日進月歩の成長を続ける自動運転業界。日本のホンダが自動運転レベル3の市販車を発売し、メルセデスもレベル3機能の提供をスタートさせた。アメリカや中国ではレベル4の自動運転タクシーが街中を走行し始めている。
こうした状況の中、日本そして世界における自動運転技術の水準、将来有望な企業などを整理して理解したいと考えている人も少なくないはずだ。市場が拡大しているだけに、包括的に現状を理解するのは簡単ではない。
この記事では自動運転に関する基礎知識のほか、最新情報をもとに、ADAS(先進運転支援システム)に相当する「自動運転レベル1」と「自動運転レベル2」を含め、自動運転各レベルの開発・実装状況を解説する。
記事の後半では自動運転に関する事故のほか、自動運転配送ロボットの開発状況についても国別に説明する。
・2024年11月21日:「自動運転業界をリードする企業は?」という情報を追記。関連FAQを追加
・2024年10月9日:「Honda 0(ゼロ)シリーズ」に関する情報を追記
・2024年8月20日:自動運転機能の搭載車種の情報をアップデート
・2024年6月6日:レベル3の現状や関連記事を追記
・2024年3月15日:業界動向について追記
・2024年1月3日:自動運転レベルの説明について追記
・2023年12月14日:自動運転の事故の情報を追記
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・2022年8月1日:記事初稿を公開
記事の目次
■「自動運転」とは何?わかりやすく言うと?
自動車・モビリティ業界において「自動運転」というワードを使った場合、それはわかりやすく言うと、自動車(一般車・シャトル・バスなど含む)の無人走行や配送ロボットの無人稼働などのことを指す。「自律走行」「無人走行」などを言う言葉で表現されることもある。
■「自動運転」を英語で表現すると?
英語では「Autonomous」「Self-driving」などのワードが使われる。自動運転タクシーは「Autonomous Taxi」と表現されることが多いが、各社がサービスブランド的に「Robot Taxi」といった呼称を使うケースもある。
【参考】関連記事としては「自動運転、英語で何と書く?技術用語はどう表記?」も参照。
■「自動運転レベル」とは?
自動運転レベルは0〜5の6段階に分類され、手動運転に相当する「レベル0」から、完全自動運転を示す「レベル5」に進むに従って運転支援・自動運転の程度が上がる。
自動運転レベルは、アメリカの「自動車技術会」(SAE)が示した基準が使われており、国土交通省の公式サイトでもレベル分けについての解説を読むことが可能だ。
レベルごとの呼称は複数あるが、自動運転ラボで主に用いている呼称は以下の通りだ。SAEの基準の日本語訳に相当する。
- 自動運転レベル1:運転支援
- 自動運転レベル2:部分運転自動化
- 自動運転レベル3:条件付き運転自動化
- 自動運転レベル4:高度運転自動化
- 自動運転レベル5:完全運転自動化
▼自動運転のレベル分けについて|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
SAEが示した基準の元データ
SAEが示した基準の内容は、以下のURLから確認できる。内容は2021年4月にアップデートされている。
▼SAE Levels of Driving Automation Refined for Clarity and International Audience
https://www.sae.org/blog/sae-j3016-update
自動運転レベルのビジュアルチャートも合わせて公開されている。以下がその画像だ。
なお、原文の日本語参考訳として2022年3月18日に改訂されたものが、ウェブサイトにて無償公開されている。以下からアクセスできる。
▼翻訳版のダウンロード(※アンケートへの回答が必要)
https://questant.jp/q/8ZJW8X8K
【参考】関連記事としては「自動運転レベル、誰が決めた?」も参照。
■自動運転レベル1
レベル1は市販車でスタンダード化
自動運転レベル1(運転支援)は、車両制御のうち「縦方向」または「横方向」いずれかのサブタスクをシステムが限定領域において実行する。言い換えると、アクセル・ブレーキ操作による「前後(加速・減速)」の制御、もしくはハンドル操作による「左右」の制御のどちらか一方の操作補助をシステムが担う。
代表例としては、前走車に追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や衝突被害軽減ブレーキ、LKA(レーン・キープ・アシスト)などの個々の機能が相当する。
衝突被害軽減ブレーキは、軽トラックや輸入車など一部を除く新型車への搭載義務化が始まっており、ほぼ標準装備となっている。日本自動車工業会の統計資料「2022 日本の自動車工業」によると、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い急発進抑制装置の搭載率は以下のように推移している。
■自動運転レベル2
市販車における主力製品に
自動運転レベル2(部分運転自動化)は、車両制御のうち縦及び横方向両方のサブタスクをシステムが限定領域において実行する。レベル1では縦と横方向どちらか一方だったが、両方可能とするのがレベル2だ。
例えば、ACCで縦方向の制御を支援しつつ、LKAで横方向の制御も支援し、同一レーン上での走行をトータルで支援する――といった感じだ。
【参考】レベル2については「自動運転レベル2の要件や定義、機能を解説」も参照。
この機能が高度化すると、一定条件下で運転中にハンドルから手を離す「ハンズオフ」(※「ハンズフリー」という呼ばれ方がすることもある)運転が可能になる。あくまで運転支援機能であり、自動車制御に関わる責任は依然ドライバーが担うものだが、運転における負担を軽減することができる技術だ。
ハンズオフ機能はレベル2における1つの到達点であり、従来のレベル2と区別して「高度レベル2」「レベル2+」「レベル2.5」などと表現されることもある。
【参考】ハンズオフ機能搭載車については「「手放し運転」が可能な車種一覧 ハンズオフ機能とは?」も参照。
ハンズオフ搭載車は、国内メーカーでは日産の「ProPILOT2.0」をはじめ、ホンダ「Honda SENSING Elite」、トヨタ「Advanced Drive」、スバル「アイサイトX」など、出揃い始めている。今後、搭載車種も徐々に拡大していく見込みだ。
<各社の自動運転レベル2の例>
・トヨタ:Advanced Drive
・ホンダ:Honda SENSING Elite
・日産:ProPILOT2.0
・スバル:アイサイトX
なお矢野経済研究所が2022年8月に発表した「自動運転システムの世界市場に関する調査」によれば、2021年の実績ベースにおいて、自動運転レベル2の技術を搭載した車両台数は約1,493万台、ハンズオフなどレベル2を高度化したレベル2プラスは約86万台となっている。レベル2の搭載車は2030年には約3,675万台まで増える見込みだという。
【参考】矢野経済研究所の調査結果については「ADASか自動運転技術の搭載車、2030年には3.4倍の8390万台に 「レベル2/2+が市場牽引」」も参照。
■自動運転レベル3
レベル3ではアイズオフが可能に
自動運転レベル3(条件付き運転自動化)は、一定条件下において全ての運転操作をシステム側が行うが、システムが作動継続困難と判断し、ドライバーに運転交代要求(テイクオーバーリクエスト/TOR)を発した際は、ドライバーは速やかに運転操作を行わなければならない。
【参考】テイクオーバーリクエストについては「自動運転とTOR」も参照。
自動運転の初歩の段階で、自動運転システムと手動運転が混在するレベルとなる。自動運転システム作動時は、ドライバーは周囲の監視義務を免れることができ、ハンドルから手を離すハンズオフをはじめ、車両前方から目を離すアイズオフ運転(※アイズフリーという呼ばれ方がすることもある)も可能になる。
【参考】関連記事としては「「アイズオフ」とは?自動運転レベル3の段階」も参照。
自動運転システムが作動可能な「ODD」(運行設計領域)はシステムごとに異なり、例えば「晴天下における高速道路上において時速80キロ以下で走行中」などそれぞれ設定される。
【参考】関連記事としては「自動運転とODD」も参照。
ODDから外れる際や、ODD内であっても何らかの理由でシステムが作動継続困難と判断した際、システムからドライバーにテイクオーバーリクエストが発される。ドライバーはこのリクエストに迅速に応答しなければならないため、自動運転中であっても睡眠などの行為は厳禁となる。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3とは?定義は?ホンダ、トヨタ、日産の動きは?」も参照。
セカンダリアクティビティには議論の余地あり
自動運転中にドライバーに許容される行為「セカンダリアクティビティ」については、道路交通法上は「第71条第五号の五」に定められた携帯電話用装置などの利用を制限する条項を適用しないこととされている。カーナビやスマートフォンなどの操作が認められる一方、法的に明確に許容されたセカンダリアクティビティはこの範囲にとどまる。
おそらく、実用化が始まったばかりのレベル3を運用する上で、安全性を重視してその他のセカンダリアクティビティについてはしばらく明示せず、知見を積み重ねてから一定の指針を明示するものと思われる。
読書や簡単な食事・仕事など、問題ないと思われる行為も、現場の判断で違反となる可能性があるため、しばらくは注意が必要だ。
【参考】レベル3のセカンダリアクティビティについては「自動運転レベル3でできること」も参照。
レベル3に関する法的動向
日本では、レベル3走行を可能とする改正道路交通法と改正道路運送車両がそれぞれ2020年4月に施行され、公道走行が可能となった。世界でも、ドイツや韓国などが法改正済みで、日本同様レベル3が認められている。米国は各州の判断による。
▼道路交通法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
▼道路運送車両法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000185
国連関係では、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で2020年6月、レベル3に関する自動運転システムの要件について国際基準が成立した。自動運転システムは「高速道路などにおける時速60キロ以下の渋滞時などにおいて作動する車線維持機能に限定」とされ、対象も乗用車限定となっている。また、付随要件としてミニマルリスクマヌーバーやドライバーモニタリング、サイバーセキュリティ確保の方策、作動状態記録装置の搭載などが求められている。
この基準は順次改正されており、2021年11月に対象車種がバスやトラックなどにも拡大されたほか、2022年6月には上限速度が時速130キロに引き上げられ、乗用車に限り車線変更も可能とすることとされている。
【参考】レベル3の国際基準については「自動運転、国連が上限時速130キロに緩和!車線変更も容認」も参照。
レベル3の市場規模は?
前出の矢野経済研究所の調査によると、レベル3の搭載車種は2021時点の実績で100台となっており、2025年には40万台、2030年には625万台まで規模が増えるという。
市場調査会社の富士キメラ総研が発表した「2024年 自動運転・AIカー市場の将来展望」によると、レベル3の自動運転車の生産台数は徐々に増加し、2024年には2,409万台の規模にまで達するとされている。
【参考】関連記事としては「車生産、2045年に「過半数」が自動運転車に!世界で5,200万台規模へ」も参照。
レベル3搭載車種①:ホンダの「新型LEGEND」
一般乗用車へのレベル3搭載は、ホンダが2021年3月にリース販売を開始した新型「LEGEND」で幕を開けた。LEGENDに搭載されるトラフィックジャムパイロットは、高速道路渋滞時において最大時速50キロ以下の範囲で自動運転を可能としている。
▼Honda SENSING Elite|新機能詳細|トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)/緊急時停車支援機能
https://www.honda.co.jp/factbook/auto/LEGEND/202103/P07.pdf
▼トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能) エンジニアトーク|Honda
https://www.honda.co.jp/tech/articles/auto/EngineerTalk_TJP/
またホンダに関しては、2024年10月、新たなEV「Honda 0シリーズ」への搭載を予定している次世代技術について発表し、自動運転とADAS(先進運転支援システム)については、新型LEGENDに搭載した自動運転技術を採用するとした。
また、高速道路での「渋滞時アイズオフ技術」、そしてOTAによる機能アップデートによって、運転支援・自動運転レベル3適用(アイズオフ)範囲の拡大を可能とするシステムを搭載するとしている。
また、LiDARによる高精度で信頼性の高いセンシングや、全周囲の高精細カメラセンシングについてもアピール。独自のAIのほか、センサーフュージョンに対応可能なハイパフォーマンスECUの装備などにも取り組んでいくという。
▼Honda 0 Tech Meeting 2024でHonda 0シリーズに搭載予定の次世代技術を公開
https://global.honda/jp/news/2024/c241009.html
レベル3搭載車種②:メルセデスの「Sクラス」「EQS」
ホンダに続いたのが、メルセデス・ベンツだ。同社は2022年5月までに「Sクラス」とSクラスのEV(電気自動車)版「EQS」に有料オプションの形でレベル3システム「DRIVE PILOT」を搭載可能にした。最初にドイツ国内で展開し、アメリカの一部州でも搭載に関する認可が下りている。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3、マスク氏負ける!メルセデス、米ですでに65台販売」も参照。
レベル3搭載車種③:BMWの「7シリーズ」
ホンダとメルセデスに続いたのが、ドイツの自動車大手BMWだ。2023年11月、自動運転レベル3機能を搭載した車種を2024年3月からリリースすることを発表。同社の新型「7シリーズ」にオプションとして搭載され、まずはドイツ国内限定で提供されることになった。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル3機能、「世界3番目」はBMW濃厚 来年3月から提供」も参照。
レベル3搭載車種は今後さらに増加へ
ボルボ・カーズは、条件付自動運転機能「ライドパイロット」を米カリフォルニア州で先行導入する計画を発表している。近い将来発売するBEV(完全電気自動車)にサブスクリプションとして提供する予定で、正式な時期は未定だ。
韓国の現代(ヒョンデ)もレベル3の展開に積極姿勢を示している。今後、続々とレベル3搭載車が市場投入され、世界各地で乗用車における自動運転レベル3が実現していくことは確実だ。
ちなみにホンダに関しては、ソニーとの合弁会社のソニー・ホンダモビリティが、2025年前半から受注を開始するEVに自動運転レベル3を搭載させることを目指している。
【参考】ホンダのレベル3については「ホンダの自動運転戦略」も参照。
■自動運転レベル4
レベル4はドライバーレスを実現
レベル4(高度運転自動化)は、一定条件下において全ての運転操作をシステム側が行い、作動継続が困難な場合もドライバーやオペレーターなどの介入に期待しないレベルを指す。ODD内においてドライバーを必要としない自動運転を実現させ、万が一ODDを外れる際も安全に車両を停止させるなどドライバーを必要としない高度な自動運転となる。レベル4については「ドライバーフリー」という呼ばれ方をすることもある。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル4は「ドライバーフリー」!国交省が呼称明記」も参照。
ドライバーが不要となるメリットを生かし、移動サービスや輸送サービス用途に導入を図る動きが活発だ。開発車両は、手動運転装置を備えたモデルや同装置を備えず自動運転に特化したモデルなどさまざまだ。
なお、現実的には多くのレベル4サービスでオペレーターが遠隔監視・操作システムなどを活用して適時監視や操作介入を行っている。技術的に発展途上であることと安全面を重視しているためだ。このため、多くのレベル4サービスは実質レベル3~3.5といった感じだが、ここではレベル4として取り扱う。
【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、いつから解禁?」も参照。
Waymoを筆頭に自動運転サービスが続々誕生
レベル4サービスはすでに実用化されている。公道においては、米Waymoが米アリゾナ州で2018年12月、セーフティドライバーを同乗する形で有償の自動運転タクシーサービスを開始したのがはじまりだ。翌年にはセーフティドライバーが乗車しない完全無人化を達成し、名実ともにレベル4を達成している。
米国では、カリフォルニア州でもWaymoとGM・Cruiseが自動運転タクシーのサービス実証を始めるなど、エリア拡大が活発化し始めている。
中国では、百度(Baidu)を筆頭にWeRide、AutoX、Pony.aiなどの開発企業が北京や上海、深センなどの都市でサービスを開始している。一部サービスでは無人化・有料化も実現している。
自動運転シャトル関連では、仏NavyaとEasyMileが大きく先行しており、世界各地で高い導入実績を誇る。
米国、中国では自動運転トラックの開発も盛んで、Waymoをはじめ、TuSimple、Plusといった新興勢が続々と台頭し、量産化を視野に入れた取り組みを加速している。
【参考】自動運転トラックについては「自動運転トラックの開発企業・メーカー一覧(2022年最新版)」も参照。
また、イスラエルのMobileyeは、コンシューマー向けのレベル4車両を2024年にも中国で発売する計画を明かしている。一般自家用車におけるレベル4がどのように導入されるのか、要注目だ。
【参考】Mobileyeの取り組みについては「自動運転で未知の領域!「市販車×レベル4」にMobileyeが乗り出す」も参照。
なお、米コンサルティング企業のMarketsandMarketsの調査によると、2021年の自動運転タクシーの市場規模は617台という。現在、100台規模のフリートを構想する企業も出始めており、こうした数字は今後飛躍的に伸びていくことが予想される。
レベル4に関する法的動向
国内では、レベル4によるドライバーなしの運行を「特定自動運行」と定義し、従来の「運転」と区別する内容を含んだ道路交通法の改正案が2022年の通常国会で可決され、2023年4月に施行された。この特定自動運行に関する運用ルールを細かに整備されたことで、レベル4の社会実装が可能になった。
ちなみにこの法改正を受けて、福井県永平寺町で自動運転レベル4の移動サービスの展開が始まっている。無人を前提としたモビリティが移動サービスを提供しているが、電磁誘導線に沿って自動運転を行う「誘導型」の仕組みであるため、WaymoやCruiseと同水準のレベル4とはまだ言えない。
【参考】関連記事としては「自動運転、日本でのレベル4初認可は「誘導型」 米中勢に遅れ」も参照。
ドイツも、世界に先駆けてレベル4に対応した法案が2021年5月に連邦議会で可決されている。この動きは今後世界各国に広がっていくことは間違いない。早期にレベル4環境を整えた国には、世界の開発企業が集結する可能性があり、こうした点からも今後の動向に注目したいところだ。
【参考】レベル4に関する法整備については「自動運転、2022年は世界で「レベル4」の法整備加速」も参照。
レベル4の市場規模は?
前出の矢野経済研究所の調査によると、前述の矢野経済研究所の調査データによれば、レベル4の搭載車両数は2030年に約72万台に達すると予想されている。2025年までは0台という予想だ。これは、移動サービスとしてはレベル4の車両が使われても、市販車として一般向けに展開される車両ではレベル4の展開は遅くなる、といった将来予測と言えよう。
■自動運転レベル5
レベル5は高い壁、一部企業が果敢に実現目指す
レベル5(完全運転自動化)は、ODDに限定されることなくあらゆる状況下で無人運転を実現するレベルを指す。道路の種別や速度、エリアなどに捉われず、手動運転が可能な状況をすべて自動運転がカバーすることになる。
【参考】レベル5については「【最新版】自動運転レベル5とは?定義などの基礎知識まとめ」も参照。
突発的な悪天候や道路工事・事故などで一時的に走行できなくなった際も、状況が回復するまで安全に停止したり、走行可能な別ルートを探したりして運行を継続する。原則として、遠隔監視含め人間の手を煩わせない仕様となる。
現在の技術水準では一般的に達成は困難とされており、レベル5開発を公言する企業は少ない。米国では、EV大手テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が完全自動運転実現を早くから公言している。テスラの場合、デジタルマップを使った完全自動運転ではなく、人間のように「目」の役割を果たすセンサーだけで完全自動運転を実現しようとしている。
ちなみに国内では、2021年設立のスタートアップTURINGがテスラ超えを掲げ、2025年を目標にレベル5のEV開発を進めている。
【参考】TURINGについては「レベル5自動運転の「国産EV」を世界へ!TURINGが10億円調達」も参照。
■いずれは「レベル6」の世界もやってくる?
ちなみに、現時点で自動運転レベルは0〜5の6段階で定義されるが、もしかすると「レベル6」もいずれは定義されるかもしれない。自動運転ラボは以下の記事でその予測について触れた。
【参考】関連記事としては「誰も知らない「自動運転レベル6」の世界 管制センターが全車両をコントロール」も参照。
自動運転レベル5では「自動車」が完全自動運転を実現するが、レベル6では「管制センター」が全ての車両を遠隔で自動運転させることがあり得るかもしれない。そうすれば、「個」の自動車が完全自動運転をするよりも、交通全体を最適化し、より渋滞などを少なくしていけるはずだ。
ただし、こうした世界の実現には、莫大な計算が可能なスーパーコンピュータ、そして超高速な通信が可能なネットワークが必要不可欠になる。
■自動運転関連の事故
自動運転車の販売は自動運転タクシーの実用化が進む中で、自動運転関連の事故に関するニュースも増えてきた。商用化が進むと社会で活躍する自動運転車の絶対数が増えるため、事故件数も増える。ただ、事故の絶対数が増えても「事故率」はまた別の話だという考え方をもって、事故に関するニュースに触れたいところだ。
日本国内での自動運転車の2023年の事故としては、「日本初のレベル4」として注目を集めている自動運転レベル4の無人移動サービスが起こした接触事故が注目を集めた。4人が乗っている自動運転モビリティが無人の自転車に接触したという事故で、けが人はいなかったものの、原因究明などのために運行が一時停止された。
11月には、ソフトバンク子会社のBOLDLYが委託を受けて運行していた自動運転シャトル「MiCa」が、接触事故を起こした。負傷者はいなかった。
【参考】関連記事としては「2023年は自動運転の「事故元年」に?ソフトバンク系も接触事案」も参照。
アメリカにおける事故としては、GM傘下Cruiseの自動運転タクシーが、女性を下敷きにして引きずるという事故が2023年に起きた。この事故の前にもCruiseの自動運転タクシーはたびたびトラブルを起こしており、Cruiseは自社の全車両をリコールし、米国内で展開している自動運転タクシーの運行を全て停止した。(カリフォルニアでは当局から運行停止命令が出た)
海外での事例
- 2016年2月:Googleの自動運転車が路線バスと衝突
- 2016年5月:Uberの車両で部分自動運転モード中に死亡事故
- 2018年3月:Uberの車両が自動運転中に歩行者と死亡事故
- 2018年3月:TeslaのEVが2件目の自動運転モード中の死亡事故
- 2023年10月:Cruiseが女性を下敷きにする事故
国内での事例
- 2019年8月:名古屋大学が所有する「ゆっくり自動運転」車両が接触事故
- 2020年3月:BOLDLYの自動運転バスが都内で物損事故
- 2020年8月:産総研の実証実験で接触事案、運転手の判断ミスが要因
- 2020年12月:再起動忘れが原因で自動運転バスがガードレールに接触
- 2021年8月:東京五輪の選手村でトヨタのe-Paletteが接触事故を起こす
- 2023年1月:大津市内で乗客が座席から滑り落ちる事故が発生
- 2023年10月:「日本初のレベル4」の移動サービスで接触事故が発生
- 2023年11月:福岡市で実証運行中の「MiCa」が接触事故
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故一覧 日本・海外の事例まとめ」も参照。
■自動運転市場の今後は?
続いて、自動運転市場の今後に関するレポートを紹介する。ちなみに自動運転バスと自動運転タクシーについては、それぞれ以下の記事で個別に詳しく紹介しているので、参考にしてほしい。
▼自動運転タクシー、最新の市場規模予測まとめ【国内・世界市場別】
https://jidounten-lab.com/u_48902
▼自動運転バス・シャトル、最新の市場規模予測まとめ【国内・世界市場別】
https://jidounten-lab.com/u_48839
富士キメラ総研:レベル4・5は2045年に2,051万台に
富士キメラ総研は、2022年8月に「2022 自動運転・AIカー市場の将来展望」を発表した。生産台数ベースで、レベル2の車両は2020年見込みの3,608万台から2045年には6,166万台まで増加すると予測している。レベル3は同3万台から2,847万台、レベル4・5は同9万台から2,051万台にそれぞれ増加すると予測している。
レベル3以上では運転主体が部分的に自動運転システムになるため、法規制や事故時の責任問題などの課題が多く、これらがクリアとなってくる2030年以降に普及段階に入るとの予想だ。
なお注目市場として、LiDARが2022年見込み129億円から2045年3兆5,375億円、DMS(Driver Monitoring System)が2022年見込み664億円から2045年9,349億円と予測している。DMSについては、欧州では2024年に搭載が義務化され、北米では2026年までに搭載が推奨されることから、市場が拡大するとみているようだ。
▼『2022 自動運転・AIカー市場の将来展望』まとまる(2022/8/3発表 第22085号)|富士キメラ総研
https://www.fcr.co.jp/pr/22085.htm
Report Ocean:2028年に63億ドルまで拡大
Report Oceanが2022年11月に発表した最新予測によると、世界の自動運転車市場は2021年に約17.4億ドルとなり、2022〜2028年のCAGR(年平均成長率)は20.3%以上になるようだ。2028年の市場規模は、63.4億ドルに達すると予測している。
アジア太平洋地域において、厳しい安全規制の実施や安全で効率的で便利な運転体験に対する需要の高まりにより、市場シェアにおいて世界の主要地域になるという。新興国における可処分所得の増加や技術的進歩などにより、アジア太平洋地域全体の自動運転車市場に有利な成長見通しを生み出し、同地域が最も高い成長率を示すと予想している。
▼自動運転車の市場規模は2028年に63.4億米ドルに達する見込み-最新予測|Report Ocean
https://newscast.jp/news/8474254
リサーチステーション:自動運転列車の世界市場規模は2030年に123億ドル
自動運転列車についての市場調査レポートも発表されている。リサーチステーションのレポートによると、世界市場規模は2022年に83億ドル、2030年に123億ドルとなり、CAGRは5.1%に達する見込みだという。
自動運転に関して、クルマだけでなく列車でも開発が進んでいることが分かる。
▼自動運転列車(Autonomous Train)の世界市場規模、2030年に123億ドルに達する見通し【市場調査レポート】|リサーチステーション合同会社
https://www.dreamnews.jp/press/0000273306/
■自動運転業界をリードする企業は?
Google/Waymo
現在の自動運転開発競争の仕掛け人がグーグルだ。テクノロジー企業としていち早く自動運転開発に着手し、公道走行を実現した。
2016年に開発部門を分社化してWaymoを設立し、自動運転のサービス化・ビジネス化に本格着手した。米アリゾナ州フェニックスを最初のサービスエリアに設定し、実証を積み重ねて2018年末に世界初の商用自動運転タクシーサービスを開始した。
当初はセーフティドライバー同乗のもとサービスを提供していたが、2019年末から一部のフリートを完全無人車両に置き換え、その対象を徐々に拡大していった。
2024年時点でサービスはカリフォルニア州サンフランシスコ・ロサンゼルスにも拡大しており、2025年初頭にはテキサス州オースティンとジョージア州アトランタにも拡大する計画だ。
一週間当たりの運行回数は10万回を超えており、フェニックスやサンフランシスコではもはや珍しい存在ではなくなっている。
Waymoが自動運転タクシーに採用するモデルにも注目が集まっている。初代はクライスラーの「Pacifica」で、2代目はジャガーの「I-PACE」を採用した。現在は全車両をBEVに置き換えている。
2025~2026年ごろに導入される3代目には、中国Geely系ブランドZeekrのモデルが内定しているが、米中間の貿易摩擦を背景に、韓国ヒョンデの「IONIQ 5」を採用する動きも出ている。両方を採用するのか、あるいはIONIQ 5に絞られることになるのか、要注目だ。
【参考】グーグル・Waymoの取り組みについては「Googleの自動運転部門、時価総額が「ホンダ級」に!評価額6.8兆円規模」も参照。
GM/Cruise
米自動車メーカー大手GMは2016年、自動運転開発スタートアップCruiseを買収し、同分野における取り組みを本格化させた。
Cruiseは、Waymoのライバルとして早くから期待を寄せられていた有力スタートアップで、ホンダを交えた3社で共同開発を進めている。2020年には、ハンドルなどの手動運転装置を排した自動運転サービス専用モデル「Origin」を発表している。
当初予定より遅れたものの、2022年にサンフランシスコで自動運転タクシーサービスを開始した。2023年までにフェニックスとオースティンでもサービスインするなどWaymoを猛追していたが、2023年10月に事件が起こった。
サンフランシスコで無人運行中のCruiseの自動運転タクシーが、別の車両にはねられ前方に飛んできた女性に衝突した。そこまでは仕方のない事故だが、異常を検知したCruise車は、緊急停車するため女性を引きずりながら路肩への移動を開始してしまったのだ。
この事故を問題視したカリフォルニア州道路管理局(DMV)と同州公共事業委員会(CPUC)は同月、州内における同社の営業停止と無人自動運転走行許可の停止を発表した。Cruiseもこの措置を受け、他州を含むすべてのエリアで無人車両の走行を中止し、翌月には自動運転ソフトウェアのリコールを届け出た。さらには、同社CEO(最高経営責任者)のカイル・ヴォグト氏が辞任する事態にまで発展した。
2024年6月にフェニックス、テキサス州ヒューストン、ダラスで手動運転と監視付き運転による実証を再開しており、年内に無人運転、2025年に有料運行の復帰を目指す方針のようだ。
親会社のGMはOriginの開発中止を発表するなどシビアな面を見せている。今後も事業展開が停滞するようなら、事業停止や売却といった判断が行われる可能性も否定できないだろう。
【参考】Cruiseの動向については「ホンダ出資先、自動運転事業「失敗」で巨額赤字3,300億円 米Cruiseが苦境」も参照。
Baidu
中国では、「中国のグーグル」と言われるテクノロジー企業Baidu(百度)が自動運転分野をリードしている。
同社は2017年、オープンソフトウェアプラットフォームを活用した「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」を始動し、多くのパートナーを交えた自動運転開発プロジェクトに着手した。パートナー企業は100社を超え、量産パートナーにはトヨタやホンダも名を連ねている。
日産の中国法人も2024年4月、AI分野における戦略的協力に向け覚書を交わした。日産のインテリジェントプラットフォームをベースに、Baidu の生成 AI における利点を活用して将来の技術開発と関連分野での商業協力の実現可能性を検討していくという。
Baiduはこのアポロ計画で培った技術を活用し、中国内で自動運転タクシーや自動運転バスなどのサービス化を推し進めている。
自動運転タクシーサービス「Apollo Go」は10都市以上で展開されており、北京、武漢、深セン、重慶などの都市では無人自動運転を実現しているという。ライド数は2024年第2四半期(2024年4~6月)に約89万9千回を記録し、同年7月末時点の累計ライド数は700万回を超えたとしている。
自家用車向けのADASソリューションや低コストなレベル4車両の生産にも積極的で、Geelyをはじめとした中国自動車メーカーとの協業の行方に注目が集まるところだ。
【参考】Baiduの取り組みについては「百度(Baidu)の自動運転戦略」も参照。
トヨタ
世界トップの自動車メーカーながら、自動運転分野ではマイペースを貫くトヨタ。今のところ、自ら率先して動くというより、開発スタートアップをバックアップするような取り組みが目立つ。
トヨタグループは、中国Pony.ai、米Aurora Innovation、May Mobility、Nuroといった新興開発勢とパートナーシップを結んでいる。出資や車両の供給のほか、共同研究を進めているケースもあるようだ。
車両はプリウスやレクサスRXなどのハイブリッドモデルが人気で、特にプリウスはトヨタと特段の関係を持たない自動運転開発企業も広く実証用途で採用している。
自動運転タクシーやシャトルサービス向けとしては、Autono-MaaSモデル「シエナ」の導入が進んでいる。詳細なスペックは明かされていないものの、アルファードより一回り大きな北米仕様のミニバンで、おそらく自動運転サービスに適した仕様変更が行われているものと思われる。
独自の取り組みとしては、サービス向けの自動運転EV「e-Palette(イー・パレット)」の実用化に期待が寄せられる。移動サービスをはじめ、小売や物流、移動ホテルなどさまざまな用途に活用可能な汎用性の高いモデルだ。当初はハンドルなどを備えない自動運転専用設計だったが、実証などをスムーズに行うことができるよう手動制御装置を備えたモデルも登場している。
実証は、東京オリンピック・パラリンピックの選手村での運行をはじめ、東京臨海副都心エリアでの実証や愛知県豊田市のサービス実証などに用いられており、徐々に表舞台に姿を現し始めている。
また、自動運転のテストコースに位置付けられている実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」が2025年に始動予定で、シティ内においてトヨタ独自の取り組みが本格化する可能性が高い。今後の展開に要注目だ。
【参考】トヨタの取り組みについては「トヨタの自動運転戦略 車種や機能の名前は?レベル2・レベル3は可能?」も参照。
ホンダ
ホンダは2021年3月、渋滞時に自動運転を可能にするレベル3機能「トラフィックジャムパイロット」を実現した「Honda SENSING Elite」と、それを搭載した新型LEGEND(レジェンド)を発表した。世界初のレベル3自家用車だ。
作動要件は高速道路渋滞時における時速60キロ以下のため実用性の点では物足りないが、こうした最初の一歩があってこそ技術は発展していく。今後、制限速度の拡大などに期待したいところだ。
レベル4関連では、パートナーシップを結ぶGM・Cruise勢と2026年初頭に東京都内で自動運転タクシーを開始する計画を公表している。
当初計画では、「Origin」を導入し、お台場エリアを皮切りに中央区や港区、千代田区へと順次拡大を図り、500台規模のサービス体制を構築するとしていた。ただ、Originの開発が中止されたため、計画変更を余儀なくされるものと思われる。
命運を握るCruiseの復活とともに、国内におけるホンダの動向にも注目したい。
【参考】ホンダの取り組みについては「ホンダの自動運転戦略 レベル3車両発売、無人タクシー計画も」も参照。
■自動運転配送ロボットの現状は?
続いて、各国で自動運転配送ロボットを開発している主な企業について説明していこう。
【参考】関連記事としては「自律走行ロボットの種類は?(2023年最新版)」も参照。
日本の主な開発企業は?
自動運転ベンチャーのZMPは、自動運転技術を応用した宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」を開発しており、このロボットと、ユーザー用・店舗用アプリやITサービスをパッケージ化して提供している。日本郵便と共同での公道走行実証の実績がある。
ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が取締役を務めるHakobotも、自動運転配送ロボットを手掛けている。自動走行ユニット「Hakobase(ハコベース)」のみで自動運転実装が可能で、荷室はカスタマイズ可能となっているのが特徴だ。
2022年4月設立のスタートアップ企業LOMBY(ロンビー)は、屋内外で走行可能な自動配送ロボットを開発している。2023年3月にはスズキと共同開発契約を締結し、ラストマイル物流の課題解決に取り組んでいくことを発表した。また自動配送ロボベンチャーのLexxPlussは、約14.5億円の資金調達を実施し、米国市場に進出することを2023年3月に発表している。
パナソニックも自動配送ロボットの自社開発に取り組んでおり、2022年5〜7月には楽天や西友と公道走行による配送サービスを、日本で初めて茨城県つくば市で行った。
米国の主な開発企業は?
代表的な開発企業は、Starship TechnologiesやNuroなどだ。Starship Technologiesはエストニア発の企業であるが、本社を米カリフォルニア州サンフランシスコに置いている。同社の宅配ロボは、すでに400万件以上の配送を行っているようだ。
Nuroは宅配ロボ「R2」を開発している。トヨタ系Woven Capitalからの出資を受けるなど経営は順調にみえたが、2022年11月には従業員の20%をレイオフ(一時解雇)することが明らかになっている。チーム規模を倍増させ、営業費用を大幅に増加させたことが要因のようだ。
米スタートアップのCartken(カートケン)は、自社開発の自動運転配送ロボを日本にも進出させている。2022年1月には、愛知県のイオンモール常滑で商品配送サービスの実証実験を行うことを発表している。
なおAmazonも宅配ロボ「Amazon Scout」の開発を行っていたが、公開テストを停止することが2022年10月に報じられた。プログラムが顧客ニーズに合っていないため、取り組みをゼロから再構築するというのが理由とされている。
欧州の主な開発企業は?
イタリアのe-Noviaが開発したコンパクトな2輪タイプの宅配ロボ「YAPE」や、ドイツで郵便・物流を担うドイツポストが開発した「Post BOT」などがある。
中国の主な開発企業は?
ECプラットフォームやフードデリバリー事業などを手掛ける美団(Meituan)は、2018年に初の自動配送ロボット「Xiaodai」を発表した。スタートアップのNeolix(新石器)は、2019年から宅配ロボの量産を開始している。
EC大手のアリババは、2020年9月にラストマイル配送用の宅配ロボ「小蛮驢(シャオマンリュ)」を発表した。同じくEC大手のJD.com(京東商城)も宅配ロボを手掛けており、2022年4月には上海で100台以上の稼働をスタートさせている。
■【まとめ】レベル4は本格的な拡大局面へ
自家用車においては、レベル2が2020年代の主力となる一方、レベル3搭載車も増加し、徐々にシェアを上げていくものと思われる。また、モービルアイのようにレベル4搭載を目指す動きも出ており、動向を注視したい。
レベル4サービスは世界的に拡大局面へと本格的に移行し始めた状況で、今後、米国・中国以外でもサービスインする例が続々と出てきそうだ。自動運転業界は1年間で大きく情勢が変わるため、引き続き各社・各国の動向に注目したい。
■関連FAQ
米自動車技術会(SAE)が策定した自動運転関連の技術区分で、自動運転化なしのレベル0から、完全自動運転を実現するレベル5まで6段階に分けられている。なお、自動運転レベルという名称が付されているものの、レベル1、レベル2は自動運転ではなくADAS(先進運転支援システム)で、レベル3以降が自動運転となる。
【参考】自動運転レベル一覧【1・2・3・4・5の表付き】
ACCやLKAなど、ドライバーの手動運転を支援する技術を総称してADASという。あくまで運転を支援する役割であり、運転における責任はすべてドライバーが負うことになる。
【参考】ADAS(先進運転支援システム)とは?読み方はエーダス
自動運転が可能となる条件のことで、高速道路や一般道といった道路条件、地理的境界線(ジオフェンス)内や山間部といった地理条件、天候などの環境条件、その他速度制限やインフラ協調の有無など各種要件で構成される。ODDがカバーする条件が大きければ大きいほど自動運転可能な条件が広がるため、各自動運転システムの能力を示す明確な指標と言える。
【参考】自動運転のODD(運行設計領域)とは?
ハンズオフはハンドルから手を離した運転、アイズオフは車両周囲から目を離す運転を指す。それぞれレベル2+、レベル3を象徴する表現と言える。レベル4では、ドライバーは運転操作から完全に解放されるため、ブレインオフと表現されることがある。また、レベル2をハンズフリー、レベル3をアイズフリー、レベル4をドライバーフリーと呼ぶこともある。
【参考】手放し運転(ハンズオフ)ができる車種・機能一覧
自動運転に関連する法律は、日本では道路運送車両法と道路交通法が挙げられる。車両が備えるべき要件や、道路交通ルールを整備した法律だ。従来の各法は人間による手動運転を前提とし、自動運転システムが存在していないため、自動運転の社会実装に向けては、自動運転システムの要件や無人運転に関するルールなどを整備しなければならない。このほかにも、インフラ協調システムの観点から道路法、通信の観点から電波法などが関わってくることもある。
【参考】自動運転関連の法律・ガイドライン一覧
自動運転車はすでに実用化されており、米国や中国を中心に運転手無人による自律走行が実現している。自家用車では、条件付きで自動運転を可能とする自動運転レベル3をホンダやメルセデス・ベンツ、BMWが市販化している。
自動運転レベル5は、道路条件や走行速度などを問わずいつでもどこでも自動運転が可能な技術レベルを指す。つまり、手動運転が可能な状況をすべて網羅することが求められる。現在の技術水準ではほぼ不可能とする見方が強く、早くても2030年代、遅ければ2040年代以降とも言われる。AIが劇的な進化を遂げつつある中、レベル5は本当に実現可能なのか、可能であるならばその時期はいつ頃になるか……といった点に改めてスポットが当たりそうだ。
【参考】完全自動運転(レベル5)とは?
一般車道以外における完全自動運転(レベル4)はすでに福井県永平寺町などで始まっている。一般車道では2024年11月時点で未実装だが、自動運行装置(自動運転システム)がレベル4認可を取得する動きが出始めている。サービス提供・運行が可能になる特定自動運行許可を取得する企業もそろそろ出てきそうな気配だ。
自家用車では、ホンダのレジェンド、メルセデス・ベンツのSクラスとSクラスのEV版「EQS」、BMWの7シリーズが自動運転レベル3を実装可能としている。システムから手動運転要請が行われた際は速やかに運転操作を行わなければならないレベルだ。メルセデスはドイツ、米国の一部でサービスを可能にしており、2025年初頭にも対応速度を時速96キロまで引き上げる予定としていることから、SクラスとEQSが現時点では最も自動運転に近いと言えそうだ。
自動運転レベル4は米国や中国をはじめ、日本でもすでに実現している。日本で実用化されているレベル4(福井県永平寺町)は磁気マーカーを使用し、一般車道外を走行するサービスのため勝手がやや異なるが、ティアフォーやBOLDLYなどによる一般車道におけるレベル4サービスが2025年中に始まる可能性が高い。
【参考】自動運転レベル4とは?いつ実用化?
自動運転の普及がなかなか進展しない背景には、自動運転そのものの開発・実装の難しさとコストが考えられる。一般車道上で自動運転車を走行させるには、一定水準以上の安全性を担保する必要があるが、その時々で道路状況・環境は異なるため、常に安全を確保するのは非常に難しい。新たなエリアへサービスを拡大する場合も、走行実証を繰り返し行わなければならない。運転がたどたどしい実装初期においては、他の交通参加者やサービス利用者の理解・協力も必須となる。コストも問題だ。自動運転車は一台数千万円と言われ、無人サービスが安定するまでは多くの人的リソース・労力も必要となる。ビジネス的に採算をとるためには、量産化によるイニシャルコストの低下と、ドライバーの完全無人化、監視やトラブル対応などを担うバックヤードのスタッフ削減まで進める必要があるが、そのフェーズに至るまでの過程が長く、体力勝負を余儀なくされる。このため、普及速度が遅いのだ。
自家用車ベースでは、レベル3を実現しているホンダ、メルセデス・ベンツ、BMWが事実上最も進んでいると言える。商用車においては、Baiduと手を組むGeelyなどが共同でレベル4対応車の量産化を進めている。自動車メーカー単独では、米テスラが先進運転支援システム「FSD(Full Self-Driving)」を進化させ、2025年中に自動運転化する計画を発表している。
【参考】自動運転、一番進んでいるメーカーは?
自家用車では、ホンダのレジェンド、メルセデス・ベンツのSクラスとSクラスのEV版「EQS」、BMWの7シリーズが自動運転レベル3を実装可能としている。いずれも高速道路における渋滞時限定の自動運転だが、メルセデスは2025年初頭にも時速96キロまで対応可能にする予定だ。
自家用車においては、2025年中にレベル4を達成するメーカーは出てこないものと推測される。レベル3は、ボルボ・カーズや中国系メーカーの中から新たな動きが出てくるかもしれない。また、メルセデスのように対応領域拡大(制限時速の拡大)に踏み出すメーカーがほかにも出てくることにも期待したいところだ。
【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標」も参照。
(初稿公開日:2022年8月1日/最終更新日:2024年11月21日)
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)