自動運転移動サービス、驚異の「満足率95.7%」!人口2,600人の街で大活躍

和歌山県太地町にレベル2のスローモビリティ



出典:国土交通省近畿地方整備局公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

95.7%が自動運転サービスに満足したというアンケート結果が出た自治体がある。国土交通省近畿地方整備局が「自動運転レポート」として公開しているもので、その中で和歌山県の太地町(たいじちょう)で実装された自動運転車について報告されている。

同町の「自動運転走行ルートの沿道地区アンケートの結果」では、「自動運転サービスに満足できましたか」という質問に対し、67.4%が「満足」、28.3%が「ほぼ満足」と回答しており、合わせると95.7%にも上る。


人口が約2,600人の太地町。その他の項目でも、おおむね住民の好感触を得ているという結果であった。

▼自動運転レポート vol.1|太地町×自動運転|2023年8月 近畿地方整備局
https://www.kkr.mlit.go.jp/road/dgmx/jidouunten/ok0bp10000001pmu-att/ok0bp1000000acgh.pdf

■2022年11月から自動運転車を実装している太地町

太地町は、自動運転や車載カメラを活用した見守りサービスを実装するための実証実験を2022年8〜9月に行った。その後、自動運転のスローモビリティが同年11月から実装された。この事業は2021年度内閣府未来技術社会事業に「自動運転やドローン等未来技術を活用した高齢者が幸せを感じるまちづくり事業」が採択され行われたもので、構想から実装まで、わずか1年5カ月というスピードで進められた。

同町では高齢化が進み、高齢者が安心して暮らせるよう自動運転車が整備されたという。自動運転スローモビリティは、町営じゅんかんバスでは運行できないエリアを中心に、2台体制で1日18便運行している。漁協スーパーや老人憩いの家、病院などを周回する1周3.2キロ、所要時間約45分のルートとなっている。


使用する自動運転車両は、ヤマハ発動機製のランドカーだ。道路に埋められた電磁誘導線に沿って時速12キロの低速度で走行し、自動運転レベルは2となっている。5人乗りだが、補助員がいるため乗客定員は4人で、平均して1日に20.4人が利用している。運賃は無料だ。

太地町の住宅密集地の道路事情に合わせてコンパクトサイズの車両が採用されており、手動では運転が難しい狭路でも、自動運転であれば安全を確保した走行が可能になっているという。

出典:国土交通省近畿地方整備局公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)
■自動運転車、「安全だと思う」71%

自動運転走行ルートの沿道地区アンケートは、2022年10月に行われた。利用の主な目的は買い物や通院が多かった。「安全な乗り物だと思いましたか」という質問に対しては、71.1%が「安全だと思う」、残りも「ほぼ安全だと思う」という回答であった。

また「車両の乗り心地はいかがでしたか」に77.6%が「よかった」、「移動手段として便利だと思いますか」には63.0%が「便利だと思う」と答えている。「自動運転サービスに満足できましたか」には67.4%が「満足」と回答し、「やや不満」はわずか2.2%であった。「今後も自動運転を続けてほしいと思いますか」には72.3%が「続けてほしい」と回答している。


寄せられた意見として、「今、若くて自動車の運転ができても、いずれ乗れなくなるので、自動運転サービスが町内全体に広がれば良いと思います」、「自動運転を利用するようになって買物も自分で出来て、楽しく毎日を過ごしています」といったもののほか、「登校できなかった子供が、カートに乗って毎日登校できるようになりました」という声もあった。

出典:国土交通省近畿地方整備局公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)
■太地町、構想から実装まで約1年半

構想から実装まで約1年半という短い期間で自動運転車を導入できた理由として、太地町役場の担当者は、「ゴルフ場などでも走っているランドカーを用いた自動運転サービスはそれほど難しくはないので、やる気がある地域は独自に実装できると感じていました。実装が前提だったのでできたのだと思います」と語っている。

また、未来技術社会実装事業に応募して採択されたことで地域実装協議会を立ち上げ、紀南河川国道事務所や和歌山県、ヤマハ発動機などの担当者に実際に同町に訪問してもらい、このルートで走行できるかどうかなど、みんなで歩き回ったという。それをもとに図面に落とし込み、警察に安全対策などを説明した上で実現に至ったようだ。

一般に、年齢が上がるにつれて自動運転車に対しての社会受容性は低くなると言われている。しかし今回太地町で自動運転車の実用化が早期実現し、高齢者を中心とする町民からも良い手応えを得ている理由として、実用的な走行ルートを設定したこと、利用方法が簡単なことなどが挙げられるだろう。

また少人数の車両のため、乗り切れない場合もあり待ち時間が発生するが、町民から話を聞いて、このくらいなら待てるという時間設定をしたというエピソードからも、町民ファーストでプロジェクトを進めていたことが分かる。

さらに、自動運転レベル2という無理をしない導入方法を選んだことも、早期実用化の理由になっていそうだ。今後、こういった利用者主体のサービス展開をする自動運転車の導入が、特に地方で進んでいきそうだ。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

【参考】関連記事としては「自動運転、実証実験の結果一覧(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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