GMの自動運転タクシー、ハンマーで破壊 容疑者が逃走中

深夜のサンフランシスコ、センサー部を執拗に



出典:X

自動運転タクシーが実用化されている米カリフォルニア州サンフランシスコで、ドライバーレスの自動運転タクシーが襲撃されるという事件が起こった。X(旧Twitter)にその様子が投稿され、アメリカ国内で波紋が広がっている。

自動運転タクシーの実用化が進む米国では、自動運転車の走行を妨害したり、襲撃したりといった行為が相次いでいる。


■自動運転車襲撃事件の顛末

サンフランシスコで2023年9月10日の夜11時頃に、米GM傘下のCruiseの自動運転車が破壊されたという通報があった。警察官が駆けつけたところ、破壊されたCruise車を交差点で発見した。目撃者によると、悲鳴が聞こえたので窓から外を見ると、クルマを破壊する前に犯人がCruise車の前に立っていたという。その後破壊行為を行い、警察官が到着する前に現場から逃走したといういきさつのようだ。

Xに投稿された動画によると、黒ずくめの男がハンマーのようなものでCruise車の上部に取り付けられたセンサーやLiDAR、カメラと思われるものを叩いて破壊している。またフロントガラスやドアガラスなども破壊しており、周囲には強打する音が大きく響き渡っている。

Cruise車は異常を察知したからか、前方側面にある黄色のランプが点滅している。なおボンネットにはスプレーペイントでいたずら書きがされているようだ。犯人は破壊行為後、交差点を渡り逃走した。


■Cruiseは警察に被害届を提出

Cruiseはこの事件について警察に被害届を提出し、「私たちはこのような行為に深く心を痛めています」との声明を出した。同社広報担当は、事件当時車内には誰も乗車していなかったとし、Cruiseの最優先事項は、あらゆる状況下でも安全に運行することだとコメントしている。また、この事件について犯人を特定し、責任を追及することを望んでいるとしている。

現在もこの事件について捜索中で、犯人はまだ捕まっていない。警察は事件についての情報提供を呼びかけている。

■これまでにも妨害・襲撃事件が発生

米国では、これまでにも自動運転車が妨害や襲撃を受けるという事件が起こっている。

2020年2月に、走行中のGoogle系Waymoの自動運転車にアイスクリームのコーンや卵を投げつけるという事件があった。そのほか住民が自動運転車に石を投げたり、凶器を向けたりすることもあったという。また同年10月には、2人のサイクリストがWaymo車を駐車場から出られないようにするトラブルがあった。歩行者がWaymo車を殴りつけ、サイドミラーを外す事件も起きている。

【参考】関連記事としては「なぜ住民たちは、Waymoの自動運転車に卵を投げつけるのか」も参照。

2022年7月には、Waymoの車両が自動運転モードで走行している最中に歩行者に攻撃されるという事件がアリゾナ州で起きた。

2023年7月にはサンフランシスコで、歩行者の安全や公共交通機関の利用を提唱する米団体「Safe Street Rebels」がWaymoとCruiseの自動運転車のボンネットに「三角コーン」を設置し、走行を阻害した。自動運転タクシーサービス拡大に対して抗議する活動であったという。

最近では8月にロサンゼルスで、セブンイレブンの自動配送ロボットが襲われ、中に入っていた食料品と思われるものが奪われる動画が出回り、話題になった。

【参考】関連記事としては「セブンイレブンの自動運転ロボ、L.A.で襲撃される」も参照。

■最近は自動運転タクシー拡大の動き

今回破壊事件の被害者となったCruiseは、2022年2月からサンフランシスコで一般市民向けに自動運転タクシーサービスを開始している。同年9月には、アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンに拡大していくことを発表した。

またWaymoは2018年12月に、世界初となる自動運転車を活用した有料の商用タクシーサービス「Waymo One」を、アリゾナ州フェニックスで一部ユーザーを対象に開始した。その後対象を一般ユーザーに拡大している。2021年8月からはサンフランシスコでもサービス提供をスタートした。2023年3月には、ロサンゼルスでもサービス展開をするために走行テストを行うことを発表している。

この2社に対し、カリフォルニア公共事業委員会(CPUC)が新たな権限を付与することを2023年8月に承認し、両社は24時間いつでも無人の自動運転タクシーで乗客から料金を徴収する商用サービスを展開することができるようになるという。

■無人ゆえ防衛策の強化が必要に

米国では自動運転タクシーという新しいモビリティを快適に利用する人がいる一方で、安全面やタクシードライバーの仕事を奪うという観点から、反対している人も一定数いる。CruiseとWaymoの自動運転タクシーが何度も交通トラブルを起こしているのも事実だ。

今回Cruise車を襲撃した犯人の犯行理由はまだ不明だが、自動運転車に対してネガティブな感情を抱いている人もいるということは確かだ(※もちろん、だからといって犯人の行為が正当化されるわけではないが)。

ちなみに前出のXの投稿では、動画とともに「What do you think, hero or villain?(ヒーローなのか悪役なのか、あなたはどう思う?)」というコメントが添えられている。この行為をヒーローとして捉える市民もいると想定しての書きぶりと考えられる。

繰り返しになるが、大前提として、クルマを襲撃することは犯罪行為で、それを実行する側に問題がある。ただし、無人ゆえにしっかりとした防衛策も必要であると言えることは確かだ。

そしてこうしたことを通じて、まさに「自己防犯」「防御システム」といった今までに全くなかった技術やマーケットが生まれるかもしれず、そういった派生ビジネスがどんどん広がっていく「裾野」の巨大さこそが、自動運転ビジネスが700億ドル市場になると言われる所以だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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