【2023年9月の自動運転ラボ10大ニュース】自動運転支援道の先行導入地域が明らかに

Armが上場、デジタル庁の施策も徐々に姿を現す

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国内全体が記録的猛暑に見舞われ、なお残暑が続いた9月。自動運転業界も、依然として熱気を帯びた取り組みが続いている。

Armの上場が目玉となったほか、デジタル庁の取り組みにも注目が集まった印象だ。2023年9月の10大ニュースを1つずつ振り返っていこう。

■デジタル庁、自動運転サービスなどカタログ化!運行管理は年6,000万円が相場?(2023年9月7日付)

デジタル庁が、デジタル実装の優良事例となるサービス・システムをまとめたカタログを発表した。自動運転やMaaS導入にかかわる具体的なサービスや費用なども掲載されている点がポイントだ。

地域ポイントなども利用可能な予約システム導入に向けた参考価格は約3,208万円、さまざまな機能を搭載した自動運転バスなどの配車・運行管理システムの参考価格は約6,530万円……など、具体的事例が紹介されている。

あくまで参考価格であり、導入エリアや含有する機能・オプションなどで大きく価格は変わるものと思われるが、相場の一端をうかがい知ることができ、導入を検討している自治体などにとっては有意義な情報と言える。

国内の自動運転業界は、まだ本格的な競争時代に突入していない。今後、同業他社とのサービス競争や普及効果などで導入費用は徐々に下がり、かつ機能もより洗練されたものへと改良されていくものと思われる。

本格的な普及期を迎えるころ、市場はどのような状況となっているのか、引き続き注目したい。

■Googleの自動運転車、数字で「安全」を証明!物損事故、手動運転より約8割減少(2023年9月8日付)

Waymoが、自動運転車の安全性に関する最新の研究結果を公表した。自動運転システム「Waymo Driver」による走行は、手動運転に比べ物損請求の頻度を76%低下させたという。

研究は、提携先の保険大手Swiss Reが主導したもの。100万マイルあたりの走行における請求件数を比較したもので、保険請求の観点から自動運転の安全性を証明する格好となった。

米国、特にカリフォルニア州で運行中の自動運転においては、「緊急車両の通行を妨害した」「立ち往生して道路を封鎖した」といったネガティブなニュースが定期的に取りざたされており、その一部は実際に自動運転に落ち度があるものと思われるが、人的被害を伴う重大事故はほぼ発生していない。

手動運転による事故や迷惑行為の発生頻度と比べれば、現時点においてもおそらく自動運転のほうが安全走行を行っているのではないか。もちろん、改善の余地はまだまだ多く残されており、1つひとつをしっかりとクリアし、さらなる完成度を目指してもらいたいところだ。

■HIS、空飛ぶクルマの「適正価格」を分析へ 万博後に商品販売(2023年9月9日付)

エイチ・アイ・エス(HIS)と丸紅、みずほ銀行、東京海上日動火災保険の4社は、大阪・関西万博での空飛ぶクルマ実用化を念頭に需要分析などの事業性検証に乗り出す。

大阪府・大阪市・兵庫県の公募事業で、4社は空飛ぶクルマ運航事業の推進体制の整備・構築を目的に、関西エリアにおける需要分析、候補ルート毎の運航条件の調査、候補ルート毎の最適な充電・バッテリー管理方法に関する調査を行うという。

2025年4月開幕予定の万博まで残すところ1年半余り。そろそろ本格的な飛行実証を行わなければならない時期に差し掛かっているのではないか。ただ飛行させるだけでなく、2地点間を移動する運航を実現するため、さらなる取り組みの加速に期待したいところだ。

■自動運転企業の筆頭格!ティアフォー、売上8%増の7.8億円 損失は39億円に拡大(2023年9月11日付)

国内自動運転スタートアップの代名詞的存在であるティアフォーが最新決算(2021年10月〜2022年9月)を公表した。売上高は前期比8.6%増の7億8,397万円、当期純損失は前期から赤字額を17.8%増やし39億1,097万円となったようだ。

スタートアップとしてまだまだ開発・先行投資段階にあるようだ。ただ、同期の後、Pilot.AutoやWeb.Autoといったプラットフォームサービスなどを次々とリリースしており、収益化に向けた取り組みも本格化しているように感じる。

海外含め、自動運転開発企業の多くは収益化の段階にまだ達していないのが現状だが、果たしてどういった段階で、どのような形で収益を生み出していくのか。各社が描く将来像に期待したい。

■アマゾン、自動運転用クラウドで「次の一攫千金」へ Googleとの競争過熱(2023年9月12日付)

BMWグループが、自動運転プラットフォーム向けのクラウドとしてAWSを推奨クラウドプロバイダーに採用したと発表した。

膨大なデータを生成するコネクテッドカーや自動運転車には、クラウドの活用が必須となる。データのリアルタイム処理やソフトウェアの改良・更新などでクラウドが大活躍するのだ。

クラウドサービスは、アマゾン(AWS)のほかグーグルやマイクロソフト、IBM、アリババなどが力を入れている。

自家用車もソフトウェアデファインドがスタンダードになり始めており、当然のようにコネクテッド化されたオーナーカーはOTAによるソフトウェア更新でバージョンアップしていくことになる。

大きなビジネス領域となるだろうクラウドをめぐる各社の競争は今後さらに過熱していきそうだ。

■自動運転移動サービス、驚異の「満足率95.7%」!人口2,600人の街で大活躍(2023年9月16日付)

和歌山県太地町で実施された自動運転実証が住民から高評価を得ている。国土交通省近畿地方整備局のレポートによると、自動運転サービスに対し「満足」「ほぼ満足」と回答した住民は95.7%に上った。

乗り心地や移動手段としての利便性、今後の継続希望などではそれぞれ9割近くが高評価したほか、安全性を問う項目では、「安全」「ほぼ安全」の回答率が100%に達している。

車両はヤマハのカートタイプを使用した電磁誘導式の自動運転車で、電磁マーカを活用することで精度を高めている。車体が小柄なため細い道が多いルートも走行できるのが特徴で、走行画像を見る限り同町では一般車両が通行できなさそうな裏路地のような道も走行しているようだ。

電磁誘導式という特殊な方式ではあるものの、狭い道が多い日本では、こうした小型自動運転車によるスローモビリティの需要は意外と多いのかもしれない。独自の進化に期待だ。

■Arm上場後20分間の「爆騰」の正体 自動運転事業の有望性に投資家殺到(2023年9月18日付)

ソフトバンクグループ傘下の英国企業Armが、満を持して米ナスダック市場に上場した。待ってましたと言わんばかりに買いが殺到し、始値56.10ドルを付けた後約20分間上昇を続け、あっという間に60ドル台に突入した。

株価はその後70ドル近くまで値を上げたが、確定売りの流れで22日時点の終値は51.32ドルに落ち着いている。

初日の終値ベースにおけるArmの時価総額は652億ドル(約9兆6,100億円)となった。22日の終値換算でも553億ドルで、8兆円オーバーとなっている。3.3兆円で買収した企業が大きな投資効果を生み出したのだ。

ソフトバンクグループは、新たな投資先としてOpenAIへの出資を検討していることが報じられている。波が激しい投資事業だが、アリババやArmに続く成功例となるか、引き続き今後の動向に注目したいところだ。

■アサヒ飲料、「動く自動販売機」展開へ ソフトバンクの自動配送ロボを活用(2023年9月18日付)

アサヒ飲料がソフトバンクとタッグを組み、「動く自動販売機」のサービス実証を行ったようだ。実際に自動販売機が無人自律走行を行うものではないが、自動配送ロボットを活用した新たなサービス実装を目指した取り組みだ。

将来イメージ図を見ると、トヨタe-Paletteのようなタイヤが付いたモビリティに自動販売機や商品を乗せ、そこから自動配送ロボットが出動して近隣の注文者のもとへ商品を届ける仕組みを考えているようだ。

自動運転を想定しているかは不明だが、「動く自動販売機」が各地に出向き、直接ないしはロボットを介して飲み物を売るイメージだろうか。

NeolixやNuroのような車道走行可能な中型ロボットを活用したり、自動走行ロボットに少量の飲み物を積んで販売したり……とさまざまな形態が考えられる。小売×移動でどのような新サービスを生み出せるか、各社のアイデアが試されるところだ。

■自動運転支援道、茨城県日立市の一般道で「先行導入」へ(2023年9月21日付)

デジタルライフライン全国総合整備実現会議が、インフラ側から自動運転をサポートする「自動運転支援道」の先行導入エリアを明らかにした。検討段階ではあるものの、一般道では茨城県日立市の名前が挙げられている。

同エリアでは、廃線となった日立電鉄線跡地を活用したバス専用道路が建設され、バスサービス「ひたちBRT」が運行している。他の交通参加者と分けやすいため、自動運転実証も行われている。

新たな取り組みも、おそらくこのバス専用道路を活用するものと思われ、混在空間でも通用するインフラ支援システムの構築を目指す構えだ。

全国では、ローカル鉄道を中心に廃線を検討する動きが少なくない。すでに廃線化された例も多い。福井県永平寺町の自動運転も廃線跡を整備した遊歩道を活用している。

こうした跡地を活用し、自動運転で効率的な移動サービスの提供を目指す動きが今後も出てくるかもしれず、こう言った観点からも注目したい。

■佐川急便、「関東〜関西間」から自動運転トラック導入 有人・無人を切り替え運用へ(2023年9月23日付)

レベル4実装に向けた国の取り組みが加速する中、物流業者も自動運転導入を見据えたビジョンを明確に描き出しているようだ。

佐川急便は自動運転実装初期において、一般道と高速道路の中継ポイントとなる物流基地局で有人と無人の運転を切り替え、高速道路においてレベル4走行を行い、一般道ではドライバーが乗車する形式を検討しているようだ。想定ルートは関東~関西間としている。

2024年度から新東名高速道路の一部区間で自動運転専用レーンの設定などの取り組みが始まる見込みだが、6車線区間で技術を確立し、4車線区間などにどのように拡大していくかが大きなポイントとなりそうだ。

4車線区間を網羅できれば、国内各エリア間の移動に大きな道が開け、長距離高速バスなどへのサービス拡大もはかどる。T2のように同技術の開発に注力する企業も出てきており、今後どのようなロードマップで技術確立を目指していくのかに注目したいところだ。

■【まとめ】自動運転普及のカギ握るデジタル庁の動向に注目

Armの上場は広く半導体業界に影響を及ぼし、かつソフトバンクグループの経営においても大きな存在となるため、社会的に大きなニュースとなった。上場で得た資金をどのように活用していくかに今後スポットがあてられる。

一方、来年度以降に向けたデジタル庁の取り組みも徐々に輪郭をあらわにし始めている。短中期における自動運転技術・サービスの普及を左右するものとなるだけに、今後の動向をしっかりと追いかけたいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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