自動運転とトラブル(2022年最新版)

事故や騒動などまとめて解説



自動運転車の実用化に向けた取り組みが世界各地で加速している。米国や中国では実用段階に入っており、一部地域で有料サービスが始まっている。日本をはじめとした各国も今後この動きに追随していくことが予想される。

社会実装が本格化し始めた自動運転だが、それに伴う事故やトラブルも増加傾向にあるようだ。この記事では、自動運転にまつわる事故や騒動などについて解説していく。







■実際に起きた事故事例
Googleの実証車両がバスに接触

Googleの自動運転部門は2016年2月、カリフォルニア州で自動運転の実証中にバスに接触する事故を起こした。

交差点で右折するため右端の車線を走行していたところ、路上に砂袋が置かれていたという。これを避けるため一時停止し、左レーンを走行する車両の通過を待っていたが、いざ左に進路を変更した際に後方から迫ってきたバスに接触した。

各種報道によると、バスが進路を譲ってくれると思い、セーフティドライバーは自動運転モードを継続したという。以下は事故発生時の動画だ。

ウーバーの実証車両が歩行者をはねる

自動運転車絡みの死亡事故は、今のところ米Uber Technologies(ウーバー)が実証中に起こした1件にとどまっている。

2018年3月、ウーバーの実証車両がアリゾナ州を走行中、自転車を押しながら道路を横断していた歩行者をはね、死亡させる事故を起こした。事故の主要因として、同乗していたセーフティドライバーが事故発生時に携帯端末で動画を視聴していたことが挙げられる。

また、ウーバーの自動運転システムが歩行者を検知できず、「自動車」や「自転車」、「その他のオブジェクト」などと認識していたことも発覚している。その挙動についても「左側の車線を走行」「静止中」などと判断したため、ぎりぎりまで衝突の危険性を検知できなかったようだ。

さまざまな要因に基づいて事故が発生した形だが、セーフティドライバーがしっかりと前方に注意を払っていれば防げた事故だ。

【参考】ウーバーによる事故については「自動運転車の死亡事故、「人間」を訴追 AIに運転任せ動画視聴」も参照。

AppleやPony.aiなども

米国では2021年9月、Appleの自動運転実証車両も事故を起こしている。カリフォルニア州での実証中、交差点を右折する際に縁石に接触したようだ。また、中国Pony.aiも同年10月、左車線変更操作を行う際に中央分離帯と交通標識に衝突する事故を起こしている。この事故により、同社はカリフォルニア州道路管理局(DMV)から無人走行ライセンスを停止された。

自動運転実証やサービスが盛んな米国では、こうした事案は珍しくない。NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)によると、2021年7月~2022年6月までの約1年間に米国内で発生したレベル3以上の自動運転車による事故報告件数は145件に上るという。トップは走行距離で群を抜くWaymoで、62件となっている。

出典:NHTSA(※クリックorタップすると拡大できます)

【参考】米国における事故発生件数については「自動運転車の事故、Waymoが62件で最多 米当局が公表」も参照。

名古屋大学の自動運転車が追い越し車両と接触

国内では2019年8月、試験走行中の名古屋大学所有の低速自動運転車が、後方から追い越してきた車両と接触する事故を起こしている。

愛知県豊田市内の公道を時速約14キロで試験走行中、後続車両の一般車両が右から追い越そうとした際、自動運転車が急に右側に進路を変更したため接触した。位置・方位検知機能が進行すべき方位を誤検知したことが主要因とされている。

【参考】名古屋大学の事案については「豊田市の自動運転事故のなぜ 事故検証委の報告内容を考察」も参照。

e-Paletteがパラ選手と衝突

東京オリンピック・パラリンピックの選手村で送迎用に導入されたトヨタの低速自動運転車「e-Palette(イー・パレット)」が、視覚障がいを持つ選手と接触する事故が発生した。選手は軽傷を負った。

パラリンピック開催期間中の2021年8月、選手村内を走行していたイー・パレットが交差点に差し掛かった際、車両のセンサーが人を検知したため一時停止した。その後、オペレーターが安全確認した上で発進したが、交差点を横断していた選手を再度検知し、急ブレーキを作動させたものの間に合わず衝突した。

現場は自動運転車用の誘導員も配置されており、オペレーターと誘導員の連携などに瑕疵があったとされる。

日本モビリティの自動運転バスがトラックに接触
事故発⽣付近の衛星写真=出典:日本モビリティ・プレスリリース(https://www.nichimobi.com/リリース情報/2022070801

広島県福山市では、実証中の日本モビリティの自動運転バスが隣の車線を並走していたトラックに接触する事故が2022年3月に発生した。

片側2車線の公道において左車線を走行中、車線境界線(白線)が途切れた区間に差し掛かった際、自動運転バスが右に寄り、右側車線を走行していたトラックに接触したという。けが人は報告されていない。

自動運転システムそのものに問題はなく、事前の準備段階で策定した走行経路が車線境界線寄りに設定されていたことと、ドライバーの対応の遅れが重なったことが要因としている。

【参考】福山市における事故については「福山市の自動運転事故「白線なし区間での検証が不十分」」も参照。

■発生すると事故に結び付く問題
自動運転システム関連の故障

言うまでもないことだが、自動運転システムのエラーや欠陥は事故に直結するため、常に万全の体制を敷いておかなければならない。

例えば、センサーの誤検知や自車位置推定エラーなどが挙げられる。センサーが道路標識を別の標識として認識したり、歩行者を街路樹として認識したりすれば、それに伴って車両制御の判断も変わってくる。間違った認識のまま判断を下せば、事故を引き起こす可能性は大きく上昇する。自車位置も然りで、位置情報が狂うことで制御判断に支障が生じる。

エラーが出ないよう各システムの精度を高めていくのはもちろん、エラーの発生を前提とした冗長システムを構築し、事故を未然に防ぐことが求められる。

システム関連の設定ミス
出典:産業技術総合研究所お知らせ

自動運転システムそのものに瑕疵がなくとも、その設定に人為的ミスが絡むことで事故を引き起こす可能性はある。

具体例としては、2020年12月に茨城県日立市内で発生した中型自動運転バスの実証実験が挙げられる。事前設定として必要な位置推定機器の再起動を忘れたため、GNSS(衛星測位システム)方式と磁気マーカー方式の切り替えに支障が生じ、ガードレールと接触する事案となった。

自動運転システムの稼働中に人が介在することはなくとも、その前段階で各ソフトウェアなどをしっかりと管理しておかなければならないようだ。

同様に、センサーの汚れチェックやタイヤなどの日常点検も厳密に行わなければならないのは言うまでもないだろう。

【参考】中型自動運転バスの接触事案については「自動運転バスの接触事案、位置推定機器の再起動漏れが要因」も参照。

セーフティドライバーの教育

事故要因として意外と多いのが、セーフティドライバーに起因する人為的要因だ。ウーバーの事故のような明らかな怠慢は言語道断だが、とっさの判断を迫られるケースにおいて、判断の迷いや対応の遅れなどが生じやすい。

ハンドルが急旋回した場合など対応困難なケースもあるが、駐車車両や右左折時のガードレールなど、どこまで接近した場合に手動回避に移るべきか――といった判断に迷いが生じれば手遅れになりかねない。ドライバーとしても、自動運転システムの実証であるがゆえぎりぎりまでシステムに任せるべきでは?――といった感情が生まれてもおかしくはない。

システムの作動状況を踏まえながら迅速に対応するのは難しい点がありそうだが、だからこそ事前に手動介入すべきケースについて明確な線引きを行い、ドライバーにしっかりと周知しなければならない。

これは、車内無人の遠隔監視・操作の段階に移行しても同様だ。遠隔監視の場合、特に認知・判断に時間を要する可能性があるため、遠隔ドライバーとなるオペレーターへの教育の重要性はより増すことになりそうだ。

【参考】セーフティドライバーの教育については「トヨタの自動運転車事故から「ヒューマンエラー対策」の重要性を考える」も参照。

自動運転車に対する妨害行為

自動運転車そのものに瑕疵のない外部要因となるが、自動運転車への妨害行為に起因する事故が発生する恐れもある。社会受容性の問題だ。

米アリゾナ州では、ウーバーによる死亡事故をきっかけに自動運転車に対する攻撃や威嚇などが相次いでいるようだ。同州でサービス展開しているWaymoが主なターゲットとなり、自動運転車に卵や石を投げつけたり銃を向けたりするなど、逮捕者が出る騒動となっている。

背景には、自動運転車に対する不安や恐れのようなものがあるようだ。それがウーバーの事故をきっかけに表面化したような印象だ。

また、自動運転車特有の安全走行やもたつきに腹を立てるケースも考えられる。制限速度をしっかり守り、場合によっては周囲の状況に過敏に反応して減速・回避行動をとる様に対し、自車の円滑な走行を妨げられたと感じるドライバーもいるはずだ。あおり精神のようなものが自動運転車に向けられている可能性がある。

こうしたケースは日本でも発生する可能性が十分考えられる。自動運転車に対し車間を著しく詰めたり、進路妨害を行ったりするような事案が懸念される。

自動運転車は超がつく初心者ドライバーとして寛容に扱うべきだが、道行く個々のドライバーにとって、それはお構いなしのことだろう。社会受容性の醸成はもちろん、技術が一定段階まで向上し、自動運転走行が定着するまでの間、社会的に自動運転車を保護する施策が必要となるかもしれない。

【参考】自動運転車に対する妨害については「なぜ住民たちは、Waymoの自動運転車に卵を投げつけるのか」も参照。

■自動運転車関連の騒動
自動運転車が警察の聴取から逃れる?

2022年4月ごろ、米カリフォルニア州サンフランシスコで現地警察がヘッドライト無灯火の自動車を見つけ停車させたところ、Cruiseの無人の自動運転車だった。

車内をのぞき込み無人を確認した警察官がいったんパトカーに戻ろうと離れた瞬間、まるで警察の手から逃れるように自動運転車が発進した。自動運転車はその後交差点を渡った先で再度停車し、ハザードを点滅させている。

Cruiseによると、自動運転車は1度目の停車の際、後方に停められたパトカーに進路を譲るため発進したそうだ。

進路関係では同時期、消防車の走行を妨害した事案も発生しているようだ。Cruiseの自動運転車が走行中、緊急出動中の消防車が対向側から近付き、2重駐車しているゴミ収集車をかわすため自動運転車側の車線にはみ出そうとした。

自動運転車は道を譲るため停車したが、その場所が悪かったようで、恐らくごみ収集車と被る位置に停車したものと思われる。そのため消防車はごみ収集車を交わすことができず、ゴミ収集車が移動するまで約25秒間立ち往生を余儀なくされたという。

同時期にはこのほか、道路工事区間を走行していたCruiseの自動運転車が横断歩道で停車し、5分間に渡って歩行者らの進行を妨げた事案も報じられている。

【参考】Cruiseの事案については「アメリカで物議!自動運転車が「25秒間」消防車を足止め」も参照。

自動運転車が謎の道路封鎖を行う

Cruise関連では、2022年6月に自動運転フリートが謎の道路封鎖を行う事案も発生している。SNSに投稿された画像などを見ると、10台規模の自動運転車が複数車線にまたがって停車している様子がうかがえる。停車は1時間以上に及んだという。

Wiredによると原因はサーバー障害で、一時約60台の自動運転車が正常な挙動を失ったという。フォールバックシステムにもエラーが発生し、遠隔オペレーターによる対応もできなかったようだ。同様の事案は5月にも発生し、約20分間に渡って自動運転車が路上停止したという。

市中を走行する自動運転車が一斉に停車した際の影響は非常に大きい。サーバー障害や通信障害など、フリート全体に影響を及ぼす可能性がある部分については、2重3重に冗長性を高めていくことが必須だ。

また、こうした事案が続くと、自動運転車そのものの信頼性が大きく損なわれる。同じエラーを繰り返さないよう迅速に改善を図るとともに、発生した事案についてしっかりと説明を行っていく姿勢も当事者には求められるだろう。

【参考】Cruiseの事案については「住民唖然!Cruiseの自動運転タクシー、深夜の「道路封鎖」」も参照。

人型ロボットがひき逃げされる?

世界最大の技術見本市「CES 2019」の会場付近で、自動運転車に人型ロボットがひき逃げされる事案が発生したようだ。被害者はロシアのロボット開発企業Promobotで、加害者はテスラとされているが、その真相については諸説あるようだ。

Promobotによると、会場での展示に向け複数のロボットを移動中、1台が道路に迷い込んだという。ロボットが道路の端で立ち往生しているところに「自動運転中」のテスラ車両が通りかかり、すれ違いざまに接触してロボットが転倒したという。

ロボットは再起不能となった。その後現場にはロボットの写真が飾られ、弔うかのように花が置かれている。

この1件は業界で話題となったが、その理由はPromobotによる自作自演が疑われたためだ。Promobotは、テスラ車の乗員が「自動運転モードを試していた」とする証言のもと「自動運転中」と表現しているが、当時のテスラ車に搭載されていたのはADAS「Autopilot」だ。事故の様子をきっちり収めた動画の存在といい、その後弔う展開といい、作為的なイメージを持つ人が少ないようだ。

警察による事故検証も行われたようだが、真相は明かされていない。自動運転車絡みの事故はニュースになりやすいため、今後このような話題作りが行われる可能性もぬぐえず、注意が必要だ。

■【まとめ】世界各国の案件を共有できる体制づくりを

日本ではドライバー絡みの事故・事案がまだ多い印象だが、車内無人による自動運転サービスが始まっている米国では、Cruiseの事案に代表されるようなさまざまな案件が発生し始めているようだ。

近い将来、日本でも公道におけるレベル4サービスが本格的に始まる見込みだ。米国の事案を他山の石とし、しっかりと事前に対応して事故を未然に防ぎたいところだ。

その意味でも、事故・事案の公表には大きな意義がある。国内はもちろん、世界各国の案件を共有できるような体制づくりも肝要になりそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転車の事故」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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