自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望まとめ

タクシー部門、ウェイモに続くのはどこ?



自動運転車が夢物語から現実のものになり始めた昨今、世界各地で実証実験の取り組みが盛んになり、グーグル系ウェイモの自動運転タクシーを皮切りに、実用化も加速し始めている印象だ。2021年には日本のホンダがレベル3搭載車の発売を開始したことも脚光を浴びた。







そこで今回は、日本国内の自動車メーカーをはじめ、世界のメーカーが自動運転の分野でどのようなロードマップを描いているのかをまとめるとともに、関連サービスや関連市場の動向も追ってみた。

記事の目次

■自動車メーカーや参入企業の計画
【日本】トヨタ:2021年の東京五輪でさらに高機能になったe-Paletteをお披露目?

トヨタ自動車は2020年の東京五輪で自動運転レベル4の自動運転EV(電気自動車)「e-Palette」を披露する予定だった。新型コロナウイルスの影響で東京五輪の開催は2021年に延期されたことから、2021年はさらに高機能になったe-Paletteが披露されることになりそうだ。

一般道路での自動運転については2020年代前半にも実現することを目指すこととしており、「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」という独自のアプローチ方法により、自動運転システムの技術開発を進めている。

ちなみにトヨタはコネクティッド・シティとして「Woven City(ウーブン・シティ)」を2020年2月にも着工する見込みとなっており、Woven Cityで自動運転の実証実験を積極的に実施する予定だ。

【参考】トヨタの自動運転戦略については「トヨタの自動運転戦略を徹底解説!2020年代に起こす大変革とは?」も参照。ショーファーについては「トヨタの自動運転システム「ショーファー」を徹底解剖!どんな技術?」も参照。

【日本】ホンダ:自動運転レベル3搭載車を2021年3月に発売開始

ホンダは2020年11月に国土交通省から自動運転レベル3の型式認定を取得し、同システムを搭載したフラッグシップモデル「レジェンド」を2021年3月5日に発売開始した。100台の限定生産で、3年限定のリース専用車両となる。価格は消費税込みで1,100万円と発表されている。

自家用車の自動運転レベル4については、2025年ごろをめどに技術的な確立を目指すこととしている。

【日本】日産:2019年からレベル2相当の「プロパイロット2.0」を提供

日産は2019年9月から、自動運転レベル2技術に相当する「プロパイロット2.0」を搭載した新型スカイラインの販売を開始している。日産はこのプロパイロット機能を今後発売するすべての新型車に標準装備する方針だ。

プロパイロット2.0では、高速道路の複数車線で追い越しや分岐なども含めシステムがルート上にある高速道路の出口まで走行を支援するほか、一定条件下で同一車線内におけるハンズオフ(手放し)運転も可能である。

【参考】日産の自動運転戦略については「日産の自動運転・運転支援技術を徹底解説!プロパイロットの凄みは?」も参照。

【日本】日野:VWグループと提携、2025年以降完全自動運転実現へ

全車速車間距離維持支援システム(ACC)や通信によって前走車の加減速情報を受信する協調型車間距離維持支援システム(CACC)、車線維持走行支援(LKA)などのADAS開発を進める日野。

2018年4月には、独フォルクスワーゲン(VW)グループのバス・トラック部門と戦略的協力関係の構築に向けた合意を交わしており、開発を加速している。

社会のニーズや法規制を含む社会インフラ、社会受容性、技術の成熟度を鑑み、社会の役に立つ技術を段階的に実用していく方針で、2025年以降の完全自動運転を目指し技術開発を推進している。

【日本】いすゞ:日野と技術提携、路車間通信や加減速支援を順次実用化

いすゞは2016年5月、自動運転システムの早期実用化に向け、ベース技術となるITSシステムや高度運転支援技術を「協調領域」と位置付け、日野自動車と共同で開発を進めることに合意。この合意に基づき開発を進めてきた視界支援、路車間通信、加減速支援、プラットホーム正着制御の4つの技術を2018年度以降順次実用化していく方針を打ち出している。

自動運転に関する具体的なロードマップは公表していないようだが、2021年3月期までの中期経営計画の中で、先進技術開発の加速を重要課題に掲げ、隊列走行や自動運転、コネクテッド、EVなどを重点技術開発領域に挙げており、次世代型の自動運転トラック開発に米半導体メーカー・エヌビディアの「NVIDIA DRIVE」を導入することなども決めている。

【ドイツ】BMW:2021年にレベル3.5、2020年代半ばにレベル4実現へ

自動運転レベル3.5相当と言われるEVモデル「BMW iNext」の生産・実用化を2021年にも開始する予定のBMW。2018年4月に自動運転実現に向けた新たな研究センターをドイツ国内に開設したほか、2019年3月には独ダイムラーとの協業も発表しており、開発を一層加速させていく構えだ。

【参考】BMWの自動運転戦略については「BMWの自動運転技術や戦略は? ADAS搭載車種や価格も紹介」も参照。

【ドイツ】VW:新型EV「I.D.BUZZ」を2022年に発表

ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は電動化や自動運転、コネクティビティ、新しいモビリティサービスなどの領域に対し、2022年末までに340億ユーロ(約4兆4,000億円)以上を投資することを発表している。

自動運転EV(電気自動車)コンセプトカー4種を「ID.(アイディー)」のブランドですでに発表しているが、この市販版「I.D.BUZZ」を2022年にはワールドプレミア車として発表し、2025年には実用化していく方向だ。このシリーズはMaaS向けの自動運転車として展開する予定となっている。

【ドイツ】メルセデスベンツ:2021年後半にレベル3、「Sクラス」で搭載予定

CASE戦略をいち早く打ち出したダイムラーは、独自動車部品大手のボッシュやエヌビディア、BMWなどとの強力な連携のもと、自動運転レベル3の搭載車を2020年に市場導入することを目指すとしていたが、実際のレベル3導入は2021年後半となりそうだ。

2020年9月の新型「Sクラス」の発表にて、2021年後半からレベル3の自動運転機能「DRIVE PILOT」をドイツ国内の高速道路で利用できるようにすると発表している。Sクラス自体は2020年中に発売されているが、欧州での承認手続きの関係で自動運転機能に関しては遅れての提供となる。

ドイツ以外の欧州や米国、中国でも順次DRIVE PILOTが使用できるようになるとのことだが、日本で使用可能になる時期については明らかになっていない。

自動運転タクシーについては、2019年12月からボッシュと共同で、米カリフォルニア州サンノゼで実証実験を開始している。こちらもSクラスをベースとした自動運転プロトタイプ車両を使用したものだ。シリコンバレーで無人の配車サービスを試験的に開始する方針で、自動運転タクシー早期実現も視野に入れている。

【ドイツ】アウディ:レベル4商用車は2021年、市販車は2025年までに市場へ

世界に先駆けて自動運転レベル3搭載車「Audi A8」の市場投入を果たし、市場をリードするアウディは、車線変更や追い越しも可能となるより実用領域を高めたレベル3搭載車両の開発を進めている。

ただ日本国内でもすでに発売されているA8では、自動運転レベル3の技術は使えない仕様となっている。A8が国内販売された2018年10月時点では、レベル3での走行が日本では公道で解禁されていなかったからだ。その後、日本は道路交通法と道路運送車両法の改正で、2020年4月にレベル3が解禁されたことから、いずれは日本販売のA8でもレベル3の機能が使えるようになりそうだ。

アウディは自動運転レベル4については、商用向けを2021年から、また一般向けを2025年までに実現することを目指しており、コンセプトモデルも続々発表している。

【参考】アウディの自動運転戦略については「アウディの自動運転戦略まとめ 車種一覧やA8が備える機能」も参照。

【スウェーデン】ボルボ:2021年レベル4実用化目指す

ヨーテボリ周辺で進めている大規模な実証実験「Drive Meプロジェクト」を進めるボルボカーズは、2021年までに自動運転レベル3を飛び越し、自動運転レベル4相当の完全自動運転車の実用化を目指すこととしている。

2017年には、自動車安全部品を製造するスウェーデンのAutoliv(オートリブ)社と合弁会社「Zenuity」を設立したほか、エヌビディアとも協業し、自動運転車の先進システムとソフトウェア開発を進めている。

【参考】ボルボの自動運転戦略については「ボルボの自動運転戦略まとめ コネクテッドカーの開発状況は?トラック部門は?」も参照。

【欧米】FCA:2023~25年にレベル4実現へ ウェイモとの協業にも注目

フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は2018年発表の中期経営計画で、自動運転レベル3を2020~21年、自動運転レベル4を2023~25年に実現する計画を打ち出している。ジープ、マセラティ、アルファロメオ、ラム・トラックスに関しては、2019年から2021年の間に高機能な自動運転レベル2からレベル3の実現を目指すこととしている。

また、米自動運転開発のWaymo(ウェイモ)とは、自動運転タクシー向けの車両数万台を供給する間柄にあり、FCAの一般顧客向けの車両にウェイモの自動運転技術を活用する協議も進められていることが報じられている。

【参考】FCAの自動運転戦略については「FCAの自動運転戦略まとめ ウェイモとの協業の行方は? 開発状況は?」も参照。

【アメリカ】ウェイモ:セーフティドライバーなしでのレベル4自動運転タクシーを実現

2018年12月に自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を開始したウェイモ。万一に備えセーフティドライバー同乗のもと運行していたが、2019年末からはセーフティドライバーを載せない形でのサービスも一部で開始している。事実上、一部で自動運転レベル4の商用サービスの提供を実現した形だ。

【参考】ウェイモの自動運転タクシーについては「グーグル系ウェイモの自動運転タクシー、米アリゾナ州で商用サービス開始」も参照。

【アメリカ】アップル:謎多き自動運転部門、発売時期は2024年以降?

秘密裏に進められている自動運転開発プロジェクト「Titan(タイタン)」をめぐり、さまざまな報道が飛び交うアップル。自動運転車の具体的な発売時期についてはさまざまな憶測があるが、ロイター通信やブルームバーグなどの報道では「2024年以降」との見方が有力だ。

複数の自動車メーカーと製造に向けて交渉しているとの報道もあり、具体的な動きがいつ公式に発表されるか気になるところだ。

ちなみにTitanについては、2020年12月にプロジェクトのリーダーが交代したとの報道があった。新たにリーダーとなったのは、以前Googleの機械学習部門のトップを務め、AppleのAI戦略担当上級副社長だったジョン・ジャナンドレア上級副社長だ。

【アメリカ】GM/クルーズ:無人自動運転タクシーの提供開始に期待感

先行するウェイモを追いかけるGM陣営は、2019年にも無人の自動運転タクシー事業を開始する予定だったが、安全上の懸念から開始を延期している。新たな目標は2021年3月時点では明らかになっていないものの、着々と進化が見られる。

GM陣営の自動運転タクシー事業は、主に自動運転開発を担う子会社のクルーズが担っており、2020年12月には米国サンフランシスコの公道で完全無人運転車の走行テストを開始している。このテストは助手席に安全オペレーターが乗車しており、限定されたエリアでの実施となっている。

また、2021年1月にはマイクロソフト社と戦略的提携を締結。自動運転タクシーサービスの実現に向け、マイクロソフトのクラウド「Azure」を活用するものとみられ、サービス提供開始の期待感が高まっている。

【アメリカ】フォード:2021年に一気にレベル4クラスの自動運転車両

フォードは、自動運転レベル3を飛び越し、2021年を目標に自動運転レベル4を実用化し、ライドシェアなどの配車サービス向けに供給することを発表している。

2018年6月には、独自動車大手のVWグループと戦略的提携に向けた各書に調印し、同年10月に自動運転技術の共同開発に向け交渉を進めていることが明らかにされている。

自動車大手メーカー・グループの提携により開発力と競争力を高め、次世代モビリティ界における覇権を狙う構えだ。

【参考】フォードの自動運転戦略については「フォードの自動運転戦略まとめ 開発状況は?実現はいつから?」も参照。

【アメリカ】テスラ:「2020年」という目標は実現されていない状況

米EV大手のテスラは、CEO(最高経営責任者)を務めるイーロン・マスク氏が2019年内にも自動運転技術を顧客に提供する準備が整う趣旨の発言をしており、自動運転レベル3相当のシステムアップデートを示唆した。ただ現在のところはレベル3の提供開始には至っていない。

テスラの自動運転機能は「Full Self-Driving(FSD)」のアップデートによって提供されるものになるとみられている。ちなみにFSDについては2021年第2四半期ごろからサブスクでの提供が開始されると、マスク氏はTwitterで言及している。

テスラに関してはロボタクシー事業についても注目だ。2019年4月には投資家を対象にした技術説明会の中で、この事業を展開する方針であることを明らかにしており、同氏は「2020年半ばまでに完全な自動運転車を100万台以上生産する」としている。

2021年3月時点でこの目標は実現されていないものの、マスク氏が自動運転技術の開発に意欲的であることだけは確かだ。

【参考】テスラのロボタクシー事業については「米テスラ、2020年に100万台規模で自動運転タクシー事業」も参照。

■自動運転レベル別の展望
レベル1~2のADASはハンズオフ機能に注目

ADAS(先進運転支援システム)に相当するレベル1、レベル2は標準搭載化が進んでおり、衝突被害軽減ブレーキやアダプテッドクルーズコントロールなどの各機能はスタンダード化している。

今後、2021年11月から新車を対象に衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務化されることから、レベル1をベースにレーンキープアシストなど操舵を支援する機能を加えたレベル2が主力となっていく見込みだ。

また、一定条件下でハンズオフ運転を可能にするレベル2システムも、「高度なレベル2」として区別化され普及が進んでいくかもしれない。ハンドルから手を離すことができるほど完成度が高いADASとして、「ハンズオフ」がキャッチコピー化していく可能性が考えられそうだ。

レベル3は2021年に市場形成

条件付きで自動運転を可能にするレベル3は、これから市場が本格化する要注目分野だ。国内では、道路交通法と道路運送車両法がそれぞれ改正され、条件を満たした「自動運行装置」による公道走行が2020年4月から可能になった。

レベル3に関する国際基準も2020年6月に合意に達し、2021年中に正式に規格化される見込みとなっている。こうした法的動向に合わせる形で自動車メーカー各社がレベル3の実装を進めている状況で、ホンダが2021年3月にいち早くレベル3搭載車として「新型LEGEND」の発売を開始した。

国際基準上、レベル3は「高速道路における時速60キロ以下の車線維持機能」とされており、当面は限られた中での使用となるが、実用化により実績を重ねることでODD(運行設計領域)が拡大されていく可能性が高い。

富士キメラ総研の調査によると、生産台数ベースのレベル3世界市場は2020年の1万台(見込み)から2030年に571万台、2045年に4,280万台と予測している。

【参考】自動運転レベル3については「自動運転レベル3の定義や開発状況は?日本と海外の現状まとめ」も参照。

レベル4は移動サービス軸に社会実装のフェーズへ

限定条件下で無人走行を実現するレベル4も、市場本格化の兆しを見せている。日本国内では2020年、走行ルートが明確な自動運転バスの実用化が茨城県境町で始まった。海外では米ウェイモや中国勢らがレベル4自動運転タクシーの実証・実用化を積極的に進めている。

富士キメラ総研の調査によると、生産台数ベースのレベル4(レベル5も含む)世界市場は2020年の僅少(見込み)から2030年に343万台、2045年に2,139万台に達すると予測している。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、ゼロから分かる基礎知識&進捗まとめ」も参照。

未知のレベル5、テスラが仕掛けるか?

制限なくどのような環境下でも自由自在に走行することが可能なレベル5は現状未知の領域となっている。実現時期は、便宜上2030年代を目標に据えているケースが多いが流動的だ。

大手では、唯一米テスラのイーロン・マスクCEOが完全自動運転を近く実現する旨発言している。クオリティ面を疑問視する声も少なくないが、夢のある話として受け取り、今後の動向に注目したい。

■自動運転実現で登場するサービスと実現時期
自動運転タクシー:実用化加速、各社がウェイモを猛追

2018年12月のウェイモの自動運転タクシー実用化を皮切りに、世界各地の企業がこぞって自動運転タクシーの実用化に向け競っている。

中国のインターネット大手・百度は2020年4月、自動運転タクシーサービスを中国で初めて一般向けに無償で開始した。2020年8月には中国スタートアップのAutoXが上海で自動運転タクシーサービス一般客に拡大し、中国勢が商用化に向けてスピードアップを図っている。

テスラもロボタクシー事業参入を表明しているほか、日本国内でもロボットベンチャーのZMPとタクシー事業者の日の丸交通が実用化を目指しているほか、ティアフォーが開発する自動運転OS(基本ソフト)「Autoware」を活用した走行実証も行われている。

【参考】自動運転タクシーについては「無人タクシー・ロボットタクシーの誕生はいつ? 自動運転技術を搭載」も参照。

自動運転シャトルバス:一部路線で商用化、国内でも実証進む

シャトルバスをはじめ、短距離・一定区域内の特定路線を走行するバスは、自動運転レベル4技術を生かす格好のサービスとなる。

自動運転バスの分野では、仏スタートアップのNavya(ナビヤ)やEasyMile(イージーマイル)などフランス勢が先行しており、イージーマイルは2017年9月に混在交通下における初のシャトルバスサービスを開始している。

また、ナビヤ社の無人運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ・アルマ)」は、日本国内でもソフトバンク系のBOLDLY(ボードリー)が実証実験に使用するなどなじみがある。

中国の百度(バイドゥ)が開発・量産化を進める自動運転バス「Apolong(アポロン)」も完成の域に達しているとされており、こちらも注目だ。

【参考】京阪バスの取り組みについては「大津市で自動運転シャトルバスの実証実験 京阪バスや日本ユニシスが実施」も参照。

自動運転トラック(隊列走行):国内無人隊列走行は2022年度以降に

物流業界で開発が進む自動運転トラック。隊列走行技術は米国の一部で実用化が始まっており、日本国内では2021年までに後続車有人システムの商業化、2022年以降をめどに無人隊列走行を実現する目標のもと、実証が進められている。

欧州では、2017年2月に「ENSEMBLE consortium」プロジェクトがスタートしており、2021年に公道においてさまざまなトラックメーカーの車両が協調する隊列走行システムの公道実証実験の実現を目指しているようだ。

自動運転パトカー:ドバイやオランダ警察などが導入に前向き 実証へ

自動運転技術をパトカーに導入する動きも徐々に表立ってきた。ドバイ警察が2018年10月、AIを搭載した自動運転の「動く無人交番」を地元イベントで披露したほか、オランダ警察も自動運転技術や遠隔運転技術を導入して犯人を逮捕するという新たな取り組みについて実証実験を行っているようだ。

【参考】オランダ警察の取り組みについては「オランダ警察、自動運転パトカー導入へ実証実験 トヨタやテスラも協力か」も参照。

自動運転移動コンビニ:RobomartやMoby Martなど試験運用進む

コンビニの無人化が世界各国で進められているが、自動運転技術を搭載した動く無人コンビニの開発も盛んに行われている。

米Robomart(ロボマート)社の「Robomart」をはじめ、スウェーデンの企業らが開発を進める「Moby Mart」など、試験運用がすでに始まっている。

国内では、トヨタ自動車が開発を進めるe-Palette(イーパレット)に注目だ。MaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)を見据えた多目的に活用できるコンセプトカーで、アマゾンやピザハット、ライドシェアのウーバーやディディなどがパートナーとなり、実用性の高度化を図るべく検討を重ねているようだ。

【参考】無人コンビニの取り組みについては「「無人コンビニ」の開発状況まとめ 自動運転技術で「移動式」も」も参照。

■自動運転実現と各種マーケット、影響を受けるのはいつから?
広告:自動運転契機に車両が動く広告塔に、移動時間の有効活用も

新聞やテレビをはじめ、目にしない日はない広告。近年はインターネット広告が隆盛し、デジタル化の波はまだまだ収まりそうにない。

電通の最新の調査「2018年(平成30年)日本の広告費」によると、総広告費に占める鉄道やタクシーなどの「交通」に関する媒体の広告費は2025億円で、全体の3.1%となっている。この比率が、近い将来大きく変わるかもしれない。

現在、タクシーの後部座席を活用したデジタルストレージ広告が大きな伸びを見せているが、自動運転・コネクテッド技術の進展に伴い、移動する時間を有効活用した広告媒体が活発化する可能性が高いからだ。

自動運転車が完成した場合、商用車・自家用車ともウィンドウをディスプレイとして活用できる可能性が高まり、内側・外側両方を広告スペースにすることができる。運転から解放される自家用車のドライバーはマイカーの「乗客」となり、タクシー同様、自家用車にもデジタルサイネージ広告を搭載する事業なども進展しそうだ。

また、これを契機に車両そのものを「動く広告媒体」として見直す動きも出てきそうだ。中古自動車販売などを手掛ける株式会社オートプラスが、広告シールをマイカーのリアガラスに貼る新しい交通広告サービス「マイカースポンサー(全国版)」の開始を発表するなど、すでにその兆候は始まっているようだ。

メディア(インフォテインメント):メディアコンテンツとして広がる可能性

コネクテッド技術により移動通信システムが万全になる自動運転車。運転操作が一切必要なくなり、ただただ移動する空間と化した自動運転車を活用するメディアは必ず現れる。交通分野の広告市場が活気ならなおさらだ。

現在はスマートフォンと連動したサービスが主流だが、将来的には移動に伴う位置情報と連動したサービスや、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)といった新技術を応用したサービスなどが誕生することが想定される。ウィンドウは内外ともディスプレイとなり、さまざまな映像を流すことが可能になるかもしれない。

大げさに言えば、自動運転車の外観全体をサイネージ化した車両が登場し、動くメディアとして機能し始めるかもしれない。

さまざまな可能性を秘めている自動運転。新たな広告媒体、そしてメディアコンテンツとしても要注目だ。

ソフトウェア:自動運転開発でさらに増す需要、エンジニア争奪戦も

近年、自動車業界におけるソフトウェア需要が高まり続けている。ハイブリッドやEV、通信機能、ADAS(先進運転支援システム)といった先進技術をはじめ、電子制御するシステムの増加に伴う需要だ。

事実、帝国データバンクが2019年3月に発表した最新の「トヨタ自動車グループ」下請企業調査によると、一次下請け・二次下請けともに非製造業部門の「受託開発ソフトウェア」が初めて業種別企業数で最多となっている。

また、NEDOが2017年に発行したレポートによると、組み込みソフトウェアに関係する製品の市場規模は2014年の国内市場規模が796億円、世界市場規模が1兆1,352億円で、2030年には世界市場が1兆9,903億円に達すると予測している。分野別では、車載分野が全体の約40%と最も高く、2014年(世界市場)は4,613億円、2030年予測(同)では8,088億円となっている。

近年の需要増の流れを、自動運転開発がさらに助長するかのようにソフトウェアは右肩上がりを続けていく見込みで、ソフトウェア開発を手掛けるエンジニア需要もますます高まり、各所で争奪戦が繰り広げられることが予想される。

保険:テレマティクス保険が主流に

自動運転技術によって運転主体がドライバーからシステムに変わることで、従来の自動車保険も様変わりを余儀なくされる。

事故時における責任の所在が、従来のドライバーから車両の所有者や自動運転開発メーカーなどに及ぶケースが増加する。ハッキング被害やシステムの故障、所有者の管理状態など、さまざまなケースに応じて責任の所在が変わっていくことになりそうだ。

また、事故そのものの発生件数も低下するものと思われ、料金設定なども大きく変わる可能性がある。

システムの故障やソフトウェアの欠陥、ハッキング被害、所有者の管理状態などさまざまなケースに応じて責任の所在も変わっていくほか、事故そのものの発生件数が低下するものと思われ、料金設定なども大きく変わる可能性がある。

現在、保険業界はテレマティクス保険などの開発・実用化を進めており、コネクテッドサービスと連動したサービスなどが今後主流になっていきそうだ。

【参考】保険業界の動向については「三井住友海上、CASEやMaaSへの対応強化で2つの新部署」も参照。

■自動運転車の市場規模はどうなる?

市場調査サービスを展開する富士キメラ総研が2020年9月に発表した「自動運転・AIカー」の世界市場調査によると、本格的な自動運転車といわれているレベル3以上車両の市場については、2020年代は欧州や北米、中国を中心に普及が進み、2030年代前半には1000万台を超える市場となることが予測されている。

アメリカに拠点を置く市場調査会社「グランドビューリサーチ」が2018年8月に発表したレポートでは、自動運転レベル4~5の無人型自動運転車の市場規模は2030年までに420万台に達すると予想されている。

こうした流れに連動し、コネクテッドカーやMaaS、ライドシェア、LiDARなどのセンサー類、5G、車載ディスプレイなど、さまざまな市場が増加することが見込まれている。裾野が広がり続ける有望市場ということもあり、今後も自動運転と結び付けた新たなサービスなどが市場をにぎわせることになりそうだ。

【参考】関連記事としては「AI自動運転やMaaS、ライドシェアなどの将来市場規模予測10選」も参照。

■【まとめ】自動運転タクシーなどでレベル4実用化進む

海外ではウェイモなどの自動運転タクシーを皮切りに商用部門でレベル4の実用化が進み始めており、今後より洗練されたサービスになっていくものと思われる。日本においては2020年4月にレベル3が解禁され、ホンダが2021年3月にレベル3搭載車の発売で先陣を切った。

冒頭でも触れたが、自動運転技術はすでに夢物語ではないのだ。

(初稿:2018年4月21日/2021年3月11日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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