
米Intel(インテル)傘下の自動運転開発企業Mobileye(モービルアイ)が、ロボタクシー事業に参入する。米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)や、配車大手Uber(ウーバー)が築いてきた自動運転タクシーの巨人たちの牙城を崩すべく、これまで技術を供給する裏方に徹してきた同社が、自ら運営する側へと踏み出すことになった。車両の運行から配車、乗客サービスまでを自社で抱える垂直統合型の事業を立ち上げる。
計画では2027年に米国の主要都市で約100台の完全無人車両を段階的に投入し、運行モデルを検証する。その後5年で約1万7,000台規模への拡大を狙う。
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■モービルアイ、ロボタクシー参入へ
Mobileyeが自動運転技術を供給する立場から、ロボタクシーを自ら運営する立場へと踏み込んだ。これまで同社は、完成車メーカーやモビリティ企業にEyeQと呼ばれる半導体や自動運転システムMobileye Drive(モービルアイ・ドライブ)を納める裏方だった。新事業では、車両の運行、配車、乗客向けサービス、フリート管理までを一手に担う垂直統合型のモデルへと舵を切る。
2027年に米国の主要都市で約100台の完全無人車両を段階的に投入し、運行モデルを検証する計画だ。Mobileyeはこの新事業を既存ビジネスの代替ではなく拡張だと位置づける。完成車メーカー向けの技術供給は今後も続け、自社運営と並行して進める方針を示している。
供給する側が自ら運営にも乗り出す。この二刀流は、25年にわたり技術を磨いてきた同社が、その実力を自分の手で証明しにいく試みだと言える。
供給に徹してきた企業が運営に踏み込んだ。技術の実力を自ら市場で示すことで、サプライヤーの枠を超えた存在になろうとしている。ロボタクシー競争の新たな構図と言える。
【参考】関連記事としては「Google、ロボタクシーに「トヨタ車」採用か?」も参照。
■5年で17,000台へ拡大
初期段階でロボタクシーの投入は約100台。これを足がかりに、続く5年間で約17,000台規模まで拡大する目標を掲げる。初年度は年間を通じて段階的に展開し、完全無人での運行モデルを慎重に検証していく。
自社運営を支える基盤となるのが、子会社Moovit(ムービット)だ。世界3,500都市を超える地域でサービスを提供し、約17億人のユーザーにリーチする配車と運行管理のプラットフォームを持つ。Mobileyeは、Mobileye Driveの自動運転技術にMoovitの配車アプリや運行管理の仕組みを組み合わせることで、車両から乗客サービスまでをつなぐ垂直統合を実現しようとしている。
市場の反応は早かった。発表を受けて同社の株価は約6%上昇した。供給から運営への転換を、投資家がひとまず前向きに受け止めた格好だ。
■既存顧客と競合はしないのか?
自社で運営に乗り出せば、技術を供給してきた顧客と立場が重なりかねない。これが今回の発表が抱える最大の論点だ。Mobileyeはこれまで、米EV大手Tesla(テスラ)を除く多くの完成車メーカーにEyeQ技術を供給してきた。GM、日産、フォードなどがその顧客にあたる。
中でもロボタクシー領域で関係が深いのがフォルクスワーゲン(VW)だ。VWはMobileyeの自動運転システムを搭載した電気自動車ID. Buzz ADをロボタクシーとして展開する計画を進めており、2027年までに米国で約1,000台規模の投入が見込まれている。供給先であるVWと、自社運営のMobileye。両者がロボタクシー市場で並び立つ構図になる。
この点についてMobileyeは、自社運営を市場への補完的な道筋だと説明する。最高経営責任者のアムノン・シャシュア氏は、これは既存提携の代替ではなくその拡張だと述べ、顧客向け供給と自社運営を並行して進める考えを強調した。供給と運営の二つの事業が、互いを食い合うのではなく補い合うという論理である。
【参考】関連記事としては「テスラのロボタクシー「実はたった31台」説」も参照。
■ロボタクシー市場はウェイモが先行
Mobileyeが参入するロボタクシー市場は、すでに激しい競争のただ中にある。先頭を走るのは米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)だ。現在は米国11都市で運行し、今年中にロンドンと東京への初の国際展開も計画している。米国だけで約4,000台を走らせ、1都市あたり約400台という規模を築く。
追う顔ぶれも厚い。Amazon傘下のZoox(ズークス)、独自路線のTeslaなどが加わり、市場は急速に拡大している。Mobileyeが掲げる100台から17,000台という計画は、この先行勢に挑む数字だ。
なお、Mobileyeは2025年に配車大手Lyft(リフト)および日本の丸紅と組み、テキサス州ダラスでロボタクシーを展開する合弁を発表していた。車両は丸紅が保有して運用し、当初は2026年の開始を予定していた。だがこの計画は実現しておらず、今回の自社運営はこれとは別の枠組みと位置づけられる。日本の商社が車両運用で関わる構図は注目を集めたが、自社主導へと軸足を移した形だ。
【参考】関連記事としては「Googleロボタクシー、金持ち優遇の「優先パス」を発表」も参照。
■モービルアイが表舞台で問われるもの
2億3,000万台。これがMobileyeが25年かけて世界に送り出してきた技術の搭載実績だ。その巨人が、いま自ら運営する側へと回る。供給に徹してきた企業がロボタクシーの運営者になる転換は、業界に一つの問いを投げかける。
垂直統合は強みにもなれば、重荷にもなる。車両の運行や乗客サービスまで自社で抱えれば、技術だけを売っていた時代にはなかった資本負担とオペレーションの責任がのしかかる。一方で、技術と運営を一体で握れば、開発の知見を運行の現場へ直結させ、競争力を一気に高められる可能性もある。
2027年の100台が、5年後の17,000台へとつながるのか。インテル傘下のモービルアイによるロボタクシー参入は、サプライヤーが運営者へと姿を変える試みが成り立つのかどうかを占う、業界全体の試金石となる。裏方だった巨人の表舞台での実力が、これから問われる。













