも大きな影響を及ぼしそうだ。

新たな商機の創出も

人やモノの移動・輸送に利便性をもたらす自動運転車は、付加価値を加えることで新たなビジネスを展開することも可能になる。移動・輸送+αの発想だ。

例えば、自動運転車に睡眠施設を備えれば、移動しながら休憩することが可能な自動運転ホテルが誕生する。睡眠時間も有効活用したい観光需要などを取り込める可能性がある。

また、販売機能を備えれば、無人移動販売を事業化することができる。昼の時間帯に弁当を積み込んでオフィス街に自動運転車を走らせるなど、需要を見込める場所・時間帯に合わせてフレキシブルに販売を行うことができる。

海外では、自動運転車を活用したコンビニや交番などさまざまな取り組みが進められている。移動や輸送に何をかけ合わせれば魅力ある新サービスを生み出せるのか。自動運転から新たな商機が次々と創出される時代が近い将来訪れるかもしれない。

■【まとめ】自動運転が新たな価値を生み出す土台に

自動運転が実用域に達し広く社会に浸透すれば、このほかにもさまざまなメリットが次々と生み出されるものと思われる。発想を飛躍させれば、警備ロボットや無人パトロールカーが高い防犯効果を発揮し、社会全体の犯罪抑止につながるかもしれない。

自動運転そのものが新たな価値を有しているが、そこからさらに新たな価値が生み出される好循環の未来に期待したい。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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