Appleの”極秘”自動運転プロジェクト、判明情報を一挙まとめ

アップルカー組み立てはどのメーカーが担う!?



IT・テクノロジー企業として世界屈指の知名度を誇る米Apple(アップル)。これまでに自動運転開発に着手していることが明らかになっており、その動向に注目が集まっている。







しかし、その知名度と期待度に反して具体的な取り組みはほぼ明かされていない。数ある報道も、大半が「関係者によると…」といった具合で公式発表に準じたものではない。いまだ多くがベールに包まれているのだ。

この記事では、自動運転分野におけるこれまでのアップル関連の報道をもとに、同社の取り組みをまとめてみた。

■Project Titanの始動

アップルの自動運転開発プロジェクトは「Titan(タイタン)」と呼ばれている。いわゆる開発コード名だが、このタイタン自体公式発表されておらず、米紙ウォールストリートジャーナルなどが報じたことで一気に広まったものと思われる。プロジェクトは2014年ごろ立ち上がり、当初はEV(電気自動車)・スマートカー開発プロジェクトなどとして報道されていた。

眉唾ものの情報だったが、自動車業界から優秀なエンジニアらが次々とヘッドハンティングされている実態が明らかになり、自動車業界への参入が現実味を帯びてくることになる。

2015年には、米カリフォルニア州車両管理局(DMV)と自動運転車の公道実証に係る協議が行われたことが報じられ、後に同州から走行許可が与えられたパーミットホルダーの中にアップルの名が並ぶことで、同社の自動運転開発は確実視されるようになった。

■極秘裏のプロジェクト、水面下で進行

順調に進むかのように思われたプロジェクトだが、その後エンジニアの大量離脱などが発覚し、「アップルは自動車開発を諦めた」「自動車そのものではなくスマートシステムや自動運転開発に焦点をあてている」など、さまざまな憶測が流れた。

2016年秋ごろに米メディアのブルームバーグが報じたところによると、1,000人規模の開発チームのうち、数百人が他のプロジェクトへの異動や退社、または解雇処分となった模様だ。

プロジェクトの行く末が懸念されたが、同年11月には、自動運転車に求められる保安基準などについて米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が発表したガイドラインに対し、アップルが寄せた意見書が正式に公開されている。

意見書は当時の製品管理部門の責任者名で提出されており、前置きとしてアップルがAIを使用してスマート化や自動化などの研究に取り組んでいることに触れつつ、自動運転車が道路交通の安全性向上に大きく貢献するとして、業界におけるデータの共有などイノベーションを加速する取り組みに関して提言する中身となっている。

同社が自動運転開発に意欲的であることを証明するような内容であり、プロジェクトからの撤退は否定される格好となった。

翌2017年には、米政府が設置した自動運転に関する有識者会議のメンバーに同社のリサ・ジャクソン副社長が名を連ねたことも明らかになっている。

また、ティム・クックCEO(最高経営責任者)がブルームバーグの取材に対し、自動運転開発に取り組んでいることを認め、非常に難易度の高いAI開発プロジェクトである旨を明かした。詳細には触れず、開発の方向性についても「そのうち分かるだろう」とはぐらかしているものの、初めてトップが正式に認める格好となった。

■アップルの公道実証

2017年には、DMVから自動運転車の公道走行実証の許可を取得したことが報じられた。DMVも認め、3台のレクサスRX540hと、6人のドライバーが認可されたことを発表している。同年4月には、ブルームバーグが公道を走行するアップルの試験車両の映像を捉えている。

その後公道実証を加速している様子で、DMVが公表しているデータによると、2018年1月に27台、同年5月に55台、同年7月に66台、同年9月に70台と登録台数を増やし、ドライバーの数も139人の規模に達している。

この数は、DMVのパーミットホルダーのうち、ゼネラルモーターズ(GM)系Cruise(クルーズ)の175台、Waymo(ウェイモ)の88台に次ぐ3位の数字で、自動運転に対するアップルの熱量を物語るものとなっている。

実証走行距離も、2017年の838マイル(約1,350キロ)から2018年は7万9,745マイル(12万8,400キロ)まで95.1倍に増加しているようだ。

なお、2018年8月には同社の自動運転車が初めて事故を起こしたことも報じられている。自動運転モードで大通りに合流するため徐行(時速1.6キロ未満)していたところ、後方車両に追突されたようだ。

■紆余曲折の開発体制

2018年5月には、米ニューヨークタイムズがアップルとフォルクスワーゲンの提携を報じた。従業員を送迎する自動運転シャトルの開発に乗り出す内容だ。

自動運転開発は着々と進んでいるかのように思われたが、続報は今のところない。また、2019年に入ると、地元紙「サンフランシスコ・クロニクル」がタイタンに携わる従業員190人を解雇する予定であることを報じた。

自動運転プロジェクトの縮小が懸念されたが、同年6月には自動運転開発を手掛ける米スタートアップのDrive.aiを買収することが複数のメディアによって明かされるなど、開発をめぐる状況は一転二転する事態となっている。

また、DMVが公表した2018年12月から2019年11月間における自動運転実証の走行実績は、前年の7万9,745マイルから7,544マイルと大幅に減少しており、事実として開発体制が紆余曲折していることを物語っている。

【参考】Drive.aiの買収については「資金難に陥ったDrive.ai、資金難でアップルに身売り 自動運転スタートアップ」も参照。アップルの走行実績については「【Excel】アップルの自動運転実証実績、79,754→7,544マイルに」も参照。

■アップルカーついに発売へ?

2020年後半に入ると、アップルの自動運転車に関する具体的な報道が続発し、アップルの自動車業界参入が一気に現実味を帯び始めた。

ロイター通信は、関係者筋の話として、アップルが2024年にも自動運転車の生産を開始すると報じた。独自のバッテリーシステムの搭載などを予定しているようだ。

一方、台湾メディアの経済日報は、主要サプライチェーンの関係筋の話として、アップルがEV「Apple Car」を2021年9月にも発売すると報じた。Apple Carに搭載するチップの製造工場の建設が米国で予定されていると報じるメディアもある。

半導体分野を中心にアップルと取引のある台湾企業は多く、情報筋が気になるところだ。

【参考】アップルをめぐる報道については「Apple、2021年にEV発売?2024年に自動運転車製造?関係筋から情報次々」も参照。

2021年に入ると報道合戦はいっそう過熱し、ロイター通信が韓国メディア「Korean IT News」のニュースをもとに、アップルと韓国自動車メーカーのヒュンダイがパートナーシップを3月までに締結予定で、2024年ごろに米国内で生産を開始すると報じた。ブルームバーグも同様の内容を報じている。

報道を受けヒュンダイも公式声明文を発表し、当初は「アップルを含むさまざまな企業から自動運転車開発に向けた協力要請を受けている」としていたが、すぐに文面から「アップル」のくだりを訂正・削除した。

一連の流れから憶測すると、ヒュンダイとアップル間で協議が持たれたのは事実だが、アップルサイドがあくまで秘密裏に進める意向を示したのではないかと思われる。話し合いが存在しなければ、ヒュンダイがアップルに言及する必要はないからだ。

アップルのパートナーがヒュンダイとなるかは未定だが、いずれにしろ水面下で自動車メーカーと協議を進めている可能性は高そうだ。

ウェイモがFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)などとパートナーシップを結ぶのと同様、車体の生産能力を持たないアップルも自動車メーカーと提携する必要が生じる。今後は、パートナーに選ばれるメーカーはどこになるのか、どういったシステムを実装するのか、生産時期はいつごろか……といったことが焦点となり、再度報道合戦が繰り広げられることになりそうだ。

■アップルが保有する特許

アップルは自動運転関連をはじめ自動車に関する多くの特許を取得している。

2018年には、自動車同士を物理的にケーブルなどで接続して電力を融通し合う「PELOTON」や、自動運転車が次に何をするかといった挙動を周囲のドライバーや歩行者にカウントダウン付きで知らせる「Countdown Indicator」、サンルーフの新デザイン「Movable panels with nonlinear tracks」、座席を通じて情報伝達する「Haptic feedback for dynamic seating system」などの技術が米特許商標庁(USPTO)に登録された。このほか、iPhoneやApple Watchでドアの解錠やエンジン始動を行うバーチャルキー技術なども申請したようだ。

2019年には、エアバッグやバンパーシステム、スマートシートベルトなどの特許を取得。2020年には、ウィンドウシステムや音声・ジェスチャーに関するガイダンスシステム、ドア周辺の状況を把握するシステム、AR(拡張現実)技術を活用したシステム、そして「ANS」と呼ばれる自動運転システムについてそれぞれ取得している。

近年明らかに自動車関連の特許取得が増加している印象で、ソフトウェア関連のものからハードウェアの構造に関わるものまで非常に多彩だ。

今後、iPhoneやiPadなどの開発領域を応用した技術の展開にも期待が持たれる。例えばカメラやAR技術だ。さまざまな物体を認識・解析するカメラ技術や、視野の死角などをAR技術で補填する技術など、自動運転やADAS(先進運転支援システム)に直結する技術をアップルは有している。

こうした技術をさらに発展させ、新たな特許を取得する可能性は高いものと思われる。

【参考】アップルの特許については「米アップル、自動運転での隊列走行で電力共有できる技術で特許取得」も参照。

■自動運転分野に応用可能なアップルの技術

iPhone向けの地図サービスは当初Googleマップが使用されていたが、2012年に位置情報サービスを手掛けるオランダ企業TomTom(トムトム)のデータに乗り換え、自社製マップサービスをリリースした。

当初はデータ上不具合が多く、ティム・クックCEOが公式に謝罪する事態に陥ったが、改善に向け2015年ごろからApple Mapsデータ収集車両を世界中で走行させ、大幅な改善や公共交通機関データとの連携など機能向上を図っている。

一部のアナリストは、このデータ収集車両についてマップサービスに特化したものではなく、自動運転開発を見越したものではないかと推測しているようだ。

アップルにどこまでの意図があるかは定かではないが、こうしたマップデータ収集システムや体制は自動運転における高精度3次元地図の作成にも応用可能な技術であることは間違いない。

将来、自動運転地図の領域でも新たなサービスを展開するのか、注目が集まるところだ。

■LiDAR調達に向け、既に複数の開発企業と協議入り?

2020年3月、iPad ProにLiDARを搭載するなど新たな取り組みを展開しているアップル。2019年4月にロイター通信が関係者筋の話として、アップルがLiDAR供給を巡り少なくとも4社と協議している旨を報じていたが、これが自動運転向けなのかモバイル向けなのかは定かではなくなった。

Appleが自動運転車向けのLiDARを自社開発しているという報道も一部ではあったが、最近では2021年2月に、AppleがApple Car向けにLiDAR開発企業とすでに協議入りしていることが報じられた。

注目はどの企業の製品を採用するかだが、LiDAR業界ではここ数年で多くのLiDAR企業が業界で注目されるようになっており、現時点でどの企業が有力かを予想するのは簡単ではない。

候補として挙げるとすれば、すでに株式上場を果たしているLuminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)やVelodyne Lidar(ベロダインライダー)、今後上場予定のAeva(エヴァ)やAEye(エーアイ)などがある。

■【まとめ】報道合戦はまだ続く?情報解禁時期にも注目

自動運転開発への参入は認めているものの、ほぼ全ての情報をいまだ解禁せず秘密裏に進めているアップル。これが情報戦略によるものなのか、あるいは紆余曲折を経ていることに起因するのかは判然としないが、想像が膨らみ期待感が増していることだけは確かだ。

自動運転システムをはじめ、自動車の構造や機能をスマート化させるさまざまな新技術がアップルカーに導入される可能性が高く、既存の自動車業界に大きな影響を与えることも考えられる。

報道合戦はいましばらく続きそうな勢いだが、アップルが正式に情報を解禁する日はいつになるのか。関係者筋ではなく、ティム・クックCEOの口から聞ける日を心待ちにしたい。

(初稿公開日:2021年1月13日/最終更新日:2021年2月25日)

【参考】関連記事としては「自動運転、Uberは後退、Appleは前進?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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