トヨタが静岡県裾野市の工場跡で建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」。未来のモビリティと都市、生活の在り方を模索すべく、さまざまな先進的取り組みが行われる予定だ。
どのような実証が行われるか注目が集まるところだが、興味深い点がもう1つある。そこに住む方法だ。Woven Cityでは、実際の生活空間におけるリアルな実証を進めるため、関係者以外にも一般住民が生活できる環境を提供する予定となっている。
Woven Cityの住民になるには、どうすればよいのか。現時点で判明している情報をもとに、Woven Cityの居住権を得る方法に迫ってみよう。
記事の目次
■Woven Cityに住む方法
初期居住者は360人を想定
Woven Cityは2025年に第一期オープンを予定しており、初期の居住者として360人を想定している。将来的には2,000人規模まで拡大していく計画だ。
この居住者、つまり住人になるためにはどうすればよいのか。一般の不動産仲介会社・サイトを通じて入居が可能になるのだろうか?
Woven CityのQ&Aでは、下記のように説明されている。
Q.どうすればそこに住めるでしょうか?
A.ウーブンシティの住民が共同制作者となり、発明家、高齢者、子育て中の家族も参加する予定です。ここは人間中心の都市であり、社会課題を一緒に解決していきます。居住に関する情報は入手可能になり次第共有されます。(出典:Woven City公式サイト)
一般居住者としては、まず高齢者世帯と子育て中の世帯が念頭に置かれているようだ。社会的課題が多く内在する世帯をターゲットに据え、実証を通じて課題解決の方法を探っていく狙いがあるためだ。
そして、募集に関する情報はまず公式サイトで発表されるようだ。応募要件を明示し、直接公式サイトから申し込み・審査を行うのか、あるいは仲介企業を通じるのかなどは定かでないものの、まずは公式アナウンスを待たなければならないようだ。
賃料や間取り、契約期間なども当然ながら現時点では不明だ。賃料は周辺の相場と同等か、あるいは少し高低をつけて設定される可能性もありそうだが、さすがに無料はないものと思われる。実証に積極協力しなければならない点や、逆に実証に伴う最新サービスを無料・安価で受けられる点、居住期間に関する制約など、さまざまな要素が絡んできそうだ。
憶測だが、500メートル余り離れたJR岩波駅や、1~2キロ離れた小学校までなど、近隣の主要施設まで自動運転モビリティによる走行実証が行われ、無料送迎サービスが提供される可能性などもある。Woven City内をはじめ、周辺の主要施設を巻き込む形でどのようなサービスが展開されていくのかも注目したいところだ。
こうした施設やサービスの概要は、適時発表されるものと思われる。公式サイトをはじめ、Woven Cityの公式SNSやトヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」などをしっかりチェックし、いち早く情報を入手しよう。
▼Woven Cityの公式Facebook
https://www.facebook.com/WovenCity.GL
【参考】Woven Cityについては「トヨタWoven City、初期住民は8種類!自動運転を試す実証都市、いつオープン?」も参照。
(情報更新しました)トヨタWoven City、初期住民は8種類! https://t.co/ejdQrGOYcg @jidountenlab #トヨタ #WovenCity #自動運転
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) February 12, 2022
研究者サイドとしての参加も……?
Woven City住民に向けたもう1つのアプローチは、研究サイドへの参画だ。Woven Cityには発明家も住むことができる。実証パートナーに向けたQ&Aは、以下の通りだ。
Q.Woven Cityプロジェクトに参加するにはどうすればよいですか?
A.Woven Cityは、まったく新しいアイデアを生み出す現実の実験場です。社会課題を解決するための新たなサービスやシステムの創出・検証に協力したい発明家や企業などからのご提案をお待ちしております。また、私たちの使命を共有し、Woven City Managementのメンバーとして働くことに情熱を持っている人々と提携したいと考えています。(出典:Woven City公式サイト)
企業をはじめ、個人事業者レベルでも実証内容や実行力などが伴えばパートナーになりうるものと思われる。ハードルは高いかもしれないが、Woven Cityへの関心の高さは、未来の都市や生活の在り方に対する関心の高さでもある。未来を創造し、事業化に向けた構想を練ってパートナーへの道を切り開いていくのも1つの手段だろう。
さらにハードルが上がりそうだが、Woven Cityを運営するWoven by Toyotaに入社する……という選択肢もある。Woven City内に住めるかどうか、そもそもWoven Cityにかかわる業務に就つけるかどうかは未定だが、より深くWoven Cityに携わる可能性を秘めていることは間違いない。
■Woven Cityの概要
東京ドーム約15個分の敷地を順次造成
Woven Cityは、豊田章男現会長肝いりの事業で、トヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を活用して建設が進められている。東京ドーム約15個分に相当する約70.8万平方メートルの地で、数段階に分けて徐々に造成し、実証環境を整えていく計画だ。
2021年2月に着工し、2024年をめどに第一期工事を終了し、必要となるインフラが整備された2025年から入居が始まる予定だ。
モビリティを再定義する場に
現在のモビリティは人の移動や物の輸送そのものに主眼が置かれているが、トヨタによると、未来のモビリティは単なる移動手段ではなくなり、自動車や交通手段を超えモビリティを再定義して行く必要があるという。
その実証における最前線がWoven Cityだ。モビリティを単に「物を動かす」ことから、日常生活に快適さと喜びを加えるものへと拡大することを目指す。ヘルスケアや食・農業、エネルギー、金融、教育など、社会の重要な側面にシームレスに統合し、日常の幸福を呼び起こし人間の可能性を拡大するさまざまな方法で活用されるものへと進化を図っていく構えだ。
NTTやENEOSなどが実証パートナーに名乗り
現在、実証パートナーとして公表されているのは、NTT、ENEOS、日清食品、リンナイだ。NTTは202年、スマートシティの実現に向けトヨタと業務・資本提携を結んだ。基盤となるスマートシティプラットフォームの構築・運用に向け協業を進めていくこととし、先行モデルとしてWoven Cityへの導入を計画している。
ENEOSは、CO2フリー水素の製造や利用をトヨタと共同で推進している。水素ステーションの建設・運営をはじめ、水素ステーションからWoven Cityや燃料電池車へ水素を供給していく計画などが進行している。
日清食品は、食を通じたWell-Beingの実現に向けた実証に向け、具体的検討を進めていくことに合意したことが2022年4月に発表されている。リンナイは、水素を燃焼させて行う調理(水素調理)についてトヨタと共同開発を開始し、Woven Cityで実証を行う計画としている。
【参考】NTTとトヨタの協業については「トヨタ自動車とNTT、スマートシティで協業 Woven Cityの取り組みを世界へ」も参照。
■【まとめ】Woven City住民は狭き門となるか?
初期住民360人のうち、研究者などを除いた一般募集は何人ほどになるのかなど、気になるところだ。おそらく、第一期工事が完了する2024年度中に居住に向けた話題が大きく取り上げられ始めるものと思われる。
抽選倍率が数十倍、数百倍の狭き門となる可能性も考えられるが、住民に求められる要件次第でこの数字は大きく変わることになるだろう。
いつ頃正式なアナウンスがなされるか。住民に求められる要件はどのようなものになるのか。興味のある方は、引き続きしっかりと最新の情報入手し、後れを取らないよう気を付けてほしい。
【参考】関連記事としては「トヨタWoven City「永遠に未完成」「人口2,000人」 FAQ分析」も参照。