ライドシェアとは?仕組みは?(2024年最新版)日本の解禁状況や参入企業は?

日本版ライドシェアの最終形はどうなる?



菅義偉元首相らの発言を機に導入に向けた議論が一気に進み始めた有償ライドシェア。急転直下で「日本型ライドシェア」導入に向けた方針が固められ、2024年4月に新制度となる「自家用車活用事業」が開始された。


今後は本格ライドシェア導入に向けた議論が過熱する見込みで、猛反発必至のタクシー業界との攻防がどのような方向に向かっていくのか、大きな注目が集まるところだ。

海外ではすでにライドシェアの普及が著しく、市場規模は年平均20%で拡大していくとする調査レポートもある。日本国内におけるライドシェアは今後どのような道をたどるのか。また、ライドシェア解禁後、業界でトップシェアを勝ち取るのはどの企業になるのか。現時点の法環境や取り組み状況、要人発言などをもとに、その行く末を見通してみよう。

<記事の更新情報>
・2024年4月7日:記事全体を最新情報にアップデート
・2024年2月18日:UberやDiDiの参入表明について追記
・2024年2月1日:部分解禁の現状について追記
・2024年1月21日:日本におけるライドシェアの解禁状況について追記
・2023年12月13日:ライドシェアに関する日本での調査結果について追記
・2023年11月24日:ライドシェア解禁後の業界動向の予測について追記
・2023年10月17日:自動運転タクシー普及によるライドシェアへの影響について追記
・2023年9月13日:ライドシェアに関する要人発言を追記
・2019年4月12日:記事初稿を公開

記事の目次

■ライドシェアとは?

まずはライドシェアの基礎知識から解説していこう。


スマートフォンの登場でマッチングサービスが主流に

「ライドシェア(ride-share)」は、直訳すると「ライド=乗る」を「シェア=共有」することで、一般的には「相乗り」や「配車サービス」を指す。自家用車の所有者と自動車に乗りたい人を結び付ける移動手段だ。

古くは、純粋な相乗りサービスの「カープール型」や、バンを用いて多人数が乗車できる「バンプール型」、ヒッチハイク型の相乗りサービス「カジュアルカープール型」などが主流だったが、スマートフォンの登場でサービス環境が一変した。

ライドシェアの類型概要
カープール型純粋な相乗りサービスのことを指す
バンプール型バンを用いて多人数が乗車できる形態を指す
カジュアルカープール型ヒッチハイク型の相乗りサービスを指す
TNCサービス型アプリなどでマッチングする形態のサービスを指す

スマートフォンアプリを使用することで、マイカーを活用した一般ドライバーと客をリアルタイムでマッチングすることが可能になった。米Uber TechnologiesやLyft、中国Didi Chuxing(滴滴出行)などメジャーなプラットフォーマーの多くが2010年前後にサービスインしているのは、スマートフォンの普及時期と一致する。

現在では、ライドシェアといえばこのスマートフォンを活用したマッチングサービスを指す場合が大半となっている。


また、海外ではライドシェアを「ライドヘイリング(ride-hailing)」と呼ぶこともある。

有償ライドシェアはTNC型とPHV型に大別

現在主流となっている有償ライドシェアサービスは、大きく「TNCサービス型」と「PHVサービス型」に分類することができる。

TNCは「Transportation Network Company」の略で、Uberのような配車プラットフォーマーが基本的に各ドライバーの管理や運行管理を行う。国は関与しないか、あるいは最低限の要件のみをドライバーに課し、その管理をプラットフォーマーに任せるような形だ。ドライバーにとって自由度の高いサービスと言える。

一方、PHVは「Private Hire Vehicle」の略で、個人タクシーの派生形のような形式を指す。ドライバーは多くの場合TNCと同様のプラットフォームを介してサービスを提供するが、各国の規制によりライセンスの取得や登録など、一定の要件を満たさなければならない。プラットフォームに関係なく、各ドライバーに対し規制当局が直接規制をかける形式だ。

こうした有償ライドシェアは、一般的に流し営業やタクシープールの利用などはできず、アプリによる予約・配車要請に応じる形でのみサービスを提供することができる。

▼ライドシェアとは何か?|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/2017/65-1.pdf

■ライドシェアのメリット・デメリット

ライドシェアのメリットとデメリットを、提供者(ドライバー)側と利用者(客)側の立場からそれぞれ整理して説明する。

提供者(ドライバー)側のメリット

ライドシェアの提供者にとっては、「時間と資産の有効活用」という側面がある。すでに購入している資産(車両)を活用して稼ぐことで、車両の維持費などの負担を減らすことができる。空き時間とマイカーの有効活用という観点では、まさにシェアリングエコノミーと言える。

何より、「手軽な働き口」であることが多くのギグワーカーの支持を集めたため、世界的に急発展した経緯がある。ドライバーになるためには一定の審査を受ける必要があるものの、企業などに縛られることなく自分が働きたい時間に好きなだけ働くことができる。

空き時間を活用した副業として、また本業としてライドシェアで働きたい――という需要は思いのほか多いのだろう。

利用者(客)側のメリット

利用者サイドのメリットは、やはり運賃面だろう。一般的にライドシェアはタクシーよりも運賃が2〜3割安いと言われており、移動にかける費用を安く済ませることができるのは大きい。

また、多くの場合ライドシェアのドライバーはアプリ上で利用者から評価されるシステムとなっているため、嫌な思いをするケースも避けやすい。運賃も事前に確定し、キャッシュレス決済するのがスタンダードで、「ぼったくり」に遭うことも基本的にない。

配車アプリの利用が前提となるため、言葉が通じにくい海外でも利用しやすいのもポイントだ。アプリを介することで言語の壁が低くなり、目的地の指定も容易となる。

日本でもタクシー配車アプリが浸透してきたが、地方の繁華街や駅前などではタクシープールや流し営業でタクシーを捕まえるのがまだまだ一般的だ。こうした際、特に外国人観光客にとっては、母国語に対応したアプリで配車できるのは大きなメリットとなる。

提供者(ドライバー)側のデメリット

ドライバー側のリスクは、ライドシェアのプラットフォーマーがサービスを万が一取りやめた場合、補償がないまま職を失うことだ。ドライバーに対する補償を求める声もあるが、こうした失職のリスクがつきまとうことは覚悟する必要がある。

運賃体系なども基本的にプラットフォーマーに依存することになるため、運賃低下や手数料増額などの影響を受ける恐れもある。

こうしたギグワーカーの待遇をめぐっては、個人事業主による請負扱いではなく労働者として扱うよう各国で議論が活発化しているようだ。

利用者(客)側のデメリット

客による評価システムによってドライバーの質が担保されているとはいえ、ライドシェアをめぐってはまだまだドライバーと客のトラブルが絶えない面もあるようだ。例えばドライバーによる暴行や盗撮だ。こうした点には注意をする必要があると言える。

東南アジアのように、従来のタクシーサービスの質が悪いエリアではライドシェアの方が安全とされることもあるが、日本のように質の高いタクシーサービスが提供されているエリアから見ると、ライドシェアの安全性に疑問を持たれることも多いようだ。

また、ドライバーの多くはプロではないため、本来であれば避けられるレベルの交通事故に巻き込まれる可能性もないとは言えない。

【参考】関連記事としては「ライドシェアの主なトラブル事例・問題・事件まとめ」も参照。

■海外おけるライドシェア

ライドシェアの位置づけで各国が頭を悩ます

ウーバーを筆頭とする企業がライドシェアサービスを自国に持ち込んだ際、多くの国がその位置づけで頭を悩ませたようだ。ライドシェアに法的根拠はないため、これを黙認すべきか厳格に禁止すべきか、あるいは新たな制度を設計するか……といった具合だ。

半ば黙認の形をとった国ではTNC型、新制度を設計した国ではPHV型に落ち着く例が多い。

海外においてTNC型のサービスが認められているのは、北米や中国、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、東南アジアなど一部に限られており、意外と少ない印象だ。

一方、PHV型はドイツや英国、ポルトガル、ニュージーランドなどが採用しており、フランスやスペインなどでは類似するVTC(運転手付き観光ハイヤー)制度が敷かれている。

オランダやスウェーデン、オーストリア、フィンランドなどのように、タクシーライセンスが必要なものの自家用車を使用することが可能な制度を設けている国もある。

これまでの日本のように、ライドシェアを認めずタクシーサービスに限定している国としては、韓国やギリシャ、イスラエル、トルコなどが挙げられる。

【参考】各国のライドシェア制度については「ライドシェア制度、OECD諸国の34%が今も未整備 日本を含む13カ国」も参照。

■海外のライドシェア展開企業

Uber Technologies

2009年設立のウーバーは、2010年に米カリフォルニア州サンフランシスコで配車サービスを開始したのが始まりだ。世界進出を積極展開し、各国でライドシェア議論を巻き起こした存在でもある。

現在では、世界70カ国でライドシェアをはじめとするさまざまなマッチングサービスを提供している。派生形マッチングサービスとしては、フードデリバリーのUber Eatsをはじめ、荷主とトラックドライバーをつなぐUber Freightなどさまざまなビジネスモデルを追求している。

2023年通期では、ウーバーイーツなど含む配車総数は前年比24%増の94億回となり、2019年の上場後初の黒字化を達成した。

自動運転サービスの導入にも意欲的で、他社との提携のもとカリフォルニア州やアリゾナ州などで自動運転タクシーの配車や自動配送ロボットによる配達サービスなども開始している。

日本でもタクシー配車やウーバーイーツを積極展開しており、京都府京丹後市と石川県加賀市で自家用有償旅客運送に基づくサービスを提供している。

Lyft

出典:Lyft公式ブログ

2012年設立の米Lyftは、カリフォルニア州を拠点に米国・カナダの約300都市でサービスを提供している。ライドシェア企業の中では、いち早く株式上場を果たした(2019年3月)。

北米でUberと競合する一方、他国を主体とするDiDiやGrubなどとは提携を結んでおり、それぞれのアプリの連携を図っているようだ。

2023年通期では、総予約額が前年比14%増の138億ドル(約2億900億円)、乗車数は同18%増の7億900万回で、過去最高を記録している。

【参考】Lyftについては「Uberのライバル企業「人の代わりに自動運転車」示唆」も参照。

Didi Chuxing(滴滴出行)

出典:DiDiプレスリリース

中国配車サービス最大手のDiDiは前身となる小桔科技が2012年に設立されて以来、瞬く間に中国市場を席捲した。現在は世界15カ国で配車サービスを展開しているようだ。

2023年通期の中国モビリティ部門の売上高は前期比39%増の1,750億元(約3兆6,600億円)で、乗車数は同39.8%増の108億900万件となっている。国際部門は売上高78億元で、乗車数は26億6,000万回となっている。

世界最大の中国市場を席巻しているため、配車回数はUberをしのぐ規模だ。日本でもソフトバンクと合弁を設立し、2018年にタクシー配車サービスを提供している。

Grab

出典:グラブ社プレスリリース

2012年設立で、シンガポールに本拠を構えている。カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの東南アジア8カ国の500都市以上でサービスを展開している。

2023年通期の売上高は前年比67%増の23億5,900万ドル(約3,600億円)で、第4四半期には黒字化を達成している。配車回数は決算資料で公開されていないが、東南アジア市場では絶大な支持を受けているようだ。2021年に米ナスダックに上場を果たしている。

その他の企業

このほか、有力な配車プラットフォーマーとしてはインドのOla、インドネシアのGojek、エストニアのBolt、スペインのCabify、イスラエルのMoovitなどが挙げられる。

エストニアを拠点とするBoltは、欧州を中心にラテンアメリカやアフリカなどにも進出し、配車サービスを展開している。一部の国ではライドシェアにも対応している。

2020年に米インテル傘下となったMoovitは、世界112カ国以上、1,000を超える都市に対応している。

■日本におけるライドシェア

続いて、日本におけるライドシェアの制度状況などについて解説していく。

これまでの主役は自家用有償旅客運送制度

日本においては、これまでライドシェアは「白タク行為」に該当するものとし、厳正に対処されてきた。ウーバーの日本法人が2015年に福岡県福岡市でライドシェア実証を行った際、すぐに指導が入った。

国会でも、地域公共交通に関する改正法案成立の際など、ライドシェアを禁じる付帯決議が幾度かなされている。

ライドシェアの代わりではないが、日本独自の制度として自家用有償旅客運送が2006年に整備されている。公共交通空白地などにおいて条件付きで自家用車による運送を認めるもので、自治体などの運営・管理下のもと、営利性を排除する形で運用する仕組みだ。

同制度では現在、交通空白地有償運送と福祉有償運送のみが認められており、2022年末時点で交通空白地有償運送に670団体4,304車両、福祉有償運送に2470団体1万4,456車両が登録されている。交通空白地有償運送は全国1,741市区町村中572市区町村で導入されており、導入率は33%に上る。

導入数こそ良い数字を誇っているが、公益性が重視されるため運賃設定などの規制が厳しく、一般人の参加は限定的だ。なお、規制緩和に向けた取り組みも少しずつ進められている。

このように、日本では自家用有償旅客運送制度の運用が中心だったが、2023年に入って急に潮目が変わった。タクシーの供給不足などを背景に、菅義偉前首相がライドシェア解禁に向けた議論の必要性に言及し、規制改革担当大臣を務める河野太郎氏もこれに同調すると、一気にライドシェア議論が再燃し、内閣府の規制改革推進会議で正式に議題に挙げられることとなった。

【参考】ライドシェア議論の再燃については「内閣改造、河野&菅氏のダブル入閣で「自動運転&ライドシェア」推進加速か」も参照。

「自家用車活用事業」がスタート

議論の結果、新たな制度として2024年4月にスタートしたのが自家用車活用事業だ。道路運送法第78条第3号「共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」を根拠に、タクシーが不足する地域や時期、時間帯において、地域の自家用車や一般ドライバーを活用して行う有償運送を可能とする制度だ。

「日本版ライドシェア」の第一歩と言える制度だが、現状、対象エリアなどはタクシーの不足状況を考慮して国が定め、一般ドライバーの運行管理はタクシー事業者が担う内容で、ドライバー目線での自由度は低い。

主体はあくまでタクシー事業者であり、事業者が一般ドライバーの教育や運行管理、車両整備管理を行うなど全面的に運送責任を負う形で、一般ドライバーはタクシー事業者に属するような形でなければ参加できない仕組みだ。

なお、第1弾となる営業区域は以下の4エリアが指定された。

  • 特別区・武三(特別区、武蔵野市、三鷹市)
  • 京浜(横浜市、川崎市、横須賀市ほか)
  • 名古屋(名古屋市、瀬戸市、日進市ほか)
  • 京都市域(京都市、宇治市、長岡京市ほか)

これらのエリアで4月から自家用車活用事業が実施される。

また、配車アプリデータに基づき4月中に不足車両数を算出・公表する営業区域として、以下が指定されている。

  • 札幌交通圏
  • 仙台市
  • 県南中央交通圏(埼玉)
  • 千葉交通圏
  • 大阪市域交通圏
  • 神戸市域交通圏
  • 広島交通圏
  • 福岡交通圏

5月以降、タクシー事業者が実施する意向がある地域で順次サービス開始する予定となっている。

その他のエリアについても、簡便な方法により不足車両数を算出し、タクシー事業者に実施意向がある場合は順次開始していくこととしている。

新ライドシェア法案制定に向けた動きも

国は同制度の運用状況を見て、2024年6月を目途にタクシー事業者以外が参加可能なライドシェア制度の創設に向けた取りまとめを行う方針を示している。

自家用車活用事業は、あくまで通達レベルのルールに基づく暫定的措置の側面が強い。本格的なライドシェア解禁に向け、安全性をどのように確保すれば新サービスとして実装できるか制度設計が試されるところだが、恐らく法改正を伴う改革となるため、実現に向けては紆余曲折することも想定される。

■日本のライドシェア展開企業

博報堂:「ノッカル」サービス展開

出典:博報堂プレスリリース

博報堂は、地域の移動課題解決に向けたMaaSソリューションとして、マイカー乗り合い交通「ノッカル」サービスを展開している。

自家用有償旅客運送制度のもと、富山県朝日町や富山県高岡市で導入されているほか、静岡県浜松市で2024年1月に「ノッカル庄内」、2月に同県東伊豆町で「ノッカルひがしいず」、3月に山形県西川町で「ノッカルにしかわ」がそれぞれ運行を開始するなど、広がりを見せている。

【参考】博報堂の取り組みについては「博報堂が「日本版ライドシェア」!Uberはダメなのになぜ?」も参照。

パブリックテクノロジーズ:過疎地ライドシェアを推進

パブリックテクノロジーズは、活力ある地方を創る首長の会が提言する「自治体ライドシェア i-Chan」のパートナー企業に選定され、石川県小松市の「小松市ライドシェア」実装に携わっている。

同社は自治体向けのスーパーアプリ事業や公共交通事業などを展開しており、有休車両と地域住民の潜在的なドライバーリソースを活用するライドシェアシステムを提供する「いれトク!AI配車」などを製品化しているようだ。

西日本旅客鉄道:自家用有償旅客運送用支援システムを開発

JR西日本は、「地方版MaaS」構築に向け島根県邑南町と協定を結んでおり、その過程で「自家用有償旅客運送用支援システム」を開発した。初めて操作する人や高齢者でも分かりやすいUI・UXにこだわったシステムを電脳交通と共同開発した。

GO:いち早く自家用車活用事業への参入を表明

国内タクシー配車サービス最大手のGOは、いち早く自家用車活用事業への参入を表明した。2024年4月中に新制度に対応したマッチングサービスを開始する予定としている。

自家用車活用事業の対象エリアで、実際に該当車両が稼働している場合、既存の「GO」アプリでその車両も案内する。利用者の希望に合わせ、従来のタクシーに限定した配車も可能だ。

Uber Japan:自家用車活用事業対象4エリアで提携タクシー事業者に対応

Uber Japanも自家用車活用事業の導入支援を4月上旬から順次開始する。Uberアプリを東京・神奈川・愛知・京都の約10社の提携タクシー事業者に提供する予定だ。

アプリ上では、タクシー事業者によるライドシェアを「自家用タクシー」と表示するなど、利用者にわかりやすい形で区別を図る。

S.RIDE:東京都内で自家用車活用事業に対応

ソニー系のS.RIDEは、国際自動車と大和自動車交通による自家用車活用事業の運行車両への配車を、東京23区と武蔵野市、三鷹市で4月中に開始し、順次拡大することと発表した。

こちらも配車指定画面にライドシェアの項目を新たに追加し、対象車両を「含む」「含まない」を選択することが可能になるという。

タクシー配車アプリが自家用有償旅客運送も?

旧来の自家用有償旅客運送制度においては、プラットフォーム設計は個別に行われることが多く、高齢者対応などの問題から電話主体の取り組みも珍しくなかった。

しかし、近年はMaaS開発の過程で自家用有償旅客運送制度を対象に汎用性・カスタマイズ性が高いプラットフォーム・アプリの開発が進み始めているようだ。

また、既存のタクシー配車プラットフォームがベースとなる自家用車活用事業の開始により、今後は自家用有償旅客運送制度への配車アプリの導入も進んでいく可能性が考えられる。

すでにウーバーの配車アプリが京丹後市と加賀市の自家用有償旅客運送事業で採用されているが、今後こうした動きが加速するかもしれないのだ。ノッカルをはじめとした専用アプリとのサービス対決が今後本格化しそうだ。

■ライドシェアに関する市場規模調査

右肩上がりで市場は拡大

ライドシェア市場は、Uber Technologiesなどの台頭によりこの10年ほどで一気に開拓された。スタートアップの参入が著しく、一時期は世界を代表するユニコーン企業に各社が名を連ねていた。近年では、Uber TechnologiesやLyft、DiDiといった大手が株式上場を果たしている。

ライドシェアの市場規模は、リサーチステーション合同会社が2019年1月に発表したレポートによると、2018年時点で613億ドル(当時のレートで約7兆円)規模で、2025年には3倍以上に拡大する見込みという。

また、日本で認められているコストシェア型ライドシェアの国内市場も今後拡大が期待されており、調査会社の富士経済によると、カープール型ライドシェアの国内市場(仲介手数料ベース)は、2018年の1億円見込みから2030年には131億円まで拡大すると予測している。

調査会社のReport Oceanは、2021年9月にライドシェアに関する新たなレポートを発行しており、そのレポートによれば、2021年から2027年における世界市場は、CAGR(年平均成長率)が20%になる見込みだという。2020年における市場規模は890億5,000万ドル(当時のレートで約9兆9,000億円)と推測している。

Emergen Researchによると、2022年の世界市場規模は988億ドルで、2032年には4,300億ドル規模まで成長すると予測している。予測期間中のCAGRは15.9%に上る。

■ライドシェアに関するアンケート調査

ライドシェアは「乗らず嫌い」が多い?

営利型ライドシェアサービスの日本への導入賛否=出典:MM総研

民間調査会社のMM総研が2023年に実施した調査によると、全国の15~79歳の男女3,000人のうち、ライドシェアの利用経験がないのは2,780人に上った。日本人のほとんどが利用経験が無いのだ。

ライドシェアに対する賛否は、海外で同サービスを利用した経験がある人の場合賛成84.1%、反対15.9%だったが、未経験者における賛否は賛成35.6%、反対64.4%となっている。

ライドシェアに関しては、日本人の大半が「乗らず嫌い」であることを示唆する調査結果だ。

また、ビースタイルホールディングスの調査機関「しゅふJOB総研」が仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を対象に実施したアンケート調査では、ライドシェアの仕事をしてみたいと回答したのは8.2%にとどまったという。

■自動運転タクシー普及でライドシェアは消滅?

ライドシェアに関しては、自動運転タクシー普及までの「つなぎサービス」であるといった視点も持っておきたい。

ライドシェアの利点としては、ドライバー不足の状況でも交通手段を確保できる点などがあるが、無人運行が可能な自動運転タクシーが普及すればこうした課題はクリアできる。しかも、自動運転タクシーの方が人的コストがかからない分、利用運賃も下がると考えられている。

実際、UberやLyft、DiDiといったプラットフォーマー大手は、自社内に自動運転開発部門を設けていた。Uber、Lyftは部門を売却したが、DiDiの開発部門DiDi Autonomous Drivingはまだ残っており、2025年までに量産型ロボタクシーを導入する計画を発表している。

一方、自社開発をあきらめたUberは、米アリゾナ州でWaymoの自動運転タクシーの配車を開始している。Uber Eatsのフードデリバリーも自動配送ロボットを活用していく方針だ。Lyftも旧AptivやMotionalと提携し、サービス実証を続けている。

現状、自動運転タクシーは運行エリアなどが限られているが、徐々にODD(運行設計領域)を拡大し、自律走行技術やサービスの質を上げながらその台数を増加していくことが予想される。

まだまだ先の話ではあるものの、ライドシェアは自動運転タクシー普及までの「つなぎサービス」となりそうだ。

■【まとめ】日本版ライドシェアの最終形は?

世界的にはスタンダードなサービスとなったライドシェア。日本では、自家用車活用事業に留まるのか、あるいは世界標準的なサービスが誕生するのか。今後の動向から目が離せないところだ。

長期視点では、自動運転タクシーの動向も関わってくることになる。高度な自動運転タクシーが実現すれば、ライドシェアも既存タクシー事業者も大きな変革を余儀なくされるためだ。

5年後、10年後のモビリティ社会はどこまで進展しているのか。さまざまな観点からその動向に引き続き注目したい。

(初稿公開日:2019年4月12日/最終更新日:2024年4月7日)

【参考】関連記事としては「ライドシェア解禁!・・・沈黙貫くトヨタ、参入見送りか」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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