無人タクシー・ロボットタクシーの誕生はいつ? 自動運転技術を搭載

日本と世界の15社・チームをピックアップ



出典:ウーバープレスリリース

自動運転技術により無人で客を運ぶロボットタクシー・自動運転タクシーの実用化が世界に波及しつつある。米Waymoを皮切りに、2019年中にもサービスを開始する予定の企業が続々登場している。

自動運転タクシーの実現時期にスポットを当て、開発各企業の動向を追ってみよう。


(※本記事で紹介している企業様以外で、ロボットタクシーや自動運転タクシーの開発やサービス提供に取り組まれている企業様がいらっしゃいましたら、編集部までご連絡下さい)

■Waymo:2018年

Google系の米Waymo(ウェイモ)は2018年12月5日、米アリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を開始したことを発表している。商用サービスとしては世界初だ。

運転席に人が座らずに完全無人での走行が可能な自動運転レベル4(高度運転自動化)以上の技術を搭載しているが、当面は安全のために運転席には人が同乗しながらのサービス提供となる。

その後も、車両を改造して自動運転車を作り上げる「工場」の建設計画や独自開発を進めるLiDARセンサーの他社への提供など戦略は続いており、自動運転タクシーの製造を本格化させサービスを他地域に拡大していくとともに、自動運転関連技術そのものの商品化を進めている印象だ。


【参考】ウェイモの自動運転タクシーについては「グーグル系ウェイモの自動運転タクシー、米アリゾナ州で商用サービス開始」も参照。


■Navya(2018年 ※発売ベース)

自動運転EVバスを実用化済みの仏ナビヤは、完全自動運転タクシー「AUTONOM CAB(オートノムキャブ)」の開発も進めており、2018年に製品化・発売したようだ。

ハンドルやブレーキなどのない6人乗りの車両で、ライダーやカメラ、レーダーなどで周囲を監視するほか、非常停止ボタンや緊急時のハンドブレーキなども備えている。

同社自身ではタクシー事業を手掛けていないようだが、同社のEVバス「NAVYA ARMA」のように世界各地の企業が実証や実用化に向け活用する場面が増えそうだ。

【参考】NAVYAの自動運転車両については「SBドライブ、仏ナビヤ製自動運転バスの実証実験開始 兵庫の研究所敷地で」も参照。

■GM(2019年)

米自動車メーカー大手のゼネラル・モーターズ、及び傘下のCruise Automation(クルーズ・オートメーション)は、2019年にも自動運転タクシー事業に着手し、先行するウェイモを追いかける計画だ。

2019年に入ってから自動運転タクシーに関する続報は出されていない様子だが、2018年10月にホンダと自動運転技術を活用したモビリティの変革に向け協業を行うことを発表しており、無人ライドシェアサービス事業のグローバル展開の可能性も視野に入れている。

同社は2016年初頭に米ライドシェア事業者のSidecar(サイドカー)を買収してカーシェアリングサービス「Maven」を開始したほか、ドイツでもOpelが展開するカーシェアリング「CarUnity」を活用したサービスを展開している。また、ライドシェア大手の米Lyft(リフト)とも提携を結んでおり、MaaS(Mobility as a Service)分野への本格参入は時間の問題と思われる。

自動運転タクシーの実現時期は当初予定より前後する可能性はあるかもしれないが、ウェイモとの新たな競争に大きな注目が集まりそうだ。

百度(2019年後半)

中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)も、自動運転タクシーの運用開始を目指しているようだ。中国メディアが報じており、時期については「2019年下半期」と伝えられている。

現地報道によると、百度はまず100台規模で自動運転タクシーの商用化を実現する見通し。展開地域は湖南省長沙市で、市も自動運転タクシーの事業化を支援するものとみられる。

百度はこのほか、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーとも自動運転タクシーの製造開発を視野に入れた取り組みを行っている。ボルボ・カーが自動車の製造技術を、百度がアポロ計画で得た成果などを提供する形で実現を目指す方針のようだ。

【参考】百度の自動運転タクシーについては「ウェイモに続く自動運転タクシーの商用化、「百度」が浮上」も参照。百度の戦略については「中国・百度(baidu)の自動運転戦略まとめ アポロ計画を推進」も参照。

■Yandex(2019年~)

自動運転分野では影が薄いロシアだが、近年知名度が急上昇している企業が存在する。ネット検索大手でアプリ開発などを手掛けるヤンデックスだ。

2016年に自動車市場に進出し、AI(人工知能)を活用したシステム作りなどに着手。翌年には米Uberと合弁を立ち上げ、配車事業なども本格的にスタートした。自動運転技術の開発も精力的に進めており、2018年には、カザンの経済特区イノポリスで、自動運転タクシーの実証を開始している。

タクシー車両の自動化を2019年から進め、将来的にすべての車両を自動運転にする計画が一部メディアで報じられており、自動運転タクシー分野のダークホースとして注目が集まっている。

【参考】ヤンデックスの取り組みについては「露ヤンデックス、韓国・現代モービスへ自動運転技術を提供」も参照。

■ダイムラー×ボッシュ×エヌビディア(2019年)

独自動車大手のダイムラーは、独自動車部品大手のボッシュ、米半導体大手エヌビディアと手を組み、2019年にも米シリコンバレーで無人の配車サービスを試験的に開始する方針だ。

ドライバーの操作が不要な自動運転レベル4相当の完全自動運転車を2020年代初めまでに市場導入することも目指しているほか、CASE戦略の一つとしてシェアリング事業にも力を入れている同社。2019年に大きな動きを見せそうだ。

【参考】ダイムラーの戦略については「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

■日の丸交通×ZMP(2020年)

2018年8月から9月にかけ、東京都内で自動運転タクシーの営業実証実験を実施した日の丸交通とZMP。車両は自動運転レベル3相当で、ドライバーが運転席に、技術担当オペレータが助手席にそれぞれ乗車する形式となったが、車線変更や右左折、停止などの操作はシステムが自動で行った。

スマートフォンを用いた予約、乗車、決済という体験を通し、ユーザーに自動運転タクシーの商用サービスの現実的な利用イメージを広く持ってもらうことを目的としており、両社は2020年の実用化を目指すこととしている。

■テスラ(2020年半ば)

米電気自動車(EV)大手のテスラも、自動運転タクシー事業への参入計画が2019年4月に発表されている。本社で開催した技術説明会で、最高経営者(CEO)のイーロン・マスク氏がその計画に触れており、顧客がリースしたテスラ車両を活用して自動運転タクシー事業を始めるようだ。

2020年中に100万台以上稼働させる計画で、実現すればウェイモをはるかに凌ぐ規模になる可能性がある。100万台という数字はさすがに未知数だが、同社は着々と車両の生産体制を構築しており、事業着手に向けさらに大きな話題を振りまくことも十分考えられそうだ。

【参考】テスラの自動運転タクシーについては「米テスラ、2020年に100万台規模で自動運転タクシー事業」も参照。

日産×DeNA(2020年代早期)

自動運転車両を使った交通サービスの確立に向け、日産自動車とディー・エヌ・エー(DeNA)がタッグを組んで技術開発とサービス開発に取り組んでいる「Easy Ride(イージーライド)」は、2020年代早期の実現を目指している。

イージーライドはタクシーと置き換わるような形ではなく、補助的な役割からスタートし、地域の路線バスを補完するような形で交通インフラや社会インフラと連携しながら自由な移動を実現することとしている。

■Zoox(2020年)

タクシー向けの自動運転車の開発を進めるスタートアップの米ズークスは、独自ブランドによる2020年のサービス開始を目指し、ハンドルやブレーキなどを備えず広々とした乗車スペースを確保した車両の開発に一から取り組んでいる。

CEOの解任劇などがあったが、新CEOのもと、当初の計画通り開発を進めているようだ。

■フォード(2021年)

米自動車大手のフォードは、2021年に自動運転タクシーを大規模展開することとしている。同社はこれまでに小売り大手のウォルマートやドミノ・ピザなどと提携し、自動運転車を用いた宅配サービスの実証などを進めており、需要や社会受容性などを総合的に判断して2021年にサービスを本格展開する予定のようだ。

【参考】フォードの取り組みについては「米フォードの自動運転車、小売大手ウォルマートの商品宅配 実証実験を実施へ」も参照。

■アディソン・リー×Oxbotica(2021年)

イギリスの首都ロンドンのタクシー会社アディソン・リーが、英オックスフォード大学発のスタートアップ企業で自動運転ソフトウェアを開発するOxbotica社と組み、2021年にも自動運転タクシーサービスを開始することが報じられている。

【参考】アディソン・リーとOxboticaの取り組みについては「英国で2021年にAI自動運転タクシー登場か 英オックスフォード大学スタートアップが協力」も参照。

■VW×モービルアイ(2022年)

独フォルクスワーゲンと米インテル傘下のモービルアイは2018年11月までに、自動運転車の配車サービスを2022年からイスラエルでスタートすると発表している。

VWが電気自動車(EV)、モービルアイが自動運転に必要なセンサーやソフトウェアを提供し、イスラエルでVWグループの自動車を輸入販売するチャンピオンモーターズが配車サービスの運営を担うという。実用化に向け、2019年にも実証試験を開始する予定。

【参考】VWとモービルアイの取り組みについては「VWとモービルアイが自動運転タクシー事業 2022年からイスラエルで試験開始」も参照。

■Uber(~2022年)

米ライドシェア大手のウーバーも自動運転技術の開発に力を入れており、早くから公道実証を繰り返している。当初予定では2018年にも無人の自動運転車両を実用化するはずだったが、死亡事故の発生やウェイモとの裁判など問題が相次ぎ、計画はずれ込んでいるようだ。

ウェイモとの裁判において公開された文書によると、2022年までには13都市で無人タクシーサービスを運用する予定だったことなどが明らかになっている。

最新の計画は不明だが、2019年4月には、トヨタ自動車とデンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が同社の自動運転開発部門に計10億ドル(約1120億円)の出資を行うことが発表されたほか、同年5月にはIPO(新規株式公開)も予定されており、2019年中に大きな動きを見せることは間違いなさそうだ。

【参考】ウーバーへの出資については「トヨタやソフトバンク、米ウーバーの自動運転部門に1120億円出資」も参照。

■コンチネンタル×イージーマイル(不明)

タイヤや自動車部品大手の独コンチネンタルは、モビリティソリューション開発を手掛ける仏スタートアップ「Easymile(イージーマイル)」と手を組み、自動運転タクシーの開発に着手している。これまでにフランクフルトの大学キャンパスにおいて自動運転シャトルサービスの試験走行も行っているようだ。

また、CES2019で発表した、小型バスタイプの無人運転車両「CUbE」に犬型の配達ロボット「ANYmal」が複数搭乗するラストワンマイル向けの独創的なコンセプトモデルは、昼間は配送車両として、夜間は無人運転タクシーとして活用するなど、さまざまな活用方法が盛り込まれている。実現時期は不明だが、注目度の高い斬新なアイデアだ。

【参考】コンチネンタルのCUbEについては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

■【まとめ】自動運転タクシーが自動運転業界全体を左右する

15社(組)をピックアップしたが、このほかにも、ライドシェア大手のLyftや独自動車部品大手のZFなど開発を進める企業は多い。自動運転タクシーは、自動運転技術を収益につなげる現実的なサービスのため、新規参入を含めまだまだ動きがありそうだ。

実用化は限定条件付きながらすでに始まっており、今後数年間で実証と実用化が急速に進む見込みだ。技術やサービスも徐々に洗練されるほか、自動運転技術そのものを商品化する動きも活発になることが想定される。

また、自動運転を直接目にする機会が飛躍的に増すことから、社会受容性にも大きな影響を与えるものと思われる。その影響は自動運転業界全体に波及するため、自動運転タクシーの成否が業界を左右すると言っても過言ではないだろう。


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