自動運転、中国人だけ「異常な関心度」 運転に興味なし?

アリックスパートナーズの調査



コンサルティング事業を手掛けるアリックスパートナーズがこのほど発表したレポート「2026年版グローバル自動車消費者意識調査」が非常に興味深い。自動運転に対する関心は二極化傾向にあり、レベル4レベル5への関心は、日本や米国などと比較し中国が突出して高い結果となったようだ。


自動運転に対する期待・受容度が、中国とその他地域でなぜ二極化しているのか。その要因について推測してみた。

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■アリックスパートナーズの調査概要

11カ国の消費者意識を調査

アリックスパートナーズは2026年1月、ドイツ、英国、フランス、スペイン、イタリア、米国、中国、韓国、日本、UAE、サウジアラビアの11カ国の自動車購入者または購入予定者8,000人を対象に、自動車のパワートレインやボディタイプ、先進運転支援システム(ADAS)、内装の質、サブスクリプションモデルなどに対する選好について調査を実施した。

全体の42%がレベル1以下で十分と考えている

好ましい自動運転レベルに関する質問では、レベル1が全体の42%を占め、次いでレベル2・レベル3が28%、レベル0が21%、レベル4・レベル5が10%という結果となった。

意外にも、全体のおおよそ2/3はレベル0やレベル1で十分と考えているようだ。つまり、アダプティブクルーズコントロールの類が備わっていれば十分……という層が多いことを意味する。


自動運転機能はそれほど必要なく、おそらく自身による手動運転を楽しみたい……という考えと、システム制御より手動運転のほうが信頼できる……という考えに基づくものと思われる。また、設問が「次に購入したいクルマ」であるとすれば、現時点における開発状況を踏まえ、レベル3以上は時期尚早……と考えた人もいるのかもしれない。

レベル4以降は中国のみが高い関心

一方、レベル4・レベル5を希望する回答は、日本7%、米国6%、ドイツ6%、フランス5%など先進国は軒並み一けた台となっているが、唯一、中国は24%と高い関心を示したようだ。

出典:アリックスパートナーズ

先進各国はレベル4以上に慎重である傾向が強い一方、中国では最先端技術を求める層が多いようだ。

また、自動運転に対するメリットとして、中国の消費者は「運転時のストレス軽減」69%(グローバル平均45%)と「運転時間の有効活用」52%(同26%)と考えているようだ。


安全性は50%(同55%)、交通渋滞時の利便性27%(同40%)といった感じで、手動運転から解放され、移動時間を有効活用することを重視する人が多いようだ。

▼アリックスパートナーズ、「2026年版グローバル自動車消費者意識調査」を発表
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000176109.html

自動車新興国は運転=負担の意識が高い?

主観含みの憶測だが、中国は自動車産業の成り立ちや先進国化が日本や米国、欧州などと異なる点が要因に挙げられるのではないだろうか。

日本は、戦後復興期を経て早期に経済が高度化し、昭和の時代に「一家に一台」といったマイカーブームが押し寄せた。自動車の所有は当たり前のものとなり、通勤などの移動だけでなく「ドライブを楽しむ」という趣味性も広く受け入れられた。運転そのものを楽しむ概念も含まれる。

一方、20世紀の中国は海外自動車メーカーの製造技術に依存する形で自動車産業が形成され、個性などよりもただただ移動するための機械……的な意味合いが強かったように思われる。

購買層も、ドライブを楽しむような趣味的要素より、実益に沿う利用が多くを占めていたのではないか。事実、20世紀まで中国内の年間自動車販売台数は200万台に満たなかった。現在の2,500万台超の規模と比べると、自動車所有率は著しく低かったのだ。

しかし、21世紀に入り富裕層や中間層が増大し、社会にスマート化の波が押し寄せ始めた。2010年代以降、自動車業界にも新しい波が一気に押し寄せ、EV化と自動運転化の各領域において世界最先端を走る域に一気に達した。

つまり、中国では長らく自家用車は実用的なものであり、趣味としての要素が低かったが、21世紀に入って普及が大きく加速し、購買層も多様化し始めた。自動車に対する文化も既成概念も先進国に比べ薄いところに、スマート化の波が一気に押し寄せたのだ。リープフロッグ現象に近い状態だ。

それゆえ、「運転」そのものにこだわりを持つ人が相対的に少なく、BEVや自動運転技術に対しても先入観なく受け入れやすい人が多いものと思われる。新興自動車メーカーも相次いで誕生し、スマートフォンのような感覚で自動車の開発・製造を進めているのも背景にある。

一方、自動車産業が盛んで、早期に経済成長を果たした先進国では、運転そのものを楽しむ文化が出来上がっている。細かな運転技術・マナーに対する意識も高く、得体が知れず、運転の楽しみを奪うドライバーレス技術を拒む層が一定数存在するものと思われる。

いずれにしろ、こうした文化・歴史の差が自動運転技術に対する意識に現れている可能性は、十分考えられるだろう。

PwCの調査も同様の傾向

こうした傾向は、PwCが2026年2月に発表したレポートからもうかがえる。同社のレポート「自動運転×AI消費者アンケート調査2025」によると、「自動運転を利用したいか」といった問いに対し、中国は「とてもそう思う」25%、「ある程度そう思う」48%と計73%が肯定的に回答している。日本は計40%、米国は計35%、ドイツは計50%、インドは計80%で、全体平均は計55%だ。

▼自動運転×AI消費者アンケート調査2025
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-ai-consumer-survey-2025.html

出典:PwC

AIによる自動運転車に対する信頼度も、肯定派は全体平均45%のところ、中国は63%と高い数値を示している。インドは71%だ。

おそらく、インドも中国と同様の要因が背景にあるものと思われる。インドも21世紀に入って大きく経済成長を果たし、自動車販売台数も飛躍的に増加している。自家用車=マイカーに対する考え方が根本的に日本とは異なるのではないだろうか。交通インフラ・交通ルールも日本ほど整っておらず、運転における負担・ストレスが相対的に高い可能性もありそうだ。

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■中国の自動車産業の概要

新車販売においてNEVがまもなく過半数に

中国自動車工業協会によると、2025年の自動車販売台数は前年比9.4%増の3,440万台(輸出含む)となった。国内向けは約2,730万台、輸出は約710万台で、輸出の割合が特に増している。

新エネルギー車(NEV)の販売台数は前年比28.2%増の約1,650万台で、BEVが37.6%増の1,062万台、PHVが1%増の586万台、FCVが53%増の8,000台となっている。新車販売の半分近くをNEVが占めており、過半を超すのも時間の問題のようだ。

新興自動車メーカーが乱立 先端技術を競う

中国には100社以上の自動車メーカーが乱立していると言われており、公道走行可能な車両を生産するメーカーに絞ってもその数は約40社に上るという。テック系企業との合弁・新ブランド設立の動きも活発だ。

淘汰の波はすでに始まっているようだが、2003年に自動車事業に本格参入したBYDを筆頭に、新興勢の台頭が著しい。

EV系メーカーの2025年販売台数では、BYDが460万台で世界トップ10にランクインし、Xpeng43万台、Li Auto41万台、Leap Motor60万台、NIO32万台、AITO42万台……など、軒並み数字を伸ばしている。赤字企業がまだまだ多いが、これらの中から生き残った企業が次代の自動車業界を担っていく可能性が高い。

リーズナブル路線のLeap Motor以外の各社は、軒並みレベル2+の実装を開始しているようで、Xpengやファーウェイ系のAITOなど、市街地におけるハンズオフを実現する企業も出始めている。テスラのFSD並みの技術だ。

各社はレベル3、レベル4も当然見据えており、自動車メーカーとしては世界トップレベルの技術水準に達している。

自動運転開発企業では、BaiduをはじめWeRide、Pony.ai、Momentaなどの新興勢がWaymoに匹敵する技術を有していると言われている。すでに中国のさまざまな都市で自動運転タクシーやバス、清掃車などを実用化している。海外進出にも積極的で、Waymoより一足早くグローバル路線を歩んでいる点もポイントだ。

業界がこぞって自動車のスマート化を推進・競争しているため、中国の消費者も自然に自動運転などへの意識が高まっているのかもしれない。

中国製EVの「日本人が知らない」自動運転開発の現在地

■【まとめ】中国の動向・技術が世界にどのような影響を及ぼしていくか

日本や米国、欧州と比べれば、中国の自動車市場は新興系であり、マイカー意識が高まったのも21世紀に入ってからだ。それゆえ、運転することに特段のこだわりが醸成されていない感が強い。

開発面でも新興勢が続々と台頭し、最先端技術がごく当たり前のように導入されている。消費者も、この最先端技術を当たり前のものとして自然に受け入れる空気が出来上がっているようだ。

こうした中国の動向・技術が、今後世界にどのような影響を及ぼしていくことになるのか。2極化する世界を席巻していくことができるのか、必見だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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