自動運転「日本初レベル4」のZENコネクト、第6期は赤字転落

福井県永平寺町から無人移動サービスを受託



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

自動運転移動サービスなどを手掛ける、まちづくり株式会社ZENコネクト(本社:福井県吉田郡永平寺町/代表取締役:山田秀幸)の第6期決算公告(2023年3月31日現在)が、官報に掲載された。

今期はわずかに赤字に転落し、当期純損失は75万円となった。第5期は当期純利益202万円を計上していた。第3期からの純利益の推移は以下のように推移している。


<純利益の推移>
・第3期: 2,039万9,000円
・第4期: 2,190万5,000円
・第5期: 202万1,000円
・第6期:▲75万8,000円
※▲はマイナス

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?(2023年最新版)」も参照。

■決算概要(2023年3月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 58,324
固定資産 7,810
資産の部合計 66,135
▼負債及び純資産の部
流動負債 4,843
株主資本 61,292
資本金 5,700
利益剰余金 55,592
その他利益剰余金 55,592
(うち当期純損失)(758)
負債及び純資産の部合計 66,135

■自治体から委託で自動運転移動サービスを担当

2017年設立のまちづくり株式会社ZENコネクトは、福井県永平寺町から業務委託を受け、自動運転移動サービスを行っている。


永平寺町では2018年11月から、国が主導する「ラストマイル自動走行の実証評価」において、自動運転レベル2相当の遠隔型自動運転の実証を開始した。京福電気鉄道永平寺線の廃線跡地を利用した「永平寺参ろーど」の一部の約2キロにおいて、1名の遠隔ドライバーが2台の自動運転車両を運用するというもので、世界初の遠隔型自動運転の実証となった。

2020年12月には、遠隔監視・操作システムを活用した自動運転移動サービス「ZEN drive」の試験運行を開始した。当初は常時遠隔監視・操作するレベル2で運行していたが、2021年3月に遠隔監視・操作型の自動運行装置として正式に認可を受け、保安要員のみのレベル3による運行に移行した。

自動運転レベル3は国の呼称では「条件付自動運転車(限定領域)」とされる。永平寺町は、国内で初めて自動運行装置「ZEN drive Pilot」が遠隔監視・操作型のレベル3の自動運行装置として認可され、車内の保安要員を外した状態で運用が行われた。

レベル3の主な自動運行装置の構成=出典:国土交通省
■2023年からは国内初のレベル4サービス

2023年3月に道路運送車両法に基づく自動運行装置としての認可、同年5月に道路交通法に基づく特定自動運行の許可を日本で初めて取得した。これによりまちづくり株式会社ZENコネクトが行うレベル4での自動運転移動サービスが5月21日から開始された。


ただし、これは電磁誘導線に沿って「誘導型」の自動運転を行う形態であるため、米Google系WaymoやGM傘下のCruiseなどが展開する非誘導型の自動運転タクシーと同レベルではない。

しかし、日本で初めてレベル4の自動運転を成し遂げたということから、今後ますます、ほかの自治体などを引っ張っていく存在になっていくことは間違いない。

出典:経済産業省プレスリリース
■永平寺町に関する多様な事業を展開

まちづくり株式会社ZENコネクトが手掛ける事業は、自動運転車両の運行のほか、不動産事業や公共施設などの管理、旅行業、観光農園や農産物直売所の運営、地域情報の制作や発信など、多岐に渡る。永平寺町に関するさまざまな業務に携わっていると言える。

同社による自動運転に関する取り組みと今後の業績に引き続き注目していきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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