アマゾンの自動運転タクシー「Zoox」が有料にできないワケ GoogleのWaymoは530億円と稼ぐ

規制によって明暗



出典:Amazon.comプレスリリース

Amazon傘下の自動運転タクシー開発企業Zoox(ズークス)が、ラスベガスで提供する自動運転タクシーサービスをいまだ無料のまま続けている。2025年9月に一般向け運行を始めて以来、累計35万人超を乗せ、走破距離は200万マイル近くに達しながら、運賃収入はゼロだ。

有料化できない理由は技術ではなく制度にある。米運輸省道路交通安全局NHTSAから連邦自動車安全基準の適用除外が認められない限り、課金が認められないからだ。一方、米Google系の自動運転タクシー開発企業Waymo(ウェイモ)は年換算で約560億円規模を稼ぐとされ、両社の差は規制対応の段階の違いに大きく左右されている。


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■Zoox、35万人を乗せても「無料」が続くワケ

Amazon傘下の自動運転タクシー開発企業Zoox(ズークス)が、ラスベガスで35万人を超える人を乗せながら、いまだ1ドルも運賃を受け取っていない。2025年9月に一般向けの無料運行を始めてから、走破距離は200万マイル近くに達した。それでも収益はゼロのままだ。

技術が未完成なわけではない。ハンドルもペダルも持たない専用車両は、すでにストリップ沿いを日常的に走り回っている。乗客はアプリで車を呼び、目的地まで運ばれる。問題は、その乗車に料金を課せないという一点にある。

理由は連邦規則だ。Zooxの車両はハンドルやペダルといった、米連邦自動車安全基準FMVSSが求める従来の運転制御装置を備えていない。そのため現行ルールのままでは乗客に課金できない。Zooxが築き上げた技術と、規制が認める範囲との間にある隔たり。それこそがこの会社の物語の核心にある緊張だと言える。完成した車が走り続けても、制度が許すまで一銭にもならない。

【自動運転ラボの視点】
規制が技術の先回りをできていない典型例だ。車は完成していても制度が追いつかず、無料運行という形で実証だけが積み上がる。Zooxの「無料」は寛大さではなく、規制待ちの足踏みなのである。

【参考】関連記事としては「Amazon傘下のZoox、自動運転タクシーの商業化へ 2500台規模で」も参照。


■NHTSAの適用除外とは

Zooxが有料化のために待っているのは「許可」ではなく「適用除外」だ。米運輸省道路交通安全局NHTSAに対し、Zooxはハンドルやペダルなどの装備を義務づける8つの連邦自動車安全基準FMVSSからの一時的な適用除外、いわゆる555適用除外を正式に申請している。

この適用除外プロセスでは、連邦安全基準に完全準拠しない車両であっても、準拠車と同等に安全であり、かつ公共の利益にかなうと示せれば、年間最大2,500台まで展開できる。つまり2,500台という数字は、Zooxが一気に商業展開できる年間の上限を意味する。

Zooxは2025年8月に、実証や研究用途を対象とした適用除外をすでに取得している。ただしそれは商業展開、すなわち課金を伴う運行までは認めていない。商業運行のためには別の適用除外が必要で、その審査がいま進んでいる。NHTSAは2026年3月11日から30日間のパブリックコメント期間を設け、その後に判断を公表するとしている。

Zoox CEOのアイシャ・エバンス氏は、承認が出れば課金を始める準備はできていると語っている。特にラスベガスは長く運行してきた地であり、有料化の足場はすでに整っているという立場だ。


■Waymoは約560億円稼ぐ

ここで比較対象になるのが、自動運転タクシー市場の先頭を走る米Google系のWaymo(ウェイモ)だ。Waymoは週あたり約50万回の有料乗車を提供し、年換算の収益ラン・レート、つまり直近実績を1年分に引き直した収益指標で3億5,000万ドルに達したとされる。1ドル160円前後で換算すると、およそ560億円規模になる。
※運賃収入として年換算約560億円

対するZooxは、同じように車を走らせ人を運びながら、運賃収入はゼロでAmazon本体の資金に支えられている。両社を分けているのは技術力ではなく、課金が認められているかどうかという一点にある。

■規制が企業の収益を止める 日本の制度課題との対比

Zooxの事例が示すのは、自動運転タクシー市場では規制が収益化のタイミングそのものを握っているという現実だ。車が走れるかどうかと、課金できるかどうかは別の話である。Zooxは前者をクリアしながら、後者で足止めされている。

有料化後を見据えた布石は打たれつつある。配車大手Uber(ウーバー)は2026年3月、ラスベガスの住民が自社アプリからZoox車を呼べるようにすると発表した。2027年央までにロサンゼルスへの拡大も見込まれている。さらにZooxは、今年後半にオースティンとマイアミでも一般の一部向けにサービスを始める準備を進めている。無料のまま全米へ運行網を広げている格好だ。集客の土台は整いつつあり、あとは課金を認める一枚の判断を待つばかりという状態にある。

構造そのものは、日本の自動運転を取り慢く環境とも重なる。日本では実証実験や導入の後押しに補助金が投じられてきたが、商用サービスとして収益が回るかどうかは、制度設計と社会受容の進み方に左右される。公的資金で走らせる段階と、運賃で自立して回る段階の間には距離がある。規制と支援のかけ方が事業の収益化のタイミングを決めるという点で、米国のZooxが直面する壁と日本の課題は地続きだと言える。

■Zooxの「無料」とWaymoの約560億円が映す自動運転タクシーの分岐点

Zooxの「無料」と、Waymoの年換算約560億円。この二つの数字は、いまの自動運転タクシー市場がどこで勝敗を分けているかを映している。両社とも公道で人を運ぶ技術はすでに持っている。それでも一方は運賃を取って稼ぎ、もう一方は一銭も受け取れない。差を生んでいるのは規制対応の段階だ。

技術が成熟した先で問われるのは、誰が先に制度の壁を越えるかである。Zooxがラスベガスで35万人を無料で運び続けた事実は、裏を返せば、課金を認める一枚の判断がどれほど大きな収益の差を生むかを示している。規制が自動運転タクシー市場の競争そのものを形づくる時代に入った。制度の整備が進むにつれ、ZooxとWaymoの競争はさらに加速するだろう。技術力を持つ両社が規制のハードルを乗り越えたとき、自動運転タクシーが社会インフラとして真に定着する未来が訪れると期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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