自動運転スタートアップである株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:加藤真平)は2024年3月18日までに、新しい自動車技術で半導体設計大手の英Arm(アーム)と協業することを発表した。
Armは半導体やソフトウェア設計における世界的なリーダー企業で、自動運転関連企業としても注目度が高まっている。両社は自動運転システムを車両に統合するアプリケーションにおける主要なパートナーとして、パートナーシップを結ぶという。
■ティアフォーとArmの協業の概要
多くの企業がソフトウェア定義型自動車(Software-Defined Vehicles:SDV)の開発に着手しており、ハードウェアとソフトウェアの開発サイクルが短くなっている。その需要に対応するため、Armはティアフォーや、ティアフォーが設立したThe Autoware Foundationといった業界の主要企業・団体と協業し、自動運転車用チップ「Arm Automotive Enhanced」の技術を活用した新しい仮想プラットフォームとソフトウェアソリューションを立ち上げるという。
そしてティアフォーは、最新のクラウド技術を活用した自動運転システムの開発運用および機械学習に最適化したプラットフォーム「Web.Auto」を製品として提供している。今回の協業では、Amazonのクラウドサービス「Amazon Web Service(AWS)」上で配備されるArmアーキテクチャを採用した仮想的なコンピューティング環境と、Web.Autoを統合させる。
具体的な協業の内容としては、クラウド上で自動車向けエッジプラットフォームと整合がとれた仮想環境を用意することで、自動運転アプリケーション向けのハードウェアやチップの開発において、特定のプロセスを開発サイクルの前段階に置く「シフトレフト」への動きをさらに加速させることを目指すという。
これにより、自動車メーカーやティア1サプライヤー、チップメーカーなどは、自動運転システムに最適なハードウェアやアーキテクチャを物理的なハードウェアを待つことなく評価し、効果的に選定可能になる。
■加藤CEO「プロセスの加速化に貢献」
ティアフォーの代表取締役社長CEO(最高経営責任者)兼CTO(最高技術責任者)である加藤氏はこの協業を通して「自動運転に必要なハードウェアを設計するためのツールを提供することで、自動車メーカーやチップメーカーが自動運転をグローバルに展開できるよう支援することを目指す」としている。
また「仮想プロトタイピングを活用し、自動運転の実証実験から自動運転移動サービスの導入までのプロセスの加速化に貢献していく」とコメントしている。
またArmの幹部は、「ティアフォーのような業界のリーダーと協業し、ArmのAutomotive Enhancedの技術を活用することで、自動運転をより迅速に開発できるようになる」と語った。
■ソフトバンクGとの関係性にも注目
ティアフォーは自動運転システムの社会実装を通して、地域限定型の無人自動運転移動サービスについて政府が目標とする2025年度をめどに50カ所程度、2027年度までに100カ所以上での導入の実現を後押ししている。
2024年3月には、いすゞ自動車と路線バス領域における自動運転システムの開発を目的とした資本業務提携を行うことを発表した。さらに三菱商事は地域交通のDXと自動運転の社会実装を協力して推進していくことを目的に、ティアフォーへ出資を行うことを発表している。
また2023年6月には、自動運転機能に対応したEV(電気自動車)の生産を加速させる新たなソリューションの提供を開始した。
この1年足らずで急速な動きを見せている自動運転スタートアップのティアフォー。Armは2016年にソフトバンクグループに買収され、同グループの一員になっていることもあり、今回の協業をきっかけにティアフォーとソフトバンクグループの関係にも動きがあるのか、注目したい。
【参考】関連記事としては「ティアフォーの自動運転/Autoware戦略」も参照。