Google傘下の自動運転開発企業である米Waymo(ウェイモ)は2023年9月7日までに、自動運転車と手動運転車の物損事故率について調べた調査結果を公表した。
調査はスイスの再保険大手スイス・リーとともに実施された。Googleの自動運転車の物的損害賠償請求の頻度は手動運転車と比べ、76%低かったという。自動運転車の安全性が際立つ調査結果だ。
■100万マイルあたり「0.78件」
累計走行距離のデータで比較すると、手動運転車は100万マイルあたり3.26件だったが、自動運転車は100万マイルあたり0.78件にとどまったという。ちなみに手動運転車の事故率は過去のデータから「基準値」を作成し、比較に使用したようだ。
ウェイモの安全研究などを担当する幹部のTrent Victor氏は調査結果について「我々の自動運転車が安全であることを示している」を自信を示した上で、「競合他社よりもウェイモの自動運転車が優れているということを知ってもらうチャンスだ」と述べている。
■「それぞれの都市の事故率の共有を」
今回の調査結果に関しては、さらに詳細なデータの公表を求める声もある。バークレー大学交通研究所の研究エンジニアであるSteven Shladover氏は「サンフランシスコとフェニックスのそれぞれの都市の事故率を共有してほしかった」といった趣旨のことを述べている。
Waymoが公表したデータは、自動運転タクシーを展開するサンフランシスコ(2022年3月~2023年8月1日)とフェニックス(2019年3月~2023年8月1日)のデータを合算したもので、Shladover氏は「それらは全く異なる地域で、一括りにせず、別々に事故率を公表した方が興味深かった」と述べている。
ちなみにWaymoとスイス・リーによれば、今回の調査結果についてはいずれ詳細を学術誌に投稿し、第三者のレビューを受ける予定だとしている。投稿時期については明言されていない。
■人身事故はゼロだが、測定データが少なすぎる?
Waymoの調査報告書では、ドライバーレスの自動運転車で380万マイルを走行した結果、対人賠償請求はゼロ、つまり人身事故は0件だったことも強調されている。ただしこの調査結果については、調査の元になる累計走行距離数が少なすぎると指摘する声もある。
アメリカでは通常、交通事故の死亡者数などは「1億マイル当たり」で測定される。そのため、380万マイル程度では人が絡む事故率を算出しても、統計的な信憑性に欠けるという指摘だ。
ちなみにアメリカでは自動車走行1億マイルごとに1.37人の死亡者が出ている。アメリカの全ドライバーの1年間の総走行距離は3兆マイルを超え、毎年4万人以上が交通事故で死亡している。
調査の詳しい結果は以下のURLから確認できる。英語ではあるが、興味がある人は閲覧してみてほしい。
▼Comparative Safety Performance of Autonomous- and Human Drivers : A Real-World Case Study of the Waymo One Service
https://arxiv.org/pdf/2309.01206.pdf
【参考】関連記事としては「Waymoの自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。