自動運転の実証実験、結果一覧(2022年最新版)

公表されている資料7点を分析



出典:BOLDLY公式サイト

自動運転技術の実用化に向けた実証が各地で進められている。一部は実用化域に達しつつあり、レベル4法の改正とともに取り組みはますます加速していく見込みだ。

年々進化を遂げている研究開発現場では、どのような成果が上がり、またどのような課題が浮き彫りとなっているのか。公表されている自動運転実証の報告書などをもとに、自動運転開発の今に迫っていこう。







■公表されている自動運転実証報告書
自動走行ビジネス検討会「自動走行の実現及び普及に向けた取組報告と方針」Version5.0

自動運転のビジネス化に2015年から取り組んでいる自動走行ビジネス検討会は、これまでの実証プロジェクトの成果や今後の課題、次期プロジェクト工程表などをまとめた報告書を2021年4月に発表した。

実証関連では、レベル3遠隔型自動運転システムによる移動サービスや、中型自動運転バスなどのラストマイル自動走行、高速道路におけるトラックの隊列走行における実証概要や成果が取りまとめられている。

国内初のレベル3遠隔型自動運転システムによる自動運転移動サービスを実現した福井県永平寺町に関しては、実証地域選定(2016年度)から世界初の1人の遠隔運転手が2台を運用する遠隔型自動運転システムの公道実証(2018年度)、無人自動運転移動サービスの試験運行開始(2020年度)に至るまでの経過が示されている。

中型自動運転バスでは、2020年度に実証を行った大津市と京阪バス、神姫バス、西日本鉄道、茨城交通、神奈川中央交通の5事業者それぞれの運行実績や成果がまとめられている。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)

踏切の開閉情報や歩行者信号情報、右折時における死角からの対向車検知といったインフラ連携の取り組みなどをはじめ、路車間通信による運転制御と人間の感覚との違いや設定ダイヤに対する慢性的な遅延、バス停に乗降客がいない場合の通過判断、街路樹が信号を覆ったことによる信号の画像認識精度の低下、夕暮れや夜間時における前方車両の検出性能の低下、磁気マーカの読み飛ばしによる走行位置のブレといった課題も挙げられた。

トラックの隊列走行では、後続車無人システムの実証実験や後続車有人システムの高度化などに取り組んでおり、これまで新東名高速道路を計約4万1,000キロ走行した中で発生した、車線減少部での一般車との並走や割込み、SA・PA内での歩行者の隊列車間への接近、隊列と一般車の同時車線変更といったヒヤリハットの例などが整理されている。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)

一方、課題としては、注意喚起表示などにより一定の効果があるものの、合流部や車線変更時における周辺車両との錯綜や、MRMや落下物・故障車・道路規制などへの対応について、電子牽引由来の課題が残るとしている。

▼自動走行ビジネス検討会が取りまとめた報告書
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/pdf/20210430_02.pdf

愛知県:2020年度自動運転社会実装プロジェクト推進事業の実施成果報告

自動運転の実用化に取り組む愛知県の2020年度事業の成果報告が発表されている。同年度は、空港島全域における自動運転車両による移動と屋外公共施設における新たな車室空間体験を伴う移動、生活・観光混在エリアにおけるMaaSによる移動の3テーマを設定し、それぞれ実証を進めた。

出典:愛知県(※クリックorタップすると拡大できます)

常滑市の中部国際空港島では、シール型の磁気マーカなどを活用した小型バスで車内運転席無人の遠隔型自動運転や、運転席有人で一般客を乗せる自動運転を実証した。

磁気マーカによる雨天時における安定走行を実現したほか、2週間にわたって一般客を乗せる運行を通じて、交通事業者による自動運転車両の長期にわたる安全・安心な運行を実現するオペレーションの確認、運転席無人の遠隔型自動運転によって少人数での運行体制と乗客の安全・安心を両立できることなどを確認した。

一方、課題としては、見通しの悪い合流点における路車間協調による安全な合流や、最小回転半径や右左折時の内外輪差、車線幅員などを考慮した自動走行経路の設定、シール型磁気マーカがタイヤ摩擦の影響により約1週間で剥がれたことへの対策などを挙げている。

出典:愛知県(※クリックorタップすると拡大できます)

長久手市の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)では、トヨタ紡織の次世代自動運転コンセプト空間「MOOX」を活用し、ARによるエンターテイメントコンテンツなどによる移動価値の向上を図った。

自動運転車両における時間・車室の使い方の可能性を確認し、将来的なマネタイズの可能性を確認した一方、歩行者横断や飛び出しへの対策強化と安全確保手段の更なる検討、消費電力増加を抑制する方法、悪天候時のLiDARへの水滴付着による自己位置誤認識への対策などが課題として浮き彫りとなったようだ。

出典:愛知県(※クリックorタップすると拡大できます)

西尾市中心部では、住民試乗のもと遠隔監視や路側カメラによる死角監視などを活用した運転席有人による自動運転移動サービスの実証を行った。路上駐車回避のための手動介入回数が31走行中2回という安定性を実現したようだ。

課題としては、右左折を伴う際の合流タイミング時、安全監視員による判断から自動運転システム自身での判断への移行や、運行を支える費用の負担、地域の商店等への回遊性向上策のさらなる向上、路上駐車車両の回避に係る技術向上、自動走行への理解を含めた交通マナーの喚起方法などを挙げている。

出典:愛知県(※クリックorタップすると拡大できます)

▼愛知県の自動運転社会実装プロジェクト推進事業の実施成果報告資料
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/373464.pdf

国土交通省航空局:空港内におけるレベル3相当実証実験の結果報告

国土交通省航空局は、空港制限区域内における自動走行の実現に向け実施した自動運転レベル3相当の実証実験の結果を公表している。

実証は、先進モビリティやBOLDLY、全日空が取り組んだ磁気マーカ・RFIDを活用した自動運転バスと、豊田自動織機・全日空による自動運転トーイングトラクターの2つの実証実験が2021年3月から5月にかけてそれぞれ行われた。

自動運転バスは相当磁気マーカセンサーを装着し、空港に埋設した磁気マーカを併用した自動運転の安定性や確実性を検証した。

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

大型バスは車体が長いため、直線部では磁気マーカ検出率が高くなるものの、特有の走行軌跡からカーブなどでは検出率が低下したという。ただ、磁気マーカが検出できない場合においても、GNSSやSLAMといった他の自己位置推定技術を使用した走行が可能なため、自動走行に影響はなかったとしている。その他、強雨時においても安定した自動走行ができることを確認した。

磁気マーカは汎用性が高く、共通インフラとして他の自動運転車両でも使用可能である一方、3D・2Dマップと比較するとコストが高く、空港全体への埋設は慎重に検討する必要があると結論づけている。

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

自動運転トーイングトラクターは、大規模空港かつ混雑環境下での自動走行や、自動走行車両の表示方法や内容も含めた受容性に対する課題整理を進めた。

実証では、さまざまな対象物・状況で適切に障害物を検知して減速停止できたが、西日や雨滴による誤検知がったという。照度耐性の向上やセンサーにひさしを追加するなどの対策を講じるとしている。

受容性関連では、空港内事業者にアンケートを取った結果、約7割が違和感なく自動走行でき、また約9割が実作業にも影響なしと回答した。一部からは「車両通行帯のないスポット内での動きが予測できない」といった意見も出たため、自動運転中の表示方法の空港統一ルール制定などと合わせて協議するとしている。

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

▼空港内におけるレベル3相当実証実験の結果報告資料
https://www.mlit.go.jp/common/001425244.pdf

福島県浪江町:試乗体験結果を公表

福島県浪江町は、「なみえスマートモビリティーチャレンジ」の一環として自動運転車の試乗体験を2021年2月に実施し、参加者の声などを発表している。

アンケートでは、シャトルが自動運転になったらよいと思うか?との問いに計94%が「そう思う」「とてもそう思う」と好意的に回答したほか、不安な点として「トラブルのとき対処に困りそう」71%、「機械が壊れたとき対処に困りそう」57%、「利用の仕方に迷った時など、訊ねる相手がいなくて困りそう」28%などの声が挙がった。

出典:福島県浪江町(※クリックorタップすると拡大できます)

▼浪江町の報告資料
https://www.town.namie.fukushima.jp/uploaded/attachment/14371.pdf

埼玉工業大学:2020年度の自動運転バスの実証実績を発表

自動運転の研究開発に力を入れる埼玉工業大学は、2020年度に行った自動運転バスの実証結果などを取りまとめ、公表している。

同大学は2020年度、大学キャンパス内や周辺の公道走行をはじめ、羽田空港エリアで行われたSIP自動運転実証、塩尻市で行われた塩尻型次世代モビリティサービス実証プロジェクト、深谷市で行われた「渋沢栄一 論語の里 循環バス」の実証に参加・協力し、年間合計約2,970キロを走行したという。

塩尻市では、「Autoware」を搭載した同大学の車両で住民を乗せるサービス実証を行った。深谷市では、大河ドラマの放送に合わせ渋沢栄一ゆかりの地を巡る路線バスの一部に自動運転バスを導入し、営業運行を行う実証を行ったようだ。

▼埼玉工業大学の報告資料
https://www.sit.ac.jp/media/pressziseki4.pdf

岐阜県関市:モニターアンケート結果などを公表

岐阜県関市で2020年7〜10月に行われた自動運転実証の報告書では、体験試乗した市民らのアンケート結果が掲載されている。

実証では、群馬大学や日本モビリティなどの協力のもと、モニターを交える形で自動運転による移動サービスの効果について調査・検証した。

モニター参加者80人のうち70人がアンケート調査に回答した。自動運転を体験した理由では、「自動運転車両に乗ってみたかった」44人、「自動運転技術や自動運転車両に関心がある」29人と関心の高さをうかがわせた。

乗り心地を問う質問に対しては、「悪い」10人、「普通」29人、「良い」31人で、急発進や急ブレーキ、左右へのふらつきなどが乗り心地に影響しており、今後の改善が必要としている。

出典:岐阜県関市(※クリックorタップすると拡大できます)

自動運転に期待することでは、「運転負担の軽減」「交通事故の減少」「公共交通の利便性向上」を挙げる声が多かったようだ。

出典:岐阜県関市(※クリックorタップすると拡大できます)

▼関市の自動運転実証実験等実施業務事業実施報告書
https://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000016/16701/R2-2siryo4.pdf

■実用化済みの自動運転サービスの報告書

茨城県境町でNAVYA ARMAを活用した自動運転バスサービスを2020年11月に開始したBOLDLYは、2021年度の稼働レポートを公表している。実証ではなく実用化済みのサービスにおける貴重なレポートだ。

同町の自動運転バスサービスは、2021年11月までの1年間で走行便数4,756便、総走行距離1万4,525キロを走行し、5,292人が乗車した。有償視察は年100回を超え、町外からの乗車を誘引するツアー参加者も388人に上るなど、注目度の高さもうかがわせる。

出典:BOLDLY公式サイト(※クリックorタップすると拡大できます)

自動運転の割合は7割程度を維持している点をはじめ、渋滞を緩和させるバス停の置き方、運行前後の点検漏れを遠隔で防ぐ仕組みの構築、運行への影響を最小化するメンテナンス体制の構築、持続可能な運行体制の構築、運行コストなど、自動運転の導入に際し気になるだろう要点について、経験に基づく知見を記している。

運行コスト関連では、法改正とともにドライバー人件費を削減できる点やコストよりも高い波及効果が見込める点などを紹介し、持続可能なビジネスモデル構築には従来モデルの運賃からの脱却が必要と結論付けている点が印象的だ。

出典:BOLDLY公式サイト(※クリックorタップすると拡大できます)

▼BOLDLYのレポート
https://www.softbank.jp/drive/set/data/press/2022/shared/20220208_02.pdf

■【まとめ】自動運転開発から継続サービスのフェーズへ徐々に移行

比較的小型の車両を活用した低速モデルは実用域に達し始めており、自動運転開発のさらなる向上とともに継続的なサービス提供に向けた課題へとフェーズが移りつつある印象だ。

一方、中~大型車両の自動運転も課題が明確に浮き彫りとなり、細やかな対策のもと一歩一歩着実に前進しているようだ。

今後、住民を交えた形のサービス実証も増加していく見込みで、自動運転技術が身近なものとして受け入れられる未来は間近に迫っているのかもしれない。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









関連記事