「無人電車」が実現済みの路線まとめ 自動運転技術、早期から導入

国内初の無人運転はポートライナー





数ある交通手段の中でも基幹的な存在である鉄道。普段あまり意識していない人が多いかもしれないが、鉄道分野では自動運転がすでに実現している。







自動車における自動運転と比較すると環境面でも技術面でも異なる要素が多いが、いち早く自動運転社会を構築することが可能な交通事業は、紛れもなく鉄道だろう。

現在、国内をはじめ世界でどのような形式の無人運転鉄道が実用化されているのか。国内8路線、海外4路線を紹介し、将来を見通してみよう。

※各写真は各路線のイメージです。登場する車両が無人運転をしていないケースも考えられますので、あらかじめご了承下さい。

■神戸新交通:ポートアイランド線(ポートライナー)・六甲アイランド線(六甲ライナー)

ポートアイランド線は、国内で初めて無人運転を実現した新交通システム路線で、神戸新交通株式会社が運営している。神戸港沖に建設された人工島「ポートアイランド」と神戸市の中心地を結ぶ交通機関として1981年2月に開業し、2006年には神戸空港開港に伴い延伸・複線化された。複線部8.3キロメートル、単線ループ部2.5キロメートルの計10.8キロメートルの区間で12駅を結んでいる。

一方の六甲アイランド線も、神戸港沖に建設された人工島「六甲アイランド」と住吉駅を結ぶ軌道系交通機関として建設され、1990年2月に開業した。複線化された4.5キロメートルの区間で6駅を結んでいる。

両路線とも、専用の走行路において案内軌条に案内輪をあててゴムタイヤで走行する案内軌条式の新交通システムで、自動列車制御装置(ATC)にバックアップされた自動列車運転装置(ATO)によって無人運転を実現している。なお、開業当初は万が一に備えて乗務員が添乗し、監視を行っていたという。

この無人運転を支える総合管理システムは、運行管理・電力管理・駅務管理・防災監視の各設備から構成されており、各路線の司令所で一元的に管理している。また、運行の安全を確保するための信号保安設備(自動列車制御装置など)、保安通信設備(列車無線など)や、各駅のホームドア設備、乗客の安全を確保するための駅保安設備(非常停止ボタン、インターホンなど)、列車・駅設備などへの電力を供給する電気設備など数多くの設備を備えている。

■大阪市高速電気軌道:南港ポートタウン線(ニュートラム)

大阪市住之江区のコスモスクエアから中ふ頭・フェリーターミナルなどを経て、大阪市住之江区の住之江公園までの7.9キロメートル、10駅を結ぶ路線で、ポートアイランド線開業直後の1981年3月に開業した。大阪市交通局が運営していた地下鉄事業を継承するために設立された大阪市高速電気軌道が運営を行っている。

正式名称は中量軌道南港ポートタウン線で、愛称のニュートラムは一般公募で決定した。ゴムタイヤで専用の走行路を走る新交通システムで、ポートライナー同様ATC・ATOによる無人自動運転を実現しているが、開業当初は無人運転の前例がなく、無人運転システムへの理解・信頼を得られるまで乗務員の添乗・監視のもと運行しており、1991年10月から無人運転を開始している。

■ゆりかもめ:東京臨海新交通臨海線

株式会社ゆりかもめ(旧東京臨海新交通株式会社)が運営する、東京都港区の新橋駅から江東区の豊洲駅まで16駅、14.7キロ区間を走行する新交通システム路線。1995年に11月に一部区間(新橋~有明間)で開業し、2006年に豊洲まで延伸された。

専用の走行路において、案内軌条に案内輪をあててゴムタイヤで走行する案内軌条式の新交通システムで、コンピュータ制御のもと、低圧の電気を動力にゴムタイヤを駆動して走行する。運転士はもちろん車掌も乗車していない。

同社は無人運転による新交通システムの利点として、コンピュータ制御により短時間間隔の定時運行ができることや、臨時列車の増発・終夜運転などが容易にでき、利用状況に応じた運行サービスを提供できることなどを挙げている。

■横浜シーサイドライン:金沢シーサイドライン

神奈川県横浜市磯子区の新杉田駅と同市金沢区の金沢八景駅を結ぶ路線で、株式会社横浜シーサイドラインが運営している。1989年7月に開業し、現在10.8キロメートルの区間で14駅を結んでいる。

専用の走行路において、案内軌条に案内輪をあててゴムタイヤで走行する案内軌条式の新交通システムで、ATC、ATOにより無人運転を実現している。ATO装置には、地上設備との信号を送受信する駅ATO装置と車両に搭載され列車を自動運転する車上ATO装置があり、走行中の路線のデータをすべて記憶し、この記憶データやATC信号、車両の状況によって目標速度を定め走行する。

駅に停止する際は、走行装置から実際の走行距離データを検出し、次の駅までの距離を走行後自動で停止するように制御されている。

■東京都交通局:日暮里・舎人ライナー

東京都荒川区の日暮里駅と足立区の見沼代親水公園駅を結ぶ案内軌条式鉄道路線で、東京都交通局が運営している。2008年に開業した新しい路線で、9.7kmの区間で13駅を結んでいる。

他と同様ATC、ATOによる無人運転システムを採用している。

■舞浜リゾートライン:ディズニーリゾートライン
出典:Disneyプレスリリース

舞浜リゾートラインが運営する跨座式モノレール路線で、東日本旅客鉄道(JR東日本)京葉線舞浜駅と千葉県浦安市の東京ディズニーリゾート内の各施設を連絡して入園客を輸送することを目的に2001年7月に開業した。

1周約5.0キロメートルの単線環状路線で、東京ディズニーランド・ステーションや東京ディズニーシー・ステーションなど4駅を結んでいる。

ATC、ATOによる無人運転システムにより運転士は乗車していないが、列車の最後部にガイドキャストが乗務しており、乗客の案内やドアの開閉、車内のモニター、異常時における乗客の避難誘導など柔軟に対応出来るように訓練しているという。

■愛知高速交通:東部丘陵線(リニモ)

愛知県名古屋市名東区の藤が丘駅から愛知県豊田市の八草駅までを結ぶ日本初の磁気浮上式鉄道、いわゆるリニアモーターカーによる路線で、愛知高速交通が運営している。

愛知万博(愛・地球博)への会場アクセスを目的に2005年3月に開業し、8.9キロメートルの区間で9駅を結んでいる。

案内軌条式の新交通システムが概ね最高時速60~70キロメートルであるのに対し、リニモは同100キロメートルを実現している。

車体に取り付けられた電磁石に電流が流れると、レールに向かって吸引力が生まれ、車体が浮く。これを、普通の回転モーターを平たくのばしたリニアモーターによって直進させる仕組みだ。浮上して走行するためレールとの接触が無く、騒音や振動が小さく乗り心地が快適で、降雨などの影響も受けにくい。また、摩耗部分が無く、車両やレールなどの保守費用も低減できるという。

■スカイレールサービス:広島短距離交通瀬野線
出典:Taisyo (CC BY 3.0)

広島県広島市安芸区瀬野町に建設された住宅団地「スカイレールタウンみどり坂」への交通手段として開通した短距離交通システムで、スカイレールサービスが運営している。高低差160メートルもの急こう配において、1.3キロメートルの区間で3駅を結んでいる。

ゴンドラ風の車体でぱっと見はロープウェーのような外観だが、モノレールの一種に分類されており、懸垂式のモノレール車両を駅間ではワイヤロープで、駅構内ではリニアモーターで駆動して運転する方式を採用している。

■アラブ首長国連邦:ドバイメトロ

ドバイ空港と沿岸の開発地域を結ぶレッドライン52.1キロメートルと、クリーク周辺の旧市街地を走るグリーンライン22.5キロメートルの2路線からなる総延長74.6キロメートルの都市交通システムで、無人運転メトロとして世界最長を誇る。建設は、三菱商事、三菱重工業、大林組、鹿島建設ら日本勢とトルコのYapi Merkezi社の計5企業によるジョイントベンチャーが受注し、2009年9月に開業した。

なお、ドバイではモノレールも無人運転を実現しているようだ。

■フランス:VAL
出典:Wikimedia Commons

仏マトラ社が開発した自動案内軌条式旅客輸送システム「VAL」も有名だ。同国の都市リールで1983年4月に一部開業し、翌年1号線13.5キロメートルが完成。18駅を結んでいる。

1989年には2号線が一部区間で開業し、現在では31.7キロメートルの区間で44駅を結んでいる。日本のシステムと異なり、地下鉄や高架鉄道走行を考慮した設計となっており、路線の大半は地下に位置する。

同国内において5カ所で採用されているほか、米シカゴやイタリアのトリノ、台湾の台北、韓国の議政府軽電鉄にもVALが導入されているようだ。

■シンガポール:MRT環状線
出典:Wikimedia Commons

2000年代を中心に開発が加速しているシンガポールの地下鉄「MRT環状線」は、司令室からの制御による無人走行により2009年に一部区間で開業後、計画変更など紆余曲折があったようだが2018年までに35.7キロメートルに延伸し、運行している。

■香港:MTR迪士尼線
出典:Wikimedia Commons

香港最大の鉄道路線システムMTRでも、香港ディズニーランドに向かう路線「迪士尼線」で無人運転が実用化されており、2005年の開業後、イギリス製の車両を改造したATO運転が行われている。

■その他

マレーシアの首都クアラルンプールを走るラピドKLクラナ・ジャヤ線や、韓国の美南駅 – 安平駅をつなぐ4号線、米カリフォルニア州でサンフランシスコ郡、アラメダ郡、コントラコスタ郡、サンマテオ郡の4郡をつなぐBART(バート)など、世界各地で無人による鉄道の運行が行われている。

タイムリーなところでは、オーストラリアのシドニーでも2019年5月に初めての無人鉄道となる北西線が開業する見通しだ。

■【まとめ】国内でも一般路線や新幹線の無人化開発進む

中国でも地下鉄などの無人化が進んでいるが、時速300キロメートル超で走行する高速鉄道、いわゆる新幹線でも無人走行実験が始まっており、2018年には、訪中したロシアのプーチン大統領が乗車したことで大きな話題となった。2019年内にも一部区間で運行を開始し、北京冬季五輪が開催される2022年までに各路線に積極的に拡大していく方針のようだ。

日本も負けてはいない。JR東日本は2018年12月から自動列車運転装置(ATO)の開発に向けた試験走行を山手線全線で実施しているほか、2019年3月には、次世代新幹線の開発に向けた試験車両「E956形式」(愛称:ALFA-X)に関する報道発表を行った。2022年3月までの3年弱にわたり、営業列車が走行しない夜間に試験走行を実施し、早期実用化を図っていく構えだ。

鉄道における自動化は、原則歩行者や乗用車などが侵入しない絶対的な限定領域を走行する新交通システムにより1980年代から徐々に普及が始まったが、自動車の自動運転技術をはじめとしたAIの進化などにより、近年熱が高まっているように感じる。

限定領域で走行路線もはっきりしている鉄道は、自動車に比べ自動運転を実用化しやすい環境にあることは間違いなく、今後、急速に無人化の波が押し寄せる可能性も考えられそうだ。

【参考】山手線における試験走行については「山手線、自動運転の試験走行実施へ 年末年始の時期、終電後に」も参照。次世代新幹線の開発については「次世代新幹線の実現へ、試験車両「ALFA-X」が5月デビュー 自動運転実現への基礎研究も」も参照。







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