日本、自動運転タクシーはいつ実現?リアルタイムデータ解析で安全走行(深掘り!自動運転×データ 第16回)

ZMP、日産×DeNAに次ぐ第3勢力も登場



米ウェイモが2018年末に自動運転タクシーを商用実用化して1年余りが経過した。2019年末には無人運転も実現しており、名実ともに自動運転レベル4サービスを達成した形だ。

ウェイモに続けと言わんばかりに世界各地で実証実験が加速しており、2020年中にも第2、第3の自動運転サービスが誕生する勢いだ。

では、国内の開発状況はどうだろうか。世界に後れを取りたくないものの安全性を最優先する日本。国内における自動運転タクシーの実現時期を探ってみよう。

■自動運転タクシー、世界で商用化と実証実験の波

アメリカではLyftやAptiv、GMクルーズ、Uberなどが実証実験に力を入れ、中国では百度やWeRide、Pony.ai、AutoXなどが気勢を上げる。これらの企業は、早ければ2020年中に実用化に踏み切る可能性があり、注目度が高い。

欧州勢では、独フォルクスワーゲンがモービルアイと手を組み、2019年からイスラエルで実証を重ねているようだ。独ダイムラーはボッシュとともに米シリコンバレーで実証を行っている。フォルクスワーゲンは米フォードと、ダイムラーは独BMWとそれぞれ提携を深めており、共同開発の動向も気になるところだ。

国内では、ZMPと日産×DeNAが公道実証に着手しており、いずれも早期実現に向け着実に研究開発を進めている状況だ。

■自動運転タクシーはどのようなデータを取得して走行を実現している?

自動運転タクシーを運行する際、走行エリアとなるODD(運行設計領域)内をくまなくマッピングして高精度な地図を作成し、必要に応じてインフラ協調システムを構築する。走行時は、このマップと車載カメラなどのセンサーが取得したデータを突合して自車位置などを把握するほか、インフラからV2I(路車間協調システム)によってさまざまな交通情報・データなどを取得し、リアルタイムでデータ解析しながら運行する。

遠隔システムの際は、管制センターともさまざまなデータがやり取りされることになる。

また、自動運転タクシー特有の情報として、乗客に関するデータを逐一取得する必要がある。アプリによる配車サービスを主体に、特定のタクシープールなどから乗車するスタイルが想定されるが、乗客を送り迎えするためには配車プラットフォーム上のデータが必須となる。

また、応用が進めば、イベント情報や商業施設の集客データ、駅の乗降データ、その日の天気予報などをもとに、効率よく乗客を探すことも考えられる。タクシードライバーならではの情報をデータ化し、自動運転システムが運行効率を高めるのだ。

■ZMPの取り組み:2020年に思い入れ 自動運転タクシー実証や空港内実証展開中

2020年の無人自動運転タクシーの実現を目指し、技術開発と実証を進めるロボットベンチャーのZMP。2017年6月に日の丸交通と協業し、熟練ドライバーの走行データなどを収集して自動運転アルゴリズムを改良した後、2018年に自社開発した車両を用いて公道営業実証実験に着手した。

2019年度には、東京都の事業「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」 に基づき、日の丸交通らとともに7社で空港リムジンバスと自動運転タクシー、自動運転モビリティをMaaS連携させた都市交通インフラの実証実験を実施している。

自動運転車は、車線変更や右左折、停止などすべての制御をシステムが自動で操作を行い、交通状況などによって必要に応じてドライバーが介入する。

同社はこのほか、空港制限区域内における自動運転の実証実験にも力を入れており、丸紅との合弁「AIRO」が成田国際空港などで実証を重ねている。

「2020年」に強い思い入れを抱いており、本年中に大きなアクションを起こす可能性もありそうだ。

【参考】ZMPの取り組みについては「「五輪までに自動運転実現」 ZMP社長を突き動かす総理との約束」も参照。

■日産×DeNAの取り組み:2020年代早期実現へ Easy Ride実証進める

「もっと自由な移動を」をキャッチフレーズに新たな移動サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実現を目指す両社。2020年代早期の無人運転車両による本格的なサービスの提供開始を目指し、技術開発と実証を重ねている。

自動運転システムは、日産の「Seamless Autonomous Mobility(SAM)」とDeNAのサービス設計や運営ノウハウを融合させた遠隔管制システムで構成している。2018年3月に横浜を舞台に公道実証に着手し、安全確保としてスタッフ同乗のもと一般モニターを乗せながら日産本社から横浜ワールドポーターズまでの合計約4.5キロのコースを往復運行した。2019年2月にもみなとみらい21地区や関内地区周辺にエリアを拡大し実証を行っている。

プロパイロット2.0の実装などADAS(先進運転支援システム)の高度化を図り、自動運転分野で気勢をあげる日産と、タクシー配車サービス「MOV」や個人間カーシェアサービス「Anyca」などモビリティサービスの充実を図るDeNAの取り組みは今後も要注目だ。

■ティアフォーやJapanTaxi、アイサンら5社が第3勢力に急浮上

国内自動運転タクシー開発ではZMPと日産×DeNAが先行しているが、ここにきて第3勢力が急浮上してきた。ティアフォーとJapanTaxi、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社が2019年11月、自動運転タクシーの事業化に向け協業を始めることを発表した。

ティアフォーとアイサンテクノロジーは、オープンソースの自動運転OS「Autoware」と高精度3次元地図を利用した一般道での実証実験を国内外100カ所超で実施している強力コンビ。ここに、自動運転サービス実証を支えるインシュアテックソリューションを提供する損保ジャパンや第5世代移動通信システム「5G」技術開発を進めるKDDI、タクシー車両によるデータ収集実験などでティアフォーと協力体制にあるJapanTaxiが加わることでいっそう隙のない布陣が形成された。

5社は2020年夏を目処に共同開発した自動運転タクシーを用いて東京都内におけるサービス実証を行い、2022年以後の事業化を目指す方針だ。

【参考】ティアフォーらの取り組みについては「トヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化!ティアフォーやJapanTaxi、無人タクシー実証を実施へ」も参照。

■では日本で自動運転タクシーはいつ実現する?

ZMPが2020年の実現を目指している。国は「官民ITS構想・ロードマップ2019」の中で2020年度に実証実験の枠組みを利用したレベル4の自動運転移動サービスを実現させる計画を打ち出しており、「実用実証」と「ODD設定」、そのエリアにおける「社会受容性」がカギを握りそうだ。

例えば、歩行者や他車の介在が少ない空港と近隣のスポットを結ぶ特定路線に限定し、通年実証の枠組みで運行するのであれば、2020年でも実現可能かもしれない。

純粋な自動運転タクシーを考慮すると、比較的大きなODDを設定し、さまざまな状況に対応できるシステムが求められるため、一筋縄ではいかない。国家主導の取り組みで一部地域を特区化して実施する以外、広く解禁されるのは各地の実証が進み十分な技術と安全確保が確認された後になるだろう。

また、無人による運行を可能にするため、道路交通法や道路運送法、道路運送車両法といった自動運転に関わる法律の改正も必要になってくる。こうした状況を考慮すると、早くとも2022年度、順調に進んで2023~2025年度あたりとみるのが妥当かもしれない。

■【まとめ】実証機会の増加で実現が早まる 2020年代前半の実用化目指せ

特例的な措置を除けば、国内で自動運転タクシーが解禁されるのは2020年代半ばと見るのが一般的だ。ただ、加速する公道実証などに伴い自動運転車を目にする機会が大幅に増え、社会受容性が急上昇するようなことがあれば、早期実現も夢物語ではない。

いずれにしろ、実現に向けて必要不可欠となる実証を積み重ねるほかない。ウェイモも長年にわたり実証を繰り返した結果、今がある。

早期実現に向け、より実証しやすい環境整備を望むとともに、実用化を前提とした法整備やインフラ環境整備などについてもしっかりと議論を進めてもらいたい。

>>特集目次

>>【特別対談】「大容量×信頼性」、車載業界屈指の半導体メーカーが見据える自動運転の未来

>>特集第1回:自動運転車のデータ生成「1日767TB」説 そのワケは?

>>特集第2回:桜前線も計測!”データ収集装置”としての自動運転車の有望性

>>特集第3回:自動運転車の最先端ストレージに求められる8つの性能

>>特集第4回:【対談】自動運転実現の鍵は「車載ストレージ」の進化にあり!

>>特集第5回:自動運転車と「情報銀行」の意外な関係性

>>特集第6回:自動運転の安全安心の鍵は「乗員のリアルタイムデータ」にあり

>>特集第7回:【対談】車載ストレージ、タクシーのデータビジネス下支え!

>>特集第8回:自動運転、車載機器の最重要5パーツをピックアップ!

>>特集第9回:AI自動運転用地図データ、どこまで作製は進んでいる?

>>特集第10回:自動運転車、ハッカーからどう守る?

>>特集第11回:改ざん阻止!自動運転業界がブロックチェーン導入を歓迎すべき理由

>>特集第12回:自動運転時代はクラウドサービス企業の成長期

>>特集第13回:自動運転、画像データ解析の主力企業は?

>>特集第14回:自動運転、音声データ解析の主力企業は?

>>特集第15回:日本、自動運転レベル4はいつから?ODD拡大ではデータの網羅性も鍵

>>特集第16回:日本、自動運転タクシーはいつ実現?リアルタイムデータ解析で安全走行

>>特集第17回:【対談】自動運転、ODM企業向け「リファレンス」の確立が鍵

>>特集第18回:パートナーとしての自動運転車 様々な「データ」を教えてくれる?

>>特集第19回:自動運転車の各活用方法とデータ解析による進化の方向性

>>特集第20回:自律航行ドローン、安全飛行のために検知すべきデータや技術は?

>>特集第21回:自動運転車、AIの「性格」も選べるように?人の運転データを学習

>>特集第22回:【対談】2020年代は「タクシー×データ」で革新が起きる!

>>自動運転白書第1弾:自動運転領域に参入している日本企業など一覧

>>特集第23回:自動運転に必須の3Dマップ、どんなデータが集積されている?

>>特集第24回:解禁されたレベル3、自動運行装置の作動データの保存ルールは?

>>自動運転白書第2弾:自動運転関連の実証実験等に参加している日本企業一覧

>>特集第25回:自動運転、企業の垣根を越えて共有させるべきデータ群は?

>>自動運転白書第3弾:自動運転業界における国内の主要人物一覧

>>特集第26回:コロナで早期実現!?自動運転宅配サービスに必要なデータは?

>>特集第27回:自動運転業界、「データセット公開」に乗り出す企業たち

>>特集第28回:自動運転と「データ通信」の実証実験、過去の事例まとめ

>>特集第29回:自動車ビッグデータの活用に取り組む「AECC」とは?

>>特集第30回:「次世代タイヤ」から得られるデータとは?

>>特集第31回:自動運転におけるデータ処理は「クラウド側」「エッジ側」の2パターン

>>特集第32回:自動車×ビッグデータ、自動運転領域を含めた活用事例まとめ

>>特集第33回:自動運転の「脳」には、車両周辺はどうデータ化されて見えている?

>>特集第34回:自動バレーパーキングの仕組みや、やり取りされるデータは?

>>特集第35回:検証用に車載用フラッシュストレージを提供!Western Digitalがキャンペーンプログラム

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