【資料解説】「2040年の道路」はこうなる!国交省最終ビジョン 自動運転実用化も

移動小売店舗や配送ロボットなども視野に





出典:国土交通省

国土交通省はこのほど、道路政策の中長期的ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」を公表した。

ポストコロナの新しい生活様式や社会経済の変革も見据えながら、2040年の日本社会を念頭に道路政策を通じて実現を目指す社会像や、実現に向けた政策の方向性を提案する内容で、自動運転の実用化なども盛り込まれている。







同ビジョンを読み解き、未来の道路交通の在り方に触れてみよう。

▼2040年、道路の景色が変わる|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/road/vision/pdf/01.pdf

■5つの将来像

「2040年、道路の景色が変わる」では、道路の将来像として5つを挙げている。

  • ①通勤帰宅ラッシュが消滅
  • ②公園のような道路に人が溢れる
  • ③人・モノの移動が自動化・無人化
  • ④店舗(サービス)の移動でまちが時々刻々と変化
  • ⑤災害時に「被災する道路」から「救援する道路」に

③④の観点では、人の移動が自動運転車による移動サービスで担われ、増加する物流の小口配送に対しては、小型自動ロボットやドローンが対応し、道路やその上空を自在に移動するとしている。

また、完全自動運転の実現により、飲食店や医院、クリーニング、スーパー、教育施設などの小型店舗型サービスが営業しながら移動可能となり、顧客の求めに応じて道路を移動するようになるとしている。2040年の社会は自動運転技術の普及が前提となっているのだ。

その上で、道路政策を通じて実現を目指す社会像として「日本全国どこにいても、誰もが自由に移動、交流、社会参加できる社会」「世界と人・モノ・サービスが行き交うことで活力を生み出す社会」「国土の災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全に安心して暮らせる社会」を掲げ、道路政策に関して計10点の方向性を示している。

以下、各方向性について見ていこう。

■日本全国どこにいても、誰もが自由に移動、交流、社会参加できる社会
出典:国土交通省
①国土をフル稼働し、国土の恵みを享受

全国を連絡する幹線道路ネットワークと高度な交通マネジメントにより、日本各地で人が自由に居住し、移動し、活動する社会を目指す。

具体的には、走行性や耐災害性を備えた幹線道路ネットワークが全国をつなぎ、骨格となる幹線道路に設置された自動運転車の専用道などで、自動運転道路ネットワークが形成されることや、コネクテッドカーへ道路インフラが交通状況や利用可能な駐車場、休憩のための立ち寄り施設などの情報を車両単位で提供し、最適経路を案内するイメージなどを挙げている。

また、AIによる需要予測を活用した経路や利用時間帯の分散と、リバーシブルレーンなどの可変式道路構造により、繁忙期の高速道路の渋滞を解消するほか、料金所を必要としないキャッシュレスシステムで区間や車線、時間帯別の変動料金制によって混雑を解消し、稼働率の最大化を図るとしている。

ここでは、「自動運転車の専用道」に言及している点に注目したい。2040年に自動運転レベル5技術が確立しているかは未知数だが、国内をめぐる幹線道路に自動運転専用道が整備されることで、レベル4技術における走行範囲が格段に広がる。

既存の道路網を有効活用し、比較的低コストで実現できるのであれば、現実解として壮大な自動運転戦略を打ち立てることも可能になりそうだ。

②マイカーなしでも便利に移動できる道路

マイカーを持たなくても便利に移動できるモビリティサービス(MaaS)が、全ての人に移動手段を提供する社会を目指す。

具体的には、さまざまな交通モードの接続・乗換拠点(モビリティ・ハブ)が道路ネットワークに階層的に整備され、自動運転バス・タクシー、小型モビリティ、シェアサイクルなどのシームレスな利用の実現を目指す。

道の駅などを拠点に提供される無人自動運転乗合サービスは、中山間地域において高齢者などに移動手段を提供する。

オンデマンド自動運転車の利用者に対しては、到着時間や利用可能な乗降スペースなどの情報を提供することで、高齢者や障がい者などにドアツードアの移動サービスを提供する。

また、集約型ターミナル(バスタ)の整備やSA・PAの乗り継ぎ拠点化を進めることで、高速バスサービスを全国ネットワーク化させる。

MaaSの完全な普及を見越した案となっており、2040年ごろには自家用車数も大きく減少していることが想定される。自家用車の減少は道路交通に余裕を持たせ、道路の有効活用の幅が広がる側面も見逃せないところだ。

③交通事故ゼロ

人と車両が空間をシェアしながらも、安全で快適に移動や滞在ができるユニバーサルデザインの道路が、交通事故のない生活空間を形成する社会を目指す。
具体案として、車の進入を抑止するライジングボラードの設置や速度制限機能を備えた車の普及などのほか、コネクテッドカーから得られる走行データを活用し、安全運転するドライバーの保険料を低減するテレマティクス保険などの普及による運転マナーの改善などを挙げている。

④行きたくなる、居たくなる道路

まちのメインストリートが「行きたくなる、居たくなる」美しい道路に生まれ変わり、賑わいに溢れたコミュニティ空間を創出する社会を目指す。

具体案として、道の駅が自動運転サービス拠点や子育て応援施設などあらゆる世代が利用する地域センターとして機能することや、無電柱化をはじめ照明や標識、防護柵、舗装などのデザインが刷新され、沿道の建築物とも調和した美しい道路景観の創出などを挙げている。

■世界と人・モノ・サービスが行き交うことで活力を生み出す社会
出典:国土交通省
⑤世界に選ばれる都市へ

卓越したモビリティサービスや賑わいと交流の場を提供する道路空間が、投資を呼び込む国際都市としての魅力を向上させる社会を目指す。

具体的には、環状道路整備による都市内の通過交通の排除、道路ネットワークの空間再配分、モビリティ・ハブの整備、駐車スペースの転用などにより、自動運転やMaaSに対応した新しい都市交通システムの実現や、可変型の道路表示などを活用して道路と沿道民地を一体的に運用し、曜日や時間帯に応じて自動運転車の乗降スペースや移動型店舗スペース、オープンカフェなどに変化する路側マネジメントの普及などを挙げている。

また、道路上空や地下空間を活用した立体開発、路上での大規模イベントや先端技術実証など、民間と連携して新しいビジネスや賑わいを道路空間から創出する。

サイバー空間に再現した道路や周辺インフラのデジタルツインと、コネクテッドカーやMaaSから得られる交通ビッグデータにより、リアル空間の都市交通オペレーションを最適化する案なども挙げられている。

⑥持続可能な物流システム

自動運転トラックによる幹線輸送、ラストマイルにおけるロボット配送などにより自動化・省力化された物流が、平時や災害時を含め持続可能なシステムとして機能する社会を目指す。

具体的には、幹線道路ネットワークの機能や港湾との連絡が強化された国際物流ネットワークの形成や、幹線道路や物流拠点などから得られる物流関連ビッグデータがデータプラットフォームを通じて物流の共同化などを支援する。

また、専用道路とそれに直結する充電スポットや水素ステーションといったインフラが高速道路に整備され、隊列走行や自動運転トラック輸送が全国展開されるほか、ロボットやドローン配送などを可能とする道路空間とその3次元データや利用ルールが整備され、ラストマイル輸送が自動化・省力化される。

宅配ロボットの普及を前提とすれば、自転車専用レーンなどのように小型の宅配ロボット専用レーンが登場する可能性もありそうだ。

⑦世界の観光客を魅了

日本風景街道、ナショナルサイクルルート、道の駅などが国内外から観光客が訪れる拠点となり、多言語道案内などのきめ細かなサービス提供によって外国人観光客や外国人定住者の利便性・満足度が向上する社会を目指す。

具体的には、デジタルサイネージやスマホアプリなどによる多言語の道・まち案内や、高速道路・道の駅・駐車場・燃料ステーションにおけるすべての決済のキャッシュレス化の実現などを挙げている。

■国土の災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全に安心して暮らせる社会
出典:国土交通省
⑧災害から人と暮らしを守る道路

激甚化・広域化する災害に対し、耐災害性を備えた幹線道路ネットワークが被災地への人流・物流を途絶させることなく確保し、人命や経済の損失を最小化することを目指す。

具体的には、国内を縦断する幹線などにおける構造物の耐災害性能を統一的に確保し、無電柱化された道路が電力供給や通信を確保、緊急輸送道路としても機能することや、AIカメラなどが交通の状況を常時モニタリングし、災害やパンデミック発生時に情報提供や交通誘導することで人流や物流を最適化することなどを挙げている。

新型コロナウイルスに限らず新たな感染症の発生も想定されるほか、地震や台風など自然災害が多い日本において、人やモノの移動の要となる道路が果たすべき役割は思いのほか大きそうだ。

⑨道路交通の低炭素化

電気自動車や燃料電池自動車、公共交通や自転車のベストミックスによる低炭素道路交通システムが、地球温暖化の進行を抑制することを目指す。

具体案として、非接触給電システムや水素ステーションが道路施設として適正配置され、電気自動車(EV)や燃料電池車への転換を加速することや、低炭素公共交通システムとして自動運転化されたBRT(バス高速輸送システム)やBHLS(路面電車なみの機能を備えた次世代バスサービス)の運行、シェアサイクルポートや駐輪場、自転車道ネットワークなど、安全で快適な自転車利用環境の整備などを挙げている。

⑩道路ネットワークの長寿命化

新技術の導入により効率化・高度化された予防保全型メンテナンスにより、道路ネットワークが持続的に機能することを目指す。

具体的には、AIや新たな計測・モニタリング技術、施工手間を縮減する新材料、点検箇所を減らす新構造などの活用により、道路の点検・診断を自動化・省力化するほか、道路管理用車両などの自動化により、道路清掃や落下物回収、除草、除雪等の維持管理作業を省力化する。

■【まとめ】道路改革が自動運転シティへの布石に

2040年は自動運転が普及し、MaaSが定着した世界になっているようだ。20年後は遠い未来に思えるが、道路整備は長期的視野が不可欠なインフラであり、先々を見越した事業展開が必須となる。

現在各地で立ち上がっているスマートシティ構想なども、こうした道路ビジョンを踏まえ域内交通をより円滑で効果的なものにしていく必要がある。逆を言えば、早期に道路改革を断行した自治体こそが将来自動運転シティとして名を馳せるとも言える。

従来の概念に捉われず、道路にどのような機能を持たせるべきか。こうした議論も今後本格化していく可能性がありそうだ。

▼2040年、道路の景色が変わる|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/road/vision/pdf/01.pdf

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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