【2022年7月の自動運転ラボ10大ニュース】レベル5開発のTURINGが資金調達

百度が製造費500万円の自動運転車発表

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百度の最新自動運転タクシーの発表やZooxの自動運転タクシー事業に向けた取り組みなど、海外では依然として自動運転業界がにぎわっている。

一方、日本でもレベル5実現を公言するスタートアップや自動運転の安全性を数学的に証明する取り組みなど、新たな動きが続々と出始めているようだ。

2022年7月の10大ニュースを1つずつおさらいしていこう。

■Google系Waymo自動運転トラックで家具配送(2022年7月5日付)

自動運転タクシーでおなじみの米Waymoが、家具配送サービスの実証を開始した。自動運転トラックを活用した輸送サービス「Waymo Via」の商用化に本格着手したようだ。

今回の事業は、以前から提携関係にあるトラック輸送大手の米J.B.Huntと共同で、家具家電のオンラインストア「Wayfair」の商品配送を手掛ける内容となっている。大型の自動運転トラックを使用し、テキサス州ヒューストンとダラスを結ぶ州間高速道路を運行するミドルマイル輸送のようだ。

米国ではスタートアップによる自動運転トラックのサービス実証も始まっており、本格導入に向けた取り組みが大きく加速している。その中で、自動運転タクシーで高い実績を誇るWaymoがどのような存在感を発揮していくのか、今後の動向に引き続き注目したい。

【参考】詳しくは「Google系Waymo、自動運転トラックで家具配送」を参照。

■ソフトバンク、自動運転の米新興May Mobilityと提携(2022年7月6日付)

米スタートアップのMay Mobilityが、ソフトバンクと業務提携契約を締結した。日本企業との距離をどんどん縮めている印象だ。

同社は2019年にトヨタなどが参画する「未来創生ファンド」から出資を受けているほか、2022年1月には未来創生2号ファンドをリードインベスターとする資金調達ラウンドで豊田通商から出資を受け、業務提携契約を交わしている。同ラウンドには東京海上ホールディングスも参加している。同年4月には、ブリヂストンのグループ会社ブリヂストン・アメリカスからも出資を受けている。

May Mobilityによると、ソフトバンクとMONET Technologiesとともに東京で自動運転プロジェクトを展開するという。また、トヨタとのコラボレーションを継続し、2022年後半にもトヨタの米市場向けシエナをベースにした「シエナAutono-MaaS」の展開を拡大するほか、e-Paletteで予備開発を行うとしている。

トヨタ、ソフトバンクを中心に米国のみならず日本での展開を拡大していく可能性が高く、今後の動向に要注目だ。

【参考】詳しくは「ソフトバンク、自動運転の米新興May Mobilityと提携」を参照。

■住民唖然!Cruiseの自動運転タクシー、深夜の「道路封鎖」(2022年7月9日付)

カリフォルニア州サンフランシスコで自動運転タクシーのサービス実証を進めているCruiseの車両が、一時公道を占拠したようだ。同社の無人フリートが10台前後集まり、1時間以上にわたり複数車線にまたがって停止し続けたという。

原因はサーバーの不調とみられているが、公式発表はされていない。同社の自動運転タクシーはこのほか、取り締まりのパトカーからの逃走や消防車の通行妨害なども相次いで話題となっている。

サーバーの問題は死活問題となるため、冗長化を図る必要がありそうだ。その他の事案についても、さまざまなシチュエーションを可能な限り想定・導入し、自動運転システムの向上を図っていくほかない。

Waymoの有力対抗馬として注目を集めるCruiseだが、トラブル続発は大きな不信を招く。いち早い改善を望みたいところだ。

■福山市の自動運転事故「白線なし区間での検証が不十分」(2022年7月14日付)

広島県福山市内で2022年3月に発生した自動運転バスの接触事故について、福山市と開発元の日本モビリティが原因を発表した。実証に向けた事前準備における不備が要因となったようだ。

事故は、右隣のレーンを走行するトラックに自動運転バスが接触したもの。走行ルートには車線境界線(白線)が引かれていない区間があり、この区間における安全検証が不十分であったため白線寄りの位置で自動運転車の走行軌道が作製されたという。つまり、隣のレーン寄りを走行する形となっていたのだ。

合わせて、事故当時のセーフティドライバーの反応が遅れたため、並走していたトラックに接触したという。

自動運転実証は国内各地に広がりを見せ、さまざまな自動運転システムを活用した公道走行が行われている。実証準備作業もある程度マニュアル化が進んでいるものと思われるが、二つと同じ道路はない。盲点となり得る箇所の洗い出しをはじめ、全ルートにおいて安全が確保されているか、気を引き締めて取り組みたいところだ。

■Waymoの自動運転車を狙った犯行?歩行者の襲撃受ける(2022年7月16日付)

Waymoの自動運転車が歩行者に襲撃される事件が7月5日、米アリゾナ州で発生したようだ。自動運転モードで走行中、突然前方に飛び出してきた歩行者に対しセーフティドライバーが手動運転モードに切り替え車両を停止させたが、歩行者はボンネットに乗ってフロントガラスを破壊したという。

米メディアによると、7月9日にもカリフォルニア州で走行中のWaymoの車両がスケートボーダー集団に囲まれ、車両の上に乗られたりスプレーを吹きかけられたりしたようだ。

以前から卵を投げつけられたり銃を向けられたりする事件が発生しており、その要因はいろいろと考えられるが、いずれも社会受容性の重要性を再認識させられる内容だ。

自動運転サービスが対象エリアの拡大を見せる中、こうした事件がお祭り騒ぎとなって拡大しないよう、当局の取り締まりや注意喚起、そして開発・サービス提供企業の社会受容性向上に向けた取り組みなどに期待したい。

■自動運転車の安全を「数学的」に証明!日本の研究チーム(2022年7月18日付)

情報・システム研究機構「国立情報学研究所」の研究チームが、モービルアイが策定した自動運転の安全性に関する数式モデル「RSS(責任感知型安全論)」の応用範囲を拡張した手法「GA-RSS」を発表した。自動運転の安全性に数学でアプローチする理論だ。

RSSは、自動運転の安全性に関するルールを明示的な数式で示し、その数式の妥当性を証明することで自動運転の安全性に数学的証明を与えるもの。5つの安全原則で構成されている。研究チームはこのRSSの適用範囲を拡大し、より複雑な運転シナリオにも対応可能なモデルを提案した。

RSSを国際基準化する取り組みも進められており、今後GA-RSSが世界でどのように評価され、受け入れられていくか注目したい。

■レベル5自動運転の「国産EV」を世界へ!TURINGが10億円調達(2022年7月19日付)

自動運転開発を進める2021年創業の国内スタートアップ・TURINGがこのほど資金調達を実施した。目指すは2025年のレベル5実現だ。

同社は、人間と同様、カメラ(目)による情報を主体にAI(脳)が解析・判断を下す自動運転システムでレベル5の開発を進めている。

レベル5の2025年実現は眉唾レベルの大望となるが、ビッグテックなどの名を挙げ、「我々もステキな勘違いをしてもいいはず」といったスタンスでイノベーションに挑む。

すでに実証にも着手しており、今後柏の葉スマートシティなどを中心に公道実証も本格化していくものと思われる。2025年まであと3年。目標達成に向け強くアクセルを踏み込む同社の動向に要注目だ。

■Amazon、自動運転タクシー展開へ 傘下企業が試験準備(2022年7月21日付)

Amazon傘下のZooxが、ハンドルなどの手動運転機構を備えない自動運転サービス専用車両「VH6」の試験走行許可をカリフォルニア州当局に申請したようだ。

同社はこれまで、乗用車を改造した自動運転車を用いて同州で公道実証を重ねていた。2020年にはドライバー席無人の実証許可も取得している。

ハンドルなどを備えない新規格の自動運転車は、手動運転を前提とした従来の連邦自動車安全基準(FMVSS)を満たさないため、公道走行に向けては米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に規制免除を申請するのが一般的だ。

しかし同社は、走行に必要となる安全性能要件を自己認証する方法に出たようだ。これがどのような結果となるかは不明だが、同社はそれだけ安全性に自信を持っていると言える。

また、同社はこの自己認証について「公共サービスを開始するための重要なステップ」と位置付けている。公道走行許可が得られれば、経験を積み重ね後サービスインに繋げていく構えだ。引き続き同社の動向に注目したい。

■百度、製造費500万円の自動運転車 無人タクシーで使用(2022年7月23日付)

百度が最新のレベル4車両「Apollo RT6」を発表した。取り外し可能なステアリングホイール機構を備えたモデルで、2023年に自動運転タクシー「ApolloGoサービス」に導入していく方針だ。

1台当たりの生産コストは格安の25万元(約500万円)で、数万ユニットに達するまでフリートを拡大していく計画のようだ。このイニシャルコストの削減により、タクシー代金は従来の半分まで下げることが可能になるとしている。

肝心の自動運転機能は、LiDAR8基とカメラ12基を含む計38個のセンサーを備え、情報処理能力は1200 TOPSを誇る。20年の経験を持つ熟練ドライバーに相当する運転が可能としている。

ODD(運行設計領域)がどこまでカバーしているかが気になるところだが、ハンドルを取り外して無人走行が可能な点を考慮すると、自動運転タクシーサービスをしっかりと満たす水準には達しているものと思われる。詳細な続報を待ちたい。

■自動運転企業モービルアイが上場延期 米市場の相場悪化が理由(2022年7月23日付)

インテル傘下モービルアイの株式再上場計画が延期されたようだ。米メディアによると、株式市場の相場環境の悪化が理由という。

2022年にIPOを予定しているモービルアイと、ソフトバンクグループの英アームは間違いなく株式市場の目玉となる。しかし、現在の景況はふさわしくないと判断し延期に踏み切るようだ。今後、アームの動向も気になるところだ。

モービルアイはADAS製品やSoC(システムオンチップ)を主力とするほか、自動運転サービスの世界展開を本格化させており、WaymoやBaiduなど先行する米中勢に対抗する第三勢力として大きな期待を寄せられている。

株式市場から集まる膨大な資金をもとにどのように世界展開を加速させていくのか、業界の台風の目としても注目だ。

■【まとめ】新興企業が成長しやすい環境を

自動運転車の本格量産化がまだ珍しい中、百度の「Apollo RT6」がどのようなスペックを誇り、市場価格が実際いくらになるのか、要注目だ。

国内では、TURINGのような血気盛んなスタートアップの登場が素直に喜ばしい。大風呂敷を広げて……と言われても仕方ない情勢かもしれないが、高い目標に挑み続けることで研究開発のクオリティが上がり、通過点となるレベル4開発も必然的に促進される。

笑い飛ばすのは簡単だが、どうせなら笑顔で背中を押してくれるような開発環境を業界内外でしっかりと確保し、海外に負けないスタートアップの成長を促したいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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