「無人系」ビジネス13選 ロボットや自動車、警備も? AIや自動運転技術を活用

一次産業の担い手がIT企業に



着々と研究開発が進み、実用化が始まっている自動運転技術。その技術は自動車分野に限らず、時には派生して、時には独立した形で開発が進み、多様性を増している。


今回は、自動運転やロボット技術が導入され、新たに無人化されることが考えられる事業分野を紹介しよう。

■無人自動車

自動運転開発の最終到達地点は、やはり一般ドライバーへの普及だろう。限定領域・限定条件下で自動運転が可能となるレベル3は近々普及が本格化し始める見込みだが、限定領域でドライバー不在の自動運転が可能となるレベル4は、一般ドライバーにはなじまない可能性が高い。

レベル4の開発は商用向けが中心になるものと思われ、その技術を進化・応用させたレベル5の実現によって、高所得世帯を中心に一般ドライバーの手にわたり始めるものと思われる。

その頃の自動運転車の単価はどれほどの水準か、手動運転車と自動運転車が混在する交通環境における世論はどちらになびいているのかなど、注目が尽きないところだが、話を戻すとレベル4、レベル5の2段階に分けて普及が進むものと思われ、それぞれの段階で運転から解放され自由な空間と化した車内を活用した新規サービスが続々と生み出されることはほぼ間違いない。



■無人タクシー

自動運転車の開発において、商業面で注目されるのが自動運転技術を駆使した無人タクシーだ。自動運転レベル4以上の自動運転車の普及当初の顧客・利用者は、価格面や自動運転を取り巻く環境面などから一般ドライバーではなく商用車が主体になることが想定される。

その中で、車両本体を大量に必要とし、かつ利益を生むことができるタクシーは自動運転開発企業や自動車メーカーの注目の的であり、自動運転開発で先頭に立つ米Waymoが2018年末に自動運転タクシーサービスを開始したほか、ライドシェア大手の米Uberや協業するトヨタ自動車、米GM、米Tesla中国百度など、そうそうたる面子が自動運転タクシー(ライドシェア)の開発を進めている。

国内では、ロボットベンチャーのZMPと日の丸交通、及びDeNAと日産などが開発に力を入れている。

【参考】自動運転タクシーについては「【インタビュー】日産×DeNA、自動運転タクシー「Easy Ride」の進化に迫る」も参照。

■無人バス

自動運転技術を活用したバスの無人化も着々と実証が進んでいる。乗用車やタクシーなどと異なり、あらかじめ定まった路線を走行するバスは、限定領域下で無人自動運転を実現するレベル4技術の実用化にぴったりあてはまるモビリティだ。

これまでは5~20人乗り程度の小型バスによる実証実験が中心で、商業施設や空港、過疎地域など限定された区域の中での走行が大半だったが、国土交通省が2019年4月、経済産業省と連携して実施しているラストマイル自動運転の実証実験について、新たに「中型自動運転バス」を用いた公道実証実験事業の実施を発表するなど、国レベルの取り組みでも前進している。

国内では、2019年5月に相鉄バスが群馬大学と協同し、自動運転レベル4の実用化を見据えた大型バスの開発や輸送サービスの構築などに取り組むことを発表しており、営業路線を中心に、大型バスの自動運転による実証実験を2019年秋以降継続的に実施することとしている。

海外では、仏スタートアップNAVYA(ナビヤ)社が開発を手掛ける自動運転小型シャトルバス「NAVYA ARMA」(約15人乗り)が日本を含む世界各地で実用レベルに達しているほか、シンガポールでは、南洋理工大学(NTU)とスウェーデンのボルボ・バスがタッグを組み、80人乗りの大型自動運転EV(電気自動車)バスを開発したことなども報じられている。

■無人鉄道

数ある交通手段の中で、最も無人化を図りやすいのが鉄道だ。神戸のポートライナーや東京のゆりかもめのように高架された専用走行路を走る新交通システムなど、無人鉄道は世界各地で誕生している。

今後、地面を走行する通常の鉄路における自動運転化が進むものとみられる。JR東日本は、2018年12月から自動列車運転装置(ATO)の開発に向けた試験走行を山手線全線で実施しているほか、2019年3月には、次世代新幹線の開発に向けた試験車両「E956形式」(愛称:ALFA-X)を発表し、2022年3月までの3年間にわたり、営業列車が走行しない夜間に試験走行を実施し、自動運転新幹線の早期実用化を図っていく構えだ。

海外では、中国が2019年内にも自動運転新幹線の一部区間運行を開始し、北京冬季五輪が開催される2022年までに各路線に積極的に拡大していく方針のようだ。

また、JR東海が開発を進める、最高時速500キロメートルで走行する超電導リニアも、地上にある指令室で列車をコントロールする高精度・高信頼の自動運転システムを採用している。開業時期は、東京の品川から名古屋間で2027年、大阪市までの全線開業は2037~2045年を予定しており、自動運転技術を活用した超高速鉄道は、開発スピードも超高速のようだ。

■無人トラック

物流の根幹を支えるトラックの自動運転化も着実に進歩している。乗用車に比べサイズや重量があるトラックの制御は難しく、現時点では自動運転レベル2の導入が進み始めた段階だが、複数のトラックが協調し、有人車両と無人車両を組み合わせて高速道路を走行する隊列走行の実証試験が盛んにおこなわれている。

「官民ITS構想・ロードマップ2018」によると、高速道路でのトラックの後続車有人隊列走行を2021年まで、後続車無人隊列走行を2022年以降、そしてレベル4に相当する高速道路でのトラックの完全自動運転の実現目標を2025年以降と定めている。

また、小口配送を担う配送車については、過疎地域での中心地から集落拠点への往復輸送や集落内における個別宅周回配送サービスなど、限定地域の無人自動配送サービスの実現を2020年以降に目指すこととしており、その後、サービス対象や地域を拡大していく方針だ。

■無人トラクター

自動運転技術は、農業分野においても無人化を促進する。現在トラクターを中心に自動運転化が進んでおり、誤差数センチメートルの精度を誇る農作業を実現している。

畑を耕す耕うんをはじめ代かきや定植、収穫、肥料散布などさまざまな作業が求められるため、各作業と協調したシステム作りが課題だが、これまでGPSが中心だった衛星測位システムが準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」の導入により飛躍的に精度を増すなど、強調材料は多い。

物流同様人手不足が深刻化している農業のスマート化・無人化は、増加傾向にある法人経営にもプラスとなる。法律面の改正が必要になりそうだが、今後新規参入が大幅に増加する可能性も高く、日本の農業が今後どのように変わっていくのか注目が集まる。

■無人漁業

農業同様、漁業も例外ではない。自動運航船は、国内ではパイオニアと東京海洋大学が共同で船舶の自動運転化の研究開発に着手したほか、ヤンマーも2019年1月に自動航行が可能な「ロボティックボート」の基礎技術などの開発を発表している。海外では、英高級車メーカーのロールス・ロイスと米インテルが自動運転船の実用化に取り組むなど、各社が自動運航船の開発に力を入れている。

現時点ではあくまで運搬を主としたものだが、技術開発が進めば、魚群探知や海流情報などを自動で解析し、自動で漁を行うシステム開発なども進む可能性は十分考えられる。一次産業の担い手がロボットとなり、名だたるIT系企業の事業内容に「農業」や「漁業」という項目が並ぶ日が将来訪れるかもしれない。

【参考】パイオニアの取り組みについては「パイオニアと東京海洋大学、3D-LiDAR活用して自動運転船を実現へ」も参照。ヤンマーの取り組みについては「ヤンマー、自動運転で航行可能な「ロボティックボート」の基礎技術開発」も参照。ロールス・ロイスの取り組みについては「ロールス・ロイス、自動運転船をインテルとともに2025年実用化へ」も参照。

■無人倉庫

物流と連動する倉庫業にも、無人化の波が押し寄せている。AIやセンサーを搭載した倉庫内自動運転車が荷物を自動で選別して運搬するシステムの開発が進められており、従来ヒトが担っていた重労働をロボットが代替する場面が増えつつあるようだ。

中国ECサイト大手の京東集団は2019年3月までに、物流子会社の京東物流が中国初の「5Gスマート物流モデルセンター」を上海に建設し、年内にも運用を開始することを発表している。

同社は入庫や検品、梱包、出庫などの全行程をスマート化した「無人倉庫」を2017年に立ち上げているが、さらに5G技術を活用して倉庫内のデジタル化を図っていく構えだ。

■無人台車

ラストワンマイルを担う超小型の配送ロボットや自動で動く台車なども実用化レベルに達している。人が搭乗できない小型の配送ロボットは、地域拠点からの宅配やビル・商業施設内などにおける比較的短距離の配送業務への活用が期待されており、海外では米スターシップ・テクノロジーズが英ミルトン・キーンズで2018年4月からサービスを開始しているほか、国内でも自動運転ベンチャーのZMPが手掛ける宅配ロボット「CarriRo Deli」などが実用域に達しているようだ。

同様に、台車タイプのロボット化も進んでいる。国内では、ZMPのほかパナソニックなども製品化しており、同社は最大搬送質量800キロを誇る自動運転搬送ロボット「STR-100」を発売した。

この手のタイプは、重たい荷物を運ばなければならない買い物支援にロボットにも応用できる。高齢者などが店舗で買い物をした後、顧客とペアリングしたロボットが荷物を搭載し、店や路上で顧客の後をついてくるサービスなども実用化されている。

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

■無人ごみ収集車

自動運転の実現により、家庭ごみを収集する車両の無人化や、街路にたまった枯れ葉や砂などを清掃する車両、散水車両なども、将来無人で市街地を走行する可能性もある。

地域の各所に設けられたごみ集積所をルート巡回し、分別されたごみをロボット技術により的確に回収するごみ収集車や、路側帯などに集積した枯れ葉や砂を検知し、適時清掃や散水をおこなう車両なども、将来実現可能な技術と思われる。

■無人土木建設工事

土木や建設、鉱業などの分野でも、自動運転技術は生かされる。建機大手の小松製作所は鉱山向け無人ダンプトラック運行システムを専門に扱う組織「AHS Center of Excellence」を米アリゾナ州で2019年4月に設立したほか、2018年10月には、ZMPと共同で不整地運搬車「クローラダンプCF-1」の無人自動運転化を実現したと発表している。

専門性が高く応用力が求められる作業やトラック同様重量のある運搬を担うダンプなど、ハードルは決して低くないが、AIをはじめ各種技術の進展により将来的には乗り越えられる壁になるものと思われる。

【参考】小松製作所の取り組みについては「コマツ、米アリゾナ州で自動運転ダンプシステムの専門組織新設」も参照。

■無人警備業

警備業も無人化が進むことが考えられる。現在、高度なセンサーを持つ監視カメラや自動運転する監視ロボットによりビル内警備を無人化する動きが広がりつつあるが、工事現場や建設現場などにおける警備員や駐車場の誘導員なども、将来自動運転ロボットが代替する可能性がある。

■無人コンビニ

自動運転車を活用した移動タイプの販売業や新サービスが次々と誕生することが想定される。物流の自動化もあいまって、無人コンビニが各地を移動するのをはじめ、移動サービス付きホテルが誕生すれば、観光客や出張サラリーマンの支持を集めるかもしれない。

無人ショップは、米アマゾンがすでに店員(レジ係)のいないコンビニエンスストア「amazon go(アマゾン・ゴー)」を開店しているほか、トヨタ自動車が開発を進めるMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)向けのコンセプトモデル「e-Palette(イー・パレット)」は、活用方法の一つとして移動式のコンビニエンスストアなどを想定している。

■【まとめ】社会変化を伴う自動運転社会の到来は、新規ビジネス創出の大チャンス

自動運転をはじめとしたさまざまな技術と新たな発想が結びつくことにより、想像を超えた新ビジネスが続々と誕生する。それは遠い将来の出来事ではなく、数年後、いやすでに始まっている動きと言えるだろう。

自動運転による無人化技術により、これまで人が担っていたさまざまな職種が消滅するものと考えられる。極論を言えば、将来無人の工場で自動運転車両が生産され、無人で配送・販売される時代が訪れるかもしれない。しかし、こういった社会変化は、過去に自転車や自動車の普及によって馬車や人力車がなくなったり、工場の機械化によって労働力が大きく軽減されたのと同様、そこに新たなビジネスが生まれ、新たな雇用が創出されることになる。

大きな社会変化を伴う自動運転社会は、もうすぐそこまで来ているのだ。


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