「無人コンビニ」の開発状況まとめ 自動運転技術で「移動式」も

中国で無人コンビニブーム勃発





出典:Mobymart公式サイト

米アマゾンが運営する「Amazon Go」の登場により、世間の関心が一気に高まった無人コンビニ。客の入出店管理や商品管理、販売管理、決済などをIoT技術で無人化する仕組みで、中国や米国を中心に開発が進んでいる。

また、自動運転技術を活用した移動可能な無人コンビニも実証が進められており、小売業に新たな可能性を開こうと開発が加速しているようだ。







日本国内の取り組み状況を含め、無人コンビニの現状を追ってみた。

■「移動式」無人コンビニ
Robomartプロジェクト:無人移動者をライセンスで提供、試験運用進める

米ラスベガスで開催されたCES 2018に出展し、大きな注目を集めた電気自動車(EV)のRobomart。連続起業家のAli Ahmed氏をはじめ、Tigran Shahverdyan氏、Emad Rahim氏によって2017年に設立されたロボマート社(本社:米カリフォルニア州)が開発を手掛けた、店舗型の自動運転無人車両だ。

同社は、自動運転車をはじめ、オンデマンド配信、小売業務の分野で深い専門知識を持つチームで構成されるスタートアップ。Robomartは、自動運転技術と遠隔操作による無人技術、RFIDとコンピュータビジョンベースのチェックアウトフリーシステム、専用の冷蔵と温度制御を含む最先端技術で設計されており、時速約40キロで130キロの連続走行が可能という。2018年7月にはカリフォルニア州で試験運用を開始することが報じられている。

利用希望者は、配車アプリのようにスマートフォンの専用アプリを用いてRobomartを呼び出すと、最も近い場所にいる車両が無人運転で到着する。利用者はアプリでドアを開け、欲しい商品を取り出せば自動的に買い物は終了する。商品はチェックアウトフリーシステムで確認され、登録した口座から自動引き落としされる仕組みだ。

同社は、Robomartの車両本体と、米Hevo Powerが開発したワイヤレス充電装置、車両管理システム、オンデマンド注文システムを、小売業者らにライセンス契約していくビジネススタイルの確立を進めているようだ。

Mobymart:大型バスサイズの「Moby Alpha」商品化

スウェーデンの企業Wheelysと傘下のHimalafy、及び中国の合肥工業大学が共同で開発を進めている無人コンビニ「Moby Mart」。現在、中国内で精力的に試験運用を進めており、販売にも着手している。

「Moby Alpha」は、無人で自動運転可能な車両タイプで、低速で移動することができる。長さ1050×幅235×高さ259センチの大型バスほどのサイズで、電気で駆動する。利用者が自宅など好きな場所に呼ぶことができるRobomartとは異なり、店舗利用者が好きな場所で販売するために移動するイメージだ。クラウドシステムやセキュリティシステムなども備えている。

価格は25万ドル(約2700万円)で、現在ベータテストを進めている。デモンストレーションなどにも応じているという。

このほか、460×220×259センチのサイズで、車輪で移動が可能な「Moby Psi」(2万5000ドル=約270万円)と、2019年夏ごろの発売を目指し開発を進めている210×210×235センチの小型サイズ「Moby Xi」もラインナップしている。これらは、移動式というよりは移動も可能な無人コンビニシステムで、建物内外の好きなところに気軽に設置できることがメリットだ。

e-Palette:トヨタとセブンが無人コンビニ開発に着手?

日本国内では、トヨタ自動車が開発を進めるe-Palette(イーパレット)に期待が寄せられている。移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービスを目指したMaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)専用次世代EV(電気自動車)のコンセプトカーで、2018年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2018」で初公開された。

より実用性の高い車両仕様の検討や、イーパレットを活用した新たなモビリティサービスを実現するMSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)の構築を推進するため、初期パートナーとして米EC大手のAmazon.com(アマゾン)、中国ライドシェア大手のDidi Chuxing(ディディ)、米ファストフードチェーン大手のPizza Hut(ピザハット)、米Uber(ウーバー)と手を組むほか、技術パートナーとしてディディとマツダ、ウーバーがそれぞれ参加し、サービスの企画段階から実験車両による実証事業に至るまで共同して進めていく予定だ。

また、トヨタは2017年8月にセブン-イレブン・ジャパンと店舗および物流における省エネルギー・CO2排出削減に向けた検討に関する基本合意書を締結し、トヨタが新たに開発する燃料電池小型トラックや燃料電池発電機の活用について検討を重ね、2019年から順次共同プロジェクトを展開していくこととしている。

公式リリースでは触れられていないが、日経新聞が2018年6月に報じたところによると、両社は「自動で移動するコンビニエンスストアへの活用などを検討する」こととしており、イーパレットを活用した無人コンビニの開発を水面下で進めている可能性もありそうだ。

■「建物式」無人コンビニ
Bingo Box(中国):中国無人コンビニブームの火付け役

中国のスタートアップ企業「Zhongshan BingoBox technology Co.(中山市賓哥網絡科技)」が手掛ける無人コンビニで、2016年の初出店以来これまでに数百店舗を立ち上げ、同国における無人コンビニブームを引っ張ってきた存在だ。

QRコードによって入店管理し、RFIDタグで商品を管理し、出口付近に設置された生産用スキャナーを通すことで自動で決済される仕組み。建物はコンテナタイプで、安価で設置しやすいのがメリット。480×260センチの中型、600×260センチの大型などがあるようだ。

一部メディアによると、1年間で5000店舗を出店する計画や、日本企業と提携し北海道などで1000店舗を展開するという話も持ち上がっているようだが、出店手続きの不備や防火対策上の問題など当局から指導されており、運営方法などをいろいろ模索しているようだ。

Well GO(中国):テンセントとも提携、RFID活用した無人コンビニ運営

スーパーマーケットなどを運営する深センの企業「天虹商場有限公司」が展開する無人コンビニ。無人レジなどスーパーマーケット事業で培った経験をもとに、新たにRFIDを活用するなど先進技術を取り入れているようだ。

スーパーマーケット事業ではIT大手のテンセントと手を組み、スマート戦略を推し進めている。

簡24(中国):AIによる画像認識などを導入した無人コンビニ

2017年設立の新興企業「簡(Jian)24」が開発した無人コンビニで、RFIDタグによる商品管理を行わず、AI(人工知能)による画像認証や顔認証、ディープラーニング、ビッグデータを活用したユーザー行動の把握などによって無人化を図っているようだ。

中国ではこのほかにも、5Gスマート物流倉庫や無人宅配などにも力を入れている京東グループなど数十社が無人コンビニで競合しているようだ。「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深圳(深セン)経済特区や上海などを中心に近年無人コンビニがブーム化し、爆発的に増加したという。

現在は沈静化の傾向にあり、撤退や規模縮小も相次いでいるようだが、一部は開発力を強めており、無人コンビニ先進国としての地位をより固めていく可能性もありそうだ。

Amazon Go(アメリカ):知名度ナンバーワンの無人コンビニ

米EC大手のアマゾンが手掛ける知名度ナンバーワンの無人コンビニ。2016年12月に本社内で部分自動化した1号店を試験運用を始めたのを皮切りに、2018年1月にシアトルで一般利用者向けの1号店を正式にオープンさせた。

アマゾンのアカウントを取得後、Amazon Goのスマホアプリをダウンロードし、QRコードによって入店管理を行う。商品管理はAIやカメラなどのセンサーで行っており、商品を手に出入り口のゲートに近づいて再びQRコードをかざすと、決済が自動的に行われる仕組みだ。商品明細は、数分後にスマートフォンに届く。

ローソン(日本):夜間無人営業の実証実験を2019年7月に開始

パナソニックと共同でRFIDを活用した精算システムの開発に取り組むローソン。東京都内の店舗で2018年4~5月に、客自らが商品のバーコードをスマートフォンで読み取り決済を行うセルフ決済サービス「ローソンスマホレジ」の実証実験を行った。

2019年7月には、深夜時間帯の無人営業の実験を行う予定で、店舗入口でアプリ上に表示されるQRコードを読み取って入り口を開錠し、「ローソンスマホレジ」や現金での支払いも可能な「完全セルフレジ」によって決済する仕組み。

当面はトラブル防止などのためバックヤードに店員を常駐させるが、時期を見て完全無人化に移行する予定としている。

ファミリーマートやセブンイレブンもIoT技術活用した新店舗開発へ

ファミリーマートは2019年4月、パナソニックと共同でIoTを活用した次世代型コンビニエンスストアの実現に向けた実証実験店舗を横浜市内に開設した。実店舗運営によって接客業務や従業員オペレーション、バックヤード業務などのノウハウと課題を習得・把握し、これらを「IoT活用」「画像分析」「顔認証決済」「導線改善」「データ収集・活用」に加え、「空間演出」などのさまざまな保有技術とスキルによるソリューションで改善することで、「省力化・ローコスト運営」「店舗の付加価値拡大」「顧客満足度向上」の実現を目指すこととしている。

今回の実験では無人化まで踏み込まず、効率化や省人化などが主な内容となるが、無人コンビニに生かせる技術やノウハウも蓄積されるものと思われる。

セブン-イレブン・ジャパンも同様に日本電気(NEC)と手を組み、2018年12月にNECのグループ会社が入居するビル内で省人型店舗をオープンし、顔認証による決済やロボットによる接客支援システムなどを導入している。

セブンは今のところ、無人化は考えていないという。

■【まとめ】米中が開発をけん引、コンビニ大国日本は追随できるか

中国では過度なブームを要因に熱が下がり気味のようだが、より洗練されたシステムの開発は着々と進んでいる印象だ。日本国内では省力化を主目的とした取り組みが動き始めており、コミュニケーションの必要性などを理由に無人化には慎重な姿勢も見え隠れしており、有人店舗と無人店舗のどちらが将来的に主導権を握るかが今後の注目の的になりそうだ。

また、こういった店舗の無人化技術と自動運転技術を組み合わせた移動式無人コンビニも、将来的な可能性は良い意味で未知数であり、小売全般に応用可能な技術・仕組みのため、ぴたっとあてはまる新サービスの登場などをきっかけに将来爆発的に普及が始まる可能性も十分考えられるだろう。

コンビニ大国の日本も、米中に負けず研究開発にいっそう力を入れてもらいたい分野だ。







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