FCAの自動運転戦略まとめ ウェイモとの協業の行方は? 開発状況は?

レベル4量産車の先陣を切る可能性も


出典:FCAプレスリリース

イタリア・米国を股に掛ける国際的自動車メーカーのフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)。日本でもなじみの深いフィアットやジープをはじめ、マセラティなどの高級ブランドも取り扱う多彩なラインナップが魅力の自動車グループだ。

自動運転分野では、世界をリードする米グーグル系Waymo(ウェイモ)との提携が有名だが、FCAはどのような戦略で自動運転時代を乗り越えるのか。その動きに迫ってみた。







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■FCAの概要

フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、イタリアのフィアット社と米国のクライスラー社が2014年に合併して誕生した持ち株会社。2018年現在、イタリアのフィアット、アルファロメオ、アバルト、ランチア、マセラティ、米国のクライスラー、ジープ、ダッジ、ラム・トラックスのブランドを保有している。

中核をなすフィアットは、1899年イタリアのトリノで創業。イタリア最大の自動車会社に成長し、第二次世界大戦で大きな損害を被るものの積極的な海外進出を続け、1968年にアウトビアンキ、1969年にフェラーリとランチア、1971年にアバルトを買収した。1986年にはアルファロメオも傘下に収め、イタリアの自動車市場を席巻した。

石油ショックや国際競争の激化などで経営状況は悪化するが、その都度パンダやブラーボ、プントなど新車のヒットで乗り切り、2000年代以降は本格的な経営再編を進め、2009年にクライスラーと資本提携を結んだ。

一方のクライスラーは、1925年に誕生。量産車では初となる油圧ブレーキシステムの導入や木骨を使用しない全鋼製ボディの採用、油圧式パワーステアリングなど、当時の最新技術を先駆けて導入し、拡張路線を進めていた。

石油ショックや大型車の販売不振などで経営が悪化するが、不採算部門の売却やミニバン、小型車の開発などで乗り切り、1998年にドイツのダイムラー・ベンツと合併。しかし、2000年代の原油高で再び業績は低迷し、クライスラー部門は2007年に米投資会社のサーベラス・キャピタル・ファンドに売却された。

2008年の世界金融危機の影響で資金繰りが行き詰まり、2009年4月に連邦倒産法の適用を申請し破産したものの、米国・カナダ政府からの公的資金やフィアットによる技術・人的支援で経営再建を図ることとし、同年6月にスピード再建されている。2014年、フィアットが保有する株式比率を高めて完全子会社化し、FCAが誕生した。

なお、FCAの2017年の世界販売台数は474万台で、グループ別で第8位となっている。

■FCAの自動運転戦略

FCAの自動運転戦略では、米グーグル系ウェイモ、BMW連合、自動車部品メーカーの英Aptiv社との協力体制が際立つ。

2018年6月に発表した最新の中期経営計画によると、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)を2020~21年、自動運転レベル4(高度運転自動化)を2023~25年に実現する計画を打ち出している。ジープ、マセラティ、アルファロメオ、ラム・トラックスに関しては、2019年から2021年の間に高機能な自動運転レベル2(部分運転自動化)からレベル3の実現を目指すこととしている。

また、2021年までに欧州におけるディーゼル乗用車の販売を終了し、電動化に向け2022年までに90億ユーロ(約1兆1500億円)を投資し、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を計35車種発売することとしている。

コネクティビティに関しては、 2019年4月にFCAのコネクティビティプラットフォームの利用を開始し、2021年までにすべての新車で利用可能にする方針。

ウェイモとのパートナーシップ強化 ウェイモの技術をFCA販売車へ搭載する協議も開始

FCAとウェイモは2016年5月、クライスラーの新型ハイブリッドミニバン「パシフィカ」約100台をウェイモの実験車両として提供し、自動運転開発に向け協業を進める提携を発表した。ウェイモは米カリフォルニア州マウンテンビュー、テキサス州オースティン、ワシントン州カークランド、アリゾナ州フェニックスで走行実験を行っており、この提携により自動運転実験プログラムを拡大した。

ウェイモの自動運転技術が乗用車に搭載されたのはこれが初めてで、FCAはウェイモの自動運転技術を導入するための専用車両を設計・開発し、まず約100台を提供。ウェイモは、車両が自律走行するために必要な一連のセンサーやコンピューターの統合を図ることとしている。

2017年には500台を追加納入し、2018年には最大6万2000台のパシフィカを追加する契約に締結しており、パートナーシップを強化している。ウェイモは、フェニックスで実施している自動運転車の無料貸出プログラム「early rider program」など実証試験を重ねており、培った知見を生かして2018年12月にも自動運転タクシーの有料サービスを始める見込み。そこにパシフィカが利用されるほか、FCAの一般顧客向けの車両にウェイモの自動運転技術を活用する協議も開始している。

【参考】ウェイモの自動運転タクシーについては「グーグル系ウェイモの自動運転タクシー、2018年12月に有料サービス開始か」も参照。

BMW連合 自動運転開発に向けたオープンプラットフォームで協業

自動運転の開発に向けプラットフォームづくりなどで協業を進めるBMWグループや米インテル、インテル傘下のイスラエル企業モービルアイの連合に参加することを2017年8月に発表している。

プラットフォームは、自動運転レベル3からレベル4~5までの自動運転に拡張可能で、独自のブランドアイデンティティを維持しながら、世界中の複数の自動車メーカーが使用できる。開発パートナーは、互いの強みや能力、リソースを活用し、プラットフォームの技術を向上させて開発効率を高め、市場投入までの時間短縮を図っていく。

FCAで当時最高経営責任者(CEO)を務めていた故・セルジオ・マルキオーネ氏は「自主的な運転技術を向上させるためには、自動車メーカー、技術プロバイダー、サプライヤーの間でパートナーシップを結ぶことが不可欠」と語っており、この協力に参加することで、各企業が共通のビジョンと目標を達成する際に可能となるシナジー効果と規模の経済から、FCAが直接利益を得ることが可能になるとしている。

欧州共同研究プロジェクトにも参加

2014年に発足した自動運転に関する大規模欧州共同研究プロジェクト「AdaptIVe (Automated Driving Applications and Technologies for Intelligent Vehicles)」にも参加している。人為的なエラーの影響を最小限に抑えることで交通安全を改善し、よりスムーズなフローと渋滞の緩和による交通効率の向上を目的とした自動化機能の開発を行うプロジェクトで、欧州の車両メーカーやサプライヤー、研究機関など多くが参加している。

自動運転に関する法整備やデータのプライバシーやセキュリティなどにも焦点を当て、広範囲にわたる研究開発が行われたという。デモ車両の開発やテストなどは2017年に完了している。

モビリティサービスにおける取り組み

2013年末にイタリアのEni Groupと提携し、ミラノでカーシェアリングサービスを開始。以来、2400台以上の車両を提供しており、67万人以上、1300万回利用されているという。

2017年には圧縮天然ガス(CNG)の活用を進める覚書を締結し、2018年中にCNG搭載車両を20%まで拡大位する見込み。

また、北米ではジープオーナーのメンバーシッププログラムの一環として、所有車以外のジープ車をレンタルするサービスや、月額制でFCAの車両を使用できるサブスクリプションサービスを2019年から開始する予定。

■FCAの最近の自動運転関連ニュース
カルソニックカンセイがFCAの自動車部品部門を買収

大手自動車部品メーカーのカルソニックカンセイ株式会社が2018年10月、FCAの自動車部品部門であるマニエッティ・マレリ社を買収することを明らかにした。カルソニックカンセイの完全親会社であるCKホールディングス株式会社が買収する形で、買収額は62億ユーロ(約8000億円)となる見込み。

両社の合計売上高は152億ユーロ(約2兆円)と発表されており、今回の事業統合によって、売上高ベースでは世界7位の部品メーカーが誕生することになる。統合によって、自動運転車やコネクテッドカーなどの次世代自動車向け製品の開発を加速させる。

モービルアイが欧州で走行試験 FCAの車両使用か

米インテル傘下のイスラエル企業モービルアイが、イタリア国内でAI(人工知能)を搭載した自動運転車の走行試験を開始することが2018年6月に明らかにされた。モービルアイ社の欧州での自動運転車のテスト走行は初めてと報じている海外メディアもある。

走行実験を実施するのはイタリア北部トリノで、試走はFCAグループとも協力して進める。モービルアイの戦略的パートナーであるBMWも参加する。どのメーカーの車両が走行実験に使用されるかは明らかになっていないが、モービルアイは自国イスラエルでクライスラーが製造・販売する「クライスラー・パシフィカ」をテスト車両用に改造しており、トリノにおける走行実験にもこの車両が使われるとみられている。

【参考】モービルアイの欧州走行試験については「インテルのAI自動運転車、欧州上陸へ 傘下モービルアイが実証実験」も参照。

米ミシガン州に自動運転検証施設建設へ33億円投資

FCAは2018年9月、米国において自動運転や運転支援の技術開発にむけた検証施設に3000万ドル(約33億円)を投資することを発表し、施設内にトンネルも完備した高速道路を設置することを明らかにした。

検証施設はミシガン州に設置し、実際の高速道路を同じような照明や高速道路の出入り口も設置される模様。高速道路のほかに緊急ブレーキ動作などを検証する舗装道路のほか、オフロード車両の検証用道路も用意するという。

GPSによる自車位置特定技術を含む自動運転車の通信技術も重点的に検証する。また、この施設では米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)や欧州で自動車アセスメントを手掛ける「Euro NCAP」なども車両試験を行う予定で、深い提携関係にあるウェイモも利用する可能性が高そうだ。

■ウェイモとの協業でレベル4量産車の先陣を切る可能性も

自動運転開発においてはウェイモやBMW連合などとの協業が際立って目立っている。その反面、FCAの独自色は薄いように感じるが、これは提携や協業なくして自動運転の実現は成しえないことの象徴とも言えるのではないか。

ウェイモの自動運転技術をFCAの販売車両に搭載する協議が行われているように、将来的にはライセンス契約などで自動運転システムそのものを手軽に取り入れることが可能になると予想される。技術開発でトップを争うウェイモにとっても、自動車そのものの生産能力を持たないため、量産化にはFCAのような自動車メーカーの協力が必要だ。

自動運転レベル4を搭載した量産車両の先陣を切るのは、ウェイモとがっちりと手を組むFCAとなる可能性は決して低くないだろう。







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